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小澤征爾&ズービン・メータがウィーンフィルを振る。サントリーホール30周年記念ガラ・コンサート [国内クラシックコンサート・レビュー]

この日のコンサートは、コンサートというよりは、セレモニーと言ったほうがいいかもしれない。内容の良し悪しを云々言うのは野暮だと思いました。

贅沢を尽くしたコンサート。

そして、年間で、ここは!絶対に抑えておかないといけないコンサートでもある。

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今年開館30周年になる東京・赤坂のサントリーホール。

首都圏のクラシック文化をずっと支えてきたこのホールも30周年の節目を迎え、今季が過ぎたら、音響改修工事などのメンテナンスで一時的に休館に入る。

その30周年を祝う、所謂ガラ・コンサートを開いて盛大にお祝いしようという試み。

サントリーホールは、ウィーンフィル&ウィーン楽友協会と親密な提携関係にあって(ウィーンフィルは毎年来日して、サントリーホールで来日公演をやるのが常になっている。)、この盛大な祝賀コンサートをウィーンフィルが担うことになった。

指揮者はズービン・メータ。自分も、数年前に、メータ&ウィーンフィルの来日公演をサントリーホールで経験したこともある。そこに急遽、小澤征爾さんが友情出演ということで、参加することになった。小澤さんとメータは、もう同じ釜のメシを食べてきた同士のような関係で深い友情で結ばれている。

後述するエンドロールを見てほしいが、ソリストや演目も信じられないくらい贅沢に贅沢を尽くしたコンサート。

ヴァイオリンにお馴染みアンネ=ゾフィー・ムター、そしてソプラノに、ウィーン国立歌劇場など多数のオペラハウスなどで活躍著しいヘン・ライス。

演目も、モーツァルト「フィガロの結婚」序曲から始まって、シューベルト「未完成」、そして、武満徹「ノスタルジア」、ドビュッシー「海」、そしてとどめは、ウィーンフィルのお家芸である多数のワルツ・ポルカ。

普通の公演なら19:00~21:00くらいの2時間のものを、今日は18:00~21:00の堂々3時間!

チケットのお値段も信じられないくらいプレミア高額チケット。



よく、ウィーンフィルを聴くなら、なにも高額支払って日本で聴かなくても、本場ウィーン楽友協会で、安い値段で聴けるんだから、そのほうがずっとリーズナブルでしょ?と言っている人も多いが、自分はそれはおかしいと思う。

やはり今回の主役は、サントリーホールなのであって、サントリーの祝30周年を”日本人”としてみんなで祝いましょう、という主旨なのである。日本人だったら、この主旨の元、絶対日本で聴くべきだし、いわゆる贅沢の限りを尽くして、生涯の記念となるべくお祝いしたい指向もよくわかるし、それに見合うだけのステータスとしては、高額チケットもやむを得ないと、自分は理解できる。

日本人であれば、日本の催しごとは、日本で聴くべきなのである。


初日のこの日は、首相をはじめ、サントリー首脳陣、政財界大物など集まって、かなり物々しい雰囲気であった。

この日のコンサートは”正装コンサート”でもある。

正装コンサートは、いわゆるヨーロッパの夏の音楽祭などでは、至極当然的なところもあるのだが、日本の夏の音楽祭では、フォーマルな衣装を要求するという音楽祭はほとんどなくて、夏の音楽祭に限らず、日本でこういう正装コンサートというのは、自分にとってはちょっと記憶にない。(自分が経験していないだけで、過去何回か行われているのかもしれませんが。)

男性なら燕尾服、タキシード、女性ならドレスと言ったところであるが、この日の女性は和服が多かった。これは、素晴らしいと自分は思いました。ヨーロッパの音楽祭では、まず見かけないシーンだし、いわゆる日本独特の和の雰囲気があって、日本のフォーマル衣装でのコンサートとしては、とてもいい絵柄なのでは?と感じ入るところがありました。

自分は、今年のヨーロッパの夏の音楽祭で新調した、上下黒の礼服で臨みました。

サントリーに到着したら、もうびっくり。
うわぁ、これは、まさに記念祝賀コンサートというセレモニーだなぁ、という雰囲気いっぱい。

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レッドカーペットが敷かれている。長さは30周年にちなんで、30mなのだそうである。

開始前に、ウィーンフィルハーモニーのファンファーレを、ウィーンフィル団員メンバーによって演奏される。

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ホワイエに入ると、綺麗に花で飾られている。

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しかし、サントリーホールの内装空間の高級感やカラーリングのセンス(配色のセンス)は抜群だと思う。これだけ高級感やブランド感を感じるホールは、国内のホール中では他に類をみないと思う。

後で写真を載せるが、ステージ上もまるで、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートのように周囲を花で取り囲んで飾っていた。装花は、花人 赤井 勝さんによるものである。

では、紳士淑女の集い、正装コンサートの雰囲気をご覧になっていただこう。
肖像権配慮して選び抜いたつもりだが、完璧は無理。ご容赦ください。


やっぱり日本の正装コンサートは和服だよねぇ、という印象を持ったショット。
正装コンサートはさすがに威圧感がある。よかった。今年の夏にヨーロッパで鍛えておいて。(笑)

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財団法人サントリー音楽財団理事長、サントリーホール館長、そしてチェリストでもある堤剛さん(ご夫妻で)を発見。ずっと私が撮影しているので、なんでオレを撮っているんだよ!という感じでガン見されてしまいました。(笑)すみません、ご挨拶もできなくて。(^^;;

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この日に限って、ブルーローズ(小ホール)は、ドリンクバーに早変わり。


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そしてホールの外でも歓談は行われた。

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では、いよいよコンサートの模様に移ろう。

今回の私の座席は、ここ。清水寺の舞台から飛び降りるつもりで、大枚はたいて買ったが、予想外にここだった。2階席正面の最後尾。横にTVカメラがありました。

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お祝いなのだから、ああだこうだ、は言わないつもりだったが、これだけは言わせてほしい。これでもオーディオマニアの端くれなので。(笑)

やっぱり音が遠い。不満だった。確かに響きが豊富で、オケの音の全体が俯瞰して聴けるけど、不満。直接音がガツンと腹に響いてこないと欲求不満になる。

自分は、その昔は、中央から後方での直接音が少し遠く不明瞭になるけど、響きが豊富に聴こえ、全体のフレームが聴こえるような座席が好みだった。

でも最近やや好みが変わってきている。やっぱりかぶりつきがいいのかな?(爆)
全身にガツンと来ないとダメなんですね。



やっぱりウィーンフィルのサウンドは、濡れたような艶があって色気がある。パワフルなベルリンフィルのサウンドと違って、どこか繊細で、その艶やかさというのは、特に弦と木管の音色に、そのイメージを強く意識した。金管群もやはりちょっと違う感じかな。

ウィーンフィルの合奏のサウンドは、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲、ドビュッシー「海」、そしてワルツ、ポルカのときに、よく感じ取れて、基本自分たちのイメージをよく理解していて、それにあった選曲をしているなぁ、と感じることが多かった。

オケの発音のスケールの大きさも底々つつましやかという感じで、決して広大なレンジ感で圧倒するというのとは対極にあるような感じ。この点に関しては、ある意味、日本の在京楽団のほうが迫力があるかな、と思わないこともなかった。

やっぱりウィーン楽友協会は狭いホールなので、音が飽和しないように彼らは、そこでの節制した演奏の仕方というのを身につけていて、遠征先でハコが変わっても、なかなかその演奏法を変えられないのだろう。(サントリーではずっと演奏してきている彼らではありますが。)


ソリストでは、ムターはやっぱりスゴイ!と思った。

先だって京都でアラベラさんをずっと観てきた自分にとって、どうしても比較になってしまうのだが、ヴァイオリン楽器が、対体格に対して、ひとまわり小さく見える感じを受けて、充分自分のコントロール下にあるような余裕を感じるのだ。

この余裕って、ある意味、聴衆にヴァイオリンが上手いと思わせるトリックになっているような感じもする。(あくまで自分の勝手な解釈ですが。(笑))

もちろん実際上手いのですが。(笑)

まさに、”ムター言語”とも言えるべく、彼女の独特で強烈なフレージングは、聴いている者を圧倒する。なんといっても観ていて、存在感あるよね。ちょっと通常のヴァイオリニストでは出せないオーラがある。恐れ入りました。

(アラベラさんは、ムターから弓をプレゼントされたことがあるのです。あと、ムターの奨学金で勉強していた時期があったんじゃないかな?)


そしてソプラノのヘン・ライス。遠くからでもわかる素晴らしい美貌の持ち主で、声量はいくぶん控えめではあるものの、少しヴィブラートがかかった、その美しい声質は、聴いていて癒されるし、素晴らしいと思いました。特に「こうもり」のチャールダーシュは絶品!

こういうコンサートで、楽器だけの演奏ではなく、きちんと声ものを入れる配慮がうれしい。ゴージャスの一言に尽きる。ヘン・ライスは、大変失礼ながら、歌手にあまり詳しくない自分は存じ上げなかったのであるが、プロフィールを見ると、いろいろなオペラハウスを歌い回り、経歴も素晴らしい。驚きました。


指揮者のメータ。小澤さんと同い年だったと思うが、なんか小澤さんより元気そうで(笑)、タフガイなイメージは相変わらず。外見も数年前とあまり変わらないし、健康面も良好なんですね。ドビュッシー「海」と最後のワルツとポルカを担当であるが、ウィーンフィルから、彼ら独自のサウンドを引き出すのがうまくて、さすが長年お互いのパートナー同士だな、と感じた。


そして、小澤さん。

元気そうでした。ちょっと最近気になっているのは、小澤さん、もう常時立って指揮をするのは体力的に厳しくて、いまは逆に常時座って指揮をする。大方立っていた1,2年前を知っているだけに、少し寂しい気もするが、でも指揮そのものは元気いっぱい。シューベルトの「未完成」とムターと武満徹「ノスタルジア」を担当した。


なによりもカーテンコールや、メータとのジョークのかけあいなど、本当に観客を湧かし、なんだ!小澤さん、元気そうじゃん!と思いました。(笑)

サントリーホールのこけら落としのコンサートでは、体調不良で来日できなかったカラヤンの代行で、ベルリンフィルを指揮し、「英雄の生涯」を振った小澤さん。このサントリーホールの30年の歴史では、やはり小澤さんは欠かせない指揮者だし、このガラコンサートで友情出演するのは、当然のなりゆきだと思いました。


最後のアンコールのポルカ「雷鳴と電光」では、なんと、小澤さんとメータが一緒に指揮台に立って、2人で同時に指揮をする、というサービス旺盛な粋な計らい。場内大いに沸きました。

もうここまで贅沢で、こんな感じなら、やはりコンサートとして批評するというのは野暮なことしきりで、セレモニーとして楽しむ、というのが、一番いいのだと思いました。

すばらしいガラコンサートでした。

いい想い出になりました。


小澤さんとムター
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メータとムター
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メータとヘン・ライス
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メータ
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小澤さんとメータ
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最後はみんな集まって。(小澤さんとメータ、そしてムターとヘン・ライスとでカーテンコール)
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最後のアンコールのポルカ「雷鳴と電光」のエンディングでは、ホールの両サイドからラッパのような鳴り物と花吹雪が。。。(ウィーンフィルのFB公式ページから拝借しております。)

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終演後のバックステージでの小澤征爾さん、アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ヘン・ライス(ソプラノ)、そしてズービン・メータ。(ウィーンフィルのFB公式ページから拝借しております。)

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サントリーホール30周年記念ガラ・コンサート
2016/10/1 18:00~21:00 サントリーホール

第1部

モーツァルト:オペラ「フィガロの結婚」K.492から序曲。

 指揮:ズービン・メータ

シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D759 「未完成」

 指揮:小澤征爾

第2部

武満徹:ノスタルジア -アンドレイ・タルコフスキーの追憶に-

ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター
 指揮:小澤征爾

ドビュッシー:交響詩「海」-3つの交響的スケッチ-

   指揮:ズービン・メータ

第3部

ヨハン・シュトラウスⅡ世:オペレッタ「ジプシー男爵」から序曲
ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「南国のバラ」作品388
ヨハン・シュトラウスⅡ世:アンネン・ポルカ 作品117
ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「春の声」作品410
ヨーゼフ・ヘルメスベルガーⅡ世:ポルカ・シュネル「軽い足取り」
ヨハン・シュトラウスⅡ世:「こうもり」から「チャールダーシュ」
ヨハン・シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ 作品214

ソプラノ:ヘン・ライス
 指揮:ズービン・メータ

~アンコール

ヨハン・シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル「雷鳴と電光」

 指揮:小澤征爾、ズービン・メータ

 管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団







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