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PENTATONEの新譜:アラベラ・美歩・シュタインバッハー&モンテカルロ・フィルのヴァイオリン名曲集。 [ディスク・レビュー]

待望のアラベラさんの新譜が届いた。今回もPENTATONEのWEBで購入したので、正式リリース より1か月早く入手してレビューできる。

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いつもであれば、「アラベラさんが新譜のレコーディングに入りました」、というような写真付きの近況報告が、彼女のFB公式ページや、PENTATONE&ポリヒムニアのFB公式ページにアップされるはずなのだが、今回の新作は、それがなかった。

変だなぁ?と思っていたのだが、どうも前作のヴィクトリアホールでの録音(メンデルスゾーン&チャイコフスキーのコンチェルト)とほぼ同時期(2014年9月~10月)に録られたもののようで、録音場所こそ違うが、いわゆる同時期のまとめ録りで、寝かせておいて、時期をずらしてリリースという感じのようだった。

今回のお相手は、ローレンス・フォスター指揮モンテカルロ・フィル。

モナコのこのオケは、自分は、あまり過去に聴いてきたという記憶がなく、どんな演奏をして、どういうオーケストラ・サウンドなのか、イメージがつかめなかった。

でも1853年創立というから、超歴史のあるベテラン・オーケストラで、ヤノフスキ、クライツベルクなどのPENTATONEでもお馴染みの指揮者も芸術監督を務めてきた。今回のローレンス・フォスター氏も1980年から10年間、このオケの芸術監督を務めてきて、今回満を持しての登場だ。

今回は、ヴァイオリン名曲集。 

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ツィゴイネルワイゼン、タイスの瞑想曲、ツィガーヌ~ヴァイオリン名曲集 
アラベラ・美歩・シュタインバッハー、ローレンス・フォスター&モンテカルロ・フィル

http://goo.gl/gCLvBW


アラベラさんは、正直、中堅どころといっていいくらい、キャリアが豊富で、過去に録音してきたライブラリーも、もうほとんどのヴァイオリン作品を録音してきている。

だから、次回は、どんな感じの作品なんだろう?

あと何があるのだろう?という感じだった。

カルメン幻想曲(ワックスマン)、ツィゴイネルワイゼン(サラサーテ)、タイスの瞑想曲(マスネ)、 揚げひばり(ヴォーン・ウィリアムズ)、ツィガーヌ(ラヴェル)といった、もう珠玉の名曲といっていいくらい、ヴァイオリンの堂々たる名曲中の名曲を集めたコンセプチャルなアルバムとなった。

やっぱり、こういうコンセプト・アルバムを出せる、ということ自体、彼女の近年の充実ぶり、ステータスというのがよくうかがい知れる。

アラベラさんは、アルバムの中で、ライナーノーツを寄稿していて、通常ヴァイオリニストのアルバムというと、協奏曲かソナタに重きを置くという選択が多く、このようなヴァイオリンの名曲による小作品というのをターゲットにすることは、なかなか機会がないし、また演奏会で、演奏する機会も少ない。本当に若い頃の研磨の時期に演奏した経験があるだけで、特にカルメン(ワックスマン)のようなサーカス的なテイストの作品を、いまの自分がさらい直すには、自分はあまりに年を取り過ぎている、という葛藤を感じていたそうで、指揮者、ローレンス・フォスター氏から、あのハイフェッツにしても40歳を過ぎてからこの曲をさらったのだよ、という説得にて、彼女は大きく考え直して軌道修正したことは、まさにローレンス・フォスター氏によるところが大きいと謝意を述べている。

こういう奏者の心の葛藤のプロセスを知ると、ますますこの作品の聴き込み、理解度が深いところまで達するように感じる。

まず、録音評から。

1発目の出音から驚いた。カルメンの、例の超有名な「行進曲」の部分なのだが、オケの音の厚み、サウンドの実音に響き、余韻が伴ったみずみずしい潤い、ふっと沈み込む感じのオケの重量感。。。

こりゃいいんじゃないの。(笑)

優秀録音!うれしくなった。1発目の出音が、これだと最高にうれしい。

別に彼女の大ファンだから、ということで、贔屓目に評価している訳でもなく、純粋に素晴らしい録音だと思う。

彼女のヴァイオリンは、どちらかというとマイクから距離感がある感じで捉えられていて、オケとの遠近感が、結構生演奏っぽく、生演奏を観客席で聴いているようなリアルな感じで聴こえる。

ふつうのヴァイオリン協奏曲の録音だと、ヴァイオリンもしっかり前に主張して聴こえ、オケも前に出るような、両方が両立するような感じのオーディオ・ライクに仕立て上げられている録音が多いのだが、今回は、ヴァイオリンが少し引いて遠くに聴こえて、オケが圧倒的にボリュームのあるサウンド、そんな感じに聴こえる。


とにかく魅かれるのが、オケのサウンド。

5.0サラウンド独特の圧倒的なボリューム、重量感があって、ダイナミックレンジが広い、音数が多い、この感覚。

レンジが広く、全体に厚みがあるのは、リアを、補完的な役割ではなくて、全体を鳴らす上で、結構、全体のメイン・サウンドの一部を構築しているように有効に使っているからではないか、と感じた。

録音した時期が、2014年なので、Auro-3Dでの録音ではないと思うのだが、でもそう思っても不思議ではない空間の広さも、さらに感じるのだ。

録音場所は、モンテカルロ、レーニエ3世オーディトリアムで、自分は知らないのだが、録音を聴いている限り、かなり広い空間で録っているようなそんな空間感が確かに感じ取れる。

空間を感じ取れて、それで、オケ・サウンドにボリューム・重量感があるので、かなり自分的にはクル。

マイクセッティングではAuro-3Dは使っていないけど、編集時で、なにやらそういう類(高さ情報を加える)のエンコードをしているんではないだろうか?

音質も従来の温度感高めの質感の柔らかいサウンドと違って、硬質とまではいわないけれど、やや締りがある感じ。

録音スタッフは、編集もミキシング(バランスエンジニア)もエルド・グロート氏。

もうずっと彼女を録ってきている彼女の音を造っている永遠のパートナー。

彼女の作品をずっと聴いてきているが、出すたびに録音がどんどん洗練されてきて、今回が1番洗練されていて、いいんじゃないかな?

そこまで言い切れる。

やっぱり録音・編集技術の日々の進歩が、作品を出す度に、その真価が現れるような気がする。

なによりもヴァイオリン名曲集というコンセプトがとてもいい。誰もが聴いたことのある名曲中の名曲で、聴いていてとても気持ちがいいし、毎日、何回でも飽きなくトレイに乗せたくなる感じ。

彼女のテクも相変わらず素晴らしい。

レガートの効いた美しい旋律の泣かせ方、連続するピツィカートやフラジオレット。聴いていて、ヴァイオリンは「歌う楽器」ということを聴く者に説得させるだけの演奏表現は素晴らしいと思う。

なにか褒めてばかりだが(笑)、あまり気に入らない点が見つからなかった。

今年の9月に来日する予定の彼女だが、この作品を聴いて、尚更、彼女の「ヴィジュアル・クラシック」を堪能できるのが楽しみになった。


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