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レイチェル・ポッジャーのディスコグラフィー [ディスク・レビュー]

バッハとヴィヴァルディ。レイチェル・ポッジャーの録音は、やはりこの2人の作曲家の作品がいい。バッハは、ポッジャーをいまの名声の立場にまで引き上げてくれた人で彼女のルーツはここにある。ヴィヴァルディは、最新録音技術を駆使して、いままさに取り組んでいるプロジェクト。

もちろん他の作曲家の作品も魅力的だが、自分の11枚を聴き込んでのとりあえず出した結論。

でもバロック音楽も久しぶりに聴くとなんと心地よい音楽なんだろう。
あの明るい軽やかな旋律は、確かにクラシックの音楽の原点だね。
とても癒される。 


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無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲(バッハ) 
ポッジャー

http://bit.ly/2Nv2kMy


1999年に発表した「バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ」は、「古楽器による無伴奏」史上最大のベストセラーを記録した。

この1998年から99年にかけて録音された「無伴奏」の成功で、ポッジャーは一躍世界にその名を轟かせることとなった。

まさに彼女の原点はここにあった。彼女はここからスタートした。
まさにポッジャーを語る上では、絶対外せない名盤なのだ。



古楽器によるバッハ無伴奏。

自分は最初よくわかっていなくて、これはSACDではなくCDなので、スルーしていた。
しかもバッハの無伴奏は、後で紹介する「守護天使」のSACDを持っていたので、尚更スルーだった。ところがポッジャーのことを調べてわかってくると、このCDが彼女のすべての原点でありスタートであることがわかり、急いで今回注文した。

バッハ無伴奏にありがちなロマン派志向の演奏に聴かれるような重苦しさとは全くその対極にある演奏。かなり印象的な速いテンポで進められる。なんか疾走感があって、なにかに掻き立てられるような演奏。かなり情熱的なバッハだと思う。熱いパッションがどんどんこちらに伝わってくる。

かなり訴求力ある。強烈にアピールしてくるバッハ無伴奏だと思う。

録音的には、2chステレオ再生とは思えない空間感で、しかもヴァイオリンの音の芯が太くて、かなり肉厚なサウンド。広い空間を朗々と鳴るその鳴りっぷりに圧倒される。定位感もある。

これは自分のオーディオ・システムに起因するところなのかもしれないが、2chステレオのほうが、かなり厚いサウンドで、これがSACDサラウンドになると、確かに情報量やステージ感は圧倒的に有利になるのだが、音の芯というか、どこか薄いというか線の細いサウンドに感じてしまうのだ。


2ch再生のほうが肉厚。

あとで、紹介する「守護天使」は、同じバッハ無伴奏でSACDサラウンドなのだが、なにかどこか音が薄いというか、ワンポイント的に聴こえてあっさり感を感じてしまうのだ。

とにかくこのCDは、ポッジャーを語る上で避けて通れないディスクなのだ。 



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ヴァイオリン協奏曲集(バッハ) 
ポッジャー&ブレコン・バロック

http://bit.ly/2NwdK2K

1999年の「バッハ無伴奏」で一躍スターダムにのし上がったポジャーであるが、その後、ピノック率いる古楽器オーケストラ「イングリッシュ・コンサート」や、マクリーシュ率いる「ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズ」のリーダーとして活躍。

その後は「エイジ・オブ・エンラントゥンメント管弦楽団」や「アルテ・デイ・スオナトーリ」など複数の古楽器オケに関わり、さらにギルドホール音楽演劇学校と王立ウェールズ音楽大学、デンマーク王立アカデミー、ブレーメン音楽大学でバロック・ヴァイオリンの教授を歴任。

2006年には南ウェールズの田園地帯でモーツァルト音楽財団を設立して若い音楽家を援助し、同地で開催されるブレコン・バロック音楽フェスティヴァルの中心人物として活躍。2008年からはロンドン王立音楽アカデミーでバロック・ヴァイオリンを教えていたりしていた。

まさに、ポッジャーが日本ではあまりその活躍、知名度の高さが知られていないのが不思議なくらいの古楽界ではスターであった。

その名声を徹底的にしたのが、このバッハのコンチェルト。

自分のユニット、ブレコン・バロックを結成したのは、2007年だが、録音したデビューCDは2010年、まさにこのバッハのコンチェルトなのであった。このバッハのヴァイオリン協奏曲は、ユニバーサル批評家の称賛を集めた。

このSACDは、結構自分のオーディオ仲間内でもオーディオオフ会などに使われていた定番のソフトだったのだが、これだけの名声のある録音にしては、自分のオーディオと相性は、じつはあまり良くないのだ。

サラウンドで聴いているのだが、普段のChannel Classicsサウンドよりも、若干控えめで、ふわっと部屋中に広がる音場感が物足りない。ちょっとこじんまりしていて、音量もそんなに大きくない。
あのいつもの前へ前へ出ていくような感じがなく控えめなのだ。

じつはあまり自分は胸ときめかないディスクなのだ。(^^;;

バッハのコンチェルトなら、これもオーディオオフ会で定番ソフトであったDGのヒラリーハーン盤のほうが、ずっと自分のオーディオとは相性が良かった。

でももっと逆の見方をしたら、エンジニアのいじりがない、最も古楽らしい自然な響きがするアルバムだということもいえるのかもしれない。 


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モーツァルト:協奏交響曲、ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集 
ポッジャー、P.ベズノシウク、エイジ・オブ・インライトゥメント管


http://bit.ly/2O8u6iX


ポッジャーのヴァイオリンと鬼才ベズノシウクのヴィオラ。2人の名手と2台のストラディヴァリウスの対話が創り出す、「協奏交響曲」。モーツァルトとハイドン。

聴いていて、明るいとても楽しい曲。特にモーツァルトが良い。
弦合奏、ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いが素晴らしく、特に解像感がいい。
弦が擦れるような感覚が伝わってくるような緊迫感のあるサウンドなのだ。優秀録音。
チェンバロが重なってくると、いわゆるあの古楽独特の雰囲気のあるサウンドで心地よい。
それに増して、驚くのは、演奏している人たちのアンサンブルの精緻さ、正確さ。
かなりう~んと唸るくらい素晴らしい。

ポッジャーはバッハとヴィヴァルディと断言しちゃったけれど、このモーツァルト&ハイドンもじつに素晴らしいです。 


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モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲集、
M.ハイドン:二重奏曲集 
ポッジャー、J.ロジャース

http://bit.ly/2NyktZR


ブレコン・バロックのメンバーであり英国最高峰のヴィオラ奏者、ジェーン・ロジャースとのデュオによる「モーツァルト&ミヒャエル・ハイドン」。ポッジャーはモーツァルトとハイドンの組み合わせがとても好きだ。


これも先に紹介したアルバムとテイストは似ている。モーツァルトとハイドンはとても明るくて楽しい曲なのがいい。モーツァルトらしいあの軽妙で親しみやすい旋律。それをヴァイオリンとヴィオラの2本で奏でていく掛け合いがシンプルでじつに美しい。先のアルバムは、古楽室内オケとの協奏曲だったが、こちらはヴァイオリンとヴィオラの2本で奏でる。

録音のテイストは、やはりジャレット・サックス。ぶれないというか、変わらない。弦楽器サウンドに必須の解像感がバッチリだ。弦が擦れる音が聴こえてきそうだ。 


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守護天使~無伴奏ヴァイオリン作品集~バッハ、ビーバー、タルティーニ、ピゼンデル、他
ポッジャー


http://bit.ly/2J2E7uz


ガーディアン・エンジェル、守護天使と題されたこのアルバムは、レイチェル・ポッジャーのお気に入り作品を集めたもの。ポッジャー自身の編曲によるバッハの無伴奏フルートのためのパルティータのヴァイオリン・ヴァージョンに始まり、アルバム・タイトル由来の名曲であるビーバーのパッサカリアで締めくくられる。

先の調布国際音楽祭2018でもこのアルバムから選曲された。

いままでの自分のこのアルバムの位置づけは、ポッジャーの無伴奏を聴くなら、この守護天使、というくらい圧倒的な信頼を持っていた。それは、やはりSACDの5.0サラウンドで収録されているということに他ならない。

でもポッジャーの伝説のデビューCDの無伴奏を聴いてから、少し考え方が変わってきた。

聴き込んでみると確かに最新録音としての完成度は高いのだけれど、一度デビューCDを聴いてしまうと、その音の薄さがどうしても気になってしまう。空間バランス(背景の空間に対して、楽器の響きの広がり)が、どこかワンポイントっぽく聴こえ、オフマイク録音のように感じる。

確かに美音系なので、いい録音だと思うのだが、オーディオマニアというのは、修羅場をくぐってくると、ヒネクレてくるというか、単なる美音では感動しない、というか、サウンドのどこかにエンタメ性を求めたりする生き物。

いまの自分はデビューCDのほうがクル。

でも最新録音としての完成度は高いアルバムだということは間違いありません。 


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二重&三重協奏曲集(バッハ) 
ポッジャー&ブレコン・バロック


http://bit.ly/2NuUoLp

これが、まさに自分の中でのポッジャーの最高傑作。ポッジャーの録音といえば、自分にはこのディスクのことを指す。いままで数多のオーディオオフ会での拙宅、または持ち込ソフトなど、自分のオフ会用のキラーコンテンツだった。

もちろん優秀録音なのだが、なによりもその楽曲の良さが自分には堪らなかった。

クラシックのアルバムというよりは、まるでポップスのアルバムを聴いているような収録曲の1曲1曲すべてにおいて、いわゆるポップスでいうところのフックの効いた(人の心を一瞬にして惹きつけるような旋律のサビの部分)曲ばかりなのだ。

トランスポートのリピート機能をONにして、ずっとエンドレスで聴いていても、1日中かけっぱなしにしても全く飽きがこないくらい自分は相当大好きだった。

このアルバムに収められているのはバッハの4つの多重協奏曲レパートリー。

録音面では、このディスクは2ch再生だとなかなか再生困難で難しい箇所も多い。弦楽器の多重なので、ある意味団子状態で混濁してしまうのだ。サラウンドで聴くと、これが結構各パートの弦楽器が分離して聴こえてスッキリ聴こえてくるのだが、2ch再生だとなかなかハードルが高いディスクだと思う。

システムの解像度分離の良さをテストするディスクとして機能していたところも多かった。

録音がいい!という点では、最近出てきた新しい録音のほうが、さすがに洗練されているとは思うが、このディスクでも十分すぎるくらいお釣りが出るほど素晴らしいサウンドのアルバムだと思う。

ポッジャーの1枚と言ったら、このディスクしかない! 


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「ラ・チェトラ」全曲(ヴィヴァルディ) 
ポッジャー、オランダ・バロック協会(2SACD)

http://bit.ly/2NzIxMa


ポッジャーの録音の中で、最も録音が素晴らしいと思う最新録音。いきなりの冒頭の通奏低音の分厚さにたまげる。いままでのChannel Classicsの録音ポリシーに沿っているのはもちろんのことだが、それ以上に音が分厚くて、ちょっと全体的にやりすぎ感が漂う感じもなくはない。(笑)


生音はあきらかに古楽器の響きなのに、録音の味付け(やりすぎ感?。。。笑笑)で、とてもモダンっぽく聴こえる。

まさにChannel Classicsの真骨頂といってもいい。音が分厚いのと情報量多いよね。原音に響きがほんのり乗っている豊かさで、それが音の厚みにつながっていて、そこからさらには全体のスケール感の大きさにつながっている感じ。

芋ずる式です。(笑)

確かにエンジニアの操作感を感じてしまうけれど、いわゆるオーディオ快楽というオーディオマニアが好きそうなサウンドだ。

このアルバムは、ポッジャーの最新のヴィヴァルディ・プロジェクトの1枚である。
ヴィヴァルディは円熟期の大作「ラ・チェトラ」。なんて素晴らしい曲なんだろう!

ヴィヴァルディって本当にバロックらしい、とてもシンプルで明るい調性の曲で素晴らしい。
まさに自分のお気に入りのディスクなのだ。 



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「調和の霊感」全曲 (ヴィヴァルディ)
ポッジャー&ブレコン・バロック(2SACD)

http://bit.ly/2Nwa8O8


この1枚も最新のヴィヴァルディ・プロジェクトの中の1枚。
調和の霊感~ピエタ音楽院の教職に就いて8年目、ヴァイオリンと合奏と作曲を教えていたヴィヴァルディが、33歳にして初めて出版した協奏曲集である。

これもブレコン・バロックとタッグを組んでいる。
これはちょっといままでの録音のテイストとちょっと違った趣。原音に響きの潤いが乗っていない。
弦の擦れる音が聴こえてきそうな解像感は高いと思うが、全体的にソリッドな感じ。いままで録音の妙で、古楽の響きもモダン風に化粧をしていたのが、そういうのをいっさいやめて原点に戻った感じ。まさに”古楽の響き”。

でももちろんテイストは違っていても優秀録音であることは間違いありません。

同じヴィヴァルディでもこんなに違うんだね。バロックの明るい解放的な雰囲気というより、もっと求道的で突っ走る感じで疾走感がとてもカッコイイ魅力になっていますね。 



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「ロザリオのソナタ」(ビーバー)
ポッジャー、シヴィオントキエヴィチ、他(2SACD)

http://bit.ly/2NygPiB


ポッジャーのディスクの中でも3本の指に入る大好きな録音。もちろん録音の優秀さ、そして楽曲の良さという両方において。

ポッジャーがついにビーバーのロザリオ・ソナタを録音した。

スコルダトゥーラ(変則調弦)などの特殊技法も要求され、通奏低音との絡みも重要なビーバーの人気作「ロザリオ・ソナタ」。ビーバーは、オーストリア・バロックの作曲家。その当時のヴァイオリン演奏技法を集大成したと言われる「ロザリオ・ソナタ」が、そんなビーバーの代表作なのだ。

自分は、大昔にちょっと嵌って聴き込んだことがあるが、ずいぶんご無沙汰していた。
そう!ハマるくらいかなり個性的な曲なのだ。ちょっと陰影っぽくて哀愁漂う感じでカッコイイ。
そんなロザリオ・ソナタをポッジャーが録音していたなんて!

これも、かなり録音が素晴らしい!
いわゆる”やりすぎ感”(笑)。

実音にほんのりと響きがのっていて(というか乗せている)、音に厚みがあって、そこから芋ずる式に全体のスケール感が増すという方程式ですね。生音では絶対こうは聴こえないよな、という自信はあります。(笑)

大好きな1枚です。 



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「四季」「恋人」「安らぎ」「ムガール大帝」 
レイチェル・ポッジャー、ブレコン・バロック


http://bit.ly/2NvcpJo

これもヴィヴァルディ・プロジェクトの1環。ポッジャーのまさに最も新しい最近リリースされたホヤホヤの最新録音。

もちろん慌てて買ったのだが、残念ながら届いたディスクは、不良ディスクで、SACD層を読み取らず、CD再生しかできなかった。もちろん返品交換してもらうが、ここでは録音評は差し控える。
間に合わなくて誠に残念!

学生だった頃のポッジャーが、ナイジェル・ケネディの名録音を聞いて以来、演奏と録音を夢見てきたというヴィヴァルディの傑作。

四季なんて、まさに誰もが知っている名曲。なぜこのような名曲を、というのもあるが、そういう理由があったんですね。もちろん今進行しているヴィヴァルディ・プロジェクトと相重なる幸運もあったのでしょう。

新品が届いたら、じっくり聴き込みたいね。 


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「フーガの技法」 
レイチェル・ポッジャー、ブレコン・バロック

http://bit.ly/2OatqtI


2015年に英国王立音楽院(RAM)のバッハ賞を受賞(歴代10番目、女性としては初受賞)したポッジャー。無伴奏、ソナタ、協奏曲と築いてきたバッハ伝説の最新章は、J.S.バッハの対位法の粋を集めた傑作「フーガの技法」に到達。

パートナーは、もちろんブレコン・バロック。

妙なエコー感、やりすぎ感がなく、とても自然なテイストの録音。ある意味、Channel Classicsっぽくない。(笑)

暗めで地味な旋律で、音量、音色などの強弱の振幅変化が乏しく、それが永遠に続くような不思議な感覚の曲である。バッハの対位法は、いろいろ勉強させられることが多く、今尚勉強中のテーマでもある。


以上、ミッションコンプリート!

ご苦労さんでした。

ずばりまとめると、レイチェル・ポッジャーのマイ・フェバリット ベスト3と言えば、

・二重&三重協奏曲集(バッハ)
・「ラ・チェトラ」全曲(ヴィヴァルディ)
・「ロザリオのソナタ」(ビーバー)

ということになります。
ぜひポッジャーを聴いてみたいなら、この3枚をお勧めします。


あっ、もちろんこの3枚の他にデビューCDのバッハ無伴奏も、絶対買ってください。

これも外せません!


日本に来日するなんて幻の幻。

オーディオ再生のみの自分の世界の中で生きてきたレイチェル・ポッジャー。

それが実演に接することができて、さらにこうやっていままで買いためてきて、きちんと整理することのなかったディスコグラフィーも自分の頭の中で踏ん切りがついた。

これも予想だにしなかった突然の来日がもたらしたうれしい誤算だろう。

ポッジャーは、現在、自分とまったく同世代の50歳。

実演、間近で観た彼女は全く商業っぽくなく、等身大の自分のスターとして、これからもファンでいて追いかけていくことは間違いないことだと思います。







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