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Auro-3Dのデモンストレーションを聴いてきました。 [オーディオ]

いまのサラウンド以上に家庭内での実現の敷居は高いと思うが、まずは夢がある。3次元立体音響や3Dサラウンドと呼ばれるフォーマット。

期待はしていたが、自分の中で、現実問題どの程度のものなの?という、どこか懐疑的だったことは認める。

Dolby Atmos/DTS-Xについで、待望のAuro-3Dが上陸。
3Dサラウンドについては、Auro-3Dの製品が市場に出たら、デモを聴きに行こうと決めていた。

きっかけは、ポリヒムニア。

彼らがPENTATONEのSACDを収録をするときに、マイキング含めた収録方法にAuro-3Dを使い始めたことで、その存在を知った。

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彼らの映像素材を扱うスタジオ。

「5.0.4」の9.0chの構成。彼らは、クラシックのサラウンドなので、ウーハーLFEの0.1chは使用しないのだ。天井SPには、B&W N805を使い、逆さまにして天井から吊るしている。

このスタジオでオーサリングされたAuro-3D音声の映像ソフトもすでに市場に出始めているのだ。 


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ダニエレ・ガッティ指揮ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団
マーラー2番「復活」

https://goo.gl/rUW6Uy

世界的な名ホールであるアムステルダム・コンセルトヘボウのホール空間を、3次元立体音響であるAuro-3Dで切り取ってくる。

ホームグラウンドにて、ここの音響を十二分に知り尽くしている彼らだからできる試みともいえる。

3Dサラウンドについては、いろいろAV雑誌で特集されているから、ここでは詳しくは書かないが、自分のために簡単に整理しておく。

まずSPの配置。

こちらがDolby Atmos/DTS-X (地上サラウンドが7chだが)。「7.1.4」という型。

Dolby Atmos SP.jpg



天井SPは、屋根に埋め込み型で、特にここの位置という特定のルールはなさそうだ。
この屋根埋め込み型をトップSPと呼ぶ。


こちらが、Auro-3D。「5.1.4」という型。

audro-3d-audio-example-xxx-57f53c6f3df78c690ff74185[1].jpg



天井SPは、地上SPの真上に位置する。ハイトSPと呼ぶ。フロントL,Rの真上にハイトL,R、そしてリアL,Rの真上にハイト・リアL,R。

さらに飛行機の頭上の移動感や天井の高い教会の響きなどを表現するために、ど真ん中の屋根埋め込み型のトップも規定している。


Auro-3Dの規格として、つぎの3つのレイヤーに分けている。

Auro-3D-Perception-Sonore-Naturelle[1].jpg



自分の耳から水平方向に取り巻いているサラウンドをLAYER1、そして耳の高さから抑角が30度にあたる高さ成分を認識するハイト成分としてLAYER2、そして頭上のトップ成分をLAYER3。

それが上のSP配置にそのまま反映されている。


Dolby AtmosとAuro-3Dは何が違うのか?

映画のDolby Atmos、そして音楽のAuro-3Dという住み分けがある。

作成手法の大きな違いは、Dolby Atmosはオブジェクトベース。Auro-3Dはチャンネルベース。

Dolby Atmosは、サラウンドに対して、高さ成分を”オブジェクト音”として追加していく。
個々の音の要素(オブジェクト)をレンダリング(描画)して3次元空間に立体的に配置していく感じ。


レンダリングというのは、そもそもCGの世界の言葉だから、極めて映像的な手法で、処理も難しくて負荷も重い。でもSPの配置を決めつけることなく、異なるSP配置でも実現、適合できるというメリットがある。

一方Auro-3Dは、製作者側であらかじめ定められた3次元のSP配置(チャンネル)に合せて音を振り分けて作り込まれる。だからSP配置は決まっているのだ。いままでのオーディオの制作、オーサリングの延長線上にある考え。いままでに高さ成分のチャンネルが増えた、というだけ。処理の負担も軽い。


ステレオ2chというのは、厳密にL,RのSPの位置決めをクリティカルに調整しないと、音像の位置のポイントや音場が広大になるポイントが現れてこない。そこを探るのが難しい。

でもサラウンドというのは、ある意味、そこまで厳密に調整しなくても、音像のピント・豊かな音場というのが簡単に実現できてしまう。サラウンドのほうがより簡単にこれらを手に入れることが出来る。もちろん難しい厳密な調整をすれば、お化けなサウンドが出来上がる。

自分は最初この意見にかなり抵抗があった。サラウンドとはいえ、最低限の決まりごと、セッティングを施さないとダメなはず。でも時間が経つにつれて、この考え方にも一理あると思うようになった。

3Dサラウンドについても同様のことがいえる。Auro-3Dの開発者の意向では、ハイトのSPは、地上のSPの真上に置いてほしいこと。そしてリスポジから30度の抑角にしてほしい。そうすると水平方向の音場空間と垂直方向の音場空間とシームレスに繋がるとか。


Auro-3Dのセッティングの要は、フロントの構成(地上&ハイト)をしっかりルールどおり準拠して欲しいとのこと。フロント重視のシステムなのだ。


ハイトSPの役割は、完全に直接音に対する反射音と限定している。ハイトSPから直接音が出てくるようなサラウンドの構成はあり得ないとのことだった。

音声のコーデックは、Dolby AtmosもAuro-3DもPCMのハイレゾ。2Lのソフトだと、Dolby Atmosは、48/24で、Auro-3Dは、96/24。


はじめて、この立体サラウンドの音を、自分の耳で聴いたのは、TIAS 2017でのDENONのブース。国内初のAuro-3D対応AVアンプということで、彼らのAVR-X6400Hの初お目見えのデモだった。

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全チャンネルともDALIのSPを使用。ハイトSPの設置には、写真のようなスタンド・ポール型を使っていた。


主に2Lのソフトや映画ソフトを使ってのデモだったが、自分が予想していたよりは、まともな音場空間であった。確かに高さ成分を感じ取れる。ただ、歌い文句や予想していたより、イマーシブ感(包み込まれる感じ)は、いまいちかな?という印象。

やはりIASの国際フォーラムの部屋はオーディオ再生に向いていないし、第一部屋が広過ぎと感じた。フロントとリアの音場空間がつながっていないのが原因かな、とも思った。

エム5邸や、全国のツワモノ達のすごいサラウンド・システムをたくさん聴いてきた自分の耳の経験からすると、これくらいならもうみんな実現しているよ、という感じで、それよりも若干高さの改善があるかな、というレベルの感じだった。

これでは手放しでは称賛できないし、もうちょっと実ベースのいい環境で聴いてみたい、という欲望があった。

そこで、自宅の近くのホームシアター専門のAVショップの視聴ルームで、Auro-3DとDolby Atmosの聴き比べができる、というニュースを掴んで、行ってみようと思ったのだ。


視聴ルーム。

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約18畳の広さ。専用リスニングルームとしては平均的な適切サイズ。ここでの視聴であれば、もっと真っ当な3Dサラウンドの評価ができると確信。

SPは全チャンネルとも、フランスのCabasse(キャバス)を使う。自分は知らなかったが、同軸ユニット搭載で世界中から高評価を得ているとか。オンキョウが代理店。

ハイト用のSPは、こんなに小さい。設置はスタンド・ポール型。

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ハイト・リア。

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こんなに小さくても、恐ろしく素晴らしい広い音場空間を実現するのだ。たぶん値段も一般コンシューマ向けと思われ、普及ベースの商品。現実離れしたハイエンドな世界よりも、3Dサラウンドの場合、こういう身軽で安い普及前提の商品のアプローチのほうがいいかも。より現実的だ。

結論からすると、こんな簡易型システムでも全然十分すぎる音場空間で、見事な素晴らしい立体空間だった。


もちろんDolby Atmos用には、すでに天井に埋め込み型のトップSPが設置されていた。

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まず、一番自分が感動したのは、非売品のAuro-3Dのデモソフト。

ステレオ2.0→DTS HD Master 5.0→Auro-3D 9.0というように同一音源で、順次切り替わっていくソフト。確か森林の中の鳥のさえずりのようなネイチャーサラウンドだったと記憶する。


いわゆるサウンドの立体空間の移り変わりの効果を感じ取ってもらうデモソフト。

昔ゴローさんが、NHKでサラウンド特番を作ったとき、同じように、モノラル1.0→ステレオ2.0→サラウンド5.0と切り替わるデモソフトを作っていた。(ヨーロッパの街中で舟をこぎながらの音)

あれの3Dサラウンド版と思ってくれればいい。

これが効果てきめん!!

この非売品ソフトほっすいぃぃ~!

まずステレオで前方に平均的な音場空間が構築されると、そこから5.0サラウンドに切り替わると、一気に水平方向にサウンドステージが拡がる感じで、自分の周りが包み込まれる感じになる。そこから3Dサラウンドの9.0になると、高さ成分が加わるのがはっきり認識できるのだ。自分の耳の上から、ちょうどハイトSPのさらに上部辺りに音場空間が追加される感じ。

全体として、かなりリッチな音場空間になる。

これはふつうのソフトを聴いているよりも、ずっとその増設効果がはっきりと認識できると思います。

このデモソフトで、かなり正当な評価ができる、部屋の広さも適切、ということを認識した。

つぎに、2Lのマルチフォーマット音源のソフト。同一音源をDolby AtmosとAuro-3Dで収録してある。もちろんLPCM2.0やDTS HD Master 5.0でも。

これらはBlu-ray Audioに収録されているが、それとは別にSACDサラウンドのディスクもある2枚組なのだ。

2Lについては、別途日記にしようと思っているので、ここでは深く触れない。

かなり実験的で先進的なサウンドアプローチをするレーベルで、録音はかなりいいと思う。
3Dサラウンドのソフトとして、ここにきて、注目されているレーベルですね。 


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「わたしの愛も~現代合唱作品集」 
ニーナ・T・カールセン&アンサンブル96

https://goo.gl/5Brxiv


天井がとてつもなく高いオスロのウラニエンボルグ教会で録られた室内合唱団の録音。

最初DTS HD Master 5.0で聴くが、これでも十分すぎるくらい音場空間で、この教会の大空間がよく録れていて、そこにワープしたような感覚になる。これをAuro-3D 9.0に切り替えると、明らかに高さが加わった感じがよくわかり、特に合唱の声の突き抜け感がかなり増える感じになる。

おぉぉ~明らかに高くなったね、という感じ。

Auroのモードには、Auro-2Dという設定モードもあり、ハイトSPを鳴らさないという設定もできる。Auro-3Dを聴いていて、そこからAuro-2Dに切り替えると、高さ方向の成分がスパッと切れてなくなり、水平方向のみ残るという感じで、その差分にガクッと来る。


さらに言えば、ある意味、Auro-3Dから、ステレオLPCM2.0に切り替えると、これは、もう本当に悲しくなるのだ。(笑)

ここで面白い実験をしてみた。

Dolby Atmosの適切な再生には、天井SPには埋め込み型のトップSPを使う。Auro-3Dの適切な再生には、天井SPには地上SPの真上に設置してあるハイトSPを使う。

Dolby AtmosをハイトSPの条件で聴くとどうなのか?

2LのソフトをDolby Atmosモードにして聴いてみる。

確かに高さは感じるが、合唱の声がAuro-3Dのときのように突き抜けるような感じではなく、自分側の前のほうに被ってくるような違和感がある。やはりハイトSPの設定の場合は、Auro-3Dで聴くほうがずっと適切だと感じた。

Dolby Atmosはオブジェクトベースなので、SP設定を選ばないで自由に空間にレンダリングするのが特徴なので、この現象はちょっと不思議だったのだが。。。

じゃあ、Dolby Atmosの本領発揮の条件で聴きましょう、ということで、SP設定を埋め込み型のトップSPにしてDolby Atmosの映画を視聴してみた。


やっぱり音楽のサラウンドと映画のサラウンドは、根本的に聴こえ方が違うし、聴き方も違うと思う。あの映画独特のド迫力のサラウンド効果は、もう本当に映画館、シアター。

音楽が静的な3次元空間の表現だとしたら、映画は動的な3次元空間の表現。移動感のリアルさがハンパない。

本当に頭の上の天井から音が振ってくる、という感じだった。(笑)

自分は映画は大好きだけれど、ふだん時間があまりなく映画をあまり観ない人なので、映画サウンドのクオリティの評価は、偉そうにしないほうがいいと思う。(笑)


ここで、考えさせられたのが、Auro-3Dは専門の音楽だけじゃなく映画にも触手を伸ばしているけど、将来、映画のDolby Atmos、音楽のAuro-3Dということになると、家庭の天井SPは埋め込み型のトップにしたほうがいいのか、ハイトにしたほうがいいのか、まさか両方設置するのはどうなのか?など両フォーマットの併用は、かなり家庭に負担を強いるし、ここがひとつの問題だよなぁと新たな課題を感じた。


Dolby AtmosやAuro-3Dが、天井SPの配置スタイルとして、トップでもハイトでもどちらでも兼用できるのかもしれないが、それが各々において最適なクオリティかどうかは疑問が残るところだ。


もうひとつの驚きなデモのひとつに、毎年正月元旦にウィーン楽友協会で行われるウィーンフィルのニューイヤーコンサート。

じつは、2014年から、今年の2017年までの3年間、ずっとこのコンサートをAuro-3Dで収録していたのだそうだ。 




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ニューイヤー・コンサート2017 
グスターボ・ドゥダメル&ウィーン・フィル

https://goo.gl/TZMDZB


最近のニューイヤーコンサートはソニーがパッケージしているようだが、パッケージは正式にはAuro-3Dとは表記されていない。でもAuro-3D対応機器で再生すると、オーディオ設定のメニュー画面のところに、LPCM2.0やDTS HD Master 5.0のほかに、きちんとAuro-3D 9.0と表記されるのだ。

それを選択して再生すれば、Auro-3Dで再生される。つまり隠しコマンドなのだ。いままでパッケージに表記されていなかったのは、世の中にAuro-3D対応機器がなかったからだと思う。すでに世の中に発売されたのだから、来年からは正式にパッケージ表記されるようになるだろう。

残念なことは、このソフトを再生するときに、Auro-3DとDTS HD Mater 5.0の切り替えをしなくて、その差分を確認できなかったこと。訪問した時に、このソフトがかかっていて、じゃあ、本番デモ行きましょう、という感じ(笑)だったので、よく吟味できなかった。

TIASのほうで、ある程度視聴できたが、やはり音の沈み込みが秀逸かな、と感じはした。

クラシックのコンサートの映像ソフトは、自分が一番視聴している得意分野なので、このテレトリーできちんと評価したかった。

でもウィーン楽友協会という世界最高の音響空間も、すでに3次元立体音響で切り取っていた、という事実は非常に興奮した。


以上が体験したデモの全貌。

ハイエンドな世界ではなく、安価でコンシューマ向けの現実的な装置で、ここまでの立体音場空間が形成できるなら、自分は十二分に可能性のあるフォーマットだと確信した。

いますぐ自分の自宅に天井SP、3Dサラウンドの環境を敷くことは全く持って不可能だけれど、夢を見させてもらった。一般家庭にこれを施工するのは、やはりハードルは高いと思うが、技術の行く末として夢があることは絶対必要なこと。

サラウンドの次なる行先は高さ方向の3Dというのも必然だと思う。

まぁ、まずは映画館などのプロユースへの導入というのが当然の敷かれているレールかな?

もちろんSP設定が普通の5.1サラウンド環境でも、Auro-3D対応AVアンプがあればアップミックス機能を使うと、高さ成分が疑似ミックスされて、効果は作れるとのこと。

でも、でもだ。自分のかねてからの疑問だった、3Dサラウンドで収録した素材は、それをダウンコンバートした下位互換の5.1サラウンドでもその高さ成分が付加されていて、5.1サラウンドの収録機材、マイキングで収録した従来素材よりもメリットがあるのではないか、という疑問は、この日も解決できなかったのであった。(笑)













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