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金閣寺 [雑感]

京都の金閣寺、正式名、鹿苑寺は、おそらく京都観光でもっとも有名な観光スポットであろう。


自分も2016年の夏、秋の京都ツアーでは、訪問し、その美しさに感動した。同時に、この京都の定番観光スポットというのは、もう外国人によるインバウンド需要のメッカであることも実感したものである。


その2016年秋の紅葉シーズンの自分が撮影した金閣寺である。


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特にこの部分の建築を舎利殿(金閣)という。
創建者は、室町幕府三代将軍足利義満である。


舎利殿は室町時代前期の北山文化を代表する建築であったが、1950年(昭和25年)に放火により焼失し、1955年(昭和30年)に再建された。1994年(平成6年)にユネスコの世界遺産(文化遺産)「古都京都の文化財」の構成資産に登録されている。


そうである。ご存じのようにこの舎利殿(金閣)の部分は、1950年(昭和25年)7月2日未明に、放火されて焼失しているのである。


これはじつに衝撃的なニュースであった。


鎮火後行われた現場検証では、普段火の気がないこと、寝具が付近に置かれていたことから、不審火の疑いがあるとして同寺の関係者を取り調べた。その結果、同寺子弟の見習い僧侶であり大谷大学学生の林承賢(本名・林養賢、京都府舞鶴市出身、1929年3月19日生まれ)が行方不明であることが判明し捜索が行われたが、夕方になり寺の裏にある左大文字山の山中で薬物のカルモチンを飲み切腹してうずくまっていたところを発見され、放火の容疑で逮捕した。なお、林は救命処置により一命を取り留めている。


新聞記者・福田定一こと後の作家・司馬遼太郎は、この事件の取材にいち早く駆けつけた。


気になる動機だが、


逮捕当初の取調べによる供述では、動機として「世間を騒がせたかった」や「社会への復讐のため」などとしていた。しかし実際には自身が病弱であること、重度の吃音症であること、実家の母から過大な期待を寄せられていることのほか、同寺が観光客の参観料で運営されており僧侶よりも事務方が幅を利かせていると見ていたこともあり、厭世感情からくる複雑な感情が入り乱れていたとされる。


そのため、この複雑な感情を解き明かすべく多くの作家により文学作品が創作された。一例として、三島由紀夫は「自分の吃音や不幸な生い立ちに対して金閣における美の憧れと反感を抱いて放火した」と分析したほか、水上勉は「寺のあり方、仏教のあり方に対する矛盾により美の象徴である金閣を放火した」と分析した。
 


1950年12月28日、犯人の林は京都地裁から懲役7年を言い渡されたのち服役したが、服役中に結核と統合失調症が進行し、加古川刑務所から京都府立洛南病院に身柄を移され入院、1956年(昭和31年)3月7日に26歳で病死した。



金閣を放火したこの事件を小説家したもので最も有名なのは、三島由紀夫の「金閣寺」。


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金閣寺 (新潮文庫)   (日本語) 文庫 – 2020/10/28 
三島 由紀夫 (著)



三島由紀夫の小説、いわゆるミシマ文学を一度読んでみたいとずっと思っていた。


自分は文学・小説の世界とは縁遠い人生を歩んできたので、お恥ずかしながら三島由紀夫の小説を読んだことがなかったのである。


修辞に富んだ絢爛豪華で詩的な文体、古典劇を基調にした人工性・構築性にあふれる唯美的な作風。純文学の象徴的な存在で、その文体は難解で、初心者には読みずらいという評を自分は信じていた。


自分には、かなり敷居が高いかなと思ってきたのだが、どうしても「金閣寺」は読んでみたくて、今回思い切って三島小説に挑戦してみたのである。


「金閣寺」は、三島の最も成功した代表作というだけでなく、近代日本文学を代表する傑作の一つと見なされ、海外でも評価が高い作品である。


そんなこともあり、三島文学を読むなら、まず「金閣寺」を読みたい、というのも動機のひとつであった。三島由紀夫「金閣寺」は、予想を超えて、自分でもよく理解できたし、全然難解ではなかった。


犯人は溝口という名前で設定され、その放火に至るまでの心理描写など、かなりスリリングに読ませていただいた。幼いころ、父親から「金閣ほどこの世で美しいものはない」と教えられ、その後「金閣は燃やさねばならぬ」と決意するに至るまで。


三島の放火動機の推理は、「美に対する憧れと反感」。それと自分の吃音と不幸な生い立ちを巧妙に絡めさせて物語を創り上げていた。


金閣寺が放火され焼失したのは1950年7月。史料を基に金箔を貼って復元、再興されたのが1955年10月。そして三島が「新潮」で「金閣寺」の連載を開始したのが、明けて1956年1月。このタイミング。まさに三島が「金閣寺」を書く時期は、この時期にしかなかったのだろう。第十章からなり、連載は1章づつ、毎日同じ文量だった。


三島は1955年11月に京都に赴いたが、金閣寺の直接取材や面談は断られたため、同じ臨済宗異派の妙心寺に泊まり、若い修行僧の生活を調べた。金閣寺周辺取材について三島は、〈それこそ舐めるやうにスケッチして歩いた〉と語り、南禅寺、大谷大学、舞鶴近郊の成生岬、由良川河口も丹念に文章スケッチされ、五番町などは実際に遊廓の一軒に上がり、二階の部屋の内部の様子や、中庭に干された洗濯物までも詳細に記述されている。


さらに、どうやって調査したのか、直接取材を断られたにもかかわらず、金閣寺内の間取りや畳数を記した室内図や作業場内部の図まで克明に描かれている。


そうなのである!


この金閣寺内の間取りが小説で実際、犯人溝口が放火に至るときの描写として、かなり刻銘に記載されていて、驚きなのである。これどうやって調べたのかな?と思わず思ってしまうのである。


小説「金閣寺」は、やはり一個の文学作品であるから、当然、事件の真実とは違いますね。作中の人物はもとより、〈私〉の行動などは事実とはかなり異なるようである。


一例として、終結部分で、〈私〉は生きようとして小刀とカルモチン(催眠剤)を投げ捨てているが、林養賢は、山中でカルモチンを飲んだ上、小刀で切腹した(未遂に終わる)。。。とか。


そこはどうしてもひとつの文学作品として、完成度を上げていかないといけないところであるから、事実のままでは劇場性に足りず、どうしても脚色が必要ですね。


そして、自分がなによりも、事件の真実として違う、脚色を施している、と読んだときに思ったところは、犯人・溝口、すなわち「私」が、「焼く」のは復元後の「今」存在する金ピカの金閣寺であり、つまり未来の金閣である、というところである。1950年の煤けた金閣ではないのだ。


物語では、「金閣ほどこの世で美しいものはない」、「金閣を焼かねばならぬ」と至るところに、つねに現世での至上の最高美を誇る象徴として金閣が表現されている箇所が随所に見られるからである。


三島が「金閣寺」の小説を書き始めたのは、金ピカのいまの金閣寺が復元された1955年の翌年からの1956年から連載をスタートしている点だ。


つまり小説のドラマの脚色として、「最高の美しさを誇る金閣を燃やす」というところを強調することで、その精神異常性のきわどさを表現したかったのではないだろうか?


そのほうがより衝撃でドラマティックになるのではないか?と考えたのではないだろうか?


完璧な文学素人考えですが。(笑)


では焼失する前の金閣寺ってどんな感じだったのであろうか、ネットで拾い絵で集めてみた。


これが焼失前の金閣寺の真の姿である!!!

衝撃である!
全然金色ではなかった。(笑)


そりゃそうですよね。室町時代の足利義満の時代から、500年以上は軽く超えていますよね。当時は金ピカだったのかもしれませんが、それも剥げ落ち、こんな姿が真の姿だったのかも?


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そして放火され、焼失した後。


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金閣寺は、江戸時代や明治時代など何回も修繕されているようなので、室町時代の金閣寺はさらになにをかいわんやであろう。


この姿をみて、自分はかなりショックでした。(笑)


この三島由紀夫「金閣寺」を題材としたオペラも上演されています。


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2019年2月の東京二期会による「金閣寺」。
東京文化会館大ホール。


平成30年度文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
2019都民芸術フェスティバル 参加公演

原作:三島由紀夫
台本:クラウス・H・ヘンネベルク
作曲:黛 敏郎
演出:宮本亜門


これは見たかったです。
滅多に上演されない非常にレアな演目なので、これを逃したら、本当にまた
いつ見れるかわからないですね。

自分は縁がなく、行けませんでした。
これは本当に悔いが残りました。


主人公の犯人溝口は、吃音だとオペラにならないから、腕などの身体障害で代替えだったような記憶があります。


いつになるかわかりませんが、今度上演されるときは、ぜひ行かないといけないオペラですね。



 

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