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DG(ドイツ・グラモフォン)のSACDとEMIL BERLINER STUDIOS(エミール・ベルリナー・スタジオ) [オーディオ]

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クラシック録音のまさに王道というか名門中の名門であるドイツ・グラモフォン(DG)の録音、サウンドについて、きちんと語らないといけないときが、きっと来るはずとずっと思っていた。

やれ、PENTATONEだ、BISだ、Channel Classicsだ、とか最新の高音質レーベルのサウンドを賞讃、評価していても、クラシックファンでいて、オーディオファンであるならば、DG録音をきちんと鳴らせない時点でもう失格なのだろう。

ゆうあんさんが新しい高音質レーベルの音は、ちょっと”盛っている”味付けで、クラシック&オーディオファンの真のリファレンスは、やはりDG録音にある旨のコメントをいただいたが、そのときドキッとさせられた。

そこにエム5さんのDG愛を聞かされて(笑)、ますます自分としては、この大レーベルを意識せざるを得なくなった。

DG録音は、まさに膨大なライブラリーがある訳であって、自分でももう数えきれないくらい所有していて死蔵状態になっているのも、たくさんあったりする。

どうアプローチしようか、といろいろ悩んでいたが、調布のゴロー邸の追悼オフ会に参加した時に、ゴローさんの膨大なラックの中に、まさに今ではお宝といっていいほどのDGのSACDが、たくさんあったのには一同全員驚いた。

これだ! 

DGのSACDを集めてみよう!

なにせ一番DSDレコーディングに熱心でなかったのはDG(ドイツグラモフォン)で、そもそもSACDのタイトル数が50程度(あっても100未満)くらい出して、早々にSACDフォーマットから撤退していったレーベルだった。

クラシック録音の王者であるDGのSACDとは、どのようなサウンドなのだろう?

現在の高音質レーベルと比較すると、どのようなテイストの違いがあるのだろう?

特に自分はSACDに対しては、広帯域化による2ch高音質再生というより、マルチチャンネルによるダイナミックレンジの広い再生に興味があって、DGのSACDサラウンドとは?どんな感じ?と興味津々だったわけである。

自分が取り組むならこれしかない、と思った。

そこからDGのSACDを収集する戦いの日々が始まった。なにせ、すでに廃盤、珍盤扱いのものも多く、困難を極めた。ふつうにオンラインで買えるものは全部買う。そして御茶ノ水や新宿、吉祥寺などのディスクユニオン巡り、さらには国内アマゾンの中古マーケットプレイス、さらには海外アマゾン(米、カナダ、フランス、ドイツ、イギリスのサイトをあさった。これが結構手に入るんだなぁ。)にも触手を伸ばした。

そしてもうほぼ限界かなぁというところまで来たと思う。

40枚弱.......これ以上探しても見つからないと思うので、この40枚で評価してみたいと思う。

集めた魅力的なDGのSACDたち.....

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これはもともと自分が持っていたものだが、カラヤンは生涯においてベートーヴェン交響曲全集を4回に渡って録音していて、特に手兵ベルリンフィルとは、60年代、70年代、80年代と3回録音している。このうち60年代の録音はSACDになっていて、ベルリン・イエス・キリスト教会での録音だが、これもDG SACDなのである。

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DGのSACDの特徴は、下の写真でもわかるように、

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ケースの左下に丸い銀色のシールが貼ってある。これはSACD草創期の頃のシールなのだと思う。全部に貼ってある。そして右下に上段にSACDのロゴがあって、中段にSUPER AUDIO CDとあって、一番下段にSURROUNDというロゴがある。これもSACD草創期のロゴのスタイルですね。全部そうなっている。

そして、この40枚のDG SACD全てを録音、ポストプロダクション、そしてマスタリングしたのがEMIL BERLINER STUDIOS(エミール・ベルリナー・スタジオ、以下略称でEBSと使う。)なのである。

DG SACD、そしてDG録音を語るには、まずこのエミール・ベルリナー・スタジオのことを語らないといけない。(以後のスタジオなどの掲載写真は、エミール・ベルリナー・スタジオの公式HPからお借りしました。)

ドイツのエミール・ベルリナー・スタジオ EBSは、元々ハノーヴァにあってドイツ・グラモフォンの技術センターであった。それがポリヒムニアと同じように、2008年に独立して、ベルリンに新しいスタジオを構えた。

場所は、ベルリン市の中央、ポツダム広場の近くである。元々マイスター・ザールという中ホールがあり、映画の制作会社がいくつか入っていたビルに5人の精鋭エンジニアが集まったのだ。


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エミール・ベルリナー・スタジオは、このマイスターザールという中ホールがあるビルの一角を占めている。

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EBSの精鋭エンジニアたち。

看板トーン・マイスターは、第1にライナー・マイヤール。
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彼は、1990年から2000年代にDGレーベルでブーレーズ指揮のマーラーやガーディナー指揮のホルスト「惑星」など優秀録音を多々生み出している。彼が生み出してきたDG時代の優秀録音には、いかに数多くのオーディオファイルを驚嘆させてきたことだろう。

ゴローさんとも親交が深かった。小澤さん&ベルリンフィルのフィルハーモニーでの「悲愴」のBD化のトーンマイスター&音声エンジニアにこのマイヤール氏を起用した。なぜ、もっと安いNHK内部のエンジニアではダメなのか?という問いただしにも、苦労して無理に予算を通す荒技で、このマイヤール氏のサウンド作りにかけていた。おかげで、小澤さんの悲愴は、業界でオーケストラコンサートとして、はじめてBlu-rayを使うという偉業でエポックメイキングな出来事になった。


そしてもう1人がシュテファン・フロック。
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ヒラリー・ハーンやラン・ランの録音を担当してきたトーン・マイスターである。彼はこうあるべきだというサウンドのイメージをしっかり持っていて、その実現には決して妥協しないことで有名。

彼がDGで働いていたころ、その当時マーケットになかった機器を、自分独自の自作で作り上げてしまうというほどの人なのだ。現在は、録音プロデューサー&音声エンジニアとして働く一方で、自分の会社 Direct Out Technologiesという会社を立ち上げ、そこのスタジオの設備を整えることに多くの時間を費やしているようだ。


あと、エヴァート・メンティングという、これまたハノーヴァ時代からのベテラン・エンジニアがいて、メンティングは社長としても、エミール・ベルリナー・スタジオをリードしている。

このベルリンの新しい第1スタジオは、ポリヒムニアのスタジオよりも一回りコンパクトな感じで、24畳くらい天井高さが3m強というサイズ。スタジオの中は、森の中にいる様な静けさで、ベルリンという大都市の中心部であるので、その外からこのスタジオに入った時の落差がスゴイらしい。新しくスタジオを作るにあたって、空調から機材のトランスの唸りにいたるまであらゆるところに気を使ったそうだ。「漆黒のような無音のキャンパスから、美しい録音が生まれる」という信念があるらしいが、でもスタジオ内には適度な響きがあるそうだ。

第1スタジオ
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ただ、この第1スタジオは,ガラスを隔ててピアノのソロや室内楽の演奏が録音できるスタジオフロアーがあるのだ。つまり彼らのスタジオは、単なるポストプロダクションだけではなくて、収録スタジオも兼ねている。この写真にあるピアノはDG時代のグランドピアノで、過去アルゲリッチやら一流音楽家達が弾きまくった逸品だそうである。

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第1スタジオのモニタースピーカーはB&W Nautilus 802を5本揃えるサラウンド制作ができるような対応になっている。B&Wは、その後、DそしてDiamondとどんどん新シリーズのSPを世に送ってきているが、こういうEBSに限らず、PENTATONE,BISなどのクラシックレーベルのスタジオのモニターとして使われるSPは、やはり圧倒的にNautilus、もしくはMatrix時代のものなのだ。

”モニターする”という最大の役割を果たすには、現代の最新のSPはやはり色が付きすぎなのだろう。

マイヤール氏の録音は、ポリヒムニアの自然で押しつけがましさのない録音と少し異なり、良い意味で華やかさがある。自然の中の空気感の中ではっとするような美しさがある、とでも言おうか。

さらにマイヤール氏は、クラシック録音の要であるメインマイクの指向性や周波数特性を帯域ごとに細かく分割して可変するデジタル処理のプログラムを開発したそうで、たとえばシンプルなピアノ・ソロを2本のメインマイクで捉えた音源を使ってデモするのだが、たった二つのマイクで収録した音源を、後処理によって、あたかもマイクの位置を動かしたかのように、音色、距離感、残響感を自在に可変して聴かせるなどのパフォーマンスができたりする。(ゴローさんとエム5さんは訪問時聴いているはずです!)

まさしくおそるべく技術集団とも言えよう。


彼らのもうひとつの第2スタジオは、2chステレオ専用の編集・ミキシング・マスタリングのスタジオとなっている。

第2スタジオ
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モニタースピーカーは、ハノーヴァ時代から変わらぬB&W マトリックス801。プロフェッショナルは一度決めた「音の物差し」はなかなか変えられないものだ。


もうひとつはアナログテープのリマスターやLPのカッティングに対応したアナログを重視するスタジオになっている。

思うに、彼らは、名だたる指揮者や演奏家と一緒にプレイバックを聴きながら、「よし、この音で行こう!」と納得させるサウンドを出すことを常に求められている。そんな尋常ではない説得力がある。

我々のようなオーディオファンの再生音とは全然違う。
「う~ん、この音量なのか、このバランスなのか、こういう風な遠近感なのか......」

こういう名だたるスタジオ、名トーンマイスターのもとで、その再生音を聴いてみたい、きっと自分のオーディオの糧になること、間違いないと思う。彼らのセンスというのを盗んでみたい。”盗む”という行為は成長するうえで、とても大切なことで避けて通れないものなのだと思っている。

前置きが長くなったが、このエミール・ベルリナー・スタジオのスタッフたちが、いままでの膨大なるDG録音を作ってきたのだ。

少なくとも、私が今回集めたDG SACDは、すべてエミール・ベルリナー・スタジオでの編集、マスタリングであった。

日記が長くなるので、続きは、後編ということで、二部構成にしたい。

ここで事前に簡潔に要約すると、DGのSACDサラウンドというのは、SACDの草創期の録音であるから、コンサートホールでのサラウンドのマイクアレンジなどのノウハウなど、まだまだ未熟な点も多く、そこに起因すると思うのだが、サラウンドとしての音場感が、現在の高音質レーベルと比較して、乏しい感じがして、ホール空間での直接音と対響きのバランスなどの再現が垢抜けないというか洗練されていない。そういう空間表現という言葉があてはまるほどの再現になっていない。

いまの高音質レーベルは、部屋中にふわっと拡がっていく、自分を取り囲まれているような感覚に陥るようなサラウンド感というのが秀逸なのだが、DGのSACDサラウンドにはそれはあまり感じない。彼らはもっとダイレクト感あふれるサラウンドで、5本のSPから各々ダイレクトに音が出てきてサラウンドが形成されるような、そんな感じのサラウンドに思える。

ホール空間、その場でのアンビエンスをどう表現する?その空間表現をどのように作るかをマイクアレンジの時から考えてやる、という次元ではないような気がする。

やっぱり当時のサラウンドの作り方は、いまとやり方、考え方が違うのかな?と思ったりする。
う~ん、いまは進化しているんだなぁ。

5本のスピーカーからダイレクト音でサラウンドを形成する、というのも、これはこれで魅力的で、特にPENTATONEは基本は質感の柔らかいサウンド、BISはワンポイント的にマイクからある程度、距離感があるように聴こえる空間表現の作り方が卓越なのだが、DGは、それらのサウンドとは根底的に違う、もっと音の厚みというか、ソリッド(硬質)で骨格感のある硬派なサウンドが根底にあることは間違いないと思えた。それは聴いていてよくわかる。

長年のDG録音に聴けるようなサウンドの厚みは、やはりこのエミール・ベルリナー・スタジオの作り出す伝統のサウンド・マジックの賜物なんだろうな。

だから尚更、この硬派な厚みのあるサウンドを活かしつつ、現在におけるホール空間を表現できるようなマイクセッティング技術が加わると本当に鬼に金棒!だと思うのだ。

だから”いま”のDGが作るSACDサラウンドを聴いてみたい!

現実性は乏しいにしろ、ボクもDGのSACD復活論者の仲間入りをさせてほしいのです!(笑)

二部構成の次回(各ディスクの評価)に述べますが、特にウィーン楽友協会でのウィーンフィルの録音は、昔からDG(エミール・ベルリナー・スタジオ)の録音の独壇場で、じつに圧倒されるスゴイ録音ばかりでした。


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