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BISの室内楽 [ディスク・レビュー]

今日からサントリーホールCMGオンライン(チェンバーミュージックガーデン有料ライブ配信)がスタートしている。ライブストリーミング配信で有料というのがうれしい。


サントリーCMGオンライン.jpg


日本のクラシック業界でそういう流れを作るのは、まずサントリーホールが1番最初にやってほしい、という想いがあったので、とてもうれしい。


プラットフォームに、イープラスの「Streaming+」を使うという。


チケット業者のイープラスからそれが出てくるというのが意外だったけれど、この「Streaming+」って具体的にどのようなものなのかもうちょっと詳しく知りたいと思っていた。


イープラスのチケット制の動画ストリーミング・サービス「Streaming+」がグランドオープン



この記事を読んで、なるほどなぁ、と思いました。イープラスってチケット販売企業、ライブ・エンタテインメント事業企業として約20年間に渡り実績やノウハウを培ってきた企業だからこそ、こういう課金EC系のシステムには持ってこい、というかアイデア満載なのだと思うのでした。


いくら技術開発力が高くても、ビジネスのアイデアがないとダメで、そのビジネス・アイデアが豊富だからこそいろいろなEC系のビジネスのアプリケーションを展開できる発想があるのだと思いました。


チケット販売はもちろんのこと、プロモーション、グッズ販売などの販促関係もろもろ。


ライブストリーミングが今後主流になるなら、こういう課金EC系のビジネスを母体にアイデア豊富に持っている企業体が結構大きいアドヴァンテージがあるかもしれませんね。


なるほど世の中って、需要のあるところにビジネスが流れるんだな、とつくづく思いました。


自分は技術系なので、やはり気にするのは、配信環境(インターネット回線、機材、運用方法)と信号処理のCodec。Streaming+がどのようなCodecを使っているかは知りませんが、いまは世の中が急いで要求しているので、普及フォーマットを使っているのでしょう。


でもゆくゆくは、夢のある高画質・高音質フォーマットの信号処理を期待したいです。こういう伝送系の信号処理と課金EC系は配信システムの中では別途に分けて考えてもいいですね。あとでガッチャンコする感じで。。。


イープラスは、もちろんクラシックだけではなく、ポップス、ロック、ジャズなどの音楽系、舞台、トークイベントなど幅広いエンターテイメントを手掛けているので、それが全部ライブストリーミング配信になったら、それこそ、そういうライブイヴェントに紐づいて関連する販促ビジネスなどの課金EC系は宝の山というか大儲けしそうな感じですね。


期待したいです。


さて、日記の本題は、じつはそこではなくて(笑)、サントリーホールCMGオンラインは室内楽のお祭り。ひさしぶりに室内楽をたっぷりと聴きたいなと思ったのでした。


なにせ、去年の年末から半年間ずっとマーラーばっかり聴いてきたので(笑)、そろそろ衣替えをしないとという感じです。また最近深夜遅くまで音楽を聴いていることが多く、そういう場合大編成の大音量は聴けないので、室内楽を聴くケースが多い。


できればひさしぶりにBISの録音が聴きたい衝動にかられたのです。


BISはワンポイント録音のさきがけのレーベル。マイクからほどよい距離感がある完璧なオフマイク録音。温度感が低めでクールなサウンド。録音レベルは小さいんだけれど、ダイナミックレンジが広く、結構オーディオマニア好みのサウンド作りなのである。


しかもSACD 5.0サラウンド。


BISに所属しているカルテットで室内楽を堪能したいなぁという猛烈な衝動にかられる。あのクリスタルなサウンドで、隙間感のある室内楽を聴くと、もう最高!みたいな感じ。


いままでBISの録音制作を手掛けてきたトーンマイスター5人が独立して、「Take 5 Music Production」という別会社を設立している。


主なミッションは、BISの録音制作を担う、ということで、フィリップス・クラシックスの録音チームが、ポリヒムニアになったことや、ドイツ・グラモフォンの録音チームが、エミール・ベルリナー・スタジオとなったことと同様のケースのように確かに思えるのだが、ただ唯一違う点は、現在もBISには、社内トーンマイスターが在籍して、音に関わる分野の責任を持っていることなのだという。


いま最近のレーベルは、社内に録音スタッフを持たず、外注先に委託することが多いというのが現状である。大変な金食い虫でもあるし、そのほうがコスト削減で効率的なのであろう。外注のほうがより技術的にも専門的なスキルを持った業者が多いことも確かだろうし、レーベル社内で、そういった職人を育てていくだけでも大変なことだ。


でも、それってレーベルごとに受け継がれてきている伝統サウンドというものが、もう崩れてきて存在しない、ということを意味していてオーディオファイルにとって寂しい限りでもあるのだ。


DGであれば、骨格感のある硬派な男らしいサウンド。
1960年代ステレオ黎明期を一斉に風靡したDECCAマジックなどなど。


そのレーベルごとに、そのサウンド、という特徴があって、それを堪能するのがオーディオマニアの楽しみでもあった。マニアはいつのまにか、レーベル単位で、その録音されているサウンドを想像することができた。でもいまは外注だから、それこそコスト重視で、アーティストごとにいろいろ違う外注に切り替えていたりしたら、それこそレーベルごとにサウンドの統一感なんて難しいことになる。


なんかそういう時代になってきているのは、なんとも寂しいなぁと思う限り。


BISもそんな流れの一環にあって、「Take 5 Music Production」という外注も請け負える団体にすることで、BISのタレントだけではなく、いろいろな録音ビジネスの受注を受け入れるようにビジネス拡大しているのだ。


いろんなところで、あのBISサウンドが聴けるかもしれない。(笑)


BISのトーンマイスターでは、やはり自分はなんと言っても、Hans Kipfer氏。(現在Take 5 Music Production) 彼が録音、ミキシング、バランス・エンジニアを担当してきた曲を一番多く聴いてきた。


BISサウンドといえば彼というイメージが多い。  


Take 5 Music Productionの俊英たち。(その名の通り、5人によるチームなのです。(笑))

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BISのサウンドエンジニアは、みんなコアなRMEユーザーですね。
そして驚くことにオリジナルマスターは96/24でやっているのだ。
このハイレゾの時代に。


それであれだけ素晴らしい録音を作り上げるのだから、録音ってけっしてスペックで決まるものではない、という最もいい一例であろう。


ポリヒムニアも同じことを言っていて、いい録音を作り上げるのは、ハイスペックで録るということに拘っていなく、またそれが絶対条件でもなく、もっと基本的なことがあるんだよね。


それは彼らが世に送り出している作品にすべて現れている、と言っていいと思う。


BISの室内楽を無性に聴きたく、6枚を緊急購入。


キアスクーロ四重奏団


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いまをときめくアリーナ・イヴラギモヴァ率いるカルテット。イブラギモヴァ大ファンです。(笑)2005年に当時英国王立音楽大学(RCM)で学んでいた友人を中心に結成したカルテット。団体名の「Chiaroscuro(キアロスクーロ)」は美術用語で、コントラストを印象づける明暗法や陰影法を意味する。


全員がガット弦とピリオド楽器を使い、チェロ以外は立奏する。
完全なイブラギモヴァのカルテットと言っていい。


去年の2019年の4月に来日しており、これはぜひ行きたかったんだが、マーラーフェストのための予算確保のために見送ってしまった。いま考えれば本当に愚かなことをしたものだ。



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シューベルト弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」、第9番 
キアロスクーロ四重奏団




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ハイドン弦楽四重奏曲集 Op.76 1-3 
キアロスクーロ四重奏団




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ハイドン弦楽四重奏曲集 Op.20 第1集 
キアロスクーロ四重奏団





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ハイドン弦楽四重奏曲集 Op.20 第2集 
キアロスクーロ四重奏団



キアロスクーロ・カルテットいい!もう実演体験しなかったのは一生の不覚。オーディオでもわかる精緻なアンサンブル。古楽器特有のもさっとした感覚がするのだけれど、古楽器でないと表現できないこの時代特有の評価観ありますね。もうこれは頭の評価脳を切り替える必要ありますね。イブラギモヴァがぐいぐい引っ張っていってるのがよくわかる。目の前に、そのシーンが浮かんでくる。やっぱりイブラギモヴァのSQなんだと思いますね。


このカルテット、古典派と初期ロマン派のレパートリーを看板としてきたようなのだが、フランスAparteレーベルよりベートーヴェン、モーツァルト、シューベルト、メンデルスゾーンのディスクをリリースして好評なのだそうだ。そしてBISレーベルに録音を残しているのが、このシューベルトとハイドン。


かなりベテランなんですね。BISに移籍してからはハイドンが注目ですかね。


やっぱりSACDサラウンドで、BISサウンドがいいです。BISで室内楽を聴きたい!というのがきっかけなのですから。



トリオ・ツィンマーマン


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ゴルトベルク変奏曲~弦楽三重奏版 
トリオ・ツィンマーマン



ノンノンさんは、女性ヴァイオリニストしか日記にしないと思われているかもしれないが(笑)、そんなことないのである。


フランク・ペーター・ツィンマーマンは、男性ヴァイオリニストの中でもとりわけ昔からずっと注目していて、大ファンである。


特に彼のトリオであるこのトリオ・ツィンマーマンの室内楽の大ファン。


BISのベートーヴェン弦楽三重奏が愛聴盤で、数週間前にひさしぶりに聴いたら感動してしまって、BISの室内楽のSACDが聴きたい、大量に買おうと思ったのは、それがきっかけだったのである。


トリオ・ツィンマーマンは2007年に結成。「トリオは自分にとってベストなアンサンブル」と語るツィンマーマンが、長年ベストなアンサンブルができる演奏者を探し、若き天才ヴィオラ奏者アントワーヌ・タメスティと、タメスティが信頼を寄せるチェリスト、ポルテラに巡り合いトリオ・ツィンマーマンが結成された。


このトリオはとにかくすごい切れ味のサウンド。剃刀のような切れ味の瞬発力で、自分は男性トリオとしてのエクスタシーの極致を感じてしまう。女子バレーの後に、男子バレーを見る、女子テニスの後に、男子テニスを見る。それぐらいの衝撃がある。


そこに男性奏者の凄さ、底力というのをマジマジと感じてしまうのだ。アンサンブルの完成度の高さもそうだけど、自分はこのキレッキレッのサウンドにメロメロなのだ。いかにも男性的。トリオ・ツィンマーマンは全員すべて名器ストラディヴァリウスを使用している。その音色もエレガントの極みともいえるこの上なく美しい音色なのだ。


このアルバムもゴルドベルグ変奏曲を弦楽三重奏版にアレンジしたものだけれど、言うことないですね。ますます大ファンになりました。



グリンゴルツ・カルテット


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メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲、エネスコ:弦楽八重奏曲 
グリンゴルツ・クヮルテット、META4



グリンゴルツ・クヮルテットとMETA4がメンデルスゾーンとエネスコの八重奏曲を録音したアルバム。自分は両カルテットともはじめて体験するけれど、これまた素晴らしいですね。普段、弦楽八重奏という室内楽を聴く機会があまりないだけに、とても新鮮でいい刺激でした。


やっぱり音数が多いですね。(笑)


室内楽を聴くたびに想うこと。


それはやっぱり室内楽独特の各楽器のこまやかなフレージングやニュアンスが手にとるように感じられるということ。特に実演に接するとそれがはっきりわかりますね。特にフレージングの妙は、大編成よりも室内楽のほうがわかりやすい。


楽譜をどう読む、どう解釈するかは、その息継ぎとか段落感など、演奏者の解釈によるところが多いと思うけれど、その解釈の仕方でずいぶん曲の印象が違ってきますね。自分は同じ曲なのに、このフレーズ感の解釈の仕方の違いであのアーティストの演奏はすごくよかったのに、このアーティストのは全然ダメだな、がっかり。。。というのをオーディオや室内楽の実演で山のように経験しています。というか日常茶飯事です。(笑)


フレージングは、声楽でもっと顕著に現れますね。


声質もいい、声量も抜群にある、いい声しているのに、その歌を聴いていると全然自分に響いてこない、さっぱり感動できないという歌手もいます。それはやっぱりフレーズ感、フレーズの収め方がこなれていない、というか自分の歌にできていないから、その歌について経験不足から来るものなのだと自分は思っています。


あのシャンソン歌手のバルバラの歌も、一見早口で語りかけているだけのように見えて、じつにカッコいい歌い方だと思ってしまうのは、そこに音楽的フレーズ感があるからなのだ、と思うのです。


だから音楽の演奏でフレージングって結構というか一番大事なポイントなんじゃないかと素人ながら思ったりする訳です。


室内楽はそこが一番はっきりとわかりますね。


しかし、これだけBISの室内楽を聴いたら、もう言うことなし!
まったく思い残すことないです。


やっぱりBISの録音、最高!!!






 

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