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オーケストラの損益分岐点 [クラシック雑感]

あの劇団四季が、コロナ禍で、相次ぐ公演中止で経営難に陥っている。クラウドファンディングを開始したという。現在6000万に到達。目標1億だそうだ。


これがいまの厳しい現実。


クラシック業界も同じで、相次ぐ公演中止で莫大な負債を抱え、オーケストラの経営難で存在危機も頻繁に耳に入ってくる。


本当に心が痛い。


いつもオーケストラのみなさんから素晴らしい音楽と感動を与えてもらって、生きる喜びというか趣味の世界を満喫している自分にとって何とかしてあげたいのは山々なんだが、なにぶんたかが個人の身の分際で、なにもしてあげられない。


せいぜい寄付をするくらい。


しかも自分は超貧乏な平民と来ているから(笑)、本当になにもしてあげられない非力を感じるだけである。でも明るい兆しもある。


東京都交響楽団がコロナの環境の中で公演を開始するための実験をやってコンサート再開への道筋を模索する算段に入った。


またそれぞれで無観客ライブ配信で有料配信も始まるようになった。

徐々にコンサートを再開する兆しが見えてきている。


ニューヨークのMETとか今年いっぱいは無理だという話もあるし、ロンドンも今年いっぱいはダメだろうという観測。サイモン・ラトルは、大陸では再開に向けて動き始めているのに、なぜイギリスでは全然そういう動きがないんだ、と怒っている。残念ながら、今年の秋のラトル&ロンドン交響楽団の来日公演、マーラー交響曲第2番「復活」も中止になってしまった。自分のコロナ明けの生コンサートの予定だったので号泣である。


そういうのと比べると、日本は動きが速いし、恵まれた環境かもですね。
まぁ彼らより軽傷ではありますから。


日本の各オーケストラは、ステージの奏者間の距離、観客席の間引きなどからスタートして、そろっと始めようとしている。そういった点では室内楽のほうが敷居が低くて、まずこちらからでしょうね。


観客の間引きは、採算がとれないという問題がある。


こんな中で、はたしてこういうペースで、この数か月で抱え込んだ負債を返済していき、いずれは損益分岐点に到達するというシナリオが描けているところはおそらくどこもないであろう。


損益分岐点というのは、商品を開発するとき、まず先に開発費を投資する訳だが、その投資した分を、完成した商品を売り続けることで、あるポイントでその投資した借金を全部返済することになり、それ以降の売り上げは利益になるという、そのクロスポイントのことである。


損益分岐点.jpg


みんなとにかく動かないと、なにか始めないと、なにも始まらないということで動き出しているのが現状だと思う。


それで、自分の耳に入ってくるオーケストラの現状の負債は、大体どこも4億。

そうするとこのペースでやってもどんどんその負債が膨らんでいくばかり。


はやく実験の結果で平常通りのスタイルで収益が上がるようになればいいと思います。でも一度作ってしまった負債4億を、通常のビジネス形態に戻ったとしても、それを損益分岐点を迎えるまでリカバリーすることは可能なのだろうか。


自分はそれは無理だと思う。


損益分岐点は、なにもない平和の日常の状態で、投資(借金)と売り上げ(利益)で成り立つルールであって、こういう前代未聞のアクシデントで抱え込んだ負債がその上に積み重なると、それをクロスポイントに持っていくには、莫大な利益を生むハイペースでないと借金ゼロにはならないだろう。


それはクラシックは高コストがかかる割には、低コストの収入のビジネス体質なので絶対無理なペースだと思うのである。


もう自分はこれを解決するには、公的資金の投入しかないと思うのである。


日本のオーケストラが解散してしまい、あるいは統合になってしまうと、本当に日本の伝統の財産を失うことになる。それだけは避けないといけない。


1楽団が4億の負債を抱えているとしよう。


2006年の古い日本のオーケストラ・イヤーブックのデータだけれど、公益社団法人 日本オーケストラ連盟に加盟しているのは正会員、準会員含めて、34楽団である。


日本のオーケストラ.jpg



そうすると、34×4億=136億。

この額は果たして、そんなに大金の額であろうか?


政府がかつてない規模の予算で臨むといつも言っている、兆単位の予算額を聞いていると、そんなに大金とは思えないんですよね。


136億あれば、1楽団あたりに4億を配給され、コロナ禍で抱えた負債を相殺できる。


もちろんそれぞれの楽団によって、そのオケを支えている経済的基盤が違っていて、たとえばN響とかは、NHKがバックにいるので比較的安泰と思われるけれど、東京都交響楽団は東京都、新日本フィルとか京都市交響楽団とかも地方自治体運営だ。


だから各オケが交渉するというより、そのオーケストラを総まとめする組織が、その136億の公的資金を調達できるような仕組みにして、それを各楽団に分配するというのがいい。


公益社団法人のルールに、収入と支出があるレベル以下になると強制的にそのオケは解散させられる、というルールがあるらしいが、この非常事態時、そんなのまったくのナンセンスである。


その縛りは、なにも起こらない平和の平常時のルールであって、こんな予想もしない世界的な危機にそのルールを適用すること自体、まったくナンセンスというかあり得ないことである。


それはいくらでも特例を作れるであろう。


そうやって、突発的に抱えてしまった今回の大負債を補填して清算してあげないと、ただでさえ、収益率の低いクラシック・ビジネスでは損益分岐点を上回って、利益体質に持っていくことは永遠に不可能だろうと思うのである。


以前、”オーケストラの収益構造”という日記で、その収益配分を日記にしたことがあるけれど、この世界、チケット収入は半分くらいの比率で、残り半分は自治体の寄付、支援などで、収支をイーブンに持って行っている業界だ。


そんなハイコスト、ローリターンなビジネスで、今回のような大負債が上乗せてしまうと、一生かかっても損益分岐点を迎えることなく、永遠に赤字であろう。


それは危機である。


文化芸術は不要不急ということで、一番後回しにされていることも理解しているし、政府の緊急対策予算も飲食業、旅行会社などの観光業、日本の経済を根幹をなす優先順位の高いビジネスにあてられているのもよくわかっている。


でも中小企業を応援する支援金、何百万という単位では全然ダメなのである(笑)、クラシックの世界は。


”文化芸術は、人間の生活の上で絶対必要なものなのである。”ということを政府が少しでも理解してくれるといいですね。


文化庁長官は、東京藝術大学出身の文化芸術に明るい方ではなかったでしたっけ?


コロナ勃発のときに、励ましの声明を出したのはいいけれど、補償などなにもなしで、みんなからポエムと言われていたのを覚えていますが。(笑)


まっど素人の安直な思いつき考えですが、ちょっと自分が普段頭の中にある不安を書いてみただけでした。





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