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お持ち帰りできない「音」 [コンサートホール&オペラハウス]

1番最後に残されていたスイス・ジュネーヴ・ヴィクトリアホールでのスイス・ロマンド管弦楽団のコンサートのチケットをどうにか確保することができた。

まったく予想だにしていなかった争奪戦で、今回1番苦労した公演であった。第1希望から第4希望まで考えていた座席は全敗。もう最後は取れれば御の字という有様であった。

なぜそんなに苦労したかというと、スイス・ロマンド管のチケット販売方法に問題があり、いわゆる年間会員になって年間シートを購入するのであれば、それこそ5~6月くらいから販売しているのだが、私のように、その1公演のみの単券となると、発売日が9月1日になる。なのでいい座席は、もう年間会員によって買い占められているのである。

さらに困ったことは、この9月1日は、私の10/7の1公演だけでなく、このホール、このオケでの年間全公演の一斉発売日なのである。これはつながるはずがない。(笑)

このホールでのこのオケを聴けないとなると、今回のツアーの目的が台無しで何のために行くのかわからなくなってしまう。相当焦った。こんな争奪戦になるとは思ってもいなかった。

いままで順調であったが、やはり神様は試練を与えるものだ。(笑)

そのスイス・ジュネーヴのヴィクトリアホール。(スイス・ロマンド管のFB公式ページから拝借しております。)

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アンセルメ&スイス・ロマンド管時代のあの膨大なDECCA録音を収録したことで有名なホールである。最近では、PENTATONEと契約して、このホールで定期的に録音を残している。ヤノフスキをはじめ、客演指揮者では日本の若手のエースの山田和樹、そして将来的には東響のジョナサン・ノットが音楽監督就任など話題に事欠かない。

またこのホールは、小澤さんのスイス国際アカデミーでの会場に必ず使われる。

そういう経緯もあって、自分の訪問すべきホールとしてどうしても超えないといけない壁というか目標であった。

ジュネーブのヴィクトリア・ホールといえば アンセルメ&スイス・ロマンド管のDECCA録音でレコード・ファン、オーディオ・ファンに知られている。 1960年代のステレオ録音は、目の覚めるように鮮やかな管楽器、濡れたように艶やかな弦楽器といったいかにもハイファイ・高解像度を感じさせる録音マジックと言って過言でないものだった。

1960年代の半ばに、そういったレコード人気を背景に来日公演を行っていて、東京文化会館でその演奏に接した高城さんは、レコードで耳にするのとは全く異なって 普通のオーケストラのサウンドだったと記され(笑)、DECCAのレコーディング・マジックによって「創られたサウンド」だと解説された。

つまり「レコードは、生演奏とは音色・バランスが違う」 、「これぞマルチ・マイク録音だ」という例にされたわけだ。

いくらDECCAマジックとか言っても およそクラシックの録音ではそんなに非現実的なサウンドを創り出せるものではない。最近ではヤノフスキの指揮でスイス・ロマンド管弦楽団での録音で聴くブルックナーは、非常に優秀な録音であることは間違いないがかつてのDECCA録音のような個性的な空間バランスや音色ではないように感じる。

そのミステリーというかナゾは何なのか?自分が実際訪問してみてじかに聴いてみたいのである。

写真を見てもわかるように、このホールは、日本では見たことがないほど縦長で、あたかもうなぎの寝床のように 幅が狭く1階席後方や正面2階席からはステージがはるか遠くにある印象に思える。

じっさいこのホールで、スイスロマンド管の演奏を聴くとどう感じるのか、自分の耳で確認したいのである。

自分が無類のハコ好きというところもあるのだが、なぜわざわざ海外までコンサートホールを経験しに行くのか?

来日公演してくれて聴けるのであるから、それでいいではないか、という話もあるが、そういうものではないのである。

欧米のオーケストラは、自分のホームであるコンサートホールで、たっぷりと時間をかけてリハーサルを行い、同じステージで本番を迎える。 欧米の優れたオーケストラの秘密は そういうところにある。

今回訪問するコンセルトヘボウの場合 RCOだけが例外に贅沢なので他のオーケストラ 例えばオランダ放送フィルとかハーグ・レジデンツ管弦楽団などがコンサートを開く場合は 長くて当日1日、場合によっては半日ぐらいしかホールを使えないらしい。とにかくコンセルトヘボウは コンサートが数多く開かれる世界でも有数の忙しいホールなのである。しかし それなのにRCOは、このステージでたっぷりと練習できるのだ。

ベルリンのフィルハーモニーも同様。ベルリン・フィルハ-モニー管弦楽団は、フィルハーモニーの大ホールで定期演奏会の前には、3日間リハーサルするらしい。同じベルリンでも ベルリン・ドイツ響やベルリン放送響などは、放送局の大きなスタジオでリハーサルを重ね、本番の日にフィルハーモニーに入ってくるのだ。

つまり ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団やベルリン・フィルの場合は自らの本拠地のホールで 一からリハーサルしてサウンドをつくりあげているのだ。

その「音」は お持ち帰り出来ない。

他では聴けない。

RCOやベルリン・フィルの団員は楽器を携えて 日本にやってくることができるもののあのサウンドは、持ち出せないと思う。

「コンサートホールは、そこのレジデンスオーケストラが育てる。」とよく昔から言われているもので、そこのホールの響きをよく知っているのはそのホームのオケである訳で、彼らはどのように演奏すれば、そのホールで最高のサウンドを生み出すことができるのか経験上一番よく知っているはずなのである。

ウィーン楽友協会でのあの恐ろしいほどまでに豊かな響きの中では、ガシガシ弾くんではなく、繊細に弾くことで、そのホールの強い響きを上手に利用する演奏法をウィーンフィルは自然に習得しているのである。

逆にベルリンフィルハーモニーのように拡散型に音が拡がっていくような広大なキャンパスでは、ガシガシ弾いたほうがいいとか....

だから、そのオケの最高のサウンドを聴きたいのであれば、そのホームで絶対聴くべきなのである。これはもちろん日本の在京楽団のホームでも同じこと。


来日公演というのも、本拠地で作り上げてきたサウンドを とりあえず現地のホールというお皿に盛り付けました・・・というのが実体なのかもしれないのだ。(冷や水をかけるようで申し訳ない。理想論を言っているまでです。)

自分がわざわざ海外の本拠地ホールで、彼らを聴きたい、と拘るのはそこにある。

昨日、英グラモフォン誌で見事年間大賞を受賞したパーヴォ・ヤルヴィ氏。タイミング(音楽監督就任)といい、N響がますます熱くなるようなそんな勢いを感じる。

そこで、ますます思うのは、NHKホールの音響をなんとかしてほしい、という想い。(移転とか建て替えの話が出たときはすごく喜びました。結局やめる、とか、あれからどうなったのでしょう?)多目的で、歌謡曲のようなPAサウンドも併用しないといけないので、難しい立場はよくわかるが、オケとホールは一対ペアなもの。そこで観客(特に自分ようなタイプ)への印象が決まってしまう。

そんな昨日の出来事がきっかけで、ますますそんな想いが強くなってしまったのである。


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