体験!フィルハーモニー・ド・パリ Philharmonie 1 [海外音楽鑑賞旅行]
そして、フィルハーモニー・ド・パリの大ホールを経験するという今回の最大の目的を達成した。
Philharmonie1(大ホール)
1Fの正面エントランスのやや前方に上階(2階、3階)に上がるエスカレーターがあり、こういう野外からの入り口があって、そこが大ホールへのメインエントランスなのです。
エントランスに入った後、このようなホワイエ空間が広がる。
フランスのコンサートホールというのは、座席番号が偶数と奇数で左右に分ける特徴があるのだ。
偶数が右、奇数が左、というように分かれている。
こちらが左側(奇数)のゲート。
こちらが右側(偶数)のゲート。
そしてCD販売。
今回は大ホールでのコンサートは、レ・デソナンスというオケ(2階席右側)とパリ管弦楽団(1階席中央ど真ん中)の2公演を経験することができた。
初日の公演のときの2階席に入るゲートの前のホワイエ空間は、こんな感じ。
このとき思ったのは、天井からぶらさがっているこの長方形の短冊みたいなもの。これはなんでしょう?天井から一斉にぶら下がっていて、私の身長(180cm)くらいのギリギリの天井の低い空間なのである。
オーディオ仲間のコメントによると、天井からぶら下がってるのは良く録音スタジオで使われた、昔のトムヒドレー式の振動共振に依る音響エネルギー吸収拡散板なのでは?というコメントがありましたが、真偽は不明です。
さらに最終日の公演の1階席では、今回も私の身長ぐらい極端に低い天井の低さなのだが、今度はぶら下がっているものが違う。本当に不思議な空間です。
そして、いよいよ大ホールに潜入!
ホールに入った瞬間、なんかSFの世界みたいに、フランス人らしい流線形で、ものすごいシュールな空間だなぁ、と本当に感激。ベージュと黄色と黒の配色の組み合わせで、フランス人らしい色彩センスというかお洒落感覚ですね。
こんなコンサートホールは、もちろん今まで観たことはないです。画期的だと思いました。
ホールの中は、通路がぐるっと一周してもずっとつながっているので、歩きながらホールを1周することができます。1周しながらもう夢中で写真撮影をします。
ホール後方の上階席中央からステージ前方を俯瞰する。
まったく逆で、ステージ後方側からホール後方を俯瞰する。
そしてグルッとホールを1周しながら撮影していく。
ホールの天井のど真ん中にある反響板。(中心的役割)
この天井ど真ん中にある反響板の周辺をドーナッツ円状にぐるっと取り巻くブーメラン型の浮雲(反響板)たち。
初日のときは、2階席だったので、そこからホールをぐるっと回って撮影したときは、これらの周辺を取り巻いているブーメラン型の反響板は、もうバラバラのサイズで、それこそアシンメトリー(左右非対称)な配置のように見えたのだった。
ところが最終日の公演のときの座席が1階席中央ど真ん中であったので、天井を見上げるとホール天井の全体のシルエットが見渡せる。そうするとけっしてアシンメトリー(左右非対称)なんかではなくて、きちんと真ん中の反響板を中心に、シンメトリー(左右対称)で、ブーメラン型の浮雲たちがドーナッツ状で周りの円周をぐるっと取り巻いているのである。(このときメチャメチャな配置ではなく、きちんとシンメトリーなんだな、と思い、ホッとしました。)
フィルハーモニー・ド・パリは、アシンメトリーなホール構造で、音響バランス悪そうに第1印象感じるのだが、平土間のど真ん中に立って、天井を見上げると、真ん中を中心にブーメラン型の反響板が同心円状に取り囲んでいて、実はシンメトリーなんだよね。これで、ステージの音をホール全体に均一密度で拡散しているのです。
上の写真は、フィルハーモニー・ド・パリのFB公式ページからお借りしています。
ふつうのコンサートホールでは、浮雲はステージ上空のみに存在する場合が多い。(ステージからの音が上空に上がったものを下に返す役割。~天井で反射するのでは戻ってくるのが時間的に遅れるため。)でもこのホールは側方、そして後方に至るまで、円周状に浮雲がホールを取り巻いているのである。
こうすることで、ホールの至るところで、音を観客席に返すように配慮されているものと思われる。
それにしても、このブーメラン型の浮雲のデザイン、なんとシュールな形なんだろう。フランス人らしいデザイン.....
ステージのサイドからみたシーン。
それにしてもこの異様なブーメラン型の浮雲(反響板)。
そして壁面には音の拡散用の凹凸がきちんと刻まれているのだ。
背面からみたステージ。
とにかくこのホールに入ったときの第1印象は、アシンメトリー(左右非対称)である、ということ。右側のこの部分には座席エリアはあるけど、左側にはなかったり。もう左右でその構造が全然違うのだ。ホール全体の容積というかその形自体が左右非対称。
この空間を観たとき、自分がサッと思い出すのは、あまりいい音響ではないのではないか?ということであった。お洒落な空間を設計することを優先するあまり、音響面の配慮が今一歩であるとか。
実際、日本にいたときに、先にこのホールを経験した自分のオーディオ仲間からは、1階席後方に座っていたけれど、サントリーホールよりも音が全然飛んでこなかったよ、と言われていたので、やっぱりな!という感じでいたのだ。
このホール内の写真を撮影しようと思ったとき、うまくフレーム内に収まらないのだ。普通のホールだと、後方席のセンター上階から見下ろすように撮影すると、そのホールの全体像を撮れる、という自分なりの経験があった。
もしくは、斜め後方から側方とステージ前方を含むように俯瞰して撮れば、じつにいいホールの写真が撮れるのだ。
でもこのホールはそれが通用しない。左右が非対称なのと、いろいろな場所で全然構造が違うので、カメラのフレームに収まらなくて、結局部分部分をバラで撮影するしかなく、つながりがわかりにくいのだ。
結局全体を俯瞰したいなら、現地で直接あなたがホールの中に入ってみてください、としか言えない。(笑)
ホントにフシギ空間......
こういうアシンメトリー(左右非対称)の構造というのは、ステージからの音の反射が左右でアンバランスになってしまうため、音像(音のフォーカス)がきちんと真ん中に定位しない、というイメージがどうしても感覚的につきまとう。
どうも精神上よろしくないのだ。
ところが、初日の2階席で聴いたときの、実際オケの音を聴いたときには、もうビックリ!
あまりに素晴らしい音響だったので、ひたすら驚くしかなかったのである。
いままで自分が聴いてきたコンサートホールでは最高の音響のように思えた。(オケの演目もドビュッシーの海、ベートーヴェンのVn協奏曲、ベートーヴェン交響曲第5番、といずれも聴き映 えするのも原因だったかもしれない。特にベートーヴェンのVn協奏曲のときは、あまりの恍惚の音響に、これはこのホールはスゴイ!と確信したのであった。)
なんで、こんなアシンメトリー(非対称)のへんちくりんな構造で、こんな凄い音が出るのか理解不能であった。
最終日には、1階席の中央ど真ん中で聴いたが、確かに1階席と2階席では音の聴こえ方が違った。(2階席のほうが天井に近いせいか、響きが豊かですね。1階席は強烈な直接音という印象であった。)
でも聴こえ方は違うにせよ、両方とも音響が素晴らしいのは間違いなかった。とにかく直接音が明瞭に聴こえてくる。ステージからのダイクレクト音がきちんと座席にパワフルに届く、というのは、もうホールの音響基準では大前提の事項なのだ!(音響の悪いホールは、このファクターが成り立っていないのが大半。)
1階席の最大の弱点は、ステージの音が真横にダイレクトに来ないということなのだが、ここはまったくそんな問題とは無関係。バッチリ音が飛んでくる。大音量で全身に音のシャワーを浴びるような快感で素晴らしいものがある。
そして鮮度がとても高い音。
直接音がこれだけパワフルに届くとなるとあとは響きの問題。ここは、とても響きが豊かでライブな空間であった。(その響きの質を決める壁の材質はなんなのでしょう?ウィーン楽友協会に代表されるように、古来では漆喰がベストと言われています。家庭のオーディオルームは漆喰がいいですね。)
特に2階席で聴いていたときは、非常に響きが豊かなのだが、その反面で直接音が響きの中で埋没して遠くに聴こえることもなく、明晰に聴こえて、きちんとその双方が両立している。
あと気づいた点では、音の余韻の空間への消えゆくさまが美しいこと。オケがジャンと音を鳴り切るとその余韻が綺麗に長時間漂う感じで、心地よい残響感というか結構ライブな空間に感じたりする。
このように聴こえることで、オケものなんか、音の広がりというかスケール感が大きくて、なんか雄大な音楽を聴いているような感覚になれるのだ。
音質のテイストはどちらかというとソリッド気味。
もちろん帯域バランスも偏っていなくて均等だが、特に低弦楽器のチェロやコントラバスなどが演奏するときの弦が摺れる臨場感というか、ゾリゾリするように聴こえる感覚は解像度が高くてとても秀逸。
基本的に、弦の音色は低弦に限らず、どれも立っていますね。秀逸です。
なんか聴いていて、あまりに意表を突く素晴らしい音響だったので、年甲斐もなく興奮してしまった。
自分は古い音響学しか知らないので、こんなアシンメトリーな空間で、こんなことが実現できてしまうのがとても不思議で、これが最新の音響技術なのかもしれませんね。
大体古来から存在するコンサートホールはみんな左右対称のシンメトリーなのです。そのほうが精神的によろしい。(笑)
日本で唯一アシンメトリーな形状のホールだと思うのはミューザ川崎。
はじめて、ここに足を踏み入れたときは、ぶったまげた。2階席などは床が傾いているのである。(笑)従来のデザインセンスに捉われないその奇想天外な左右非対称な内装デザインはホントに驚いた。(厳密にいうと非対称でなくて、きちんと対称だと思うのですが、内装デザインが従来にない奇抜で非対称っぽく見えてしまう、というのが正しいでしょうか....)
でも白い反響板などが、客席下側についていて上空に向かうにつれてらせん状に渦巻いているところ、そしてステージ側方&後方の反響板などの効果から、ステージの音がトルネードのように上空に巻き上がり、あの独特のアコースティックを実現しているのだ、と自分なりに予想していたりする。(天井の中心にある反響板を、やはりドーナッツ状に同様の反響板が円周上に取り巻いている。そしてらせん状に見えた客席下部にある白い反響板もよく見ると、その下に位置する客席に音を返すようになっているんだと思う。ステージを取り巻いている反響板も同様。とにかく、あの広いキャンパスの中で、つねにステージ上の音、そしてそれがホール空間を漂うときに、それをいかに客席にその音を返すか、という工夫が随所にされているのが、あのホールの音響が素晴らしいポイントなのだと、自分は想像する。)
やっぱり最新鋭のホール設計は、こういう従来からある古い形に捕らわれない独特のデザインから素晴らしい音響が出来上がったりするものなのだろう。
フィルハーモニー・ド・パリも、かたつむりのような流線型のデザインの内装空間も、じつは音を乱反射させ、煌びやかに聴こえるようになっていて、きちんと観客席に音が向かうように最終的にはつじつまがあっていたりするのだ、と思う。
古い我々の視覚認識が、そのセンスについていけないだけなのかもしれない。
ちなみにホール形式は、ワインヤードで、奥行きは意外と狭いです。
こちらは、ブレーク時のドリンクコーナー。(初日の2階席でのゲート近くのドリンクコーナーです。)(すみません、むさ苦しいオジサンを映しまして....)
初体験の初日の公演は、レ・デソナンスという中規模編成のオケを聴きました。彼らは指揮者を置きません。(水戸室のように演奏します。)このカーテンコールは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を終演のとき。もうあまりに素晴らしくて恍惚に浸っておりました。
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