上野旧東京音楽学校の奏楽堂 [コンサートホール&オペラハウス]
東京・春・音楽祭の会場は、東京文化会館をはじめ、多岐にわたるのだが、その中で奏楽堂という名前をなにげなく目にした。思わず懐かしいというか、自分が最後に通ったのは、確か2012年の4月頃。でもその後、老築化による修復作業のため、閉館・休館中になったと記憶している。はて?いま会場になっている奏楽堂というのは???
東京藝術大学の上野キャンパスの中に、新しく新設された奏楽堂というのがあるんですよね。東京春祭の会場になっているのは、この新しい奏楽堂のほうなのだと思いました。
東京藝術大学奏楽堂は、いわゆる新しいコンサートホールとして設立されたもので、シューボックス・タイプの最新音響のホールのよう。公式HPの写真を見る限り、確かに内装空間も近代的設計という趣で、音響も良さそうな感じ。
もちろん行ったことがないので、ぜひ体験してみたいと思い、今週末の東京春祭のコンサートに行くことにしました。今年はリヒテルの生誕100周年ということもあって、リヒテルが愛したブーランク&モーツァルトの曲をやる模様。楽しみです。
さて、一方で、いわゆる旧東京音楽学校の奏楽堂と呼ばれる建物。現在、老築の修復作業のため休館中なのだが、平成30年を目安に再オープンするようである。この旧東京音楽学校というのは、いまの東京藝術大学音楽学部の前身で、その施設だった奏楽堂は、日本最古の木造の洋式音楽ホールで、いまでは国の重要文化財に指定されている。
この建物の2階にある音楽ホールは、かつての滝廉太郎がピアノを弾き、三浦環が日本人による初のオペラ公演でデビューを飾った由緒ある舞台だそうだ。
奏楽堂
2012年の4月にはじめて、この歴史的建造物の奏楽堂に入ったのだが、そのきっかけは、ここで、フィルハーモニア・アンサンブル東京というユニットの演奏会が開かれるためだった。
指揮はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で長年ヴィオラ奏者を務めた土屋邦雄さん。
このフィルハーモニア・アンサンブル東京というのは、土屋邦雄さんを慕い、2009年にソニーフィルハーモニック主催のメサイア演奏会のために結成されたアマチュアオーケストラで、このオーケストラの命名は、土屋さんによるもので、土屋さんが主宰していて活動したアンサンブル・フィルハーモニアベルリンに由来するのだそうだ。
この奏楽堂は、なんでも1958年に来日した作曲家ヒンデミットを迎えて、当時東京藝術大学の学生だった土屋さんが、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラ・ソナタを演奏したという縁がある。
そしてそのことが土屋さんがドイツに留学することになるきっかけになったのだ。
その由緒あるステージに50年以上経過したいま再び土屋さんが指揮者として立つ。その当時はいかなる想いだっただろうか?
そんなとてもメモリアルな演奏会に、土屋さんのお誘いを受けて、ゴローさんがヴァイオリン奏者として参加することになった。その応援のために私らが行ったのだ。
その勇姿をぜひ観るべく、そして土屋邦雄さんがどんな指揮振りをするのか、という恐いもの見たさ(笑)に、参加することにしたのである。
そんな頃に訪れた日記が、mixiのほうで2012年4月に投稿していた。
いまは閉館になっている旧奏楽堂だけに、内部の様子は貴重かもしれないと思い、ブログのほうにも移植することにした。
奏楽堂の中に入ると、本当にクラシカルな歴史的建造物という感じで趣がある。うかつに触れると壊れてしまいそうな繊細感がある。
じつは当時の奏楽堂は、当時は毎週日曜日をはじめ、火曜、木曜と9:30~16:30まで一般公開されていて中に入ることができた。(入場料300円) しかも日曜日の14:00~15:00は2階にある音楽ホールでコンサートが開催され、鑑賞することが出来るのだ。この日曜日コンサートは藝大の学生が演奏している。
この土屋さんのコンサートの前に、ぜひ一度、中に入ってみたい、コンサートを聴いてみたい、ということでじつは事前に奏楽堂の中を見学に行ってきた。
日曜日コンサートはチェンバロのコンサートだった。
そこで奏楽堂の中をご紹介。
エントランスを入ってまっすぐの、ここから奥は未公開エリア。
どうなっているかすごく興味がありますが、残念ながら見ることはできません。
2階の音楽ホールに上がってみましょう。
2階のこの部屋は、休憩室というか談話室、そんなスペースになっている。
ここが音楽ホール、座席数は338。
藝大生がチェンバロを弾いていた。
ホール中央部天井をヴォールト状にするなど、視覚、排気、音響上の配慮がなされている。
ある演奏者の方の感想によれば、このホール、随所に導入された工夫によりカーネギーホールで演奏するのと似た音が出るとか。
正面にあるパイプオルガンは、日本最古のコンサート用オルガンだそうです。
今回の日曜コンサートで使用されたチェンバロ
さて、本番の日の土屋さんのコンサート。
こんな感じのコンサートであった。
日時: 2012年4月22日日曜日 午後6時15分開演
場所: 上野旧東京音楽学校 奏楽堂
指揮: 土屋 邦雄
(元ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 ヴィオラ奏者)
演奏: フィルハーモニア・アンサンブル東京
曲目:
1. J. S. バッハ ブランデンブルグ協奏曲 第3番
2. J. S. バッハ ブランデンブルグ協奏曲 第5番
(ピアノ 元井 美幸、フルート 福原 美磯、 バイオリン 村井 美代子)
3. A. ドボルザーク 弦楽セレナーデ
御世辞にも広いとは言えないステージにびっしりと楽器が詰まっていて、中央にはピアノが鎮座。面白いことにピアノの反響板が外されていた状態だった。土屋さんはじめ楽団員達が入ってくる。男性は黒の礼服、女性はいろいろな華やかな色どりのドレスであった。
ゴローさんを探したら......いた!緊張されていると思ったのだが、笑顔も見えて、なんか余裕の感じ。(笑)
コンサートは終始、土屋さんのMCを交えながら進んでいく感じ。
最初になんと凄いサプライズ!土屋さんが、「今日はじつは小澤征爾さんがお見えになっています。」と紹介。後ろを見たら確かに小澤さんだ!まさに館内は狂喜乱舞。私もびっくりしてしまった。
当時、ちょうど癌の手術の後の静養リハビリの期間だった。
土屋さんを応援に来るという、カラヤン時代を支えた両雄の厚き友情を垣間見た感じだが、まさかここで小澤さんに会えるとは思ってもいなかった。
まぁ、アマチュアオケの演奏であるから、それなりなのだが、なんか昔聴いたクラッシックの響き。
昔のホールは音楽専用とはいかず多目的ホールばかりであったから、残響時間が少なく、なんか昭和?いやもっと旧いのだろうけど、そんな印象を受けましたね。まぁステージのところにカーテンがあれだけ沢山あると響き、残響時間はかなりスポイルされると当時は思った。
残響という飾りが無い分、奏者には厳しい環境だと思ったのは事実。なんか、この旧奏楽堂の写真を見ると、本当に懐かしい限り。
今週末行く最新鋭のホールである奏楽堂はどんな感じだろうか?
コメント 0