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体験! 札幌コンサートホール Kitara [国内音楽鑑賞旅行]

このホールは1997年に開館された、という。ずいぶん前のことだ。お恥ずかしい話ながら北海道民としてその存在すらまったく知らなかった。そもそも知ったきっかけというのは北海道の実家でTVを観ていると、そのローカルCMで、このKitaraのCMが随分頻繁に流れるのだ。

北海道の実家への帰省は、それこそ大学を卒業して上京以来、ほぼ毎年おこなっているので、25年以上も経過する。それなのに、KitaraのCMを観るようになったのは、ここ2~3年のことだ、と思う。

ものすごい頻度でCMが流れる。CMの内容は、コンサートの告知だ。
首都圏に住んでいる自分にとって、クラシックのコンサート告知がこんな頻繁にTVに流れる、というのは、首都圏では絶対あり得ない、ことだと思った。プロ野球の日本ハムのCMもすごい。

やっぱりアーティスト招致のためのスポンサーを地元ローカル企業などで支援していることもあり、そのための集客のための宣伝活動というのをメディアを媒体に北海道あげて応援するというのは当然のことなのだろう。

コンサートを運営する基盤がすでに長い経験でインフラとして整備されている首都圏とは根本的に違う、地域ローカル型の仕組みなのだと思う。

ホールフェチの自分にとって、実家の北海道にこんな立派なコンサートホールがあるならぜひ行ってみたい、と思うようになるのは必然だろう。ここ2~3年の間で、すごく気になるコンサートホールになっていった。

さっそく今回の帰省の機会に体験することにした。
場所は、札幌の地下鉄南北線の中島公園駅で下車、3番出口から徒歩7分だ。
3番出口を出ると、右に曲がっていくと、すぐに「札幌コンサートホール」という案内掲示板が出ていて、その方向にただ進んでいけばよく、迷うことはほとんどあり得ない。

そしてついに現れた。すごい巨大なドームだ。外観はコンサートホールというよりも企業の展示会を開くドーム会場のような感じだ。

札幌コンサートホール Kitara
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ガラス張りのエントランスホールは、ゆるやかな曲線をもって構成されている。開演前の待ち時間を快適に過ごせるように、広い空間を確保している、という感じだ。写真の先のほうにある階段を登りきったところに、小ホールのエントランスがある。写真を撮影している私の後ろのほうが大ホールのエントランス。
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大ホールのホワイエは、オペラ階段をあしらった吹抜け空間となっており、カフェコーナー、クロークなどがある。なかなか近代的なデザインだ。ちなみにドリンクコーナーは、ソフトドリンクは300円だ。都内のホールだと600円はする。さすが北海道は安い!
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そしていよいよホール内に入る。このときが1番興奮する。ホールフェチの自分にとって、はじめて経験するホールは、ホワイエで待っているときからドキドキしていて、そしていよいよ開場というところで、ホール内に入ったときに目の前に一面に現れる、そのホールの内装空間。

このときは、いつも自分は逝ってしまう。(笑)やはりこういう趣味を持っている人間にとって、この瞬間が最高のひとときなのだ。

夢中で写真を撮る。

3階席から俯瞰したホール
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私の座席~1階3列目の真正面
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ステージから後方席を撮影。
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側方の木造のモコモコのインテリア
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このホールはアリーナ型のワインヤード形式のホール。
このホールを俯瞰すると、その全体が持っている雰囲気、色調のデザインなどサントリーホールにそっくり。特に天井の造り、ぶらさがっているシャンデリア風の照明などサントリーの忠実なデッドコピーと言っても過言ではない。結構サントリーを意識してデザインされている感じを抱く。

ステージ前から客席全般を撮ると、後方になるにつれ、観客席の勾配が小さく、なぜか天井との間隔が狭く閉塞感を感じる造りだ。また、この内装デザインの一番の特徴は、階上席の客席の縁取りが曲線状になっているところだろう。このデザインがホール全体のイメージを作り出している。

キャパは2008席ということだから、サントリーやみなとみらいと同じくらいだ。
建物の外観からするともっと大きいと思っていた。

事前にマイミクさんに情報としてもらっていたのだが、このホールは木造ホールである。北海道の木材を使っているらしい。曲線状になっている客席の壁の表面だとか、ホールの左右側面上の不思議なモコモコのデザインなんかの塗装表面を観ると確かに木目調で、木造である。この側面上のモコモコのデザイン、音の反射などの音響を意識しての形状な
のだろうか?それともただのインテリア感覚?

もうひとつ気になったことは、ステージ上方に反響板がなかったこと。
ワインヤード形式の場合、ステージが観客席に囲まれているため、ステージから発せられる直接音が反射するための壁が遠くて、音が拡散気味で薄くなる、という欠点がある。それを少しでも緩和するためにステージ上方に反響板がある。

シューボックスのホールであれば、ステージからの直接音は側方、後方の壁ですぐに反射され(間接音:響き)、それがステージからの直接音といっしょに混じることで客席の方の耳に心地よい音響となる仕組みなのだ。側面の壁からの反射音が大きいほど音源の広がりや、音に包まれた感じがする訳である。つまり音が濃いのである。

でもシューボックスだと中、後方席の人がよくステージを見れない、視認性が悪いという問題もあって、視認性改善のためにステージを観客席が取り巻くというワインヤード型が考案された、という経緯がある。

でもそれが原因でこのワインヤード形式の永遠の音の欠点が課題として残ってしまった。

でもミューザ川崎も反響板は見当たらない。最近の新しいワインヤード形式のホールには反響板はないみたい。なくても問題ないようにどこかで音響上の工夫がされているのであろうか?

さて、肝心の音響はどうであったか?
今回の公演はオケではなかった。本当は札響(札幌交響楽団)の演奏をこのホールで聴きたかったのだが、カレンダーの都合により無理だった。そしてオルガンコンサートにした。後述するがオルガンはそれはそれで素晴らしいのであるが、ホール全般の音響の印象を感じ取るには、やはりオケが1番自分にはわかりやすい。いままでもずっとそうしてきたからだ。

そういうことで正直、今回の経験だけでは、このホールの音響の印象を捉えることは出来なかった。

スマン、申し訳ない。

ただ、コンサート開演前の観客席のざわめき、話し声の響き方を聴いているだけでも参考になる。それによるとそんなに響くという感じでもなく、どちらかというとデッドな印象を受けた。

木造ホールなので、響きがやわらかい暖色系の質感という印象を抱く。
それを確かめるために、ぜひここで弦の音色を聴いてみたかった。
ヨーロッパでは、よく木造コンサートホールに音響上の失敗は少ないと言われていて、その原因が木材は低音域をほとんど反射し、高音域を程よく 吸収するため、残響時間に高音、低音でばらつきが少なく平坦になりやすいことにある、という理論がある。全帯域において時間差なく耳に届くというのは、聴感バランスが良いのだ。

ヨーロッパの木造ホールで音響が素晴らしい代表的なホールが、アムステルダムのコンセルトヘボウ。
じつにやわらかい質感の音色で素晴らしかった。

ここKitaraでもきっとそのような素晴らしい音響が期待できると確信する。

でも思うにこのホールでオケを聴くのはスケジュールさえ合えば結構簡単なことかもしれないけど、ここの自慢のオルガンの音色だけを満喫するという経験ってなかなかできないのではないだろうか?そういった意味で、今回の経験はよかったと思っている。

オケは近いうち絶対経験する。


さて、今回経験したのは、オルガンコンサート。

これがKitara自慢のパイプオルガン
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大ホール正面に立つオルガンは、アルフレッド・ケルン社が、Kitaraのために2年の歳月を費やして製作したもの。パイプの数は4976本。およそ70ストップから生まれる豊潤な響きは聴衆の心をゆさぶる。日本の数多あるコンサートホールに存在するパイプオルガンの中でも、このKitaraのオルガンは大きいほうで有名なのだ。(サントリーやミューザ、芸劇など上には上があるが。)まさに壮大な音色だった。

重厚なオルガンの音色がホール一杯に広がっていく”音のさま”は、まさに圧巻。重厚な響きなんだけど音色はすごい多彩というか色彩感豊富な感じだ。また奥行きや深みも感じられる。特にオルガン特有のあの重低音、ホール全体に響き渡っていると聴いているとなんかクラクラめまいがするというか、酔う感じなのだ。

文字通りそのままだとオルガニストの背中しか見えないため、側方にカメラを用意して、横から見た様子をステージ上に設置されたスクリーンで映し出す、という工夫をしていた。
これだとオルガニストの演奏風景が良く見える。

そうするとスクリーンで見ると、この大オルガン、手鍵盤4段と足鍵盤の2種類を巧みに使って演奏しているのがよくわかる。特に足鍵盤で操作してもきちんと音色が奏でていて、ピアノのペダルとはちょっと役割の意味合いが違うのがよくわかった。

Kitaraの有名なパイプオルガンの音色を聴く、というのはとても貴重な経験だった。

近々にアンネ・ゾフィー・ムターがこのホールでリサイタルをするそうでCMが頻繁に流れていた。行きたかったなぁ。
弦の音色を確認する上では申し分ない。

これを機会に、今後北海道に帰省したときは、必ずこのKitaraでコンサートを聴くことに決めた!
CMを観ていると、札幌交響楽団の定期公演は当然にしても、外国有名演奏家を結構招致したりしていて、順調なご様子。楽しみなホールが、またひとつ見つかった、という感じだ。


オルガン名曲コンサート

2013/5/3 15:00~17:00
札幌コンサートホール Kitara

J.S.バッハ トッカータとフーガ ニ短調BWV565
フーガ ト短調BWV578「小フーガ」
ルフェビュール=ヴェリー ソルティー
アラン   リタニーJA 119

(休憩)

J.S.バッハ 前奏曲とフーガ ニ長調BWV532
リスト    バッハの名による前奏曲とフーガ
ワーグナー/リスト編曲 楽劇「タンホイザー」より巡礼の合唱Ⅱ
ヴィドール オルガン交響曲 第5番 ヘ短調 作品42-1より
       第5楽章 トッカータ

オルガニスト:椎名 雄一郎
         マリア・マグダレナ・カチョル (Kitara専属オルガニスト)


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コメント 4

hi

キタラの反響板は、ちゃんとステージ上の天井からぶら下がってますよ。
ほら、シャンデリア状の照明が付いた宇宙船みたいな形のものが下がっているでしょ?
写真でもわかりますが、当日きづきませんでしたか?
by hi (2016-01-30 17:27) 

ノンノン

hiさん

ちょっと写真ではわかりにくいですが、よく考えみるとワインヤードで反響板がないホールってありえませんよね?(笑)

ステージ真上には、シャンデリアはありますが、ちょっとわかりにくいですね。でも観客席の真ん中上には大きな、それらしきがありますね。
by ノンノン (2016-01-31 18:00) 

gkrsnama

サントリーに似てるって?そりゃ作った会社がおんなじだもん。永田音響設計。キタラの方が天井が10m高く一席当たりの空間が1.5倍デカいです。柔らかいというより、前から後ろまでクリアな音ですね。実測周波数特性は他のホールと違ってどフラット。
by gkrsnama (2016-02-20 14:23) 

ノンノン

gkrsnamaさん

コメントありがとうございます。
Kitaraはじつはオルガンコンサートしか経験がなくて、オケをこのホールで聴いたことがないのです。全体が木造で出来ている優しい空間で、柔らかい音色という先入観がありました。

クリアな音というのは、素晴らしいですね。
このホールが永田音響設計監修というのは存じ上げていました。
というか、結構大半が日本の有名なホールは永田さんですよね。(笑)非常にサントリーに雰囲気があると思いました。
by ノンノン (2016-02-20 18:04) 

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