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オーボエ奏者によるバッハ、モーツァルト作品集 [ディスク・レビュー]

スウェーデンの高音質レーベル、BISの今月の新譜に、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席オーボエ奏者アレクセイ・オグリンチュク氏によるモーツァルトの作品をオーボエでフィーチャリングした作品集がある。

この作品はとても楽しみにしていた。ぜひ日記に書きたいと思っていた。というのも、彼の前作が、同じくBISでの録音でバッハの曲をオーボエで主旋律を綴る作品で、これがじつに美しい珠玉のような作品だったからだ。ゴローさんの推薦盤でもあり、私の愛聴盤だった。

オーボエ奏者にとって、このバッハ、モーツァルトのオーボエ作品集を録音するのは、ひとつの登竜門というか、晴れ舞台、一流の証なのだ。普段は超一流オケの首席オーボエ奏者という立場で演奏し、その一方でソリストとして、このバッハ、モーツァルトを出すというのはオーボエ奏者として、まさにエリートの道まっしぐらの感がある。要はオーボエ奏者として選ばれし者だけが得られる特権だ。

私にとって、このバッハ、モーツァルトのオーボエ作品集で最初に虜になったのは、ベルリン・フィルの首席オーボエ奏者のアルブレヒト・マイヤー氏の作品。DGの録音。友人から紹介を受けたのがきっかけだった。これは衝撃で、特にバッハの作品は毎日のように聴いていたし、iPodの中にも入れて通勤時間にも聴いていた忘れられない作品。どちらかというとバッハのほうが、派手というか華麗な旋律が多く、虜になる。

それに比べるとモーツァルトはちょっと地味なのだが、でもモーツァルト独特の軽い旋律で素敵な作品であることに間違いない。バッハのオーボエ作品集のほうは、特にオーボエ奏者の定番のようでホリガー、ウトキン、ボイド、マイヤーなど 名だたる名手が同じような選曲のアルバムを作っている。

そういうこともあって、大抵まず最初にバッハを出してからモーツァルトを出すという順番が圧倒的に多い。今回のオグリンチュク氏のモーツァルト作品集もそんな経緯があって、前作のバッハに引き続くモーツァルトの作品という訳なのだ。

モスクワ生まれのオグリンチュク氏。コンセルトヘボウ管に入団する前は、ゲルギエフ時代のロッテルダム・フィルの首席オーボエ奏者で、ゲルギエフの信望厚いオーボエ奏者だった。


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アレクセイ・オグリンチュク氏(RCO) 
そんな彼も移籍してすっかりコンセルトヘボウ管の顔になりつつある。今年の秋に、コンセルトヘボウ管の来日公演をミューザ川崎で聴く。そのときに会えるのが楽しみな1人なのだ。 
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アレクセイ・オグリンチュク氏(RCO)のモーツァルト・オーボエ作品集


あの名曲のオーボエ協奏曲、オーボエ四重奏曲、ヴァイオリンソナタのオーボエ編曲版からなる。リトアニア室内管との競演。

美音の映える伸びやかなフレーズで、しかも刻々と変化する絶妙のニュアンス、急速なパッセージでも細かい音符ひとつ疎かにせず機微あふれる吹きこなし、そんな感があってじつに素晴らしい。

BISの録音の特徴は、ダイナミックレンジが広いのか、全体として録音レベルが低い感じなのだが、解像度の高さや鮮度感は抜群で透明感がある。前作のバッハ作品はちょっと残響多めで、弦の中にオーボエの音色が埋まる感じの腰高サウンドだったのだが、今回のモーツァルト作品はまったく録音のテイストが違う。

まずオーボエの音色が凄い録音レベルが高くて前へ前へ出る感じだ。そして音の包囲感が前作と比べてほとんど感じない。オーボエの音色があまりに大きいので、強奏のときに、耳に突き刺さる感じで、ちょっと歪む感じになる。オーディオ再生的に結構厳しいディスクだと思う。

私は思わずいつもより音量を下げました。あせあせ(飛び散る汗)適正音量というのがある。

トーンマイスターのクレジットを見てみると、前作のバッハ作品のときと比べて、プロデューサー&録音エンジニア共に全く新規に入れ替わっている。やっぱりトーンマイスターが違うと、こんなに録音のテイストが違うんだな、と当たり前なのだが思った。

でも、このオグリンチュク氏のBIS盤を聴いてしまうと、昔聴いていたマイヤー氏のDG盤はとても聴けない感じ。

マルチのハンディもあるかもしれないけど、今回のほうがサウンドの完成度は抜群に高い。

聴いていてとても心地よいディスクだ。

常日頃、木管楽器というのはオケの顔、というか華というか、そんな華やかなイメージを受ける。たとえば、よく視聴するベルリン・フィルの演奏風景で、カメラワークでフルートのパユやオーボエのマイヤー(あるいはジョナサン・ケリー)をショ
ットで抜くシーンを観るとすごくイケているし、カッコいいと思ってしまう。もちろん音色的にも木管はオケの下支え的でありながら要所要所で前にも出るとても重要な役割でもある。

特にオーボエの音色が大好きだ。フルートの金属的な音色よりもオーボエの暖かみのあるしっとり感がなんとも聴いていて気持ちがいい。

そんなオーボエの音色でこのバッハやモーツァルトの素敵な旋律を吹かれると、これは本当に最高に至福な音楽なのだ。もちろん、このディスクはオーディオオフ会で求められるような、音の凄味を味わう、そういった類の録音ではない。あくまで弦/ピアノ/オーボエによる軽奏音楽で、BGM的に、音楽を楽しめるそんな1枚だと思う。

ぜひ聴いてみてください。


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