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サビーヌ・ドゥヴィエル [オペラ歌手]

サビーヌ・ドゥヴィエルはフランスの歌手である。リリックソプラノでコロラトゥーラ。同じフランス人歌手で大歌手のナタリー・デセイの後継者とも言われている。


デセイの大ファンである自分にとって、どうにも気になる存在であった。


デビューは2011年、CDデビューは2013年のようだが、自分は2015年のモーツァルト・アルバムで初めて体験した。そのときの第一印象は、歌がじつにうまい歌手、とても新人とは思えない、その抜群の歌唱力に驚いた。


でも、そこで感嘆の日記を書いてしまうのは、ちょっと判断が早すぎるのではないか、ととどまった。この先、どのように伸びていくか、その過程をもう少し眺めてからでも遅くはないと思った。


今回、フランス歌曲集の新譜が出て、いままで合計3枚のアルバムを聴いてきたが、もうこれは本物だと確信した。


各アルバムが出るたびに日記ではなく、つぶやき程度で感想を書いてきたが、3枚目の今回の新譜を聴いて、改めて、サビーヌ・ドゥヴィエルについて日記を書いてもいいと思ったのだ。


今回の新譜は、本当に素晴らしかったです!(あとで。)


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チェロと音楽学を学んだ後、声楽に転向し、2011年にパリ高等音楽院を首席で卒業したばかりにもかかわらず、在学中から数々のオペラの舞台に出演して話題に。レザール・フロリサン、マルク・ミンコフスキなどと共演している。古楽から現代音楽までをレパートリーとしているが、キャリア初期は、バッハからラモーまで、バロック音楽に傾倒。


その後、フランス国立管弦楽団とパリ管弦楽団とのラヴェルの「子供と魔法」に出演し、より幅広い聴衆の目にとまることとなった。2011-12年シーズンには、ベルリーニの「夢遊病の女清」のアミーナ役を歌い、ベル・カント作品デビューを果たす。


パリ・オペラ座でのモーツァルトの「魔笛」の夜の女王役や、ベルギーのモネ劇場でのグルック「オルフェオとエウリディーチェ」でも主役をつとめた。2013-14年シーズンには、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」やヴェルディ「ファルスタッフ」のナンネッタを歌い、英国グラインドボーン音楽祭ではラヴェルの「子供と魔法」に出演。


「言葉の重さを重要視し、洗練された敏感な歌には偉大な哀愁の風が吹いている」と高い評価を得る。2013年、専属契約を交わしたエラート・レーベルから発売され、フランス・デビュー・アルバムとなった「ラモー:壮大なる愛の劇場」で、フランスのグラミー賞といわれるヴィクトワール・ドゥ・ラ・ムジーク、およびディアパゾン・ドール賞を受賞。着実にキャリアを積んでいる、期待の大型新人ソプラノ歌手。(WARNER MUSIC JAPAN HPからの引用)



とにかく歌がうまい!

とても新人と思えない完成度で驚くのである。


これは歌手に限らないと思うが、ふつう長い演奏家人生の中で、大きく変わる変化のとき、いわゆる”化ける”ときってあると思うのだが、ドゥヴィエルの場合、はじめからこのように完成度が高かったら、この先どう変わっていくんだろう?化けるときってあるのだろうか、というように思ってしまうのである。


伸びしろがある、という目で期待点を込めて、称賛するというのが新人に対する評価感のように思うのだが、この完成度なら、なかなかそんな感じでもなさそう。


ソプラノなのだが、声質はキツイ感じでなく、柔らかい声質。間違いなくソプラノの声音域なのだが、どこかメゾの音域を聴いているような定位感の良さ、安定感がある。声の線が太いんですね。


オペラ歌手にしては、体格が華奢で痩せているので、声量大丈夫なのかな?とも当初思ったのだが、オーディオで聴く分には全然十分である。


これは一般評価軸ではなく、あくまでノンノン流独自評価軸なのだが、歌手、歌もので、自分の心に響いてくる歌手は、


①ホール空間において、ある一点で定位する定位感の良さ。
②音楽的なフレーズ感。


いい歌手ってこの2つを必ず持っているような気がする。


特に②は、声質、声量ともほんとうに素晴らしいいい声しているのに、その歌を聴いていると、自分に響いてこないときが結構ある。そこにはその歌に対するフレーズの収め方というか、フレーズ感がないからだと思うのだ。


それはその歌に対する勉強度合いなど、より理解度がないと難しいものなのかもしれない。やっぱりその歌に対する経験なのでしょう。


本当に、その歌に対して、自分のものになるときって、もう何回もその修羅場をくぐってこないと、修羅場をくぐってきてこそ、本当の自分の歌になるのではないでしょうか?


シャンソン歌手のバルバラが、あのように一見早口でたたみ掛けるように話しているだけなのに、その歌になぜか心打つ、カッコいいと思ってしまうのは、そこに音楽的なフレーズ感があるからなのだと思っています。


ドゥヴィエルについては、この2つの要素がかなり備わっているように思えます。①は実際ホールで実演に接していないので、断言はできませんが、きっと間違いないと思います。②は確実に備わっていると思いますね。


とにかく聴いていて、歌がうまいなぁと思うこと、感心すること毎回でしたが、3枚のアルバムを聴いてきて、ここに本物だと断言してもいいと思いました。音楽院在学中からオペラ公演に引っ張りだこで出演していた、という事実もよく理解できます。


レパートリーはやはりフランス・オペラやフランス歌曲が多いようですが、フランスの歌の世界はとても新鮮ですね。


世界のオペラ界は、やはりドイツ・イタリア中心に回っていると思うので、フランス・オペラやフランス歌曲は、なかなか耳にしたことがない曲が多く、とても新鮮です。


彼女のアルバム、3枚聴いてとても新しい世界に感じます。

ぜひ日本に呼んでほしいと思います。

オペラというよりは、リサイタルでやってほしいですね。


リサイタルなら、もう誰にも遠慮なく、フランス・オペラ・アリアとかフランス歌曲とか、ガンガンやれると思うので。


彼女の世界が満喫できると思います。




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シャンソン・ダムール~フランス歌曲集 
サビーヌ・ドゥヴィエル、アレクサンドル・タロー



今回リリースされた新譜。もうジャケットが素晴らしすぎるでしょう。(笑)


ドゥヴィエルとタローは、フォーレ、プーランク、ラヴェル、ドビュッシーと、この時代を代表する作曲家の歌曲の中から「愛」「戦い」「死」にまつわる曲を選び、周到にプログラムを創り上げています。アルバム・タイトルにもなったフォーレの「シャンソン・ダムール=愛の歌」やプーランクの「愛の小径」などの良く耳にする愛らしい歌をはじめ、ラヴェルの「5つのギリシャ民謡」、ドビュッシーの「忘れられた小唄」などの連作歌曲
といった、今回2人がどうしても採り上げたかったという曲集など、多彩な作品が並ぶこの1枚には、ドゥヴィエルとタローの「今こそ表現したい思い」が詰まっており、聴き手は聴いているだけで様々な体験をすることができるでしょう。


ドゥヴィエルの柔らかくニュアンスに富んだ声は、フランス歌曲の持つ繊細な雰囲気を余すことなく表現するだけではなく、ここにタローのピアノがぴったりと寄り添い、ときには優しく、時には自由に旋律を歌い上げます。


「幅広いレパートリーというだけでなく、多様性と驚きの両方を目指して、個々の曲を選びました。ドビュッシーとラヴェルは私にとって必需品であり、フォーレはスピリチュアルな父として自然な選択であり、プーランクはよりスパイシーでスパイキーなものを提供しています。タローのピアノが生み出す音色の意味は、会話、憂鬱、反抗など様々。このアルバムで私たちは詩を味わい、フランスの歌には無数の色があり、それらの色を引き出すことが私たちの使命でした。」と、ドゥヴィエルは語っています。(HMVからの引用)




ドゥヴィエルはEratoレーベル。Eratoは、ディアナ・ダムラウはじめ、オペラ歌手が多く在籍しているレーベルですね。


いいレーベルです。いまはWARNER MUSIC傘下でしょうか。


今回の新譜あまりにジャケットが素晴らしいので、アナログLPも買っておきました。(笑)


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自分のアナログコレクションは微々たるものですが、こうやって新譜で気に入ったものがあったら、アナログも買っておくというスタンスでしょうか。


本当に美しい珠玉の曲ばかりが集まったアルバムで、心洗われるような美しさで泣けますよ。フォーレ、プーランク、ラヴェル、ドビュッシー・・・フランスを代表する大作曲家たちの残した歌曲。


本当に新鮮な驚きです。

録音も素晴らしいです!




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ウェーバー姉妹のための歌曲集、夜の女王のアリア、他 
ドゥヴィエル、ピション&アンサンブル・ピグマリオン



ドゥヴィエルを初めて聴いたアルバムがこれでした。


このアルバムは、モーツァルトと恋愛関係にあったウェーバー姉妹にちなんだ歌曲を中心としたプログラム。


これも素晴らしいです。初めて聴いたときに、その歌のうまさに、とても新人とは思えないなと舌を巻きました。


このアルバムではモーツァルトの魔笛の夜の女王のアリアも披露していますよ。コロラトゥーラもできるところを見せています。もうちょっとコロコロ感があれば、いいな、とも思いましたが、これだけできれば全然素晴らしいです。


ぜひお勧めの一枚です。



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ミラージュ~フランス・オペラ・アリアと歌曲集 
サビーヌ・ドゥヴィエル、フランソワ=グザヴィエ・ロト&レ・シエクル



現在の日本において、フランスのオペラの普及度は、イタリア、ドイツものに比べ、一歩遅きに失した感があります。今回のドゥヴィエルの新譜に収録されているアリアの数々も、全曲を耳にすることができるのはこの中の何曲にあたるのでしょうか? そんな思いに駆られるのは、あまりにもドゥヴィエルの歌が素晴らしいからに他なりません。(HMVからの引用)


まさにそう思います。


これも本当に素晴らしい1枚で、普段耳にすることの少ないフランスの歌の世界を堪能できる貴重な1枚だと思います。このアルバムがリリースされたとき、本当に何回リピートして聴いたことか、わからないくらいよく聴き込みました。


これもぜひお勧めの1枚です。



なんか、いまにも彼女が日本にやってくる世界もそう遠くはないような感じもしてしまいますが、その前にコロナなんとかしないとね。こういう投稿すると、いつも一気に夢の世界を突っ走るのですが、すぐその後に現実の世界に引き戻されて、あ~と溜息の毎日なのでした。











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エディット・マティスの近況 [オペラ歌手]

スイスの歌姫である我が永遠のディーヴァ、エディット・マティスの初のベスト作品集がDGからCD7枚組として発売される。来年の2月11日に80歳の誕生日を迎え、それに合わせて記念発売だ。

これは嬉しいこと極まりない。
久々の自分にとってのビッグニュース!

マティスは、1960~1990年代に活躍したソプラノで、ドイツ圏のソプラノとしてはトップクラスの美貌、それもどちらかといえば愛嬌のあるルックスが大きな魅力で、初来日時の人気ぶりは今なお語り草になっている。


「とにかくキュートで可愛い!」というのが当時のマティスの大きなインパクト。


若いときはもちろんのこと、歳を重ねていってもその可愛らしさは、相応で兼ね備えているから、まさに理想的な歳のとり方かも?

彼女の声質もとても清澄なところに特徴があって、歌い方も新鮮で、新風を巻き込んだと言って過言ではない。 

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1969年当時のエディット・マティス

もちろん自分はリアルタイム世代を知らないので、後世に知ってずっと憧れていた、そんなディーヴァだった。


1938年にルツェルンに生まれ、ルツェルンの音楽大学とチューリッヒの音楽大学で学び、ドイツ語圏を代表するソプラノ。

在学中の1956年にモーツァルトの歌劇「魔笛」でデビュー。レパートリーは、やはりモーツァルトが中心で、ほとんどの役を歌っている。その他にもバッハを始め宗教曲を得意としている。


マティスのずばり得意とした分野は、ドイツ歌曲や宗教音楽、モーツァルトを中心としたドイツ・オペラの世界。

そこには、イタリア・オペラのプッチーニやヴェルディといった華やかさ、ワーグナーのような力強さのような持ち味はないかもしれない。

そういった点で、メジャーで派手というイメージの歌手ではない。

確かに、いまどきのオペラ歌手のような圧倒的な声量&声色コントロールで、観客を魅せて圧倒させる、というようなこれ見よがしのパフォーマンスはないかもしれない。(たとえば彼女自身、コロラトゥーラは歌えないと言っている。)

でもマティスには、その当時の古き良き時代の奥ゆかしさの魅力がありますね。なんでもウマければいい、というものではないと思います。その当時の時代ならではの品格があると思う。

声に硬質な芯があり、明暗をはっきりさせた楷書風の歌い方なので、ドイツ語のかっちりした響きとぴったり合致する印象があります。テンポを過剰に動かしたり、これ見よがしに技巧をひけらかしたりすることは皆無で、作品そのものを誠実に再現する。


そして40代のマティスはオペラを卒業し、ドイツ・リート(歌曲)をよく歌うようになる。

50歳を過ぎてから歌唱法が変わり、声も表情も明るくなっていく。齢を重ねて声が衰えるどころか、ますます美しくなっているのである。

リートを歌うことの重要性については、マティスは、かつてインタビューでこのようなことを言っていた。

「それと重要なことは、私がリートやオラトリオを非常にたくさん歌ってきたことです。オペラだけの歌手は安定した声のフォルムを維持することが難しいのですが、コンサートで歌うことによって矯正できるのが、大きなメリットです。リートでは、いかに大声で歌いまくるかというのではなく、声楽的にも、解釈においても芸術的な洗練ということをつねに意識しないといけないからです。リートはピアノ伴奏だけではなく、オーケストラ伴奏の場合でも事情は同じです。オラトリオ、カンタータもきちんとしたテクニックの詰めが要求されますからね。」

自分は、この晩年のリートを歌っていた頃のマティスの声が最高に輝いていて、ますます彼女の魅力を大きなものにしていたように思う。

心に浸み入ってくるような深い味わいのシューマンや、ブラームスといった作曲家の歌を聞かせてくれる、そんなリートの奥の深い世界を表現できる、そんな歌手だったと思います。

インタビューを受けるマティスは、語彙が豊富で、明晰な表現、豊かな経験に基づいた話の芯がしっかりしている感じで非常に聡明な女性のような印象を受けます。



以前にも日記にしたかもしれないが、自分にとって、マティスを永遠のアイドルとならしめたものは、シューマンの「女の愛と生涯」。 

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いまは廃盤で、ほとんど中古市場でも目にすることのない大変なプレミア盤。
この「女の愛と生涯」で、これは!という感じで自分の感性を満たしてくれる決定盤はなかなかお目にかかったことがなく、ゴローさんの日記でマティスの存在を知った。

ただこの盤は、全集の中の1枚として組み込まれていて、単売では売られていないものだった。
これを入手するのが大変だった。中古で探し回った。世界のアマゾンや中古ディスク店など。

そうしてようやく見つけた!米アマゾンにあったし、御茶ノ水のディスクユニオンの棚で偶然見つけたときは、思わず手が震えた。

恐る恐るトレイに乗せて出てきた声は、それはそれは、心に浸み入ってくるような深い味わいの妖艶な声で、この曲にかける自分の長年の想いを遂げた気分になったし、十分に満足させてくれた。

いまも宝物である。

それからマティスのディスクを買い漁ろうと、いろいろ調べてみるのだが、これが不思議なことに、じつはほとんどあまり存在しないのだ。いままでの劇場出演の経歴の多さから比較すると、録音が圧倒的に少ないと思う。

ほとんどが廃盤という形で、ほとんど手に入らなかったものが多く残念な想いをしていた。



エディット・マティスは、リートの録音があまり多くなく、一般的にはオペラのスブレット役や宗教曲の歌手というイメージがある。でも彼女はアーメリングやアーリーン・オージェ、ルチア・ポップ、バーバラ・ボニーなどと並び、歌曲演奏の叙情的な側面の魅力を最も開花させたリート歌手とも言われているのだ。

正統派ドイツ・リートにおいて彼女の存在はとてつもなく大きい。

リート歌曲で残されている録音は、このシューマン&ブラームスの歌曲集のみ。(あとはモーツァルトの歌曲集があるかな?) 


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シューマン:歌曲集、ブラームス:歌曲集 
マティス、ワイス


https://goo.gl/tmF9jS

これがじつに最高!

録音当時50台後半とは思われるのだが、彼女の声の美しさはキープされていて、高音から低音まで表現にほとんど無理はない。マティスの魅力が存分に味わえる。



自分の最高の愛聴盤なのだ。このシューマン&ブラームスの歌曲集と、シューマンの「女の愛と生涯」を、NASに格納して、PCオーディオとして、流し再生してよく聴いている。


そうやってマティスのCDが欲しいなぁとずっと恋焦がれていたときに、このビッグニュース!

これは、まさに最高の自分へのプレゼント! 

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エディト・マティスの芸術(7CD)

https://goo.gl/tSvfmr


マティスの1960年代から1982年までの録音を網羅したもので、バッハのカンタータの抜粋と「マタイ受難曲」(カール・リヒター指揮)、「フィデリオ」「ばらの騎士」、有名なカール・ベームとのモーツァルト、カルロス・クライバーとの伝説の「魔弾の射手」録音、小澤征爾とのベルリオーズの「ファウストの劫罰」、ヘンツェの1965年のオペラ「若き貴族」で演じた役など、すべて網羅!

クリストフ・エッシェンバッハとのシューマンの歌曲の全曲録音も含まれているし、また、カール・エンゲルのピアノ伴奏によるヴォルフの「イタリア歌曲集」(抜粋)はCD初発売!


この収録曲のリストを見たら、長年マティスのCDが欲しかったのに、入手できなかったファンにとっては、涙が出て止まらないといったところだろうか。

もう最高のお宝集となること間違いなしだ。

入手したら、じっくり聴き込んで、改めてレビューの日記を書きたいと思っている。


マティスのプロフィールの書かれたサイトの画像を見るとどれもかわいい。
若い頃の写真もかわいいけど、年をとってもかわいいのだ。


マティスは、やっぱり「キュートで可愛い!」。



美しい歌声と恵まれた容姿。自分はもちろんリアルタイム世代を知らないので、こうやって後で振り返って調べて知るだけなのだけど、全盛期の頃に、そのキュートな愛くるしさで人気を博したことが、その写真やYouTubeの画像を見てもとてもよく理解できるのだ。


ちょっとその写真を、ネットからの拾い絵だけれど、オンパレードしてアップしてみよう。

来日した時のソプラノ・リサイタルかな?日本語の字幕が。

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マーラー4番のソリスト・バーンスタイン指揮ですね。
マティスはカラヤンともマラ4をやってます。このときカラヤンが指揮を間違えたことは有名な話です。

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マティスの18番のモーツァルト、フィガロの結婚ですね。
                                                       
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そして晩年ですね。CDのジャケットになってしまいますが、でも歳を重ねてもその上品さが滲み出てきます。
                                                       
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これは、また逆戻りで、1番若い写真ではないかな?
                                                       
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そんなマティスに大きな悩みがあって、歯並びが悪かったのだそうだ。(笑)
こればっかりはねぇ。彼女なりに大いに悩んでいたのであろう。
映像などで顔のアップが映ったりすると、前歯を極力見せないように歌っていたりしていたそうだ。(本当かどうか不明だが。(笑))

それでも50歳過ぎてから、歯の矯正をおこなったようにも思える。
上の画像が、40代の頃。下の画像が54歳のときだそうだ。
(ネットからの情報なので、確かではありません。あしからず。)
                                                       
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それでは、今度は動画のYou Tubeで!
なんか可愛くて美声でアイドルみたいです。

モーツァルトのフィガロの結婚

                                                      


                                                              

そしてバーンスタインのマーラー4番でのソリスト。   

                                                       


                                                               

魔弾の射手 ウエーバー

                                                        


                                                            

また得意の18番のモーツァルトで魔笛です。この演目でオペラ界デビューです。  

                                                       


                                                         

そして晩年でオペラからリートに軸足を移しての映像。R.シュトラウスの歌曲。1991年の映像です。 

                                                       


                                                      

                                                      

現在80歳になろうとしている。いまはどうされているのだろうか。。。?
あの可愛らしい容姿はどんな感じになっているのだろうか?

ネットでググってみると、2009年から2014年にかけて、日本には、公開のプライベートレッスンという形で未来の日本の歌手たちの歌のレッスンをしているニュースが散見された。

そこには、なんと2014年のマティスの近影が映っていた!
(「お耳ざわりですか? 伴奏者 石井里乃の回想さん」のブログから拝借させていただいております。歌手がご職業の方なんでしょうかね?)

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なんと!あの頃のキュートな若々しさは決して輝きを失っていなかった。
あの頃の面影は十分にうかがえた!


いろいろなレッスンでのマティスの教えをピックアップしてみる。

マティスが受講者たちによく言っていたのは、フレーズがどこに向かっているのかを意識して歌うようにということ。つまり、1つのフレーズの中ですべての言葉が同等に重要なわけではない、大切に歌う目的地を目指してアーチを描くように(マティスは"Bogen"という言葉をよく使っていた)歌いなさいというのだ。


「そこでブレスを入れてもいいけれど、本当は入れずに歌う方がもっといいのではないか」「私だったらこう歌うけれど、そうしなければならないということではなく、最終的にあなた自身の歌い方を見つけてください」とも言っていた。

歌手の基本的な弱点を修正すると共に、歌い方を強制するのではなく、こういう方法もありますよとヒントを与えるという穏やかで真摯なマティスの姿勢。

う~ん、ある到達点&頂きに達した人でないと、すんなり出てこない悟りのお言葉・・・素晴らしいのひとことです。


グルベローヴァも70歳で衰えたなどと散々に言われながらも、現役で頑張ってくれているんだから、マティスも80歳でサプライズでステージに立って歌ってくれないかしら?と思ったり。



さきほどの近影を伺うと、決してステージに立っても華は失われていないと強く確信しますよ、ホントに。



どんなに衰えてもファンは嬉しいもんなんです。





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エディタ・グルベローヴァ [オペラ歌手]

オペラに開眼したのが遅かったので、エディタ・グルベローヴァの全盛期はもちろんこと、彼女の生の声を聴いたことがなかった。

2012年のウィーン国立歌劇場の来日公演「アンナ・ボレーナ」を最後に日本での引退宣言をしてしまい、自分としては、今後は、ヨーロッパにこちらから聴きに行く、というスタンスでない限り、もう縁のない歌手になってしまったという悲しい想いだった。

自分の中で一生悔いの残る、なんとも言えない気持。

そのことが、逆にグルベローヴァに対する猛烈な憧憬の念を、さらにひき立てることになってしまい、より一層遠い夢の世界の人のように感じてしまった。

40年以上もオペラ界でトップを走り続け、現在69歳で、カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロス・クライバー、そしてリッカルド・ムーティなど蒼々たるメンバーとの共演を誇り、「コロラトゥーラの女王」とか、「ベルカントの女王」の異名をとり、その圧倒的な歌唱力は、まさに世界最高のソプラノ。

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彼女に対する想いと、そのディスコグラフィーはほとんど聴き込み完全制覇して、日記にしたのが2013年。そんなグルベローヴァがなんと今年、奇跡の来日公演をおこなうという。

オペラ、オペラ・アリア、そしてリート(歌曲)・リサイタルと、オペラ歌手として考えられるすべてのパターンを網羅した3公演で、さらに東京だけでなく、日本縦断。まさにグルベローヴァという歌手のすべてを日本の方々に知ってほしいという企画のようにも思えた。

このような粋な計らいをプランニングしてくれ、実現の域まで導いてくれた招聘プロモーター(今回3公演で別々のエージェンシーが担当のようだった。)には、 本当に感謝し尽せないほど感謝している。本当にありがとうございました。

彼女の声を一言で表現するなら、”クリスタル”という感じだろうか。

超高音域につけ抜けるその透明感は、まさに驚異的な美しさがある。そして彼女の代名詞である、一つの音節に対して、複数の音(装飾音)が充てられる形、高音域で自由自在にクレシェンド・デクレシェンドして、速いフレーズの中に、軽快に音階を上下するコロラトゥーラと呼ばれる歌唱法。

そしてアジリタ・・・軽快、機敏を意味するイタリア語で、オペラでは細かい音符で書かれた早いパッセージ(装飾音)のこと。

コロラトゥーラというのは、ドイツ系のテクニックで、アジリタというのは、イタリア系のテクニックという使い分けをされている考えの方もいらっしゃるようだが、自分はどちらも本質的には変わらないものと考えるし、グルベローヴァの唱法を例えるなら、この2つの表現が一番シックリくる。


オーディオで聴く限り、この人の声、このフレーズを聴くと、まさしく天からの授かりものという感がある。

なにせ、じかに聴いたことがないので、彼女に関する逸話がどんどん一人歩き、自分の中で神話化することもあった。

本番のコンサートの直前では、自分の声のコンディションを維持するために、娘との会話でも筆談を使う徹底したプロ意識。

また、声楽、つまりオペラなどの歌手の声は指向性がある。つまり音の伝わる方向の角度が狭くて、歌手の向いている方向の座席に座っている人たちと、その方向から外れている座席に座っている人では、その声の聴こえ方が違う。だからオペラものは、結構座席選びが重要。 でもグルベローヴァだけは例外で、この人の声はどこの席に座っていても同じに聴こえる、全方位の無指向性だという。まぁそれが可能なだけの歌唱力、声量な訳で、ますます彼女に対する憧憬の念が増していった。


今回の3公演は、以下のような布陣。

オペラ~ ノルマ(ベッリーニ)@Bunkamuraオーチャードホール
オペラ・アリア~オペラ名曲を歌う~2つの狂乱の場@東京オペラシティ
リート&オペラアリア・リサイタル@川口リリア・メインホール

オペラとオペラ・アリアでは、プラハ国立歌劇場を携えてのコンサートであった。

この3公演を体験して、感じたグルベローヴァの印象を統括的に述べてみる。

3公演を通じて感じたことは、彼女はすごいスロースターターだなぁ、ということ。(笑)

オペラ歌手や合唱団などの声もののコンサートは、自分が経験した中では80~90%の確率でこの定説は間違いなく当て嵌まる。ほとんどがそうだった。

最初のときは、喉が充分に暖まっていないこともあり、聴いている聴衆があれ?本当に大丈夫?と心配するほど、かなり不安定なものなのだが、中盤から終盤にかけて、エンジンがかかってきて、もう最高に感動するくらいの歌唱力で圧倒するエンディング。

特に、グルベローヴァはその傾向にあって、かなりのスロースターター。3公演ともそうだった。エンジンがかかりだすまで、結構時間がかかるという印象だった。もう御年70歳ということもあり、そういう部分もあるかな、と感じたし、なかなか全盛期のようにはいかないのだろうと思う。

オペラの「ノルマ」のときは、もう最初は絶不調の極みで、耳を疑った。
でも中盤から終盤にかけて、喉が暖まってくると、まさに感動の頂点とも思える様な熱唱ぶりで、前半と後半では別人のようだった。

生で聴いたグルベローヴァの声の印象は、いまどきの全盛期の歌手たちと比較すると、声の線が細くて、非常に繊細で、デリケートな声質だな、と感じた。圧倒的な声量でホールを圧するという馬力型のタイプの歌手ではなく、線の細い透き通るような美声で、でもツボに入った時の熱唱は、まさにホールを圧すると言ってもいいほどの聴衆への説得力があり、比較的緩急のある表現力をもった歌手だと感じた。

そして、印象的だったのは、選曲にもよるのかもしれないが、彼女の歌い方は、非常に難しい、テクのいる唱法だな、と感じたこと。なんかすごい歌うのが難しそうに感じるのだ。彼女の声が、いまいち不安定に感じるのも、その歌い方に起因していて、あの難しい声の回し方で、安定して歌うことって相当技術のいることなのでは?と思うのだ。

自分がいままでの聴いてきたオペラ歌手のソプラノは、もっと聴いていてイージーに歌っているように感じるし、安定感もある。でもグルベローヴァの歌い方は、声がデリケートな繊細な声質である上に、コロラトゥーラのような超絶技巧の唱法を伴って歌うので、本当にだれもが歌える訳ではない、普通のオペラ歌手では歌えない、コロラトゥーラ歌手だけが歌える技巧の難しい歌い方と感じてしまう。

だから余計不安定要素も目立ってしまう。。。そんな感じがするのだ。
そのような技巧的な歌い方をしながら、ツボに入った時の熱唱のアリアの部分では、まさにホールを圧するという感覚があるので、その相乗効果で聴衆はいっきに興奮のるつぼと化す。そんな感じの印象だった。彼女のコンサート全般を通して。


あと、もうひとつ驚異的だったのは、そのピッチ(音高)&キーの高さであろうか?

ピッチ&キーの高さが普通のオペラ歌手のソプラノより遥かに上域で、突き抜ける高音という感じがして、ちょっと自分がいままで聴いてきたオペラ歌手のソプラノとは異質な世界を感じた。コロラトゥーラの技法もさることながら、このような基本的な声域の高さが、ちょっと普通のオペラ歌手と違うので、いままで聴いたことのない脅威な声質だと感じた。

ちょっとこういうタイプの声質&歌い方をするソプラノ歌手は、聴いたことがないなぁという感じ。

オーディオなどのCDで聴いている分には、確かにすごい超絶技巧の歌い方であることはわかるのだけれど、でも実際生で聴いた感動は、その超絶技巧・表現力がより一層デフォルメされている、と思えるぐらい鮮烈に聴こえる。

臨場感、迫力、発声の張り出し感など、その一瞬の感動の大きさは、やはり この点、生演奏には絶対かなわないと思ったところでもあった。


もちろんいいところばかりではない。自分は全盛期の彼女を知らないので、いまとの比較はできないが、どうしても高域の部分は、苦しそうな歌い方をしていたし、歌っている最中も、つねに不安定な部分が見え隠れするのも、全盛期だったら、ばっちり安定していたんだろうな、という想いを抱きながら聴いていたことも確かだ。

でもこれが御年70歳の歌手のパフォーマンスと思えるだろうか?信じられない位の若々しさで溢れ出ていたし、引退なんてまだまだしないでほしいし、いまでも十二分の一流のパフォーマンスができていると思う。




なによりも、最高に自分が感動、印象に残ったのは、カーテンコールなどでの彼女のステージ上での立ち振る舞い。

その振る舞いそのもの、手の指先の表情に至るまで、じつに往年のスーパースターらしい貫禄があって、まさに優雅で、凛とした立居姿・立振舞いに、長年オペラ界で最前線を走ってきたスーパースターの経験の積み重ねが自分の意識なしに、そういう所作、振る舞いに自然と現れているものなのだと思えた。

自分は、この最後のカーテンコールでの彼女の凛とした立居姿に、相当参ってしまった。

グルベローヴァに抱いていた積年の想いは成就した。
感無量としか言いようがない。

繰り返しになるが、今回のこの一連の公演を実現してくれた招聘プロモーターさんたちには、 本当に感謝の限りです。

じつは、非公式ではあるけれど、来年も「ランメルモールのルチア」で日本に来てくれるようなのです。

あっちなみにですが、一番最後の昨晩の埼玉県川口でのリート・リサイタルでは、アンコールの最後に、日本語で、「さくら・さくら」を歌ってくれる大サービス!もう観客席は、大歓声で、大いに盛り上がりました。

サービス精神旺盛で感動的なコンサートを本当にありがとう!


Bunkamuraオーチャードホールでのノルマ

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この上の写真はFBの「チェコへいこう!」さんの公式ページから拝借しています。

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東京オペラシティでのオペラ名曲を歌う。(前半と後半でドレス衣装替え!)

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川口リリア・メインホールでのリート&オペラアリア・リサイタル

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2016/11/6 ベッリーニ「ノルマ」
      Bunkamuraオーチャードホール

指揮:ペーター・ヴァレントヴィチ
      管弦楽:プラハ国立歌劇場

      ノルマ:エディタ・グルベローヴァ
      アダルジーザ:ズザナ・スヴェダ
      ポリオーネ:ゾラン・トドロヴィッチ 他


2016/11/9 エディタ・グルベローヴァ オペラ名曲を歌う~2つの狂乱の場~
      東京オペラシティ

      指揮:ペーター・ヴァレントヴィチ
      管弦楽:プラハ国立歌劇場

      前半
ロッシーニ 「セビリアの理髪師」序曲
      ドニゼッティ「シャモニーのリンダ」第1幕からアリア「私の心の光」
      ドニゼッティ「ドン・バスクァーレ」序曲
      ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」第2部 第2幕から~狂乱の場~
            (「あの方の優しいお声が」~アリア「苦い涙をこぼして下さい。」)
      ドニゼッティ「ロベルト・デヴリュー」序曲
      ドニゼッティ「ロベルト・デヴリュー」第1幕から
             (公爵夫人、熱心な嘆願を~」~アリア「彼の愛が私を幸せに
                                      してくれた」)


      後半
      ベッリーニ「ノルマ」序曲
      ベッリーニ「清教徒」第2幕から~狂乱の場~
           (「ここであなたの優しいお声が」~アリア「いらっしゃい、愛しい方」)
      マスネ  「タイス」から間奏曲”タイスの瞑想曲”
      ベッリーニ「異国の女」第2幕から
           (私は祭壇に・・・慈悲深い天よ」~アリア「ああ、儀式が始まり
                                 
ます。」)

      アンコール
      プッチーニ「トゥーランドット」(「お聞きください、王子様)
      J.シュトラウス「こうもり」(「無垢な田舎娘を演じる時間」)

2016/11/12 エディタ・グルベローヴァ ソプラノ・リサイタル
      川口リリア・メインホール

      ピアノ:ペーター・ヴィレントヴィッチ

      P.チャイコフスキー (6つの歌 Op.6)より、
                第5曲「なぜ?」
                (6つの歌 Op.16)より
                第1曲「子守歌」

      リムスキー=コルサコフ (春にOp.43)より
                   第3番「清くかぐわしいあなたの立派な花環」
                   第2番「高嶺に吹く風もなく」

      A.ドボルザーク (ジプシーの歌 Op.55)より
              第1番「私の歌が鳴り響く、愛の賛歌」
              第2番「さぁ聞けよ私のトライアングル」
              第3番「森はひっそりと静まりかえり」
              第4番「わが母の教えたまいし歌」
              第5番「弦の調子を合わせて」
              第6番「大きなゆったりした軽い亜麻の服を着て」
              第7番「鷹の翼はタトラの峰高く」

      ~休憩

      G.シャルパンティエ 歌劇「ルィーズ」より
                ”その日から”
      G.プッチーニ 歌劇「つばめ」より
               ”ドレッタの夢の歌”
      E.ディラクァ 牧歌
      A.アリャビエフ 歌曲「夜鳴うぐいす」
      J.シュトラウスⅡ 歌劇「こうもり」よりアデーレのアリア
               ”侯爵様、あなたのようなお方は”

      ~アンコール
      スメタナ キス
      ピアノソロ:ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番&その他の曲などの即興アレンジ
      ワーグナー タンホイザーより
      さくら






ダムラウを聴く。 [オペラ歌手]

ドイツの人気ソプラノのディアナ・ダムラウ。いままで腰を据えて聴いたことがなく、調べてみれば、R.シュトラウスの歌曲集を1枚持っているくらいであった。

FBのほうでも結構一押しで、気になっていた歌手だったので、今回の新譜を機会にじっくり聴きこんでみようと思った。

ダムラウはコロラトゥーラ・ソプラノ歌手。

そんな魅力がふんだんに楽しめる今回の新譜はドニゼッティの「ランメルモールのルチア」で、まさしく「狂乱の場」でその最高潮を極めるコロラトゥーラ技法満載という感じで、彼女の声を楽しむには持って来いの素晴らしい題材だと思う。

自分はこのルチアが好きで、2~3年前にサントリーホールで開かれたナタリー・デセイ&ゲルギエフ・マリンスキーの実演にも接した。

デセイのファンでもある自分にとって、ルチアで彼女を聴ける、というのは結構感涙もので、前半のときこそ、デセイもなんか息も絶え絶えという感じで、体調悪いのかな、とも思ったが、「狂乱の場」では、まさに彼女らしい感情が高ぶると、歌のテンポがすごく速くなって、オケや合唱を振り切って歌う(笑)感じで、同時に演奏される名物楽器グラスハーモニカがついていけない感じも見えたのだが、その瞬間は鳥肌が立つほど素晴らしかった。

そんなルチアをダムラウで聴ける。

楽しみにしていた新譜であった。

『ランメルモールのルチア』全曲 ロペス=コボス&ミュンヘン・オペラ管、ダムラウ、カレヤ、他

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フランスもので有名なエラートレーベルからの作品で、ミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニー(1度は行ってみたいホールなのです。)でのロペス=コボス&ミュンヘン・オペラ管との演奏会形式を収録したライブ録音。(録音時期は2013年)

ライブ録音なので、オケの音など薄っぺらいというか化粧っ気なしの素撮りのような音で、そんなにいい録音という感じではないが、でも歌手の声はオンマイクなのか、音量も大きく明晰で、トータルとしてはいい作品に仕上がっていると思う。

腰を据えてオーディオで聴きこんでみたダムラウの声の印象は、声帯が広いというか発声のレンジに余裕があって、聴いていて抜けるような気持ち良さがある。

デセイのほうがレンジが狭くて、強唱のときに高域の音が少し耳にキツク感じることがあるのだが、ダムラウの声はスゴイ余裕があって、うるさく感じないというか、発声の許容レンジが大きいと感じた。

声質はとても美声で線というか芯が太いしっかりした声だと思う。
歌い方もとても情感的に歌う感じで、色っぽい。

もちろん彼女のコロラトゥーラ技法は素晴らしいの一言。

確かに一押しされるだけの才能あるソプラノ歌手だと感じた。

ルックスも、鼻筋から目のあたりがとても平坦でさっぱりした爽やかさが漂っていて、彼女のオペラの実演に接してみると、とても魅力的なんだろうなぁ、と想像できる。なんか全体に漂う雰囲気が御嬢さん的なので、役柄的に似合う、似合わないというのが出てきそうな気は確かにする。

それにしても「狂乱の場」でのグラスハーモニカ。じつに透明感があって音色が美しい。デセイの公演の時に、はじめてその楽器の姿を拝見したのだが、記憶が確かでないのだが、水のようなものに手を浸しながら(?)木琴のような形のユニークな楽器で音色を奏でていた。

現代版では、この部分はフルートが使われたりしているそうなのだが、やはり原典のグラスハーモニカのほうが断然いいと思う。

なにはともあれ、ルチアファンの人、そしてダムラウを聴いてみたい人には、絶好の素晴らしい録音だと思うのでお勧めします。

心をつかむ歌声にある「1/fのゆらぎ」特性。 [オペラ歌手]

ヒトラーが、非人道的で残虐な言動を繰り返していたのにも拘らず、そのスピーチに大衆が酔ってしまう現象に、彼の声質に「1/fのゆらぎ」の特性が含まれているからだ、という。同じくキング牧師などの「I have a dream......」に代表される名演説などもそうだ。

人の心を動かす、感動させるには、ひとつのリズムというか韻を踏むというか、人の心を高揚させる、決まった法則のリズム態があるように思えてならない。

これは文章体にもあてはまる。

自分に手短な例でいくと、他人のコンサート評やディスク評を読んで、感動が伝わってくる文章は、それなりのリズムを持っている、と感じることがある。

音楽評論家などのプロの文章は、商業文としてはレベルが高いのかもしれないけれど、その表現方法などはすごく抽象的な言い回しで、実際どのような演奏だったのか、どのようなサウンドだったのかが自分にはイメージしにくい場合が多い。定型の美文体なのかもしれないけれど、それだけでは正直(頭の悪い自分には、ですが)感動は伝わらない。星の数ほどいる評論家の中で、自分が知っている人、お付き合いがある(ネット上含めて)人の文章は積極的に読もうとも思うが、そうでない場合は、まぁ自分の頭の許容範囲が狭いこともあるが、ほとんど読んでも頭に入ってこない場合が多い。(というか...その前に読もうとしない。)

自分が感動する、共感を感じる文章というのは、美化された抽象的な言い回し、表現ではなく、もう少し自分の言葉に近い表現で、読んでいく内にどんどん高揚していくリズムを備えている、そしてわかりやすい文章。その場にいたかのような臨場感が湧いてくるような......

まぁ頭の悪い(笑)自分の勝手気ままなご意見としてご容赦願いたい、と思うのだが.....

自分の日記の文章というのは、すごい長文で、人に読ませるというタイプだと自分でちゃんと認識している。(笑)もっと読みやすいように短文に、とも心がけるのだが、あれもこれも知って欲しい、という欲が多いもので。(笑)

久しぶりに ゴローさんの日記を読み返したとき、なんと短文なのだろう!まるでポエムみたい!詩の小作品の集まりのような感じで、それでいて毎日その日記を読んでインスパイヤーされていた訳だ。こんな短文でもみんなに感動を与えることができるのだ!と思った。思うに、やはりそこには高揚させるための文章のリズムというか、韻を踏む、というかそういうものがあるのではないか、と思ったことがある。

同時に、我々オーディオ仲間が、みんなゴローさんと面識があるから、知っている人の書いている文章だから共感を得やすいのではないか?と思うこともあった。

極端なことを言えば、ゴローさんを知らない世間一般人が読んで、果たして同じように感動するかどうか....
やっぱりその筆者を知っているかどうか、というのはかなり大きなファクターになると思う。自分の場合、知らない音楽評論家の文章が、まったく頭に入らないのと同様に......

話が大きく逸れて申し訳ない。

「1/fのゆらぎ」というのは、パワー(スペクトル密度)が周波数fに反比例するゆらぎのこと、らしい。(ただしfは0よりおおきい、有限な範囲。) ピンクノイズとも呼ばれ、具体例として人の心拍の間隔や、ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、小川のせせらぐ音などが例として挙げられている。(出典:ウィキペディア)

もう少し具体的なイメージ像を掴みたかったので、さらにネットでググってみると、

「規則正しい音とランダムで規則性がない音との中間の音で、人に快適感やヒーリング効果を与える。」、「規則的なゆらぎに、不規則なゆらぎが少し加わったもの」という表記があった。

まぁわかったような、いまいちのような表現だが(笑)。

概して言えば誰もが聴いても、そこに癒し、快感を感じる音声波形特性を持っているもの、ということは間違いないと思う。

この「1/fのゆらぎ」特性を持った声質の歌手というのが、日本歌手で言えば代表的なのが美空ひばりだという。他にもMISIA、宇多田ヒカル、松任谷由実、徳永英明、吉田美和などが挙げられている。

誰もが持てる才能でもなくて、持って生まれた声質、ある特定の歌手のみに見られるこの才能。

このネットの情報、どこまで精密に声紋解析された結果なのか信用できるのか、わからないが、これらの歌手名を見るとあながちデタラメでもなく、納得がいく感じがする。

ネット情報では日本の歌手しか情報がないのだが(それしか声紋解析できていない?)、それでは外国人歌手ではどうなのだろう?とすぐに思った。音楽のジャンルはいろいろあるので、手っ取り早く自分に1番身近なオペラ歌手だけに絞ってみた。個人的な嗜好もあるが、1/fゆらぎは交感神経の興奮を抑え、心身共にリラックスした状態を作る、とあるから、感覚的に考えると、やはり低音部よりも高音部だろう。

男性ならテノール、女性ならソプラノそしてメゾ。
自分が知っているだけでも今が旬のじつにたくさんの候補が頭に浮かぶ。

それぞれの歌手の声質(声紋)というのは、指紋と同じで、その人固有に決まっている特質。自分がファンであるオペラ歌手はいろいろいるが、それぞれ特徴的で個性的で、その声質のどのようなところが自分の好みなのか、いろいろ理由がある。

その中で今回の日記のテーマに沿って、自分が敢えて1人強引に選ぶなら、アンネ・ゾフィー・オッターかと思う。

もうご存知スウェーデンの歌姫で、一昔前の世代の人かもしれないが、ベテラン中のベテラン。オペラに限らず、リートを始め、そしてクラシックに限らずジャズ、シャンソンなど、いろいろなジャンルをこなすそのレパートリーの広さは他を卓越している才能の豊かさと言える。彼女の世代で最も優れた声楽家の一人として認められていて、世界の一流指揮者、オーケストラ、歌劇場から常に、求められ続けられている。最近は、どちらかというとオペラ(は引退?)よりもリサイタル系中心の活動のようにも思えるが、アルバムのほうもきちんと定期的にリリースしてくれるからファンとしても有難い。

自分はオーディオマニアなので、ただ劇場でオペラの実演を観る、というだけでは、満足できない。きちんと自宅のオーディオでその声を楽しめるディスクを出してくれる歌手、というのが必須条件になる。

そうするとオペラ全曲というより、歌曲集などを出してくれるのが有難くて、そちらで楽しむほうが好きだ。じつはオペラ鑑賞も、じつに体力が必要なので、どちらかというとリサイタ ルのほうが好き。オペラだとその好きな歌手が仮装して役に成り切る訳で、それよりもドレスなどの現代衣装でその歌手の素の姿で歌うリサイタルのほうが、自分に身近に感じて、気楽に声を楽しめるから好きなのだ。

オッターは、1985年から2009年までDGの専属アーティストとしてじつに膨大な録音を残している。その後2010年からパリのナイーブというレーベルと契約して現在に至る。

このDG時代の録音は、大分昔に結構な枚数を大量に購入したことがあって、それをしらみつぶしに聴いているのだが、なぜか大概が録音レベルが小さくて、なんかパッとしないものが多いのだが、結構時代を経て声質の変化というか、やはり最近などの晩年期のほうが声に柔らかさが出て、非常に耳にやさしいというか、経年による安定感というのを強く感じる。

彼女の声がいい、と思うのは、オペラでのアリアでの歌い上げるような強唱ではなくて、歌曲集で聴けるような、ちょっと力の抜けた感じの歌い方が非常に格好よいというか、ムーディーで、雰囲気があってとても素敵なのだ。

ハスキーではないと思うが、メゾの周波数帯域にあった声音域が、妙に聴いていて心地よいというか、まさに自分にとっての1/fのゆらぎによる心地よさを感じるのだ。

この日記テーマのときに真っ先に思い浮かんだ歌手だった。
DG、そしてナイーブと歩んできている彼女であるが、1回だけ自分の母国であるスウェーデンのBISからスウェーデン歌曲集を出したことがあった。 


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夏の日~スウェーデン・ロマン派歌曲集 オッター、フォシュベリ

皮肉なことに、このアルバムが彼女のライブラリーの中で、1番録音が素晴らしいと思っている。じつに素晴らしい優秀録音で、マルチチャンネル録音なのだが、質感が柔らかくて情報量が多いのがよくわかる録音で、SPから部屋中にふわっと広がるさまが素晴らしくて、オッターの声がみずみずしいというか潤い感溢れる感じで実に秀逸なのである。

彼女のライブラリーからこの1枚、というのであれば、絶対このアルバムを推薦します。絶対後悔しません!

最新のアルバムでは、パリのナイーブからフランス歌曲集を出している。 


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『優しきフランス~歌曲とシャンソン集』 オッター、フォシュベリ(2CD)

彼女のフランス語もまんざらでもない。素晴らしいと思う。
録音自体は、狭いスタジオでのセッション録音なのか、響きが少なく、空間をあまり感じないデッドな録音に聴こえるのだが、選曲の良さ、そして彼女の歌が妙に雰囲気があってとても素敵。

2枚組なのだが、特にDisc2のシャンソン特集がじつに秀逸。彼女の脱力した歌い方が格好良くて、フランスもの特有のちょっとアンニュイな雰囲気がよく出ていて、じつにこれぞシャンソン!という趣で素敵。このDisc2はお勧めです!

結局自分の好みの歌手のディスク紹介という展開になってしまったが(笑)、

「1/fのゆらぎ」、というのが万人がやすらぎを感じる、というのが前提であれば、オッターの声がみんなイイと思うかどうかは、?なのかもしれないが、でも彼女の声が嫌い、という人ははたしてそんなにいるだろうか?

外国人歌手の声紋解析で、この1/fのゆらぎの特質を持った外国人歌手をぜひ知りたいと思ってしまった。
ぜひ公式に解析してもらえないだろうか?(笑)


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