SSブログ

新国立劇場 モーツァルト歌劇 「コジ・ファン・トゥッテ」 [国内オペラ・レビュー]

スウェーデンの歌姫・ミア パーションに惹かれるようになったのは、じつはつい最近のことで、2011年にスウェーデンのBISレーベルから発売された「シューマンの女の愛と生涯」に魅せられてからだった。容姿端麗な北欧美人である。 
483[1].jpg
 
女の愛と生涯(シューマン)
ミア・パーション
http://bit.ly/13uChcz

BISならではの録音の良さもさることながら、この録音で聴くパーションの声には、独特の鋭さがある。室内楽のように距離をとったワンポイント・マイクでの録音で、空間表現の優れた優秀録音だった。それで夢中になって聴きまくり、さらに彼女の他の録音も買いあさった。(同じBISから出ているモーツァルトのアリア集など)

数多ある女性ソプラノの中でも、自分にとって魅力的なソプラノになっていったのだ。

今夏に行く予定のザルツブルク音楽祭で、モーツァルトハウス(祝祭小劇場)で歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を観劇予定である。そこで偶然にも新国立劇場でもコジをやる、ということで、さらに主役のフィオルディレージ役をミア・パーションが演じるということで、これは願ってもみない予習ということで、即決で観に行くことにしたのである。

パーションにとって、コジ・ファン・トゥッテは18番の演目のようで、ザルツブルク音楽祭2009やグラインドボーン音楽祭2006、そしてヨーロッパ室内管とのCD収録など、数多の作品を残している。

パーションの生声が聴ける!そういった意味で大変楽しみにしていた公演であった。

座席は奮発して1階席正面後方席。普通のオーケストラコンサートの場合、上階の中後方席のほうが響きが感じられていいと思うのだが、オペラのような指向性のある声ものはダイレクトに聴こえる平土間がいい、と最近思うようになった。もちろんパーションを間近で観てみたい、というミーハー心もある。(笑)
88zpiAABdIMoe__1371225412[1].jpg

ところがいざ始まって舞台を観たときに唖然、私は視力が悪いので、遠すぎて顔がほとんど認識できないのだ。しまった!オペラグラスを借りればよかった。あせあせ(飛び散る汗)がっくりである。

さて、このオペラ、想うに男性主役達による女性いじめだよなぁ、と思ってしまう。余計なことをしなければ、女性主役達も変なことを考えることもなく平和でいられるものを、わざわざ波風起こしている。特にドン・アルフォンソが諸悪の根源。この女性いじめはいただけない。(笑)

事前にグラインドボーン音楽祭2006のDVDで予習していたのだが、この演出は極めてオーソドックスですごい好感が持てた。

最近の新国立のオペラの現代読み替え版の演出を批判する声が、マイミクさん達の中で渦巻いていたので、今回のコジも時代考証は現代なので、少しそこを心配していた。でも蓋を開けてみれば、全編通して、とてもオーソドックスな演出で、全く違和感がなかった。現代の時代考証ともぴったりマッチしていた、と思う。やっぱり私はオペラは保守的な演出が好きだ。でも最後のフィナーレでは、ハッピーエンドにならず、恋人たちは憤然として立ち去るのが、違うところだろうか。

舞台装置は、かなりゴージャスでお金をかけている。森林の中のキャンプハウスがあって、その森の中を舞台にして、場面転換で、ステージが回転する仕組みになっている。水溜りもきちんと設けていて、従来の演出を踏襲していたのも好印象。

役者たちの服装も現代風。でもシナリオは、基本に忠実だった。この舞台装置だけ見ていても、なかなか目の保養になる、というか、かなりゴージャス。よく出来ていると思った。この舞台装置が今回1番感心したところ。

さて、今回の1番のお目当てのミア・パーション。
201305090054_b[1].jpg

遠すぎてその容姿をきちんと認識できなかったのは残念だったけど、期待の沿う美声で満足できた。でもちょっと高音を歌い上げるときに、耳に突き刺さるような刺激を感じるかな?という印象を受けた。オーディオの録音だと、そこが綺麗にマスクされていて、とても美声なんだが.....やっぱりオーディオってずるくて、誰が聴いても、聴きやすいように編集してしまうので、完成度が高いのだ。今回彼女の生声を聴いてみて、すごくひときわ他のソプラノを圧倒するほどの美声とまでは感じなくて、つまり衝撃、というほどでもなかったのだ。やっぱり事前に期待し過ぎかな?オーディオと生声の違いを感じてしまった。

でも誤解のないように彼女は、普通に観ている分にはとてもよかったですよ。(私がマニアックなだけで。たらーっ(汗)

あと、フェルランド役のパオロ・ファナーレ、アフフォンソ役のマウリツィオ・ムラーロ、いずれも手慣れた感じの歌いぶりでしたね。

さて、問題のモーツァルトの音楽。やっぱりいただけないなぁ。(笑)旋律がつまらない。最近オペラと言えばワーグナーの大仰なドラマティックな音楽ばかり聴いていたので、それと比較すると旋律がすごい単純で退屈だ。見せ場のアリアは歌い手達の見事な歌唱で盛り上がったが、でも音楽としての旋律はつまらなくて、いわゆるポップス音楽のフックのような仕掛けがなくて印象に残らなくて、来るものがない。

東京フィルの演奏は、音色が非常に軽く聴こえて、モーツァルトに合っていたような気がする。

まぁ予習で観ていた演出と比較して、今回のほうが舞台装置が豪華で、シナリオもオーソドックスだったので、とても満足できた、と思う。 本番のザルツブルク音楽祭でのモーツァルトハウスでの同演目がますます楽しみになってきました。

右から2番目の青いドレスの女性がミア・パーション
5fmfEbwSJgUV9qX1371225450[1].jpg


2013年6月9日 新国立劇場 モーツァルト・オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」


キャスト
フィオルディリージ:ミア・パーション
ドラベッラ:ジェニファー・ホロウェイ
デスピーナ:天羽明惠
フェルランド:パオロ・ファナーレ
グリエルモ:ドミニク・ケーニンガー
ドン・アルフォンソ:マウリツィオ・ムラーロ

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

指揮:イヴ・アベル
演出:ダミアーノ・ミキエレット
美術・衣裳:パオロ・ファンティン
照明:アレッサンドロ・カルレッティ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。