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myrios classics の新譜 [ディスク・レビュー]

タベア・ツィンマーマンやハーゲンSQを看板スターとして擁するmyrios classicsレーベル。

室内楽専門のレーベルだが、その録音品質の高さでは、たぶん自分が聴いている高音質指向型レーベルの中では断トツの完成度だと思う。彼らの新譜には裏切られたことがない。

PENTATONEやBIS、SIMAXなどの新譜は概ね当たりなのだが、でも外れも結構ある。お財布に限界がある自分にとっては、本当に信頼度の高いレーベルなのだ。

myrios
classicsは、2009年に設立された比較的新しいドイツのレーベルでオーディオマニア御用達のサウンド指向型。現在30歳代の若きシュテファン・カーエンという人が設立したレーベルで、デュッセルドルフでサウンド・エンジニアの技術を学び、並行してロベルト・シューマン大学にて音楽学も究めている、というから、オーディオというハード面、そしてクラシック音楽というソフト面の両面を兼ね備えた人なのだ。


良い音楽を高音質、高品質のフォーマットでリスナーに届けるために、わざわざレーベルを立ち上げたというこだわりがある。我々にとって本当に理想の人なのだ。


私は、タベア・ツインマーマンとハーゲンSQのこのレーベルでのアルバムは全部揃えているのだが、じつに素晴らしい。


共通するそのサウンドポリシーの印象は、トレイに載せて最初に出てくる音の印象が、録音レベルが高くて、鮮度感がある、というかすごいエネルギー感があるテイストなのだ。そして空間がうまく録音・表現されているというか、音場が広くてSPからふわっと広がる感覚が素晴らしい。でも音質はとても硬質で研ぎ澄まされた感覚で、結構それが音場感とうまくトレードオフの関係が成立していて、じつにバランス的に秀逸なのだ。タベアのヴィオラのじつの妖艶な色気のあるサウンドは、それは、それは見事であった。

そんな自分にとって外れのないこのレーベルの新譜。
ピアノの作品であった。 

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ムソルグスキー:展覧会の絵、シューマン:謝肉祭 キリル・ゲルシュタイン



キリル・ゲルシュタインというピアニストは新鋭のピアニストで、ディスコグラフィーも過去に1枚しか出していないフレッシュなピアニスト。ゲルシュタインは、ジャズを勉強するために14歳でアメリカに渡り(バークリー音楽大学)、それからクラシックに「戻った」(マンハッタン音楽学校)というユニークな経歴の持ち主でもある。

なんでも去年の2013年に日本に来日しており(武蔵野文化会館)、このムソルグスキー:展覧会の絵、シューマン:謝肉祭を披露している。今回満を持して、それらのレコーディングをおこなった、というところであろう。


これがじつに素晴らしい作品に仕上がっている。

マルチチャンネルで録音されている作品なのだが、自分のオーディオで、ピアノがこれだけ綺麗な音色で奏でられるピアノ録音はいままでなかった。同じマルチで録音されているPENTATONEやBISのピアノ録音よりも断然こちらのほうが遥かに美しい。文句なしにいままで1番の出来。


ここまで自分が絶賛するにも確信があって、鍵盤のタッチの音、弦を叩くハンマーのフェルトの音、弦の響き、響板の響きの音、これらが綺麗に分離しながらも全体のバランスとしてじつに調和がとれた形で聴こえてくるのだ。録音のテイストも、特徴は、直接音と響きの時間差がすごく短くて、直接音をかなり強化している印象。いままで聴いてきたピアノ録音はもう少し響きが遅れるというか長く余韻たっぷりに響くのだが、今回の作品はもう少しきびきびした引き締まった感じの音色で、じつに厳格で美しい。粒立ちが綺麗で、1音1音に質量感がある。

このような美しいピアノ作品は、本当に聴いたことがなかった。感動であった。


さすがmyrios classicsの新譜、裏切らない!と感心してしまった。


録音は、ベルリン、ナレパシュトラッセ、放送会館というところでのセッション録音。2013年の最新録音。冊子にその模様が撮影されているが、結構殺風景で広い会場なのだが、このようなところでこのような素晴らしい録音ができるとは!

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またこのレーベルの特徴で、録音スタッフがクレジットされていないのだ。


キリル・ゲルシュタインのピアノ自体も優れたテクニックに独特の芯のあるタッチ、しっかりした運指。そんな彼のダイナミックな演奏表現に圧倒されるばかり。


「展覧会の絵」は圧巻。まるでオーケストラ版を聴いているようなスケールの大きさと色彩の豊かさ。また後半のシューマンの「謝肉祭」も白眉の出来で、シューマンのピアノ曲は幻想的でやや鬱っぽい感じがするものだが、彼の作品はもっとダイナミックで鮮烈なタッチでいて、情緒感たっぷりの調べという一見反対に思える見せ所が同居しているのが魅力的だ。


本当にまだまだメディアに登場する機会が少ないピアニストであるが、ものすごい大きな可能性を持った大器だと思う。将来が楽しみ。


myrios classicsは、また素晴らしい看板アーティストを手に入れることができた。

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