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ヤノフスキのベートーヴェン観 [ディスク・レビュー]

もともと、この1月10日にリリースされたばかりのヤノフスキ&WDR響によるベートーヴェン交響曲全集のレビューをおこなおうとして日記にする予定で、書いていて思わずヤノフスキ全般のことに広がってしまい、仕方がないので日記をふたつに分けることにした(笑)というのが真相である。



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ベートーヴェン交響曲全集 
マレク・ヤノフスキ&ケルンWDR交響楽団(5CD)



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ご覧のようにレーベルはPENTATONEである。ちょっと不満なのは、ふつうのPCM 2ch ステレオなのである。しかも、先売された第5番、第6番はSACDだというのに、全集のCD-BOXになった途端、CD全集となってしまった。


これはあまりに残念だよね。


ヤノフスキでPENTATONEとこれば、絶対にSACD5.0サラウンドだ。いままでヤノフスキの全集といえば、ベルリンフィルハーモニーでのワーグナー全集BOX、ジュネーブ・ヴィクトリアホールでのスイスロマンドとのブルックナー全集BOX、いずれも看板のSACD5.0サラウンドでの全集である。


しかもベートーヴェンイヤー250周年を祝してのアニバーサリーイヤーでのリリースなら尚更、看板のSACDサラウンドでリリースするべきではなかったか?


いろいろ推測したりする。このコロナ禍、メジャーレーベルでも苦しい経営を余儀なくされている昨今、マイナーレーベルは、さらにその経営難の厳しさを増すであろう。


SACDでリリースするのはコストがかかりますからね。


そういうコスト面からの理由であるならば、事情はよくわかるにしろ、でもやはり悲しい。クラシック界の王道中の王道であるベートーヴェン交響曲全集をPENTATONEからリリースするなら、ぜひSACD5.0サラウンドでやり直してほしいものだ。


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当録音は2018年10月から2019年11月にかけて、当団の本拠地ケルン・フィルハーモニーにて収録された。ヤノフスキのベートーヴェンといえばNHK交響楽団とで、第3番「英雄」そして第九演奏会を披露して話題となった。


また、2019年11月のケルンWDR交響楽団とも来日公演をやっており、第6番「田園」を披露した。その圧倒的な統率力とパワフルなエネルギーの中にも繊細な響きを作り上げる巨匠ならではの演奏を聴かせてくれた。


その当時は、ヤノフスキと良好な関係にあった日本クラシック音楽界。


いつでも実現できるような気がして、特に足を運ばなかった。東京・春・音楽祭で圧倒的なエンターテイメントを繰り広げてくれるから、という本筋が待ち受けているという自分の想いがあったことも確かである。でもまさか、まさかのコロナ禍な世の中になってしまい、もうこんなに遠い世界になってしまうとは・・・


本当に行かなかったことをいますごい後悔しています。

マエストロももう80歳を超える高齢だし、いつ再会できるか・・・


東京春祭のパルジファルも本当に大期待だけれど、果たしてきちんと来日できるのか・・・など、不安いっぱいである。


そんな中で届いたヤノフスキの渾身のベートーヴェン交響曲全集。

しっかりと楽しませていただいた。


録音は、2chステレオとしても十分な高音質なサウンドで自分は満足することができた。オーケストラとしての基本である厚みのある音、音像の明晰さ、音場の広大な感じもよく表現されていて、とてもいいステレオ録音である。


ヤノフスキのベートーヴェンは、前日記でも書いたとおりの内容を地で行くヤノフスキの音楽の作り方そのものであり、引き締まった音で、明晰で快速テンポでサクサクと進む感じで切れ味鋭いけれど、男らしい雄大なベートーヴェンとも言えるような出来具合にもなっていた。


非常に引き締まっていて、切れ味鋭いですよね。
ヤノフスキ・テンポでヤノフスキの音楽だなぁと思いました。


ここは鳴らし処と思ったところは、極端なまでにダイナミックレンジを深く、その全レベル幅を使い切った録音の仕方をする。特に意表をつかれ、こういう音の収め方、表現は普通はしないよな、と思ったところに第九でティンパニーを思いっきり前へ前へ出すような大音量で録っているところだ。


こういう第九はあまり聴いたことがない。そしてまさに疾風のごとく超高速で駆け抜ける第4楽章のエンディング。いやぁヤノフスキ先生もなかなか個性的である。N響との第九公演ではその解釈に賛否両論で物議を醸した、というようなことをSNSで読んでいたが、なるほど、このことか、と思ったこともある。


自分は第1番から第9番まで、すべて自分の好みで大好きな演奏であった。非常に男らしく雄大でありながら、切れ味鋭い、そんなベートーヴェンである。


王道の演奏だと思う。


1,2番もいいし、特に2番は大好きですね。3番は最高、4番もいい。5番は一番大好きで最高。6番、のだめ7番もいい。8番は1番小さな小品だけれど、じつはこれはベートーヴェンのあまり公にできない女性との恋について書かれた作品で、最近自分のマイブームなのである。いいな~とほのぼの感じ入ってしまう。そして第九はなにをや況やである。


みんな好きだったけれど、第3番「英雄」が特に素晴らしい。


N響との日本公演でも「英雄」を取り上げており、マエストロにとって第3番「英雄」はとても大切な曲なのである。


「エロイカ」は、「19世紀の「春の祭典」」だと私は考えています。ストラヴィンスキーの「春の祭典」が20世紀初頭の爆弾だとしたら、「エロイカ」は19世紀の交響曲の爆弾です。交響曲の歴史でこれほどの飛躍を遂げた曲はありません。作品の長さだけでなく、特に第1楽章の展開部など、対立する主題が弁証法的に高まっていく様は驚くべきものがあります。それから、第2楽章の葬送行進曲におけるとてつもない表現。まさに19世紀初頭から未来を指し示した作品なのです。


とにかくヤノフスキ先生らしい、非常に切れ味鋭い男らしいベートーヴェンだったので、やっぱりSACD5.0サラウンドで出してほしかったな~と思うところです。


ベートーヴェンの交響曲全集という王道中の王道を、SACD5.0サラウンドで収録している録音というのは、あまりないのではないでしょうか?


それをPENTATONEがやらなくてどうする?

という感じなのだが。。。(笑)





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