PENATONEの新譜:山田和樹&スイス・ロマンド管のロシアン・ダンス~Auro-3D技術の印象 [オーディオ]
さらにはこの技術について、いままできちんとした資料をまともに読んだことはなかった。(笑)SPから聴こえてくる聴感イメージだけで、つぶやいていた。
今日、サラウンドの技術情報サイトなどで、いろいろ読んでみたが、まだ草創期なのか、概念的なことはわかるけれど、なぜそう聴こえるのか、自分が納得できるレベルまで、掘り下げている文献は皆無だった。
だから読了前後の印象とあまり変わらない。
3次元立体音響とか、3Dサラウンドとか呼ばれているこの技術。読んだ技術情報サイトによると、映画音響では、Dolby社のAtomsやWFS、音楽ではAuro-3D、また2020年の東京オリンピックやアメリカATSC 3.0規格では、22.2CHまでの3Dサラウンドが検討されている、とのこと。
オリンピックが絡んでくると、これは結構ビジネス的にチャンスというかまじめにやらないといけないですね。
家電メーカーにとってオリンピックっていつも大きな商戦だからです。
自分がこの技術を知ったのは、去年の中頃、このサラウンドの技術情報サイトとポリヒムニアのFB投稿記事で、彼らが自分のスタジオをそのように改変している写真を見てからだった。
そして、今回のPENTATONEの新譜で、山田和樹氏&スイス・ロマンドの新譜録音を、スイス・ジュネーヴのヴィクトリアホールでAuro-3Dで録る、と高々に宣言していた。刺激的であった。(笑)
この3Dサラウンドという技術、いままで従来の5.1chなどの水平軸(X軸、Y軸)に音が展開するのに対して、垂直方向(Z軸)にも音の表現ができる、というのがポイント。まさしく3次元の立体空間表現である。
技術情報サイトの図を拝借すると(水平方向はリアが増加の7.1chベースですが。)、
天井にSPを4ch配置する。
自分はこのシステム図を見たとき、これは一般家庭にはまず普及しないと思った。(笑)対応プリ、パワー、もしくは対応AVアンプのコスト高、さらには天井にSPを設置するということを一般家庭に強いること自体、非現実的だと思ったからである。
やるなら映画館だと思った。(というか映画館しかできないと思った。)
自分の目線から考えると、このビジネスが最初にスムーズに走り出すのは、この3Dサラウンドでエンコードしたコンテンツを現在のサラウンドシステムで聴いたときに(下位互換:上位フォーマットをダウンコンバートして聴くこと))きちんとした効果がわかることだと思った。
ネット記事をみる限り、Auro-3Dであれば、13.5chを現在の5.1/5.0chに落とせるし、さらには2chステレオまで落とせる。そしてその逆でアップコンバートで戻せる(ロスレスなんですかね?)ともいう。
でもどの記事を読んでも、ダウンコンバートしたときに、従来のサラウンドよりも効果があります、と断言しているサイトはどこにもなかった。
自分が1番知りたいのはここ!
もし従来と同品質であるなら、自分はこのフォーマットにまったく興味がない。
非現実的なセッティングをしてまで、やるほどのことはない、というスタンス。
だから自分の耳で確かめるしかなかった。
Atmosは、ご存知Dolby社提唱のフォーマット。それに対してAuro-3Dというのは、それのヨーロッパ版で、ベルギーのAuro Technologies Inc.という会社の提唱しているフォーマット。
Auro-3Dは、音楽の立体音響というイメージで捉えられているみたいだが、そんなことはない。
彼らは映画もエンコードします。
自分にとって刺激的だったのは、ポリヒムニアのスタジオのAuro-3D対応のための改変。
彼らは合計3つのスタジオを持っていて、そのうちBDなどの映像コンテンツを編集するためには、第3スタジオという背面にTVモニターがあるスタジオでやる。
だからAuro-3Dを導入するなら、この第3スタジオになる。
天井SPをセッティング中。
天井SPにはB&W N805。ひも状のワイヤーで吊るしてます。リアにも2本、合計4本の天井SP。驚いたのは、よく見るとツイーターの位置が逆さまで、805を逆にしていること!
真意のほどは定かではないが、頭にツィーターがあると、ワイヤーを取り付けて吊るせないだけかもしれませんね。(笑)
天井SPは、ちゃんとリスポジの方を向いています。
天井にSPをセッティングする問題点のひとつにSPケーブルの配線がありますね。地上のアンプから壁を這わして天井まで結線するのは、かなり見栄えに問題があります。
自分が思う天井SPの1番の問題点は、ポジショニング調整をどうするか、ということ。フロント2本の調整だけでも、普段自分が聴いているヘビロテディスクを再生して、音像と音場を確認しながら1番いいポイントになるように調整する。2本でも大変なのに、サラウンドの5本は超大変。そこにきて、天井SPはどうやって調整するんですか?(笑)
この写真を見ると、前のベージュのテーブルの中央前に、レーザー光線でSPまでの距離などを測定する器具が見受けられますね?
これでやっているのか、と思いました。要は聴きながら調整するのではなく、距離的に判断してOKを出すみたいな。
そうして完成形。
そして、今回Auro-3Dで録った作品がこれ。
チャイコフスキー:組曲『白鳥の湖』、ショスタコーヴィチ:組曲『黄金時代』、
ストラヴィンスキー:サーカス・ポルカ、他
山田和樹&スイス・ロマンド管
http://goo.gl/9Vrd41
山田和樹とスイス・ロマンド管弦楽団の「バレエ、劇場、舞踏のための音楽」シリーズ。
彼らは過去に2作品世の中に出しており、注目の今回の第3弾はロシアン・ダンスと題され、チャイコフスキーの組曲『白鳥の湖』、グラズノフの演奏会用ワルツ第1番、第2番 、ショスタコーヴィチのバレエ組曲『黄金時代』、そしてストラヴィンスキーの『若い象のためのサーカス・ポルカ』が収録されている。
もちろんロケーションは、スイス・ジュネーブのヴィクトリアホール。
そのときのAuro-3D収録のためのマイキング。
下位互換で聴いても効果があるかどうか......結論からずばり言うと、もう大変な効果大なのである。このときの私のホッとしたことと言ったら。
最初小音量で聴いていた分には、やや効果がわかりにくかった。
でも昨日、今日の大音量大会で、それは確信と変わった!
端的にまとめると、
①聴いている空間の容積が、従来よりすごく広く感じる。(捉えている空間が広いこと。)
②音のエネルギッシュ、躍動感と、空間の広さが両立している。
この2点だと思う。
聴く前から準備して考えていたことは、映画の3次元立体音響の聴こえ方は、スクリーンを真正面に観ていて、聴こえる音の左右や上下の移動感が著しく生々しく聴こえることだと思う。
たとえばヘリコプターが地上から発射して、そのまま上空に飛び立つ音は、まさに部屋の真下から真上に動いていくのがより生々しく顕著にわかるのだろう。(うさぎさんかエム5さんがそう言ってましたね。)
つまり映画コンテンツって動的表現なんですよね。
それに対して、音楽、コンサートホールやオーケストラを3次元立体表現したら、どうやって聴こえるの?というテーマをずっと考えていた。彼らは静止体、静的表現なんですよ。
音楽を3次元表現すると、なにを聴いているかというと、その音が伝播するホールの空間を聴いていることになって、その効果の現れ方は、(音の伝わり方と)空間の広さがパラメータになっているのかな、と。
今回、この山田和樹&スイス・ロマンドの新譜のどの曲を聴いても、懐が深い、空間の容積が広いというか、オケの発音が下位に定位していて最初は2階席中央からオケを見下ろして聴いているような感覚があった。オケがジャンと鳴らしきるときに、沈み込む感覚というか深い空間を感じるんですよ。
大音量で聴くと明らかにわかるそのホール空間の容積の広さの表現力。オケの音が立体的に聴こえる。
いままで2次元(X軸、Y軸)で空間を表現してきたのだから、それが高さのZ軸が追加されて3次元で表現できるようになれば、同じ容積を聴いていてもすごく広く聴こえるのは、当たり前なのかなぁ、と思いました。
そして、これは②にもつながることなのだが、先述の写真のマイキングの部分に関するところで、オケを直接録っているメインマイク(これは従来と同じ高さか、あるいはもっと近か目にしてある?)と、さらにその上空にハイトチャンネル(高さ情報)を録るためのマイクがあって、メインマイクでしっかり近かめで、オケの音を捉えて、そして空間、高さをハイトチャンネルのマイクで録っていて、いっしょに再生しているから、オケの音が躍動感があって、それでいて空間も録れているという両方が両立しているのではないかな、と思った訳です。
エム5さんからもらったコメントにもあるように、音源から離れた高所の位置にあるマイクで遅れて来る直接音を録る事、そして、それを高所位置のスピーカーで再生してホールでの遅延音を再生する、上下の位相差を感じさせる。
まさにこれ。
ハイトチャンネルのマイクで録った成分が空間を表現するんだと思います。位相差、遅延分があればそれだけ立体感が得られる感覚になりますよね。
いままで数多のクラシック録音を聴いてきて、自分が掲げていた問題点、テーマが、オンマイクで録ったような音の躍動感とオフマイクで録った空間表現力が両立できないか、ということ。片方を立てれば、片方が立たず、そのトレードオフを編集含めて苦労してきたわけで、
この3次元立体音響のマイキングって、それを解決する方法になっているんではないかな、と思えて仕方ない訳です。
オケのサウンドの輪郭をしっかりキャプチャーするメインマイクと、空間を表現するハイトチャンネルのマイク。
だから②の両方が両立できて、しかも①のように、空間の容積というか表現力が秀逸になるんではないか、と想像した訳。
この仮説が正しいか不明ですが、多数のマイクを使うことで、マイクの干渉とかの問題もあって、我々一般人には想像を逸するところです。
仮にAuro-3Dの技術がこのような目的で開発されていなかったとしても、ポリヒムニアのメンバースタッフがそのように解釈して応用して使っているのだと思いました。
ちなみに上述の写真はステージ上の設定しか映していませんが、リア成分をどうしているかは不明です。リアはリアで専用のアンビエント・マイクをホール後方に設定しているのかも不明。
でもディスクを試聴している分には、リアチャンネルからフロントとは別の音源が流れる、というそのようなチャンネルの振り分けはしていませんでした。今回の録音は、リアはフロントの補完、アンビエントな役割に過ぎないですね。
とにかく下位互換できちんと効果がはっきりとわかる!
①と②。~それも自分がいままで永遠のテーマとして掲げていた問題点を解決できるなんて!
これまでの仮定はあくまで、自分の想像、空想で考えています。素人考えですので、間違っていたらゴメンナサイ。
とにかく最初に理論の詰め込みをしなくてよかった。まっさらな状態で聴いたら、①と②の印象だった、というだけですから。
具体的に今回の新譜では、8~14トラックに①と②の凄みを特に感じましたね。(全トラックと言ってもいいですが。)特に13トラック目の木琴みたいな楽器(なんと言うんだっけ?)が鳴っているときの空間の広さの表現力は鳥肌もんです!
PENATONEは、今後ともサラウンド収録は、すべてAuro-3Dで録っていくことになるんだろうか?
アラベラ様の新譜、そして児玉麻里・児玉桃姉妹の新譜.....
これだけの下位互換力を聴かされたなら、自分はぜひそうして欲しいと望むばかりです。
あえて言わせてもらうなら、Auro-3Dで録っているというロゴというか、冊子へのクレジットが欲しいと思いました。
もし下位互換でなくて、本当に天井SP、対応アンプ含めてやれば、本物はもっとリアルでスゴイはず。
これは、うさぎさんやエム5さんに任せて....拙宅のウサギ小屋&なんちゃってサラウンドじゃ無理ぽ。(笑)
あっ今回の日記は、Auro-3Dについてがメインですので、肝心の山田和樹&スイス・ロマンドの新譜については、あまりコメントできませんでしたが、彼らは相変わらずいい仕事をしています。
それにしても、昨今のヤマカズの引く手あまたで、喧騒曲というかクレージーとも思える(笑)様なフィーバーぶりはスゴイもんです。
追伸:その後、友人からするどいコメントをいただきました。Auro-3D技術では、天井SP含めた13.1/11.1/9.1チャンネル相当分のチャンネル数を記録できる記録メディアが必要になると思います。(もしパッケージメディアでの戦略を考えるなら。)でもSACDって5.1chしか音声を格納できない訳ですから、今回のPENTATONEのAuro-3Dの新譜は、あらかじめダウンコンバートして記録メディアに格納していて、最初から下位互換で聴くことが前提だということに気づきました。
つまりPENTATONEは、Auro-3D技術をマイキング技術として利用して、現状のSACDサラウンドのまま録音のクオリティー(空間の容積拡大、音の躍動感と空間の両立)を上げることを目的としているのだと思うようになりました。
Auro-3Dを完全フルバージョンで対応しようとするなら、次世代の音楽光ディスクの開発を考えないといけない。あるいは手っ取り早いのはネット配信でやる、というのが、そういう容量という障壁もなく青天井にも対応できるのでしょうけど、回線パイプの太さもあってまだまだ厳しいですね。なによりもネット配信は、私は、あまり好きじゃないので。(笑)
やはり、3次元立体音響、3Dサラウンドの技術は、コンシューマのマーケットに馴染む、取り込まれるようになるまでは、いままで上げてきたように問題点が多く、障壁が大きすぎると思います。もっと現実的になるには時間がかかるでしょう。
でも自分は、今回のPENTATONEの試みにあるような従来との互換性システムの中で絶大な効果がある、というアプローチは、すごく現実的でいいと思います。拙宅では、もう完全に下位互換でその効果を楽しむ、ですね。
なので、今後のPENTATONEの新譜でも、このAuro-3D技術のマイキング技術を採用していってほしいと思った次第でした。
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