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DGの新譜:リサさまの美しいメロディで旅する世界の都市とチャップリンへのトリビュート [ディスク・レビュー]

リサさま、カッコいいあせあせ(飛び散る汗) 

ジャケット買いとはこのことを言うのだろう。この新譜リリースのニュースが出たとき、よし、これは買い!久しぶりにまたリサさまフィーバーで盛り上がろうと決意した。 


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「シティ・ライツ」 
リサ・バティアシュヴィリ、ティル・ブレナー、
マクシミリアン・ホルヌング、ミロシュ、ラクヴェリ&ベルリン放送交響楽団


http://ur0.work/w0Tt


実際、このアルバム・コンセプトを理解して、ひと通り聴いてみると、じつに素晴らしいアルバムで自分の永遠の愛聴盤になること間違いなしと確信した。

普通にクラシックの作曲家の作品を取り上げるものではなく、いわゆるコンセプト・アルバムである。

2019年に生誕130年をむかえたチャップリンの音楽と映画に触発されたメドレーを作るというリサ・バティアシュヴィリとニコラス・ラクヴェリのアイデアが、リサさまの生活する主要都市に基づいた自伝的コンセプトへと発展したというのが事の発端のようだ。

今回、クリエイティヴ・ディレクターとして、リサ・バティアシュヴィリとニコロズ・ラクヴェリの2人がクレジットされている。

「リサ・バティアシュヴィリと個人的・音楽的な繋がりがある世界の11都市と、そこに関連する美しいメロディーでその都市を旅し、そしてチャップリンにトリビュートする。」

これがこのアルバムのコンセプト。

ミュンヘン/パリ/ベルリン/ヘルシンキ/ ウィーン/ローマ/ブエノスアイレス/ニューヨーク/ロンドン/ブダペスト/トリビシ

最後のトリビシは、ジョージア国(グルジア)の首都のこと。
リサさまは、このトリビシで生まれた。生まれ故郷の街である。

彼女はトリビシに生まれ、ミュンヘンで学び、ヘルシンキのシベリウス・コンクールでキャリアをスタートし、ベルリンを精神的なホームタウンとみなしている。

「私はこれらの都市の音楽、文化、人々への私の愛を表現し、これらの都市にとって何が特別であるかを前向きかつ具体的な方法で探求したかったのです」。

楽曲はクラシック、映画音楽、民謡、と多岐にわたり全てが新編曲で録音されている。




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去年の2019年9〜11月頃に録音されているので、ちょうど世界がCOVID-19のパンデミックに見舞われる直前だったのが幸いした。世界中でロックダウン、外出自粛の中で、おそらくはリモートワーク、もしくはスタジオで密にならないように1人での作業など制約があったと思われるが、なんとかアルバムという形にこぎつけ世にリリースできた、ということなのだろうと思う。

アルバムに参加したのは、リサさまのほかのソリストとして、

ティル・ブレナー(トランペット)
マクシミリアン・ホルヌング(チェロ)
ミロシュ(ギター)
ケイティ・メルア(ヴォーカル)


そして管弦楽にベルリン放送交響楽団。
指揮は、クリエイティヴ・ディレクターのニコロズ・ラクヴェリである。

リサさま所縁の11の都市に纏わる曲は、以下の通り。

1. シティ・メモリーズ/チャップリン:テリーのテーマ(ライムライト)〜サンチェ
ス:すみれの花売り(街の灯)〜ダニデルフ:ティティナ(モダン・タイムス)〜チャッ
プリン:Awakening(ライムライト)〜チャップリン:モダン・タイムスのテーマ

2. ミュンヘン/バッハ:われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ BWV.639
3. パリ/ルグラン:パリのヴァイオリン(心のパリ)
4. ベルリン/シーゲル:ベルリンのスーツケース
5. ヘルシンキ/Trad.:イヴニング・ソング
6. ウィーン/J.シュトラウス1世:狂乱のギャロップ
7. ローマ/モリコーネ:愛のテーマ(シネマ・パラダイス)
8. ブエノスアイレス/ピアソラ:ブエノスアイレスの四季から「南へ帰ろう」
9. ニューヨーク/ドヴォルザーク:家路
10. ロンドン/ケイティ・メルア:ノー・ベター・マジック
11. ブダペスト/Trad.:ひばり
12. トリビシ/カンチェリ:ヘリオ・ビーチェボ〜トヴリス・パンテリ〜ラメント〜ス
ティクス



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全体の印象としては、クラシックのアルバムを腰を据えてしっかりと聴こうという感じのアルバムではなく、世界の都市を脳内でイメージしながら、その美しいメロディを聴きながら、リラックスして聴くBGM的な聴き方をするアルバムのような感じがした。

最高のBGMである。

本当に美しくて優しいアルバム。
脳内にいっぱいアルファ波が出ます。
そして多様性があって、けっして美しい優しいだけの1本調子にならないドラマがあると思う。

アルバムの最初から最後まで、なんか映画を見ているような完結された作品性・ドラマがあります。

最初の1発目に聴いたときは、あまりに美しい作品に、思わず夢中になりましたから。夢中になって5回リピートして聴きました。冷静になって分析的に聴けるようになったのは4回目あたりからかな。


このアルバムを聴いていると世界を旅行をしている感じに錯覚するし、優雅で優しい気持ちになれる。それぞれの都市に割り振られた曲は、おそらくリサさまとラクヴェリの2人で相談して決めたものだと思われるが、リサさまの強い想い入れのようなものを感じますね。

それぞれの都市に対する想い入れをそのままその曲に託した感じ。

これはやっぱりクラシックのアルバムじゃないね。

リサさまのヴァイオリンは、全体的によく泣いていて、よく歌っていたと思います。




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これから11都市を巡り世界旅行をする気分になる訳だが、特に自分が気に入った印象的な曲をかいつまんで感想を一言コメントで残していきたい。

まずアルバム冒頭のチャップリンのテーマ。
これが今回のアルバムのもっとも大事な主題テーマである。

「ライムライト」という映画。
1952年製作のアメリカ合衆国の映画。チャールズ・チャップリン監督。
チャップリンが長編映画で初めて素顔を出した作品で、同時にアメリカでの最後の作品となった。

キャッチコピーとして「美しきバレリーナに よせる心を秘めて 舞台に散った道化の恋… 名優の至芸と 愛の名曲でうたい上げる 感動のチャップリン・シンフォニー。」なんて宣伝されていた。

この映画でチャップリンが作曲した「テリーのテーマ」。
第45回(1972年)アカデミー作曲賞受賞。

これがこの冒頭の曲なのだが、これは誰もが聴いたことのある有名な曲ですね。
一度聴いたら絶対忘れられないテーマ。誰もが惹かれる旋律ですね。
映画音楽って本当にいいですね。

リサさまのヴァイオリンは朗々と鳴っています。


3曲目のパリ。
ルグラン:パリのヴァイオリン(心のパリ)。

パリの街の景観が頭にそのまま浮かんできそうなアンニュイな雰囲気があって素敵。
自分がお上りさんになってパリの街を歩いているのが思い浮かぶ感じ。

4曲目のベルリン。
シーゲル:ベルリンのスーツケース。

ムーディな雰囲気。
ピアノがふっと入ってくるところから一気に雰囲気が変わる。
トランペットがいいですね。
後半は、ジャズ的な感じになり、あのベースラインを刻む独特のリズム感、スィング感とかもう完全にジャズの世界。





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6曲目のウィーン。
J.シュトラウス1世:狂乱のギャロップ。

なんかあのシュトラウスの曲とは思えないコケティッシュな感じがいいですね。
ひょっとしたらVPOのニューイヤーコンサートで披露されている曲かも?


7曲目のローマ。
モリコーネ:愛のテーマ(シネマ・パラダイス)

ここはこのアルバムの最高の頂点の盛り上がりでしょう。
涙腺の弱い自分はここで、ついに号泣。
「ニュー・シネマ・パラダイス」1988年公開のイタリア映画。
エンニオ・モリコーネの音楽「愛のテーマ」である。

映画音楽でヘンリー・マンシーニとエンニオ・モリコーネは自分の最強の2本柱。
モリコーネの「愛のテーマ」は誰でも絶対聴いたことのある有名な旋律。
これをリサさまのヴァイオリンとホルヌングのチェロが交互に白いキャンパスにカラフルに音色を描いていく。

泣くよ、絶対に。。。
自分は号泣でした。

このモリコーネの「愛のテーマ」で、コロナで荒んだ心を一気に癒してくれ、ぐっと心に染みてくる。ここがそんな最高のボルテージだと思います。




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8曲目のブエノスアイレス
ピアソラ:ブエノスアイレスの四季から「南へ帰ろう」

もうこれは情熱の赤。
たっぷりエコー、リバーブを効かせ、空間、エアボリュームの広さを感じるスケール感の大きいサウンド。ミロシュのギターが、ボロンという感じでその広い空間で鳴るのが気持ちいい。街の喧騒の音が素敵ですね。

10曲目のロンドン
ケイティ・メルア:ノー・ベター・マジック

なんともいえない哀愁を帯びたメロディ。
ちょっとボサノバ風のケイティ・メルアのヴォーカルがいいです。


11曲目のブダペスト
Trad.:ひばり

リサさまの超絶技巧が、これでもか、これでもか、と冴えわたります。
このアルバムで一番激しい曲だと思います。
聴いていて痺れます。

12曲目のトリビシ
カンチェリ:ヘリオ・ビーチェボ〜トヴリス・パンテリ〜ラメント〜スティクス

この曲はオーディオ的に最高に美味しいサウンド。
広大なダイナミックレンジ、縦軸の沈み込みの深さ、音のトランジェント、すべてにおいて、オーディオ的なエンタメ性を感じる曲です。



録音の会場は、RBB(Rundfunk Berlin-Brandenburg) Großer Sendesaal。ベルリン放送交響楽団はベルリンの放送局の専属オケだから、その放送局のスタジオだと推測します。アラベラさんがPENTATONEの録音でよくベルリン放送交響楽団と共演しているので、そこでよくその録音会場として使っていたのを記憶しています。

録音評は、2chステレオとは思えない情報量の多さ、音数の多さで、これだけ部屋中に広がる音場感の広さはサラウンドも真っ青という感じ。DGらしい音色の骨格感や定位感も定番通りというところでしょうか。

空間の捉え方や楽器音とのバランス感覚、位置感覚も自分好みです。自分が好みとする録音ポリシーは広大な音場と明瞭な音像を両立させる、というところにあります。この2点を両立させる、というのは、現場では言うは易し、行うは難しというところですね。リサさまの弦の解像感、ゾリゾリ感堪んないです。

録音、ミキシングは、ジョナサン・アレン。バランス・エンジニアは、セバスチャン・ナットケンパー、コロネリウス・ダースト、ジョージ・ガヴァーヤッゼの3人が担当しています。

録音時のスナップショットです。
Photo is copyrighted by Lisa Batiashvili FB




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(左から右へ)
ティル・ブレナー(トランペット)
リサ・バティアシュヴィリ
ニコラス・ラクヴェリ(クレエイティヴ・ディレクター)

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(左から右へ)
ティル・ブレナー(トランペット)
リサ・バティアシュヴィリ




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(左端から)
リサ・バティアシュヴィリ
ニコラス・ラクヴェリ(クレエイティヴ・ディレクター)
(右端から)
ジョナサン・アレン(プロデュース、録音、ミキシング)
ケイティ・メルア(ヴォーカル)


コロナ前で本当に良かった。(笑)
このアルバムは、今年の自分の最高の愛聴盤になる、間違いなく。

最後に、この新譜のプロモビデオをアップしておきます。











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