SSブログ

Bach in India (パリ室内管弦楽団) [海外音楽鑑賞旅行]

毎年、海外音楽鑑賞旅行を企画するときの自分のやり方というのは、

①まず、どこのホールを経験したいのか?
②どのようなコンテンツがいいのか?
③日程

この3つで決める。
そして大事なのは①と②がある程度決まった場合は、そのツアーをやる上で公演日程を横方向
に串刺しするポリシーみたいなものを決めてやると、もっとカッコいい。(笑)

・初年度のベルリンは、カラヤン・ベルリンフィルのルーツを巡る。
・2年目のパリ/ベルリン/アムステルダムは、ゴローさんのマネ。
・3年目のルツェルン・ザルツブルク音楽祭は、ザルツブルクではモーツァルトではなくて、カラヤンにまつわる旅をする  
    
・4年目のライプツィヒ・ドレスデンは、鈴木さん&BCJのカンタータ全集完成の偉業に敬意を払って....
・そして5年目の今年はPENTATONEにまつわる旅をする。

ってな感じ。

ハコマニアの自分にとっては、①がすべてを決める。まずなにがなんでも①が大事。
そこからさらに、1年のうちいつ決行するかは、コンテンツを選んで...というようにしたいが、ここが悩みどころで、自分は一般社会人なので、仕事に応じて休めるタイミングが限定されてしまう。

なので、いきなり②を飛び越して③を決める。まずハコを決めて、その後に日程が決まると、そこでやっている公演が自動的に決まる、というように、コンテンツを選べない。

それでも今年のパリ管、スイス・ロマンド、RCOのように最低限譲れない線はある。

そこら辺のさぐりあいをやった上で徐々に決めていくのだ。各ホール、楽団の公演カレンダーを眺めつつ、いい公演が連なるように選んでいく。このときが最高に楽しいときといっていい。(笑)

そうすると主役コンテンツ以外に、どうしてもハコ優先のためにローテーションの穴の日ができてしまう。穴といっては失礼だが、自分が知らないコンテンツを観ることになる。

今回のフィルハーモニー・ド・パリのPhilharmonie2 (小ホール)を体験したいがために、選んだコンテンツが、パリ室内管弦楽団によるBach in Indiaという公演だった。

インドというのは、事前には??だったのだが、バッハ好きの自分にとっては、フィルハーモニー・ド・パリでバッハが聴けるなんて!という感じでウキウキもんであった。

リアルタイムで現地から報告しているときは、まったく気づかなかったのだけれど、いまいろいろ時間をかけて調べながらブログにまとめていると、気になることがある。

現存するシテ・ドゥ・ラ・ミュジーク(Cite de la Musique、音楽の街)という音楽施設と一体となって、新しくフィルハーモニー・ド・パリが形成されているという図式。

奥に見えるのが、Philharmonie1(大ホール)で、右側に見えるのがシテ・ドゥ・ラ・ミュジークという音楽総合施設でPhilharmonie2(小ホール)はこの中にある。

DSC03585.JPG



新設された2,400席のコンサートホ-ルはPhilharmonie1(つまり大ホール)、そしてこれまでシテ・ドゥ・ラ・ムジーク内にあった1,200席規模のホールは、今後はPhilharmonie2(小ホール)という扱い。

つまり今回新しく設計されたのは、Philharmonie1のほうで、Philharmonie2のほうは、元々の総合音楽施設の中にあったホールということのようなのだ。(リ・デザインはしているかもですが。)

そうすると気になるのは、このPhilharmonie2(小ホール)の内装空間。

今回の自分の座席から。

DSC03659.JPG



いままでクラシックコンサートホールをいろいろ観てきた自分の経歴から、あまり見たことのない珍しい内装空間で、特にどうしても気になるのは、このホールの天井。

天井。

DSC03666.JPG


これはどう見てもクラシックコンサートホールの天井とは思えないのだ、自分には。

クラシックのコンサートホールは生音・原音をどう扱うか、というのが”きも”なのであるから、どうしても直接音、間接音(反射音:響き)という考え方が必須で、ホールの壁、天井、床の「形状」、「材質」など、さらに「反響板」というオマケもついた関係でそのファクターで音響が決まってくる。

でもこの天井を見ると、クラシックコンサートホールというよりは、ロックやポップスなどのPAサウンドを駆使するコンサートホールのように思えるのだ。(天井がこんな感じでは反射音は期待できないだろう!)

そうすると、この音楽施設内にもともとあったこの小ホールは、じつは以前は、ロックやポップスなども考慮した総合マルチなホールとして設計されていたものなのではないのかな?と思ったりする。

それを名称をPhilharmonie2と改称して、クラシックの室内楽もここでやりましょう的なアプローチではないのかな、と思ったり。

先の写真の私の座席からのステージの写真を見てもわかるように、この日のコンサートは、ステージの上に立脚式のマイクが多数立てられており、最初録音するのかな、とも思ったが、この日のコンサートのインドの楽器ではPAを使っており、そのため、収録というよりは、オケの音もマイクを通してPAでホール内に流すというのがメインであった。

ホールの後ろには、ロックのコンサートのように、PAのコントロールルームが設置されている。

DSC03665.JPG



今回のコンサートだけがそうだった、という感じであってほしいが、最初から全公演ともPAサウンドでホールに音を流すというのが前提のホールであると、もう生音・原音主義の私としては、もうこのホールはサヨウナラ、という感じになってしまう。(笑)

話を戻して、この小ホールでおこなわれたこの日のコンサートについてレビューしよう。

"Bach in India"というこのコンサートのコンセプトは、パリ室内管弦楽団とソリストによるバッハの曲と、インドの楽器を使いながらのインド音楽(?)のコラボのようなコンセプトであった。

バッハの曲は、ヴァイオリン協奏曲とシャコンヌ。でもサウンドがイマイチだった。(泣)

インド楽器の音色があまりに強烈で、あのインド独特の強烈な旋律を奏でるものだから、もうこちらのほうが完全にバッハを喰っていた感じだった。

コンサートの進行、演奏者は、大きく3つに分けられる。

・女性ヴァイオリン奏者のソリスト
・3人によるインド衣装をまとったインド楽器奏者
・オーケストラ(パリ室内管弦楽団)

最初は、女性Vnソリストとオーケストラのバッハのヴァイオリン協奏曲。指揮者なしの女性Vnソリストによる弾き振り。もうバッハの名曲中の名曲!

オーケストラの中に日本人女性Vn奏者がいたような....しかも自分の知っている奏者に見える..... なんで?という感じで、たぶん自分の勘違いだと思うので、名前は伏せておきます。

聴いてみるとこれが鳴っていないんだなぁ。(爆)

ステージのところでこじんまり鳴っている感じで、客席まで音がダイレクトにやってこない。この広いエアボリュームを音で満たしきれていないのだ。かなりの欲求不満。このホール(少なくとも1階席平土間)は、音響的にあまりいい音響ではないな、というのが第一印象。

問題なのは、そういうホールの音響面の問題を除いたとしても、奏者たちが奏でる音色そのものにも問題がある。

女性ソリスト奏者のヴァイオリンの音色は、彼女はダイナミックに弾いているのだけれど、音がシケっている、というかまったく響いてこない。ヴァイオリン特有の美しい倍音成分などまったく出ていない感じ。あまりに鳴っていないので、モダン楽器ではないのではないか、という思いもでてくる。フシギ.....

彼女の演奏・立居姿を見ている分には、凄くダイナミックで相応のスゴイ音が出ていそうな錯覚がするのだけれど、実際出ている音はショボくてそのギャップに疲れ果ててしまいました。(後半のバッハのシャコンヌも同じ印象。)

オーケストラのサウンドもどうもあまり感心しない。サウンド全体としてオケ特有の量感はそれなりに出ていたのだけれど、音色が美しくない、というか響きに潤いがないんですね。デッドなサウンドだと思いました。

中域の生々しい押し出し、鮮烈で煌びやかな高域、そして締まりとスピード&量感が両立する低域とで成り立つピラミッドバランスのとれた美しいハーモニーで聴こえてこない。(まるでオーディオ!(笑)でも、うまいオケは、必ずこれがきちんと実現されています!)

彼ら(パリ室内管弦楽団)のオーケストレーション自体は確かに非凡なものを感じる。決して凡演ではない。注意してパートごとに聴くとよく弾けていると思ったし、全体の組み立ても、問題があるとは思えなかった。

やっぱり音色なんですよね。自分の好みに合わないというか...そして自分に向かってこないので、いわゆるドッと押し寄せるようなアタック感みたいなものも希薄で印象が薄いんですよ。

ホールの音響のせいなのか(たぶんこっち)、オケそのもののせいなのか、区別がつかなかったが、はっきり正直に書くと出だしはあまり感心しない印象であった。

最後の大編成もののオケの曲は、彼らは量感はそれなりにきちんと持っているので、終盤につれて盛り上がっていき、爆発する感覚は感じ取れた。ただ私を感動させるには、もっと音色そのものが美しくないといけないし、感動できるオケのサウンドなら必ず持っている帯域バランスを彼らは、この日に限って実現できていないように思えた。

唯一感動できたのは、3人によるインド衣装をまとったインド楽器によるインド音楽。

各インド楽器はPAを通してホールに流される完全なPAサウンドなのだが、ここまで割り切られると、PAサウンド独特の気持ちよさというか、たとえばヴァイオリンにコードがついていて、弓で奏でられる音色は完璧な”電気ヴァイオリン(笑)”。

もうここまでやるなら逆にその気持ちよさに感心して酔える。特にあの独特のインド音楽のムーディな感じが、この電気の音にマッチしている。あの小太鼓のようなインドの打楽器の音色もそう。

PAサウンドを侮るなかれ!という感じで、たとえばロックコンサートのようなドームでやるような大音量で歪みまくり(割れた音)のクオリティのひどいPAとは全然違って、品質的には非常に優れたPAサウンドだったと思う。やはり演奏規模に応じた器でのサウンドはPAでも重要という同じことが言えますね。

最後は、女性Vnソリスト奏者と、このインド音楽奏者3人とオーケストラの全員での合奏は素晴らしいものがあった。サウンド的にはもちろん、いろいろ不満はあるのだけれど、コンサートの流れとして、こういう順番の組み立てなら、きちんと盛り上がるよなぁとその計算されたシナリオに感心しきりであった。

日本では絶対経験できない類のコンサートであるし、貴重な経験だったと思う。

また、このPhilharmonie2がPAサウンドもこなすロック・ポップス・クラシックのマルチなホールなのか不明なのだが、今度は純粋な生音のクラシック再生をこのホールで聴いてみたいと思った次第である。

DSC03691.JPG



DSC03675.JPG


DSC03712.JPG



2015/10/4 Bach in India 16H30~ at Philharmonie de Paris

Johann Sebastian Bach
Concerto pour violon en re mineur BWV1052

Dr.Lakshminarayana Subramaniam
Carnatic Classical,pour violon seul

休憩

Johann Sebastian Bach
Chaconne pour violon seul

Dr.Lakshminarayana Subramaniam
Paris Concerto,concerto pour violon indien et orchestre-
creation Tribute to Bach,pour deux violon et orchestra



Orchetre de chambre de Paris

Josep Vicent,direction
Amandine Beyer,violon et direction

Dr.lakshminarayana Subramaniam,violon
Ambi Subramaniam,violon
Vankayala Ventaka Ramana Murthy,mridangam


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。