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PENTATONEの新譜:クラリネット奏者 アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェ デビュー! [ディスク・レビュー]

これは思わずジャケット買いしてしまうだろう!(笑)その瞳にす~っと吸い込まれるように魅了されるそのシルエット。まさに、いつしかカラヤンの前に颯爽と現れたザビーネ・マイヤーの再来のような衝撃だ。

何者なのだろう?

このたび、PENTATONEレーベルと長期契約を締結し、このレーベルからデビューしたクラリネット奏者である。この情報を掴んだときは、まだ日本のサイトに十分な情報が掲載されていなかったので、騒然な騒ぎになってしまったが、それも落ち着いてきて、どうやら素性が判明したようだ。


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クラリネット奏者アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェ。
ベルギー出身である。


最難関のコンクールとして知られるミュンヘン国際音楽コンクールで優勝(2012年)後、英BBC選出の“新生代アーティスト” やボルレッティ=ブイトーニ財団アワード2018を受賞するなど、今最も期待される新進気鋭のクラリネット奏者なのだそうだ。


ザビーネ・マイヤー、ヴェンツェル・フックス、アレッサンドロ・カルボナーレ、パスカル・モラゲスといった錚々たるクラリネット奏者に師事してきたヴァウヴェは、2017年夏のBBCプロムスのデビュー後、2018年にはロイヤル・アルバート・ホールやカドガン・ホールにてトーマス・ダウスゴー指揮BBCスコティッシュ交響楽団との共演でモーツァルトのクラリネット協奏曲を披露するなど、イギリスを中心に全ヨーロッパで注目を集めている俊英である。

ベルギー出身で、イギリス中心に活躍している、というのが素晴らしい!
間違いなく自分の人生に関与してくる運命のスターだ。(笑)


現在は、ベルギー・ブリュッセルに在住で、アントワープ王立音楽院やムジカ・ムンディ音楽学校で教鞭を取っているようだ。


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現在は、クラリネットのソリストとして華々しくデビューしたが、今後は、ザビーネ・マイヤーのように、どこかのオーケストラの木管セクションのクラリネット奏者としてもキャリアを広げつつ、アルバムはソリストとして出していくという二束のわらじの選択肢になっていくのだろう。

自分は木管楽器ではオーボエが1番大好きなのであるが、名だたるオーボエ奏者も、みんなそうだ。オーケストラの首席奏者として活躍しながら、ソロのアルバムも出す、というような路線。
まさに木管奏者の王道の道ですね。

ソリストとしてのみの道だと、やはり音楽家としての音楽性の素養を磨いていくには不十分。
オーケストラの奏者としての経験を積むのは絶対必要ですね。

どこのオーケストラに所属することになるのか、いまから楽しみである。

でも現在、ベルギーの音楽学校に勤務していることから、職業としての専任音楽家としてどこまでやれるか、の判断はありますね。

2012年のミュンヘン国際コンクールで優勝して、音楽家として生きていく道筋を立てて、その後の5年間、いろいろな名クラリネット奏者に師事をして、満を持して2017年夏のBBCプロムスでデビューということだから、本当につい最近出てきた奏者なんだね。

そして今年2019年にPENTATONEと長期契約して、アルバムのほうでもデビューだ。

ご覧のような美人でフォトジニックな奏者で、音楽的才能も抜群。あとはこれから何十年もかけて、自分をどう成長させていくか。。。まさにこれからの奏者だ。

PENTATONEはじつにいい仕事、NICE JOBをしたと思うよ。

敢えて、難を言わせてもらうならば、名前が難しすぎて読みづらい、ということだろうか?(笑)ベルギー人はみんなこのような名前だからね。スターの要件のひとつとして、誰からも名前を簡潔に呼びやすい、というのがあります。それがちょっと心配です。

その後、たぶん略した愛称ニックネームみたいなものが、みんなが作ってくれると思うよ。


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今回PENTATONEからアルバム・デビューするにあたって、アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェ本人、そしてPENTATONEのVice President レナード・ローレンジャー氏がライナー・ノーツにこのような寄稿をおこなっている。


●ライナーノーツのアンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェのコメントからの引用。

いま、PENTATONEレーベルのアーティスト・ファミリーの仲間入りができたことは、とても熱狂的に感じています。

私の芸術的なパーソナリティのすべての側面を映しだした今回のレコーディング・アルバムは、私の心の奥深くに大切に思っている音楽を表現するための第2の声を見つけることができたようなものだと思っています。PENTATONEと私の目的は、極めて優れたクオリティ、そして音楽の激しい感情を素直に解釈することでした。

私は、まもなくこの作品をリスナーにシェアすることに少しスリリングな気持ちを抱いています。

レナード・ローレンジャー氏とそのハイクオリティーでカリスマな彼のチームといっしょに仕事ができたことは、最も感動した経験だったし、これからもきっとそうでしょう。私のファースト・ソロ・アルバム、”ベル・エポック”のリリース、そしてこれからまたコラボしていく作品のリリースをとても楽しみにしております。


●PENTATONE Vice President レナード・ローレンジャー氏のコメントからの引用

私は、ここ数年のアンネリエンのキャリアをずっと追ってきて、ますます彼女への関心が深まる感じであった。そしてとうとう我がレーベルのファミリーに加わってくれて、とても興奮している。彼女は、並外れた芸術性、音楽的才能、そして演奏技術を兼ね備えており、レパートリーやインストゥルメンタルが持ちうる可能性の領域に対して絶え間ない好奇心と欲望に満ち満ちている。

我々は、彼女が今後、素晴らしい活躍、発展をしていくことを心から望んでいる。


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木管はオーボエが1番大好きなのであるが、クラリネットも好き。
でもオーボエ奏者ほどの熱の入れ方ではなく、自分が過去の日記のディスクレビューで、どれだけクラリネット奏者を取り上げいたのかというと自分の記憶では、ザビーネ・マイヤーとBISのマルティン・フレストくらいなものだった。

とくにマルティン・フレストは、とてもユニークなクラリネット奏者で、彼自身オーケストラに所属せず、クラリネットを吹きながら、ダンスで踊ることもできる、という一風変わった奏者なのだ。

いわゆるクロスオーバー的エンターテナーという立ち位置で、クラシックに限らずいろいろなジャンルの名曲をクラリネットでフィーチャリングした小作品集が得意なのだが、単に演奏するだけでなく、本当に歌って踊れるユニークなエンターテナーでもあるのだ。

アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェもそういうクロスオーバー路線を狙っていくという可能性もありますね。でも、やっぱりせっかくコンクール優勝で、名奏者に師事でクラシック路線でデビューしたのだから、自分はまずクラシックの王道路線でがんばって欲しい。クロスオーバーはその後でもいいし、やろうと思えば、いつでもやれると思うから。


クラリネットの音色というのは、とにかく耳に優しい。同じ木管楽器でもフルートやオーボエと比較しても、クラリネットは丸みの帯びたソフトな質感で、ほんわかしていて、聴いていてとても癒される。


アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェが実際どのようなクラリネットの吹き方をするのか、その演奏姿をぜひ観てみたいと思い、YouTubeで探してみたらあった。

今回のデビューを祝して、PENTATONEが彼女のプロモ・ビデオを作っているのだが、これはあまりに幻想的にイメージを作りすぎで、顔もよく見えないし、演奏している姿も見えない。これはあまり役に立たないと思う。格好良く造りすぎですね。(笑)

気持ちはわかるけれど、もっと実質的のほうがいいです。

YouTubeには、それ以外にも彼女の演奏姿があるコンサートはたくさんアップされていた。
BBCプロムス2017やモーツァルトのクラリネット協奏曲も上がっていたので、しっかり観てみた。

美人で背筋がピンとしていて、クラリネットを吹く姿はじつに正統派スタイル。
素晴らしかった。


そして最後に、ようやくこの日記の本命であるディスク・レビューである。 



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ベル・エポック

クラリネット作品集 

アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェ
アレクサンドル・ブロック&リール国立管弦楽団

http://urx3.nu/XVx0


デビュー・アルバムのタイトルは、「ベル・エポック」。

ドビュッシーの第1狂詩曲、世界初録音であるパリを拠点に活躍するマンフレート・トロヤーン(1949-)のラプソディ、イェーレ・タジンズ(1979-)編曲によるピエルネの「カンツォネッタ」とヴィドールの「序奏とロンド」、そしてルチアーノ・ベリオ(1925-2003)編曲のブラームスの「クラリネット・ソナタ第1番」である。

共演するオーケストラは、アレクサンドル・ブロック指揮のリール国立管弦楽団。


アルバムタイトルのベル・エポック(Belle Epoque、仏:「良き時代」)とは、19世紀末から第一次世界大戦勃発までのパリが繁栄した華やかな時代、及びその文化を回顧して用いられる言葉なのである。単にフランス国内の現象としてではなく、同時代のヨーロッパ文化の総体と合わせて論じられることも多い。

このパリがもっとも繁栄した華やかな時代「ベル・エポック」をタイトルに持ってくるというのは、このアルバムで選ばれた作曲家にきちんと現れているのだ。


クロード・ドビュッシー(フランスの作曲家)
マンフレート・トロヤーン(パリを拠点とする作曲家)
ガブリエル・ピエルネ(フランスの作曲家、指揮者)
シャルル=マリー・ヴィドール(フランスのオルガン奏者、作曲家)

このようにブラームスを除く曲は、すべてフランスの作曲家による作品。
そこにこのアルバムがフランス・パリへのオマージュであることが意図されたものであることがわかる。


なぜ、彼女がこのようなパリ・オマージュの作品をデビュー作品に持ってきたのか、その意図は、もっと厳密にライナーノーツを読めば書かれているかもしれない。少なくともベルギーという国は、多国言語を母国語とする国で、下がフランス語圏、上がオランダ語圏、そして右端がドイツ語圏、そして共通語に英語というようなマルチリンガルな国。

首都のブリュッセルは、地域別に言えばオランダ語圏なのだが、使われている公用語は、フランス語だ。自分が住んでいたときも、レストランのメニューはほとんどフランス語だった。

彼女が現在住んでいるのはブリュッセルでフランス語圏であるし、勤務している音楽学校での研究テーマなのか未明だが、そこからのパリ・オマージュがあってもなんら別に不思議でもない。



さて、さっそく聴いてみた印象。

冒頭のドビュッシーは、じつに彼らしい色彩感のある印象派の曲らしいテイストで、クラリネットの旋律がとても美しい。

2曲目のマンフレート・トロヤーンは現在パリを拠点に活躍する作曲家とのことであるが現代音楽ですね。全体としては前衛的なアプローチなのだけれど、楽章によって美しいクラリネットの旋律が垣間見れるなどの隠し味があって、粋な感じがするお洒落な構成の曲。いつも思うのだが、現代音楽って、隙間の美学というか、空間をうまく利用していて、とても録音がよく聴こえるのはいつも不思議です。この2曲目は、とりわけ録音がよく聴こえます。


3曲目のピエルネは、なんと可愛らしい曲なんだろう、というくらい美しいメロディ。
自分は最初に聴いたときに、その可愛らしさに一瞬にして心奪われた。クラリネットを主旋律に持ってきた編曲ヴァージョンであるが、これはじつに可愛い女性的な曲です。

4曲目のブラームスのソナタ。これがこのアルバムのメイン・ディッシュですね。これもクラリネットを主旋律に持ってくる編曲ヴァージョン。この曲はメイン・ディッシュらしい堂々とした如何にもブラームスらしい大曲。このアルバムは、どちらかというとクラリネットが主体でオーケストラの音が控えめな感じのバランスなのだけれど、この曲だけは、オーケストラの音もしっかり聴こえてきます。ロマン派らしい我々に馴染みやすい名曲である。


最後の5曲目のヴィドール。これもクラリネットとオーケストラとの掛け合いがとても美しくて可愛い感じがする曲。とても女性的で美しい曲ですね。


全体的に柔らかくて優しい質感のする女性らしいテイストに仕上がっている。2曲目の現代音楽以外は、とてもメロディラインが美しい曲ばかりで、クラリネットの音の主旋律が、どの曲もじつに効果的に、その美しさの骨格を作り上げていると言っていい。

「ベル・エポック=パリが繁栄した華やかな時代」というタイトルにふさわしい収録曲も、そのようなセンスのする曲ばかりであった。


サウンドの録音評であるが、いつものPENTATONEサウンドと変わらず期待を裏切らない出来栄えだった。

柔らかい質感、広い音場感ですね。クラリネットのあの耳に優しい、丸みを帯びたソフトな質感は万遍なく捉えられ、じつに美しく再現されている。

ただ、クラリネットがいくぶんメインにフィーチャリングされている感があって、オーケストラがあまり目立たない感じするのだが、4曲目のブラームスではオーケストラも大活躍であった。

録音スタッフは、録音プロデューサー&バランス・エンジニアにエルド・グロード氏。(プロデューサーに昇格!。。笑笑)録音エンジニアに、フランソワ・ゲイバート氏、編集に、ローラン・ジュリウス氏。

ポリヒムニアも、若い世代をどんどん育成していくべく、新しい人材にどんどんチャレンジさせていますね。こういう新しいスターのアルバム制作では、絶好のチャンスです。


アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェの公式HPもあります。リンクを貼っておきます。

http://www.annelienvanwauwe.com/?fbclid=IwAR10IfraiHm3VbDWN3iCYoVJ78vyY8JMn61HcI1aBXL_c3c8zrV0VVxaFRM


新しい時代のスターの誕生は、いつになっても、とてもフレッシュな気持ちになれるし、彼女も、今後PENTATONEを引っ張っていく主力スターとなっていくことを心から願っています。








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