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バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル [国内クラシックコンサート・レビュー]

バルバラ・フリットリは、自分が贔屓にしているソプラノ歌手の中でもとびぬけて大のお気に入りの歌手である。彼女の実演も幾度か体験しているが、やはり確固たる実力があって、そして華のある歌手だという揺るぎない事実を突き付けられた感じがしたものだった。


その中でも自分が大感動した2014年に東京オペラシティ・コンサートホールで開催されたソプラノ・リサイタルについてのコンサートレビューを紹介しておこう。


このレビューは、2014年6月4日の公演直後に、mixiのほうにアップした日記なのだけれど、ブログのほうにはまだ紹介していなかった。


バルバラ・フリットリは、自分のクラシック人生の中でも絶対避けては通れない歌手なので、やはりブログのほうにも掲載しておく必要がある。


しかし、この頃のコンサートレビューって、自分はしっかり書いていたんだなぁ。
いまはとてもじゃないけれど、こんなに書けないや。(笑)

いまのコロナ禍、彼女はいまどうしているのか・・・
また来日して彼女の生の声を聴いてみたいものである。(2020.12.11記)




バルバラ・フリットリといえば、イタリアの正統派ソプラノとして、ナンバーワンの実力と人気を誇っている。

イタリア生まれで、現代最高のソプラノのひとり。スカラ座のプリマとして活躍していた時期もあったし、特にヴェルディのソプラノを歌わせたら天下一品、他の追随を許さないだろう。


品格があり、色艶のある美しい声。テクニックも抜群。そして見事な声色コントロール。 なによりも存在感と華がある。


あの3.11の東日本大震災の後に、来日予定の歌手がどんどんキャンセルするなか、動じることなく来日を果たし、素晴らしいパフォーマンスと声を聴かせてくれた、そのプロ根性。


そして見事な声のパフォーマンス、そしてその外観の格好よさ、これに私はいっぺんに虜になってしまった。親日家でもあり、頻繁に日本にも来てくれる。やはりこういう真摯な態度が、必然とファンを魅了するというか、ファンを引き付ける要因にもなり、彼女の大きな魅力にもなっているような気がする。


今、ヴェルディのヒロインを誰で聴きたいかと言われたら、フリットリに指を折る、と思う。声の美しさに加えて、美しく端正なイタリア語の響き、格の高さ、整ったフォーム。本当に理想的である。


フリットリの素晴らしさは、歌手としての知性にもある、と思う。彼女の演奏に決して裏切られたことがないのは、自分の声を知り、合わないものは避けてきた賢明さが大きいと思うのだ。


そんな彼女のリサイタル。歌曲リートではなくて、管弦楽を携えての本格的なリサイタル。


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そして演目も、得意のモーツァルト、ヴェルディだけではなく、まさにこれでもか、というくらい豪華な多種多様な作曲家の曲を歌い上げ、その多才な面も魅せてくれた。


彼女の姿勢として、自分の声に合うものを基準に選んでいる、と述べたが、一見、自分の声質の可能性への挑戦とも言えるバラエティ豊かな今回の選曲だが、でもベースはやはり自分の相応というのをわきまえているのだ。


ドレスは前半は、下地にブラウンの生地を着て、その上に薄い黄色のドレスを羽織る感じ。そして後半は、黒のロングドレス......素敵。


すごい大柄で、体格も凄くて、圧倒されるくらい存在感がある。バックにオケと指揮者がいる訳だが、その前に彼女が立つと、決して負けないというか、彼女だけがすごく映えて見える、というか、とにかく周りを鎮圧するともいうべき圧倒的な存在感なのだ。


最初の曲の歌いだしのときは、意外に声の通りが悪く、よく聴こえなくて、意外と声量がないな、とも思ったが、それはエンジンがかかっていないだけであった。曲が進んでいって、みるみる内に、その圧倒される声のパフォーマンスがそのホール全体に響き渡り、聴衆を制圧する感じで、本当に圧巻だった。


彼女の声質は、色艶があって透明感のある声質と感じる、強唱のときにも耳にキツく感じることなく、まさに青天井の圧倒的な歌唱力で、弱・中のフレーズからのつながりもすごい滑らかで抜群のうまさを感じる。そして、なによりもその美しい容姿と、その表現力は他のソプラノ歌手では追随を許さないところ、と改めて思ったのである。


いま飛ぶ鳥の勢いのネトレプコでも、まったく足元に及ばない存在感というか、いわゆる”正統派の本物”の質の高さというのが感じ取れる。


やっぱりフリットリといえば、暗譜だろう。


前半のときは譜面台を前において歌う訳だが、まぁそれなりに素晴しいパフォーマンスであるが、後半になって、これが彼女の18番であるモーツァルトやヴェルディの曲になると、おもむろに、譜面台を横に外して、暗譜で歌い始めるのだ。


そうすると、どうだろう!


しなやかな手振りなど、じつに体全体を使って情感たっぷりに歌うその姿は、まさに迫真の表現力ともいうべきもので、それにその澄んだ美しい歌声が加わり、まさに最高に絵になるソプラノ歌手となるのだ。


彼女の手の振りを見るとわかるのだが、すごい流線形というか、ものすごい滑らかで、あのしなやかな所作は、彼女の生来の持味なのだと思う。


この暗譜で歌うときの彼女は、譜面台がある場合とでは雲泥の差があり、やはり彼女の本質は、演劇をともなうオペラ歌手なのだろうなぁ、ということを再確認した。


もう最後のアンコールの3曲なんて、もう絶賛、最高潮の状態で、会場も興奮のるつぼと化した。


特に今回のちょっとしたサプライズとしては、フランス歌曲やフランス・オペラを取り上げたところだった。ベルリオーズの「夏の夜」ではフリットリの声に合った、とてもチャーミングな歌曲だと思ったし、またデュパルクの珠玉のフランス歌曲でも、本当に魅力的な歌唱だった。フランス・オペラではマスネの「マノン」からアリアもフリットリの違った魅力を感じ取れた。


じつは彼女は、これまでに「ホフマン物語」のアントニアや「カルメン」のミカエラなどを歌って、フランス・オペラにも精通しており、そんなところにも今回の彼女のチャレンジがあったのだと思う。


またマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲や、マスネのタイスの瞑想曲など、彼女なしのオケの演奏だけの曲もあり、これまた名曲なので、じつに旋律が美しく、うっとりさせられる。


こういったわかりやすい初心者向けの名曲をちりばめたりして、1本調子にならないような工夫がされており、コンサートの完成度を高めていたと思う。


カーテンコールのときや、アンコールのときの彼女のしぐさは、すごくお茶目で、何回も何回も会場の笑いを一斉に誘っていた。


じつにチャーミングで可愛らしい女性だ。


以前から思っていたことなのだが、自分はオペラを観るより、こういうリサイタルのほうが手軽に好きな歌手の声を堪能できるから好きだ。


オペラは、予習が大変だし、観劇にものすごい体力がいる。1番の理由は、好きな歌手が衣装を着て化けていることなのだ。リサイタルのほうが現代風の衣装で、素のままの歌手の素顔、姿が楽しめるから、身近に感じていい。


今回の彼女のそんな素の姿を観れて、本当に感激であった。


やはり自分にとって永遠のディーヴァ、麗しきの君であることを再認識できたし、その美声と容貌、そして卓越したその表現力は、自分は永遠に追い続けるだろう、と確信した幸せな一夜であった。


こちらが私が撮影したカーテンコール。


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こちらが、FBから拝借してきた日本舞台芸術振興会のページの写真。
さすがプロです!


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バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル
2014.6.4(水) 19:00~ 東京オペラシティ コンサートホール

ソプラノ:バルバラ・フリットリ
指揮:アレッサンドロ・ヴィティエッロ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


曲目


第1部
ドニゼッティ:歌劇『ラ・ファヴォリータ』より序曲
デュパルク:「旅へのいざない」
デュパルク:「悲しき歌」
ベルリオーズ:歌曲集「夏の夜」より第1曲「ヴィラネル」
ベルリオーズ:歌曲集「夏の夜」より第6曲「知られざる島」
マスカーニ:
歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
トスティ:アマランタの四つの歌


第2部
モーツァルト:歌劇『皇帝ティートの慈悲』より
“おおヴィテリア、今こそ~今はもう美しい花のかすがいを”
モーツァルト:歌劇『ポントの王ミトリダーテ』より
“恩知らずの運命の厳しさが”
マスネ:タイスの瞑想曲
マスネ:歌劇『マノン』より”さよなら、小さなテーブルよ”
ヴェルディ:歌劇『アイーダ』より”勝ちて帰れ”
プッチーニ:歌劇『マノン・レスコー』より間奏曲
プッチーニ:歌劇『トスカ』より”歌に生き、恋に生き”


~アンコール
・チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より「哀れな花よ」、「私は創造の卑しい僕」
・マスカーニ:歌劇「友人フリッツ」より「この僅かな花を」








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