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ストラディヴァリウス・コンサート2016 [国内クラシックコンサート・レビュー]

ストラディヴァリウス13挺の饗宴。一同に集まったスター演奏家たち。艶やかな音色。なんとも贅沢なコンサート。

自分の中では、出演者の中で、諏訪内晶子さん、アラベラ・美歩・シュタインバッハー、そしてハーゲン・クァルテットなどがお目当てのアーティストであった。 


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今日のコンサートで配布されたプログラム。
かなり分厚くて、詳細な情報が詰め込まれた丁寧に作られた資料で、正直お金を取ってもおかしくないものと感じた。

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公演が始まる前に、このプログラムに目を通す。
浅識な自分にとって、とても新鮮な情報が飛び込んでくる。



日本音楽財団は、現在所有しているアントニオ・ストラディヴァリとバルトメオ・ジュゼッペ・グァルネリが制作した世界最高クラスの弦楽器20挺(ヴァイオリン14挺、チェロ3挺、ヴィオラ1挺、グァルネリ・デル・ジェス製ヴァイオリン2挺)を国籍問わず、国際的に活躍する演奏家や若手演奏家に無償で貸与している。

そして、日本音楽財団は、その楽器貸与者を集めて、国内外で演奏会を行い、特に10挺以上のストラディヴァリウスと、その貸与者が一同が会する「ストラディヴァリウス・コンサート」は、世界的に稀なコンサートして話題になっていて、チケットの売上金は、演奏会開催地のNPO等が実施する音楽振興や福祉活動に寄付されるのだそうだ。

このプログラムに書いてある日本音楽財団会長の塩見和子さんのインタビューが大変興味深い。誰に貸与するかは、楽器貸与委員会が決定するだとか、楽器のメンテナンスは、管理者として財団が管理、楽器貸与終了の難しさ、など、本当にここでしか読めない貴重な内容が記載されている。

現在、この日本音楽財団の楽器貸与委員会の委員長は、あのベルリンフィル音楽監督&首席指揮者のサー・サイモン・ラトル氏なのだ。前任者で、20年間務めたロリン・マーゼル氏より引き継ぐ形となった。

ラトル氏は、さっそく今回のプログラムにも寄稿を寄せている。

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年表を見てみると、1998年にスタートして、貸与者の出演者を見ると、蒼々たるメンバー。日本音楽財団が貸与してきた方たち。

もうこの頃から諏訪内晶子さんは常連ですね。他に国内だけでも徳永二男氏、樫本大進氏、石坂団十郎氏、竹澤恭子さん、庄司紗耶香さん、などなど。

自分は、お恥ずかしながら、いままでこのコンサートに行ったことがなかった。今回が初体験。だから、このプログラムを読んで、はじめてこういう歴史・経緯を知ったのである。

なぜ、このコンサートに行こうとしたか、というと、我が愛すべきアラベラ・美歩・シュタインバッハーさんが出演するため。アラートで発覚したのである。(笑)

年表を見ると、彼女は2008年にも出演しているようである。

通称ストラドと呼ばれるこの楽器、なにもヴァイオリンとは限らないんですね。アントニオ・ストラディヴァリが制作したのは、他にもヴィオラとか、チェロもある。

ちなみに、今回出演された出演者と、そのストラドの使用楽器のリストを書き出してみる。

ハーゲンクァルテット    パガニーニ・クァルテット
            
ヴェロニカ・エーベルレ   ストラディヴァリウス 1700年製ヴァイオリン「ドラゴネッティ」
セルゲイ・ハチャトリアン  ストラディヴァリウス 1709年製ヴァイオリン「エルグルマン」
スヴェトリン・ルセフ    ストラディヴァリウス 1710年製ヴァイオリン「カンポセリーチェ」
諏訪内晶子         ストラディヴァリウス 1714年製ヴァイオリン「ドルフィン」
レイ・チェン        ストラディヴァリウス 1715年製ヴァイオリン「ヨアヒム」
アラベラ・美歩・シュタインバッハー ストラディヴァリウス 1716年製ヴァイオリン「ブース」
有希・マヌエラ・ヤンケ   ストラディヴァリウス 1736年製ヴァイオリン「ムンツ」
パブロ・フェランデス    ストラディヴァリウス 1696年製チェロ   「ロード・アイレス
フォード」
石坂団十郎         ストラディヴァリウス 1730年製チェロ   「フォイアマン」

そして、ピアノはスタインウェイ共通で江口玲さん。

この中で、やはりファンである諏訪内さんとアラベラさんのヴァイオリンだけ簡単に記載を抜粋して紹介。

ストラディヴァリウス 1714年製ヴァイオリン「ドルフィン」(諏訪内晶子)

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音色並びに楽器の保存状態が優れており、1715年製「アラード」、1716年製「メシア」に並ぶ世界3大ストラディヴァリウスのひとつと呼ばれているそうだ。なんでも、あの巨匠ヤッシャ・ハイフェッツが愛用していたことでも有名である。

確かに、この夜の諏訪内さんの音色は、他を抜きんでていた。音量、音圧が他と比べて圧倒的だったような気がする。



ストラディヴァリウス 1716年製ヴァイオリン「ブース」(アラベラ・美歩・シュタインバッハー)

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1855年頃にイギリスのブース夫人が所有したため、現在の名が付けられている。彼女はヴァイオリンの才能を発揮した2人の息子たちのためにクァルテットを形成しようと試み、この楽器を購入した。1931年にアメリカの名高いヴァイオリン奏者ミッシャ・ミシャコフの手に渡り、1961年にはニューヨークのホッティンガー・コレクションの一部となった。音色の美しさ、音の力強さにおいて知名度が高く、保存状態も優れている。

贔屓目と言われるかもしれないけれど、今宵の饗宴の中では、アラベラさんのヴァイオリンの音色が一番鳴っていたような印象だった。なによりもヴァイオリンの命である倍音の出方がハンパではなかった。

ところで、確かNHKの特集番組だったと思うが、ストラドのことを特集していて、最新のCG技術を使って、ストラドを完璧なまでにコピーして同じ音色が出るか、という実験をやっていたのを思い出した。

同じ音色は出なかった。やはりエージングというか、木製の筐体自体の経年による熟れ具合というか、それによる音色の豊潤さは、最新技術で形だけコピーしても再現できないものなのだ。

特に呼称は忘れてしまったが、ヴァイオリンの音色を決定しているところのエリアというのがあって、そこの経年度合が大きいようだ。


今宵の饗宴のコンサートホールは、サントリーホール。

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いつもと雰囲気が違っていて、ステージにお花が飾られていてこんなに華やかな雰囲気であった。この写真は自分の座席から撮ったもので、なんと3列目真正面のかぶりつきだった。(ストラドの音色を堪能の他に、ヴィジュアル的に前で見たいという理由がありました。(^^;;

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それにしても、サントリホールのホール内装空間は本当に美しい。自分の感性では、日本国内のホールの中で、1番内装空間のデザインに高級感があって品格があると感じる。


コンサートは、出演者が数名づつカップリングされて、合奏で演奏するため、個々の楽器の音色を聴き分けるということはできなかった。

演目は、ハーゲン・クァルテットによる構成。 

華麗な饗宴であったことは確かなのだが、正直言うと、前半は自分の座席で聴いている分には、思ったほどヴァイオリンやチェロ特有の倍音が出ていなかったような気がした。ストラディヴァリウスにしては、もうちょっと潤いがあってもいいんだけれどなぁ、という印象だった。

でも後半になって一変した。前半が信じられないような感じで倍音出まくりで、弦の発音時にふっと浮かび上がるような粒子の細やかな響きというか潤いがあって、こうでなくっちゃという感じで、気分が一新した。

ホールの湿度や空気の変化により響きがよく透るというか馴染んできたのか、前半とはまったく聴こえ方が違っていた。

特に圧巻だったのが、前半ラストの6人のヴァイオリンとピアノで演奏するリベルタンゴ。

これはもう最高!

これは自分の好みによるところが大きいのだが、アルゼンチン音楽で、ピアソラだとかタンゴを、クラシックの弦楽器で演奏すると、あの独特のリズム感、情熱、もう体の中が燃えたぎってくるというか、堪らなく快感になる。

今回、1st Vnにアラベラさん、2nd Vnに諏訪内さん、で他4人のVnと、江口さんのPfで、これを演奏するのだが、華麗というか、格好良すぎるというしか言葉が見つからなかった。

そして、後半の最後のメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲。
これも最後を締めるにふさわしい壮大な弦楽奏となった。

特に1st Vnの諏訪内さんが主旋律を唄い、グイグイ引っ張っていく感じで他の人よりもはっきりと音色が聴こえてくるのが印象的であった。

そしてVnは対向配置だったのだが、諏訪内さんの主旋律の音色に対して、対向の有希さんの異なる旋律で、輪唱のように重なっていくのが、なんとも美しいと感じた曲だった。

アラベラさんは、京都ツアーの前にご対面できて、相変わらず麗しく、そしてなによりも弦がよく鳴っていたと感じた。調子はよさそう。

そしてコンサート全般を見ると、やっぱり諏訪内さんの存在は大きいな、と感じるところが大きかった。

華麗な饗宴という言葉しか思い浮かばないくらい、贅沢な一夜であった。



 


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