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PENTATONE,ポリヒムニアを支えるスタッフたち。 [オーディオ]

5月の大きなイベントであった九州遠征も終わり、6月に入ると、またもうひとつ大きなイベントがやってくる。我が愛すべきマドンナであるアラベラ・美歩・シュタインバッハーが、NDR(北ドイツ放送響)と来日して全国ツアーをおこなうのだ。それに合わせて、PENTATONEから彼女の新譜であるデュトワ&スイスロマンド管とのコンチェルト(メンデルスゾーン&チャイコフスキー)もリリースされる。ツアーは、大阪、東京、愛知と開催され、すべての公演を平日なら会社を休んで追っかけることにしている。

そういう背景もあり、自分的にかなりフィーバーしそうで、そのためにもいろいろ準備しないと思っている。また、今年の海外音楽鑑賞旅行では、スイス・ジュネーヴのヴィクトリア・ホールでスイス・ロマンド管弦楽団を聴くこと、またアムステルダム・コンセルトヘボウでRCOの公演を聴くこともあって、このPENTATONEレーベルと非常に所縁の深いツアーになりそうで、このレーベルについて、いままで日記でも多く取り上げてきたが、こういう大きなイベントを前にして、さらに深く掘り下げた彼らの紹介を自分の日記で、自分がやってみたい、と以前から思っていた。

もちろん彼らの紹介は、彼ら自身の公式HPでもパブリックになっているし、またプロオーディオ雑誌でも取材、紹介されている。でも何度も言うように、自分の日記、自分が書くことで彼らを紹介したいというファン心理がある。

そこで掲載写真もFBや公式HPなどから拝借するつもりで、許可なしなので、著作権二次使用になってしまうが、出典元も明らかにするし、まぁ一般人ブログなので大目に見てやってください、というところである。

しかし、アラベラ嬢は、去年にも増して、どんどん綺麗になっていく。

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自分の持論に女性アーティストは経年になれば、なるほど美しくなっていく、というのがある。日本の手短なところで言えば、女性アイドルもデビュー時はかわいくて絶頂人気かもしれないが、そんな彼女たちも結婚をきっかけにいったん芸能界を離れて、子供に手がかからなくなってから復活すると、すごく垢抜けているというか「あ~綺麗になったなぁ~。」女性らしい色気があって、自分にはスゴク美しくなったなぁと思うことが多い。

自分だけの好みかもしれないが、若いだけのかわいさよりも、ある程度歳を重ねたときの女性の艶っぽさ、美しさのほうが自分は断然いいと思う。女性はやっぱり経年のほうがいいのだ。

クラシック界の女性演奏者にもそんな印象を持っている。わずか1年しか経過していないのに、アラベラ嬢もずいぶん綺麗になったなぁ、と写真を見て思うばかりである。

そんな彼女の期待の新譜。

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メンデルスゾーンとチャイコフスキーのコンチェルトという、およそヴァイオリン奏者としては、過去に数えきれない演奏者が録音として残してきた定番中の定番の名曲に今回挑む。自分も数えきれないほどのこの曲の録音を聴いてきたので、彼女&デュトワ&スイスロマンド管の演奏解釈、PENTATONEのサウンド作り、がどのように過去の作品群と一線を引く感じで差別化できているか大いに注目している。スイス・ジュネーヴのヴィクトリアホールで収録されている。

じつは、今回この期待の新譜。日本での発売は6/10になっている。ところがアラベラ嬢&NDRとの来日ツアーは、6/3からスタートしてしまうのだ。そうすると彼女の新譜を聴かないで、ツアーを鑑賞することになり(メンデルスゾーンのほうを演奏します。)、自分的にはかなりいかがなものか、という認識を抱いている。

そこで緊急手段として、PENTATONEのWEBショップから直接購入することにした。PENTATONEからメールが昨日届いて、もう発送した、という。来週中には届く。このようにPENTATONEの場合、彼らのページで直接購入したほうが、日本の代理店を通すより圧倒的に早く入手できるのだ。

ただ、自分は、やはり日本人として、普段は日本の代理店を尊重すべきと考えるので、できる限り、日本を通して買うようにしている。

ただし輸入盤と国内盤となると話は違う。
音質的には圧倒的に輸入盤のほうがいいのはオーディオマニア間では常識である。逆に国内盤はライナーノーツが日本語なのがいい。なぜ、そうなのかはまたときを新たにして日記にしたい。

今回の彼女の新譜では、「輸入盤」だけのものと「輸入盤+日本語解説付き」というパターンらしく、正直非常に驚いた。ある意味理想的な組み合わせなのだが(笑)、それにしてもPENTATONEというおよそ、マイナーな小さいレコード会社のディスクで日本語解説が付くというのは、いままで見たことがないし、ずいぶん隔世の感がある。彼女をいろいろプッシュしてくれるスポンサーがいてくれてうれしい限りである。今回のNDRとのツアーも協賛スポンサーの名前を観て、いろいろ想うところがある。

そんな彼女が席を置くPENTATONEレーベル。そこでその素晴らしいサウンドを作り出しているスタッフたちを紹介していきたい、というのが今回の日記の主旨。

最近、優秀録音というのは、録音収録、そして編集のところの作り手側の空間情報の作り方で、決まってしまうものと思うようになってきた。

我々オーディオファイルは、そのディスクの中の空間情報をいかに万遍なく出し尽くしてやって、その空間表現を部屋で再現させるのか、というところが肝なのだと思ってしまう。(それを再現させること自体、ものすごく大変なことでもあるのですが。)

そういう録音収録、ポスプロの現場の人たちは、ライナーノーツのところに小さく名前がクレジットされているに過ぎない。いわゆる裏方的な存在、扱いなのだ。

そんな彼らにスポットを当てて紹介しようという試み。

総勢9名。

ホントに小さな会社。でも高音質なソフトを提供してくれる優秀なスタッフたちだ。

PENTATONEというのは、いわゆるレーベル、レコード会社のこと。ポリヒムニア(Polyhymnia International.BV)というのは現場での録音、ポストプロダクションなどを担当する会社のこと。ポリヒムニアが現場で録音・収録、ミキシングしたものを、PENTATONEがSACDとして世の中に出すというパートナー関係なのだ。

PENTATONEはフィリップス・クラシックスが源流で、2001年にオランダで設立されたレーベルである。 一方録音のほうのポリヒムニアは同じくフィリップス・クラシックス・レコーディングセンターが 源流で、1998年に独立したレコーディングカンパニーとなった。ともにオランダ・フィリップスが源流なのだ。

アムステルダムの郊外バーンにあるポリヒムニアの建物。(レコード制作会社PENTATONEも同じ敷地内に奥の別棟に居を構えている。)(FB公式ページ)

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スタッフ一同。(FB公式ページ)

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アムステルダム・コンセルトヘボウの屋根裏部屋にあるポリヒムニアの編集コントロールルーム。805でサラウンドを組んでいる。(4人入ったら満杯になってしまうくらいの広さ。)(FB公式ページ)

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このホールでのRCOの演奏会の音声収録は彼らの独壇場。自主制作レーベルRCO Liveに提供している。(ヤンソンスの退任などで切り替えの時期で、彼らは元気がないようだが。)

アムステルダム・コンセルトヘボウの屋根には数十か所の大きな穴が開いており、そこからマイクを吊るしてオケの音声を収録するような仕組みになっている。こういう仕組みができるようにこのホール自体の大改修工事があって、それから20年以上が経過して、マイクの位置や高さなどのデータが蓄積していき、録音の精度、ノウハウが高まっている。エベレット・ポーター氏は1時間以内に24本のマイクをセッティングしたり、1時間以内に撤収することが可能だと豪語していたそうである。

下の写真が、そのアムステルダム・コンセルトヘボウの屋根裏には、このように24個の穴が開いており、そこから24本のマイクを吊るしてオケを収録する箇所。マイクの信号は微弱で長く引き回せないので、すぐ傍にラックを設けて、ポリヒムニア特製のマイクプリアンプへ。その他、A/Dなどが格納されている。そして例の屋根裏のスタジオへ送られるのだ。

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2009年に英国のメディア紙、「グラモフォン誌」でベルリンフィル、ウィーンフィルを抑えて堂々第1位に輝いたロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団。 当時1番旬なオケであった。このときNHKのBS20周年を記念して、このホールでRCOの演奏を生中継しようという企画が実行された。このロケは、映像がNHKで、音声収録がポリヒムニアが担当。日本-オランダの混成チームによる撮影クルーだった。後にTV放映だけでなく、Blu-rayとしてもパッケージ化された。そのライナーノーツになかなか興味深い苦労話が書かれていて面白い。

当時RCOが旬なオケで、それを本拠地で撮るとなったら、音声はこのオケの収録を知り尽くしているポリヒムニアが1番だろう、という結論で、こういう混成クルーになったらしい。またポリヒムニアのサラウンド収録の技法が、NHKの技法に似ているところも大きな決断要因だったようだ。
 

バーンの彼らの本拠地での編集・ミキシングルーム。(ポリヒムニアの公式HP)
彼らは大きく3つのスタジオを持っている。

スタジオ1

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スタジオ2

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スタジオ3

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フロントN801で、センターN802、そしてリアというのが基本の布陣。

自分ももし将来専用リスニングルームを持てる幸運に恵まれたら、このようにセンターにフロントSPを配置できるような本格的なサラウンドのスタジオソリューションをホームの中で実現できたら最高だよな、と夢に思ってしまう。(天井が異常に高くないといけませんが。)

アラベラ嬢とエルド・グロード氏のスタジオでのワンショット。 (FB公式ページ)

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最近、若き新鋭チェリスト、ヨハネス・モーザーと契約を結んだときの記者会見の様子。(FB公式ページ)
左がPENTATONEのプロデューサーであるジョブ・マルセ氏。よくPENTATONEのSACDのライナーにクレジットされている名プロデューサーである。

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これからスタッフたちの紹介に移るが、9名全員は大変なので、およそキーマンと考えられるのが、エベレット・ポーター氏、ジャン・マリー・ゲーセン氏、エルド・グロード氏の3人だと思う。

●エベレット・ポーター氏

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ポリヒムニアのリーダー。内田光子、マリス・ヤンソンス、パーヴォ・ヤルヴィなどアーティストからの信頼が厚く、ヨーロッパ、アメリカと大西洋を股にかけて活躍中。アメリカ人である。彼のインタビューの画像を観たのだが、非常にわかりやすいネイティヴな英語で、スゴイ若くてハンサムだ。でも話していることは、かなり鋭い。
 
コンセルトヘボウでオケを録るときのノウハウだとか、近代ホールとコンセルトヘボウの音響の比較をコンピュータ画面の波形シュミレーション比較画面を見せたりして説明するのだ(例の時間軸、周波数軸、振幅の3次元スペクトラムですね。)。やはりこういう世界各ホールの音響データを自社のデータとして持っているのは当たり前なんだな、と感心した。

エレベット・ポーター氏のポリヒムニアでのポジションは、プロデュース、エンジニアリング、R&D、マネジメント。過去の録音収録は、コンセルトヘボウ・オーケストラ、シカゴ・シンフォニー、フィラデルフィア・オーケストラ、クリーブランド・オーケストラ、コンセルトヘボウ室内管弦楽団、アメリカ・シンフォニー、フィルハーモニア管弦楽団、そしてルツェルン祝祭管弦アカデミーなどなど。

一緒に仕事をした指揮者やソリストは、マリス・ヤンソンス、プィエール・ブーレーズ、ハイティンク、アーノンクール、エッシェンバッハ、ダニエル・ガッティ、内田光子、フランク・ペーター・ツィンマーマン、などなどスゴイ略歴だ。

レコーディング・エンジニアとしての最近の作品は、パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツカンマーフィルハーモニーとのベートーベン交響曲全集。

もちろんプロダクションの仕事の他に、サラウンド収録、処理、ハイ・レゾリューション・レコーディング、編集、ミキシングなど。

エベレット・ポーター氏は、1986年(ほとんど私と同期!)にクリーヴランド音楽大学を卒業。オーボエを演奏していたのと、オーディオ収録などをやっていた。1987~1988年にエベレット氏はニューヨークでクラシック音楽のチーフエンジニアをしていて、1988~1993年ではボストンでサウンドミラー(??)のチーフエディターをしていた。1993年にエベレットはフィリップス・クラシックスの録音エンジニア、エディター、オーディオエンジニア、になって、そして1998年にポリヒムニアが設立されて、そこに移ったという訳だ。

かなり派手な経歴で若きリーダーという印象だ。

●ジャン・マリー・ゲーセン氏

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ジョン・マリー・ゲーセン氏、オーディオファイルから呼ばれている愛称、ジョン・マリさん。ポリヒムニアでの正式な肩書は、ディレクター、そしてバランスエンジニアになる。特にバランスエンジニアが、彼の1番のトレードマークと言っていいだろう。

自分はもちろん専門ではないので、詳しくは知らないが、サラウンド収録にとって、このバランス・エンジニアって1番キーになるポジションではないか、と想像する。コンサートホールでオケを収録するとき、マイクのセッティング具合、そしてホールの中には、必ずその場での編集などのコントロールルームがあって(あるいは特設する)、そこで5本のスピーカーからの音量バランス、位相などを聴いて調整していく大事な役割なのではないか、と想像する。ジャン・マリさんは、いわゆる技術スタッフの顔的存在なのだと思う。

ライナーノーツのクレジットでも、バランス・エンジニア:ジャン・マリー・ゲーセン、編集:エルド・グロードというペアのクレジットが1番多い黄金タッグだ。

ジャン・マリさんは、1984年から1988年までオランダ•ハーグ王立音楽院で、バロック音楽を中心にクラシック音楽の録音を学ぶ。

1988年から1990年はマスタリングエンジニアとしてキャリアをはじめ、フリーランスのクラシック音楽の録音と、PAエンジニアとして活動する。1990年よりフリーランスとして、フィリップス・クラシックスにてエディター、リマスタリングエンジニアとして、また、1996年にはフルタイムのバランスエンジニアとなる。

1998年にフィリップスレコーディングセンターは独立し、ポリヒムニア・インターンショナルとなる。

現在はそのポリヒムニアのバランスエンジニアとして、オランダをはじめ、ベルリン、ロンドンなど、ヨーロッパ各地でクラシック音楽録音を勢力的に行っている。これまでに、アルフレート・ブレンデル、リッカルド・ムーティ、小澤征爾、イヴァン・フィッシャー、アンドレア・ボチェッリらの録音を手がけている。

まさにPENTATONE、ポリヒムニアの技術の顔とも言える存在なのだ。


●エルド・グロード氏

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フィリップス時代からのベテラン・エンジニア。プレトニョフ指揮ロシア国立管、ボリショイ劇場といったロシアでのプロジェクトやヤノフスキ指揮のブルックナー、ワーグナーの全集録音を担当している。

エルド・グロード氏は、彼らにとって今一番ホットであるロシア・プロジェクト、つまり始まったばかりのショスタコの交響曲全集の収録のキーパーソンとしていま活躍していて、1番旬な人かもしれない。ロシアの現地のホールに趣き、ロシア・ナショナル管弦楽団のサウンドを収録している。

エルド・グロード氏は、イギリスのサリー大学を1984年に卒業。トーンマイスターの学位を得て卒業する。現在51歳の私より3年先輩ですね。

その学位取得の勉強中に、彼は主にサラウンドの研究をしていたそうである。
 
大学卒業後にフィリップス・クラシックスに1986年に入社。バランスエンジニアとして職を得る。 

エルド氏はすぐにロシアのキーロフ・オペラの大きなオケやオペラのプロダクション、そしてガーディナーのオペラやオケの収録、それも映像や音声の両方の収録を担当していた。

1991年に、エルド氏は、そこからさらに専門的な職に移り、フィリップス・EindohovenでMPEG開発の中でのマルチトラックのサラウンドレコーディングの研究に従事。(Philipsの研究所の中で1番大きな研究所です!)

1996年にエルド氏は、ソニーとフィリップスの共同開発であるSuper-Audio CD(SACD)の開発の中に入り、マルチチャンネル録音の最初の経験者となった。

こうしてみるとエルド氏はサラウンド収録のための血統のよい正統派の研究の道を歩んできて、なるべくしてサラウンド収録のポリヒムニアで働いているのだ。自分が想像していた以上にスゴイ人たちの集まりなのだ、ということがわかった。

このようにいわゆるなるべくして集まった、という感があるこのレーベルのスタッフたち。この人たちの作り出すサウンドは、とても魅力的で、これからもずっと活躍し続けていい作品を作っていってほしい、とこの日記を書きながら思うばかりなのである。 
 


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たーちゃん

ノンノン さん

こんにちは、はじめまして。

私もPentatoneの録音の音が好きなオーディオ、クラシック音楽を趣味とするものです。
アラベラ・美歩・シュタインバッハーのSACDも何枚かもっています。
by たーちゃん (2015-05-08 15:23) 

ノンノン

たーちゃん、さん。

コメントありがとうございます。
うれしいですね。たーちゃん、さんのブログも拝見させていただきました。SACDサラウンドのレビューをやられているようで、お互い趣味が合いそうですね。(笑)今後ともぜひよろしくお願いします。
by ノンノン (2015-05-08 21:03) 

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