DG SACDのシューベルト歌曲集 [ディスク・レビュー]
先日日記にしたDG SACD特集で、その作品の大半が、2人のトーンマイスターによって作られていたことをあらためて発見し、しっかりと書きとめた。
現に取り上げた作品のクレジットを見た場合、トーンマイスターそして、編集、ミキシングとして名を連ねていたのは大半がこの2人だった。
1990~2000年代のドイツ・グラモフォンの技術センターだったハノーヴァーのエミール・ベルリナー・スタジオに 2人のエース、トーンマイスターがいて、 それが、ライナー・マイヤール氏とウルリッヒ・ヴィッテ氏。
まさにDGの黄金期の作品は、この2人によって作られてきたといっていい。
ヴィッテ氏は、サウンド的にはギュンター・ヘルマンスの後継者といった存在で、いかにもDGという王道を行く、密度感があって中間色のグラディエーションが濃厚、それでいて肌触りの自然なオーケストラ録音をものにしていた。
一方でマイヤール氏は、DGに新しい風をもたらした。
彼の代表作は ブーレーズ指揮ウィーンフィルのマーラー3番やガーディナー指揮のホルスト「惑星」(これは先日の日記の後に、ついに最近ようやく入手できました。)などで、とても瑞々しく色彩的に鮮やかで かつダイナミックな録音を身上としていた。
先日の日記で取り上げた作品も大半がこの2人の作品で、特にマイヤール氏の作品が非常に多かった。
その一連を聴いて、マイヤール氏は大編成のオーケストラをさばく仕事人というイメージをこれまで持っていたが、そんな作品の中で、歌曲集というちょっと一風彼らしくないというか、大技というよりも、高貴な品位で漂いながら、熱いパッションもどんどん伝わってくる、そんな作品に出会った。
DG SACDの日記を書いてから、このディスクに知り合って、すごいヘビロテになってしまい、まさに虜になってしまい毎日聴いている。ちょっと嵌っていてうれしい気分なので日記にしてみたくなった。
歌曲王シューベルトの歌曲「魔王」。
シューベルト「魔王」は、高熱にうなされたときにみる悪夢のような内容で お父さんと幼い子供、そして魔王という3人のキャラクターを 一人で歌い演じ分けるという趣向である。激しい嵐が 木々を叩きつけるような短調の激しい曲調で進んでゆく。
でもその中で「魔王」の歌うところだけが長調で夢見るように美しいのが驚きで心惹かれるのだ。
なんか全体のバランス、曲調として、すごく両極端なところがあるのだけれど、すごく面白い。
この「魔王」をオーケストラ伴奏に編曲した録音がある。
幻想交響曲で知られるベルリオーズが編曲したものとドイツ後期ロマン派のマックス・レーガーが編曲したものと2種類ある。 それぞれ個性があって実に面白い。
シューベルト歌曲集
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター/トーマス・クアストフ
アバド/ヨーロッパ室内管弦楽団
http://goo.gl/4mUb7w
今回偶然にもDG SACD収集の旅で発見できたこのディスクでは、2枚組になっていて、オーケストラが劇的に鳴って派手なベルリオーズ編曲を メゾ・ソプラノのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが、そして重厚なレーガー編曲を バス・バリトンのトーマス・クアストフが歌っている。
今回発見したDG SACDのこのディスクは、この両ヴァージョンを素晴らしい歌手2人で歌い分けているという、とてつもなく貴重な作品であることがわかったのだ。アバド/ヨーロッパ室内管弦楽団によるオーケストラ伴奏である。
録音も本当に素晴らしい。
オッターの声なんて、彼女らしい瑞々しい気品のあって張りのある歌声(さらに若い頃だし。(笑))が、じつに綺麗に録れていて、素晴らしい録音だと思う。
いま自分が集めてきたDG SACDの中で、このディスク、ヘビロテ・ディスクとして毎日聴いているのだ。
残念ながら現在廃盤なのだが、上記のリンク先では、中古品で10000円、そして新品であれば30000円くらいのプレミアが付いているが、中古マーケットプレイスで売っているようだ。これだけの高値を払っても、この2バージョン編曲の「魔王」をDG SACDで聴けるなら、自分はお安いと思います。(悪魔のささやき)
人生で500曲あまりの歌曲を作曲した歌曲王シューベルトの作品の中でも、この「魔王」は自分が数聴いた作品の中でもとりわけお気に入りであったりする。
最近の録音では、PENTATONEにて、実力派テノール歌手、クリスティアン・エルスナーがシューベルトの歌曲集を録音して、この「魔王」を録音している。彼が歌うのはレーガー編曲。というかこのアルバムに収録してあるシューベルト歌曲集は、ほとんどがレーガー編曲のオーケストラ伴奏である。ヤノフスキ&ベルリン放送響が伴奏をつとめている。
シューベルト歌曲集~レーガー、ヴェーベルン編曲による管弦楽伴奏版
エルスナー、ヤノフスキ&ベルリン放送響
http://goo.gl/xFn9LT
こちらはトーンマイスターはジャン・マリー・ヘーセン氏の作品なのだが、さすが最新のサラウンドだけあって、じつに洗練されていて、柔らかい質感、解像度が高く細やかで、音が濃いというか情報量が豊富で、本当に最新の録音技術という感じですね。
こちらも素晴らしい録音です。
シューベルトの歌曲をこれだけのクオリティの高い録音で聴けるのだから、こちらも絶対持っておくべき1枚だと思います。
いやぁ、やっぱり自分は歌曲というジャンルが本当に好きだなぁ、とつくづく......
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