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ユリア・フィッシャー, ドレスデン・フィル [国内クラシックコンサート・レビュー]

ユリア・フィッシャーをはじめてコンサートで拝見したのは、3年前の2016年の東京オペラシティとトッパンホールでのヴァイオリン・リサイタルのときであった。

PENTATONEの初代女王としてずっとオーディオで愛聴してきたので、それは感無量であった。そのとき、ユリアをぜひコンチェルトでも拝見したいと思っていて、必ず近い将来実現できるのではないか、という確信みたいなものがあって、今年見事祈願成就することができた。ミヒャイル・ザンデルリンク&ドレスデンフィルとともに日本を縦断するツアーである。

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オーディオで聴くユリア・フィッシャーの魅力は、やはり女性ヴァイオリニストとは思えないパワフルな演奏というところだと思う。非常に力強いボーイングで、男性ヴァイオリニストにけっして引けを取らないくらい音色に力強さがあって、そして瞬発力がある。聴いていて切れ味があって爽快なのだ。そしてかなりの技巧派テクニシャン。

そういうユリアの技巧、力強さみたいな魅力は、ヴァイオリン・リサイタルよりもコンチェルトのほうが、より発揮できるのではないか、という自分なりの予想があって、ぜひコンチェルトで拝見したいなぁとずっと恋焦がれていたので、本当に今回の公演は楽しみにしていた。

さらに演目は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。
ヴァイオリン・コンチェルトの中でも、自分がもっとも好きな演目のひとつ。
ブラームスらしい秋のシーズンに相応しい哀愁漂う非常に美しい優雅な旋律が特徴的で、全体として美しい造形をもつヴァイオリン・コンチェルトの傑作中の傑作。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲といえば、注目は第1楽章のカデンツァ。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲の場合は、作曲にあたってアドバイスし、初演もした名ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムのカデンツァが演奏されることがほとんどで、滅多に演奏されないがクライスラーの美しいカデンツァもある。

いまから8年前のNHKホールでN響と共演したリサさまことリサ・バティアシュヴェリのブラームス・コンチェルトの実演に接したとき、この珍しいクライスラーのカデンツァを聴いたことがある。

このブラームスのカデンツァのこと、すっかり忘れており、ホールに到着して座席に着席したときに急に思い出し、しっかりカデンツァの予習をしておけばよかったと後悔しました。(笑)たぶんおそらくヨーゼフ・ヨアヒムのカデンツァだったと思います。


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はじめて拝見するユリア・フィッシャーのブラームスのコンチェルト。
黒いドレスに身を包んだユリアは美しかった。

ユリアの演奏のフォームというかスタイルは、とても正統派スタイル。パフォーマンスなどの魅せる側面がまったくなく、非常に教科書的な、ある意味ちょっと地味でもあるフォーム。弓をもつ右肘はやや下げ気味で、全体のフォームが非常にコンパクトにまとまっている感じがして、そしてボーイングはやはり瞬発力があってとても力強かった。

ユリアのブラームスは、それは素晴らしかった。
本来の持ち味である力強さと瞬発力の切れ味もさることながら、優雅に歌わせる部分は歌わせ、颯爽と走る部分は走る、そういった緩急を見事にコントロールしていたように思えた。オーケストラとの語らいもとても密だったように思う。

ブラームスのコンチェルトとしては名演だったと思いました。

ただユリアの演奏は、とても正確無比な演奏というか、激情ドラマ型じゃないんだよね。
たぶん当日の自分の体調コンディションもあったかもしれないが、緩急もあり、魅せる部分も十分の素晴らしいパフォーマンスだったけれど、自分の感情の中で、抑揚する、天にも昇る興奮度合が自分が期待していた程でもなく、ある決められた範囲の中で納まっていたというか。。。

これは自分の体調不良もあったかな?
すこし妄想しすぎていたかも?

でも素晴らしい公演だったことは間違いないです。
ユリアのコンチェルトを堪能できて、そして期待を裏切ることのない見事なパフォーマンスでした。

アンコールのパガニーニの奇想曲は、これは素晴らしかった。
パガニーニらしい演奏するのが難解そうな曲で、アクロバティックな奏法が冴えわたり、かなり衝撃であった。

ブラボー!

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後半は、ブラームスの交響曲第1番。まさにブラームス王道の曲ですね。
じつに久し振りに聴きました。

ドレスデンフィルは、想像以上に発音能力に長けていて、低音がしっかりと出ていて、ブラ1に必須な重厚な音が出ていたように思う。最初の出だしから、こちらの期待をがしっと鷲掴みし、見事最後まで破たんするところもなく突っ走っていった。弦楽器群の音の厚み、和声感のあるハーモニーの美しさ、そして女性奏者中心で成り立っている木管群の音色の嫋やかさなど、自分が想像していた以上に素晴らしい演奏力を持ったオーケストラであると感じた。

機能性抜群の大オーケストラというほどのグレード規模ではないと思うが、ブラームス1番の大曲をここまで堂々と演奏しきったその力量は十分に評価したい。

指揮者のミヒャエル・ザンデルリング。任期最後ということで、このドレスデン・フィルのシェフとして来日するのは今回が最後だと思われる。

じつはミヒャエル・ザンデルリンクは、8年前の2011年にベルリン現地で、ベルリン・コンツェルトハウスの大ホールで、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団を指揮したコンサートを体験させてもらっているのだ。懐かしすぎて記憶も薄っすらであるが、今回の勇姿を再度拝見できて光栄だと思う。

相変わらず、スマートで自然な流れの持っていき方の指揮振りは見事であった。

アンコールのブラームスのハンガリー舞曲。もうアンコールの定番中の定番であるが、華麗に決めてくれた。

ユリアのコンチェルトを観てみたい、というところから足を運んだコンサートであったが、全般に自分の想いを遂げることができた十分に満足のいく公演だったと思う。


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(c)ジャパン・アーツTwitter





富士通コンサートシリーズ
ミヒャエル・ザンデルリンク指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

2019/7/3(水)19:00~ サントリーホール大ホール

指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク
ヴァイオリン独奏:ユリア・フィッシャー
管弦楽:ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77

ソリスト・アンコール:パガニーニ:24の奇想曲 第2番

ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op.68

アンコール:ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番









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