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SACD高音質レーベルに想うこと。 [オーディオ]

自分がクラシックの録音に接してきて想うのは、ご存知のようにクラシックという世界は、巨匠や名演奏家と呼ばれた世代、そして名演奏など大半が音源が古いもの。一方で録音技術、編集、マスタリング技術やオーディオ機器などの再生機器のテクノロジーは日々どんどん進化する。その一方で最近のクラシック界は巨匠と呼ばれたりカリスマ性のある演奏家が少なく脱個性という感も否めない。

なので、こういうテクノロジーの発達とクラシックの音源というのは、まったく正反対のところに位置していて、私のようにクラシックファン、そしてオーディオファンの両方に関わる人にとって凄いジレンマがあるのが実情なのです。やっぱり音のいい新しい録音で聴きたい、という願望がある一方で、やはり一世を風靡するような巨匠、演奏家の演奏を楽しみたい,これが全く噛み合っていない、相反していることに問題があるのです。(古い録音のリマスタリングも盛んだが、大半があまり芳しい噂は聞かない。)

クラシックの世界では昔の名盤、名演奏を大切に聴く、という方も多いし、そういう古い録音、当時の演奏解釈ならではの価値というのもあると思う。まさにワインのように何年の録音で、~盤、この名演奏といった価値観を共有する。そんな世界がある。クラシックの世界に接していると、そういうひとつのリファレンスというか、考え方の基準が多いのを実感します。

ソニー&フィリップスがCDの次の次世代音楽光ディスクとしてSACD(SuperAudioCD)を開発して世の中にリリースして、もう早15年も経過するのだが、はたして普及していると言えるのか?一般の方からすると、世の中の大半はCDだし、SACDなんて普及しているの?という感を持たれるかもしれないが、地道に間違いなく普及していると自分は思う。

もともと両メーカーも既存のCDを全部置き換えてしまおう、などとは毛頭考えておらず、一部の高音質マニア向けのためのディスクという位置づけの戦略だった。実際その通りクラシックをメインにジャズが少々、という感じで、ポップスは皆無。

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そのメイン市場のクラシックでも、DG,EMI,DECCAなどのメジャーレーベルはほとんど撤退していて、SACDのメインの顧客は、いわゆる高音質レーベルと称されるマイナーレーベル。

メジャーに対して、”マイナー”という言葉は負のイメージがあるので、あまり好きじゃないが、いわゆるマイナーレーベルのSACD高音質レーベル。DGやEMIやDECCAのようなメジャーレーベルは、さすがに抱えているタレントも多いしビッグネーム揃い。

それに対して、マイナーレーベルはタレントでは見劣りするかもしれないけれど、彼らは高音質を提供するというサウンド指向型のところが多い。 だからマイナーレーベルのほうが積極的にSACDを導入していてマルチチャンネルにも凄い積極的に取り組んでいる。

これが彼らのメジャーレーベルに対抗するひとつのアイデンティティなのだ、と思う。所属しているタレントもネームバリューでは劣るかもしれないけど、新しい世代の演奏者は、決して聴き劣りしない素晴らしい演奏でディスク自体の完成度がすこぶる高い。

SACDは、マイナーレーベルのほうが熱いのだ。

これらのレーベルは小さい会社ながら ちゃんと独立のレーベルとして世界的にみとめられ着実にレパートリーを拡充しているしていることは、 現在の厳しいレコード産業の中で 実に立派なこと。

特にPENTATONEに代表されるように、ヤノフスキのワーグナーシリーズなど、ひとつのツィクルスを何年もかけて完成させる、という考え方は、日本のレーベルの場当たり的なリリース計画と違って先を見据えた指針、視野には、日本の経営陣層にはない素晴らしいものがある、と思う。

サウンド指向型のマイナーレーベルで、これだけの枚数のSACDが毎年発売され、しかも廃盤率も低い、SACDは着実に普及している、と思うのだ。またトーンマイスターなどの録音、編集エンジニア達も最初はメジャーレーベルに所属して修行するが、その後、そのレーベルが掲げるいわゆる”トーンポリシー”と自分の目指すサウンドが合致しない、あるいは満足できないなどの不満から、独立して自分の小さなレーベルを立ち上げて、その渇望を満たす、という動きも多いようだ。そういったレーベルの基本骨子は、やはり高音質路線で、SACDを採用している。

自分がクラシックで、よく聴くSACD高音質レーベルは、

PENTATONE(オランダ)
BIS(スウェーデン)
RCO Live(オランダ)
CHANDOS(イギリス)
CHANNEL CLASSICS(オランダ)
SIMAX(ノルウェー)

などがある。どのレーベルも抱えているタレントはメジャーレーベルのビッグタレントには見劣りするかもしれないが、きちんとした自分の看板スターを育てているし、そういう若い演奏家達はとてもフレッシュで、演奏技術が聴き劣りすることなど全くなく、素晴らしい演奏、さらにこの上ない高音質なサウンドを提供してくれる。

つい最近、2009年に設立されたmyrios classicsという、これまた新しい高音質にこだわるサウンド指向型のレーベルを知ることができた。 室内楽中心だが、そのライブラリーはどれも音がよさそうだ。こういう発見がとても楽しい。

上の挙げた6つのレーベルのそれぞれのサウンドの印象を上げてみると、まずPENTATONE。自分にとってSACDのマルチチャンネルと言えば、このレーベルが1番好きだ。ちょっとあざといと思うくらいの残響の豊かさで、基本は柔らかい質感の音色。特に弦のユニゾンは異常に美しい。

つぎにBIS。全体的に録音レベルが小さいが、ダイナミックレンジが広いが故であり、オフマイク録音による空間の捉え方がうまく、見事な空間表現を提示してくれる。

つぎにRCO Live。ライヴゆえ、どれも鮮度感と空間の広さは抜群、若干ソフトによっては解像度が劣るものもあるが概ね優秀録音が多い。

CHANDOSやCHANNEL CLASSICSは、硬質でもなければ軟質でもないニュートラルな音質で、広い空間表現力に長けている印象。やっぱりクラシックの録音って原則オフマイク録音が多いと思うので、こういう空間をどのように表現するか、はそのレーベルのトーンマイスターの腕の見せ所になる。

最後にSIMAX。このレーベルは自分の中ではトップを争うくらい大好き。音の鮮度感が抜群に良くて、ステージが浮かび上がる感じが快感だ。ただ難点は、商品納入が異常に時間がかかって遅いことだ。すごい待たされる。(笑)

オマケにmyrios classics。やっぱりこのレーベルの看板娘のタベア・ツィンマーマンだろう。このレーベルはこの人で持っていると言っても過言ではない。大ファンである。このレーベルも鮮度感が抜群で、タベアのヴィオラの音色が妙に妖艶で本当にため息が出てしまう。

このように高音質指向型のマイナーレーベルで熱いSACD。ゆっくりだけど15年かけて着実に地を這うように普及している、と思うのだ。

私は貧弱だけどマルチチャンネル再生環境を持っているので、SACDは、広帯域化による高音質、というよりも5.0chサラウンドによるダイナミックレンジの広い再生のほうに魅力を感じるので、そういう意味でも、こういうSACDに真剣に取り組むマイナーレーベルにとても魅力を感じる。

新しい録音のほうが、古い録音に入っている情報を遥かに超えるダイナミック・レンジの広さ、情報量、そして高い解像度、表現力があって、古い録音の時代には捉えれなかった「音のさま」というものがある。

オーディオマニアの私からするとそれが昔からクラシック界に存在する演奏論の議論を遥かに凌いでしまうファクターでもある。

決して古い録音を揶揄するつもりは毛頭なく、そういう歴史的音源の素晴らしさを尊重することももちろんだが、こういう新しい優れた音盤の良さを 存分に味わうことで、逆に過去の優れた音源の良さも さらにわかるようになるはず、と思うからだ。 
 


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コメント 2

いんこ

SACDは大手が撤退してくれたのがかえってよかったのかもしれませんね。
需給ともにちょうど良いバランスかも。
家電ではなくオーディオとしての品位が保たれているというか。
by いんこ (2014-08-08 20:56) 

ノンノン

いんこさん、コメントありがとうございました。
そうかもしれませんね。高級オーディオディスクとして位置づけが明確になりましたね。でもそれはある意味ソニー、フィリップスの当初の意図だったといえます。でも個人的には、メジャーも(特にDG)SACDの採用をもっと薦めてくれるといいなぁ、と想うことがたびたびあります。(特に5.0chサラウンド)
by ノンノン (2014-08-09 07:07) 

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