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ラトル&ベルリンフィルのマーラー交響曲第9番 [国内クラシックコンサート・レビュー]

マーラー交響曲第9番を、マーラーの交響曲の中で最高傑作という位置づけするマーラーファンの方は多い。それは、マーラーの交響曲で、やはり実演において近代まれにみる名演とされる公演に不思議と第9番が多いこと、そしてバーンスタイン&ベルリンフィルの緊張あふれるスリル満点のあの一期一会の名盤。


やはり話題に事欠かないのが第9番なのである。


実演に関しては、1985年のバーンスタイン&イスラエルフィルの第9番(大阪フェスティバルホールとNHKホール)がこれ以上はもう望めないという奇跡の超絶名演だと言われている。


悔しいかな、自分はそのとき大学生で北海道にいた。(笑)


今日ここで取り上げる日記は、2011年11月23日にmixiで作成した日記である。
ラトル&ベルリンフィルが来日公演をして、そこでマーラー交響曲第9番を演奏してくれた。


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自分は、この2011年に現地のベルリンフィルハーモニーでラトル&ベルリンフィルで第6番「悲劇的」を2公演聴いた。そしてこの2010/2011年シーズンというのは、ラトル&ベルリンフィルがこの1年でマーラー交響曲全曲演奏会というマーラーツィクルスをベルリンフィルハーモニーでおこなった年でもあるのだ。


カラヤンの苦手だったマーラー。アバドがシェフになって、ベルリンフィルにマーラーを頻繁に取り入れた。結局10年足らずの任期の中で、ベルリンフィルでマーラーの交響曲を全曲演奏した。


これは、ベルリンフィル史上初のことであった。


アバドとベルリンフィルの記録として残っている演奏はすべてライヴで下記の通りである。


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アバドのベルリンフィルのシェフ就任コンサートは、マーラーの1番なのだ。アバドはベルリンフィルで自分の在任期間の間にマーラーの曲を全曲演奏したほか、シカゴ響、ウィーンフィル、そしてルツェルン祝祭管弦楽団とも第8番を除いて全曲演奏。いかに近代のマーラー指揮者であったかがわかるであろう。


ラトルもそうなのだ。1987年に初めてベルリンフィルと客演した時がマーラーの6番、そして2002年のベルリンフィルのシェフ就任コンサートがマーラーの5番、そして2019年の離任コンサートが、マーラーの6番。そして2010/2011年シーズンでのベルリンフィルでのマーラー交響曲全曲演奏会。


ラトルは、アバドと同様、ベルリンフィルに対して明らかにマーラーを強く意識していた。


アバドが在任期間を通してバラバラで全曲演奏を成し遂げたのに対し、ラトルは2010/2011年というたった1年の短期間で、列記としたマーラーツィクルスとして全曲演奏会を成し遂げた。


全曲演奏会、ツィクルスとしてベルリンフィルでマーラー演奏をコンプリートしたのは、ラトルが史上初である。


これは当時大変な話題になり、チケットは即完売のプラチナ。自分も6番チケットを取るのに相当苦労した。近代マーラー解釈の雄のラトルのマーラーは恐るべくプラチナであった。


この2010/2011シーズンのラトル&ベルリンフィルのマーラーツィクルスは、デジタルコンサートホール(DCH)にアーカイブとしてちゃんと入ってます。


そういった経緯から自分にはアバドとラトルは、どうしても同じ道を歩んできたように思えてならないのだ。まさに偉大なる先人カラヤンとは違った面をアピールしたい、という・・・。


2011年は現地ベルリンで6番を聴いて、日本への来日公演では9番を聴く、というまさにラトルのマーラーイヤーだった。今年2020年にラトルはロンドン響と来日して、2番「復活」を披露してくれるというので、久しぶりにラトルのマーラーを聴いてみたいと思ったりしています。


そこでこの2011年11月にラトル&ベルリンフィルが来日してマーラー第9番を披露してくれたとき、自分はこの機会をかなり自分の中で大切なトリガーとして位置付けた。9番の曲の構造から詳細に説明し、そしてバーンスタイン&ベルリンフィルの一期一会の録音についても、徹底的にプロモートして宣伝した。


実際、コンサートも本当に素晴らしくて、自分の鑑賞歴の中でも忘れられない9番の名演になった。だから、このコンサート日記をmixi日記の中だけにとどめておかず、ブログのほうでも当時の日記を公開したいのだ。(2011年は、まだブログやっていなかったからね。)


自分の大切な思い出だから。


いま当時の9年前の日記を読むと、まず文体が全然違うね。(笑)そしてコンサート日記はものすごく細かい描写をしている。昔はすごく真面目だったんだな。いまはもっとアウトラインの感想を述べるだけになってしまったけれど、当時は本当に詳細な描写、感想を書いている。自分ながら若いときは凄かったんだな、と思いました。(笑)


このラトル&ベルリンフィルの来日公演のマーラー交響曲第9番のコンサート日記をぜひ自分のブログの勲章として残しておきたいので、mixiから移植することにしたという次第である。


いま読み返すことで、来たるマーラーフェストにも大切な意味を持つだろう。




昨日サントリーホールに3年ぶりとなるラトル/ベルリン・フィルの来日公演に行って参りました。 現代のマーラー解釈で定評のあるラトルが、マーラーの交響曲の中でも最高傑作との呼び声高い9番をどのように解釈して演奏するのか、とても楽しみでした。今年最後の大イベントです。


サントリーホール

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結果はやはりベルリン・フィルというブランドに本当に酔ってしまった。普段パッケージメディア、TV、DCHで観ているスーパースター軍団をいま直接生で鑑賞しているというその事実に酔ってしまう感じで、演奏も絶品のテクニック。


なんか演奏中ずっとドキドキしていました。


ご存知6月にフィルハーモニーでマラ6を聴いて、今年の最終の締めとしてマラ9で締めるという1年になりました。 DCHでのマーラーチクルスはほぼ全曲鑑賞(それも複数回)、今年は本当にマーラーを聴いたなぁ。


今回の座席は2階P1席9番。

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私の席から観たステージ。

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そう魔のP席!(笑)しかも6月のときのフィルハーモニーで初演のときの座席と、右側、左側の違いがあるがほぼ同じような座席。 5分で完売なので、ここしか取れなかったのである。(笑)


ラトル/ベルリン・フィルの公演はよほどここの席に縁があるんだろうと思う。


フィルハーモニーのときは、金管、打楽器と弦楽器が逆に聴こえてP席には違和感を覚えたのだが、今回もたぶんそうなのかな、と覚悟していました。(笑)。


団員達が拍手とともに入場。日本人奏者は樫本大進、清水直子さん、町田琴和さん3人そろい踏み。他にも御馴染のスーパースタープレーヤー達が勢ぞろいである。 なんか登場してくるだけで凄いオーラを発している。


第1コンサートマスターは樫本大進。やはり故郷に晴れ錦を飾らせてくれたラトルの思いやりなのだと思う。 全員が着席した後に大進だけ、1人で最後に登場。サイドにスタブラバ。 カラヤン時代を知る唯一の少ない英雄ですね。


あの日本人奏者4人目のマーレ・伊藤さんを探しましたが、はっきり確認できなかった。対抗配置なので、2'nd Vnは私の席からは背中しか見えないのです。でも東洋人らしい女性がいたので、彼女が伊藤さんではないか、と。


私の隣の席の若い女性客は、ホルン首席のドールの大ファンらしくて、ドールを見つけるなり「キャ~!信じられない!」と涙ぐんでいました。(笑)「いやだ~マイヤーさんも!ホント、ホント(喜)?」


このとき、これからどんなドラマが待っているのか、かなりドキドキ興奮でした。


そしてラトル登場。

いよいよマラ9演奏スタートです。
 
第1楽章はチェロ、ホルン、ハープなどが断片的に掛け合う短い序奏によって開始。
ゆったり少し踏みしめるようなリズムにのって幕が開く感じです。


第1楽章では総じてオーソドックスな演奏のようなのですが,表現の高まりに応じてテンポを速めたり,アクセントを際立たせたりしていて,ただそれが妥当性のある表現として受け取れるので,奇をてらったように感じられることはないし、ラトルならではのリアルでスケール感のある表現を描き出していると思いました。


また,ベルリンフィルならではの驚異的な合奏力と彫りの深いアンサンブルには、ゆるぎない存在感があり,聴いていて圧倒される思いがします。


第2楽章は重いテンポ。これは非凡庸。強いて言えばヴァイオリンの発声が少しハスキーだったりする。中間部の強烈さと緩徐部が素晴らしいです。10分くらいあと、かなりテンポアップしたノリが最高に心地よい。最初のレントラー風の舞曲のところでは,低弦の分厚くてキレの良い響きとフレージングにまず驚かされましたが,何よりもスコアを明瞭に再現しているだけでなく,聴感上の情報量の多さと過剰ともいえる表現力による演奏の世界は,なんだか作品の枠からはみ出しているのではないかと思えるほど。(笑)


本来の作品の枠を超えてしまう演奏過剰の部分がベルリン・フィルにはあるんだな~といつも思ってます。(笑)


第3楽章は緩徐部がなかなかの力演。リアルで生々しいです。全般に明るめの演奏なのですが、ここでは深い物言いをしている。ブラスが勢い良い。ティンパニも目立っている。


勢いに任せたりせずに比較的落ち着いたテンポで開始し,沈着かつ念入りに表現を積み重ねているのですが,随所に聴かれるアクセントがハッとするほど新鮮で、アンサンブルの密度もキレも申し分なし。


でもその充実極まりない演奏を聴くほどに空虚な思いがするのは,実はこの演奏解釈のコンセプトなのでしょう。


さていよいよ第4楽章アダージョ。第3楽章からアタッカで続けて演奏されます。


長調なのでしょうが、弦楽器群のユニゾンによる安住の調を求める印象的な旋律が聴く者を惹きつけます。これが長大な「うねり」となって、音空間をさまようような感じ。本当に弦楽器群がユニゾンで悠然と歌うこのメロディ、本当に荘大な感覚で美しい!


基本的には冷厳としたアンサンブルで,作品を冷徹に再現していて,響きの充実度や演奏の明瞭度,さらには細部に至るまでの解釈の的確さといった面で,素晴らしい説得力とインパクトがあり,慄然とする思いで聴き入るばかりでした。


最後にはテンポは、ますますゆっくりとなり、闇の中は安らぎの死を象徴するかのようで、CD録音などでは、絶対に味わえない雰囲気でした。


ここはやっぱり照明をフェードアウトして欲しかったな~。ここは私のこだわりなんですよ~。


この曲の第4楽章、最後の小節にマーラーはドイツ語で「死に絶えるように」と書き込んでおり、このことが第9交響曲全体を貫く「死」のテーマにつながっているのです。この最後の部分は、まさに終末へ向けて何度も消えようとするはかない灯のような音楽、という効果を醸し出しているんです。


その後、まさに静寂、沈黙、1分間くらいだったでしょうか?いやもっと長く感じたかもしれない。ラトルは全く動かず、楽団員達、観客もまったく動けず。観客達もここの部分の大切さを分かっているのでしょう。フライングブラボーをすることもなく......


凄いエンディングです。


その後、ようやくラトルのジェスチャーでようやくパラパラと拍手が起こって、その後大歓声、大拍手、ブラボーです。


いや~大感動!


こうして聴いてみると,ラトル指揮のベルリンフィルの驚異的な合奏力と,仮借ないまでの表現力にはただただ驚くばかりで,ラトルのその奥にある真髄まで深読みした作品分析と,それを現実の演奏として実現するベルリンフィルの強者達が成し遂げた,明け透けな作品の再現を聴いているように思いました。


ラトルの演奏解釈は,スコアとラトル自身のコンセプトのみに立脚したものだと思いますが,ラトル自身の感性のフィルタを通じてではあるとはいえ,高度な演奏技量とともに客観的にスコアを再現すると、こういう表現の世界が見えてくるのだという感じがしました。


さて肝心のP席での音響は、やはり逆に聴こえたのでしょうか?


やっぱり最悪。(苦笑)私の目の前は、なんとチューバ、トロンボーンの金管、そしてグランカッサにシンバルの打楽器とまさに最悪。弦楽器よりもこれらの金管、打楽器のほうが遥かに近くて目立って聴こえる。やっぱり普段聴いている逆に聴こえました。


でも、あらかじめ覚悟していたので、もう慣れたというか、フィルハーモニーのときのようなショックはなかったです。


まあこんなもんだな、という感じです。


このP席はやはり指揮者ラトルの指揮ぶり、表情を鑑賞する席だな、と思います。


これでベルリン・フィル来日公演のマラ9も終わり、2シーズンにまたがったラトルによるマーラー・チクルスも終焉を迎えようとしています。今年のベルリンツアーでの本拠地フィルハーモニーでのベルリン・フィル生体験、そしてSKF松本、軽井沢国際音楽祭などの国内音楽祭、そしてウィーン・フィル来日公演、ベルリン・フィル来日公演と今年の大きなイベントは全て終了です。


本当に充実していて、人生の中で最高に思い出に残る1年でしたね。


今日の公演の帰り路、iPodでラトル/ベルリン・フィルのマラ9を聴いて、再びあの感動を噛み締めながら、来年もこの1年に負けないくらい素晴らしい1年にしようと誓ったのでした。


演奏終了後、楽団員をねぎらうラトル

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カーテンコール(目の前に映っている黒髪の東洋人女性が伊藤さんかと。)

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全員引き揚げた後、再度ラトル1人が出てきて挨拶

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樫本大進とともにねぎらうラトル。大進はシャイなのかこのステージの端で中央まで出てこなかった。ラトルはどうして恥ずかしがるんだ?というジェスチャー。(笑)

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しかしすごい熱筆だな。いまとてもじゃないけれどこんなに書けないや。(笑)




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