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ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 [クラシック演奏会]

ヴァイオリン協奏曲は、オーケストラをバックに歌うソプラノ歌手のようにたとえられることが多く、その共通点は華があること。

ブラームス、シベリウス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンからヴィヴァルディ、バッハ、モーツァルトに至るまで、どの曲をとっても、自分にとってすごく魅力的。

その中でも、じつは一見渋いというか、通好みともいえるヴァイオリン協奏曲の王者とも言える、一筋縄ではいかない大曲なのが、 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。

アラベラ様が、今年2回目の来日で、来週からのシルバーウィークの9/20(所沢ミューズ アークホール),9/21(渋谷オーチャード)でこの曲を披露する。

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この曲が、難曲という自分の中のイメージは、じつはヴァイオリン奏者の諏訪内晶子さんのご著書で、この曲だけは、他の協奏曲と違って、何回弾いても自分で納得のいく演奏ができない、楽譜としては弾けていても、音楽として弾けていない、と告白されていて(書かれたその当時という意味です。)、その一連の想いを読んで、それがずっと自分の頭の中に染みついていて、そういう先入観を持ってしまったのである。 


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たしかに、他の協奏曲は、ヴァイオリンとオーケストラの比重が圧倒的にヴァイオリン主体で書かれているのに対して、ベートーヴェンはそれが対等の比重で書かれていて、それが自分がはじめてこの曲を聴いたときに、他の協奏曲と比較して、華がないというか、ずいぶん地味だなぁ(笑)、という印象を持った理由なのかもしれない。


諏訪内さんの記述のように、全楽章を通じて独奏ヴァイオリンと協奏のオーケストラとの交互の「語らい」の中で進行する、あくまで対等の重き、ということはそういうことなのだろうな、と当時思ったものだった。

技術的には、チャイコフスキーやパガニーニのほうが遥かに複雑で難しい。でもベートーヴェンの場合、いくら努力してみても自分で納得のいく表現ができない、とまで仰っているので、もう聴者に過ぎない自分にはそういう固定観念ができてしまっていたのである。

そんな難曲をアラベラ様の演奏で聴く、という本番に備えて、予習の映像素材として以下のものを観てみた。 


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チャイコフスキー:交響曲第6番『悲愴』、ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 
小澤征爾&ベルリン・フィル、ムター(2008)

http://goo.gl/eOv0W6

これは2008年のカラヤン生誕100周年記念イヤーにカラヤンの愛弟子であった小澤さんとムターとのコンビで、ベルリンフィルを伴って、ウィーン楽友協会で演奏したものをEuroArtsが録ったもので、この曲の新しい演奏としては自分が相当気に入っているものである。

久し振りにムターを観たが、やはりスゴイ。

ゴローさんは、このBDを観て「ムターうますぎなんだよなぁ。」とため息を自分に漏らしていたことを思い出す。(笑)

とにかく弦を抑える指の力が強くて、ビブラートも相当効いている感がある。変な表現だが、音的にカクカクしているというか、非常にメリハリがあるというかピンと張り詰めた感じの鮮度の高い音色が弾けだされる、という感じで、聴いているだけでなく、観ているだけでも本当に”うますぎ”、なのである。

この対等の語らいの中でも、特に第3楽章の中あたりに、独奏ヴァイオリンとファゴットがお互い語らう箇所があり、ここはこの曲の中でも1番恍惚というか美しい旋律と自分が思う部分。

この演奏でもこの部分は鳥肌ものである。

もっと身近な演奏ではこちら。

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いまから5年前の2010年1月20日のN響のサントリー定期。(1666回 N響定期)
広上淳一さん指揮で、独奏は堀米ゆず子さん。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソリストとして来日が予定されていたヴィヴィアン・ハグナーが 体調不良で 突然来日をキャンセルした。

その結果 そのときにベルギー行きの飛行機に乗るはずだった堀米ゆず子さんがピンチヒッターとして ステージに立つことになった。

ベートーヴェンの協奏曲そのものは演奏経験が豊富な堀米さんでも予期せずに3日間で全曲をさらいなおし、ステージに立つというのは相当緊張したようだ。本番でも第1楽章の演奏中に大きなため息を何回もつく感じで、相当緊張していたのがよくわかる。

厳しい見方かもしれないが こういう時にこそ演奏家の真価が問われるのかもしれない。

このような緊張の中で、ピンチヒッターに立ち、オーケストラともども熱いものの見事な演奏を展開し、自分を含め、この公演をこの年のN響のNo.1コンサートに推薦した仲間は多かった。

この曲には、そのようないろいろな想いのたけがあるのだ。

その曲にアラベラ様が挑む。

タッグはN響&ブロムシュテット。

彼女にとってもこの曲は過去に何回も演奏してきている(もちろんN響とも!)知り尽くしたレパートリーのようであるが、でも自分にとってははじめての経験なので、とても新鮮な気持ちで対峙できるのが楽しみでもある。


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