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ヨハネス・モーザー [クラシック演奏家]

PENTATONEと専属契約を結んで第2弾の新譜がでた。それに絡んでということだと思うが、先週、来日を果たし、トッパンホールでチェロ・リサイタルを、そしてミューザ川崎では、東京交響楽団とチェロ協奏曲でコンチェルトも披露してくれた。

ヨハネス・モーザーは、PENTATONEと契約を結んだ2015年11月頃に知ったアーティストだったので、ぜひ、実演に接してみたいとずっと想いを馳せていて、念願かない、両公演とも参加してきた、という訳。

第1弾のドヴォルザーク・アルバムのときにディスクレビュー日記を書いたが、もう一度簡単に紹介しておくことにしよう。

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ヨハネス・モーザーは、ドイツ系カナダ人のチェリストで、1979年生まれの現在37歳。2002年チャイコフスキー・コンクールで最高位を受賞。

使用楽器は、1694年製のアンドレーア・グァルネリ。

モーザーは、いままでベルリン・フィル、シカゴ響、ニューヨーク・フィル、クリーヴランド管、ロサンゼルス・フィル、ロンドン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などなど、もう書ききれないほどの世界のオーケストラ&高名な指揮者と競演してきており、英グラモフォン誌からもその絶賛を浴びている。

室内楽奏者としても熱心に活動しており、五嶋みどり、ベル、アックス、カバコス、プレスラーなどとしばしば共演、ヴェルビエ音楽祭、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭など多くの国際音楽祭にも登場している。

モーザーはあまり知られていないレパートリーを取り上げ優れた演奏をするアーティストとしても非常に評価が高いようだ。

とにかく、写真を見ていただければ、お分かりのように、”ナイスガイ”という言葉がぴったりくるような底抜けに明るい青年。

そしてなによりも若い。まだ37歳にして、これだけのキャリアを積んできているのだから、本当に将来楽しみな大器であることは間違いない。

第1弾のドヴォルザーク・アルバムで彼のサウンドを聴いたとき、その外見からくる爽快なイメージよりも、もっと実は硬派で本格派&実力派の骨のあるチェリストの印象を自分は感じ取り、今後の”新しい録音”の時代の担い手という期待を寄せていた。

そんな彼をオーディオだけでなく、生で演奏する姿を一目観てみたいという夢を実現できた。

その前に、第2弾の新譜の紹介からしよう。 


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ラフマニノフ:チェロ・ソナタ、ヴォカリーズ、プロコフィエフ:チェロ・ソナタ、スクリャービン:ロマンス、他 
ヨハネス・モーザー、アンドレイ・コロベイニコフ

https://goo.gl/gNpZWd


第2弾はロシアン・アルバム。プロコフィエフ、ラフマニノフ、そしてスクリャービンのチェロ・ソナタをはじめとする作品が取り上げられている。

前作の第1弾がコンチェルトだったのに対し、今回は室内楽作品としてのアプローチで、実際の演奏活動でも、見事な両刀使いでもあることから、彼の演奏力、レパートリーの広さが伺えると思う。

何回も聴き込んでいるのだが、情感豊か、鮮やかではあるけれど、ちょっと渋めの色彩感というか、色に例えるならグレーで深い音色、という感じがして、表面はロマンティズムで溢れているものの、その背後にはロシアの厳冬のイメージが湧いてくるような、そんな雰囲気のアルバムに仕上がっていると思う。

あのロストロポーヴィチも協力したと言われるプロコフィエフのチェロ・ソナタと、哀愁漂うラフマニノフのヴォーカリーズは、トッパンホールのリサイタルでも披露してくれた。

録音は、もうお馴染みポリヒムニアの御用達でもあるオランダ放送音楽センターMCO5スタジオで収録。

下の写真はポリヒムニアのFB公式ページから、そのときのセッションの様子。

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ポリヒムニア側の録音プロデューサー&バランス・エンジニア&そして編集と、すべてエルド・グロード氏が担った。PENTATONE側のプロデューサーは、もちろんジョブ・マルセ氏。

もう王道のコンビであるし、録音の完成度の高さは言うまでもない。
明記はされていないけれど、Auro-3Dで録っているのではないだろうか?

空間は広く録れているし、チェロの低弦の解像度も高く録れていて、朗々と鳴る感じのボリューム&音量感も気持ちいい。ピアノの音色の質感は、これは伝統的なPENTATONEのピアノの音色。
(その点、児玉姉妹のピアノ音色は、ちょっと異次元でした。)

そしてチェロとピアノのバランス配分や、リスポジ・聴き手から感じる遠近感も違和感がなくて、さすがエルド・グロード氏の仕事だと思った。

かなりヘビロテで聴いています。

じつは、PENTATONEからの第3弾もすでに決まっているのだ。スイス・ロマンドとのコンチェルトを収録済みで、来年の3月にはマーケットにリリースされる予定である。あのスイス・ジュネーヴのヴィクトリアホールでのセッション録音で、すでに収録完了していて、ただいま編集中といったところだろうか。これは本当に楽しみである。


そんなヨハネス・モーザーを生で聴ける!

まずは、トッパンホールで、チェロ・ソナタとしての室内楽。

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ピアノのパートナーは、2012年の来日リサイタルのときと同じ高橋礼恵さん。

はじめて彼の実演に接した訳だが、その印象を、ずばり結論から言うと、”はちきれんばかりの体育会系ソリスト”という感じだろうか。(笑)

とにかく自分がイメージしていたそのまんま。(笑)

とにかくボウイング、弓使い、その演奏動作すべてにおいて、スピード感、切れ味が鋭くて、俊敏の極みのような演奏家で、スポーティーなスタイルにぴったり合致していた。

最初のヒンデミットやバッハの無伴奏のときは、楽曲のせいもあるのか、思ったほど冴えない感じだったのだが、3曲目のデュティユーから空気がガラっと一変した。剃刀のような鋭い跳ね弓や、弾けるようなピッチカートで、あまりに切れ味鋭いので、聴いていて(観ていて)かなり小気味いい感じだった。

後半のプロコフィエフのチェロ・ソナタや、ラフマニノフのヴォーカリーズなどになると、一転して、いわゆる聴かせるメローな感じで情感たっぷりに弾くのも、かなりサマになっていて、かなり演奏表現の幅が広い、と感じた。

高い技巧のチェリストだと思う。

揚げ足をとるようで、申し訳ないが、敢えて言えば、舞台袖に下がるときに、なにせ、エネルギー持て余している若者のせいか、セカセカ退場していくのが笑えるところだろうか。(笑)もっと余裕を持てばいいのに、と思うのだが、でもこのほうが若者らしくていいっか?(笑)

ヨハネス・モーザーというチェリストは、屈託のない明るい青年のイメージと、ぴったり合うようなスポーツスタイルの超絶技巧の演奏家である、というのが自分のイメージだった。


そしてミューザ川崎で、東響とコンチェルト。

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1曲目は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲を団員達と一緒に弾き、そのまま止まらずに続けて、デュティユーのチェロ協奏曲を演奏する、という指揮者ノットの粋な計らい。

じつは、この日体調コンディションが悪く、前半は意識朦朧として聴いていたので、ヨハネス・モーザーの演奏をしっかり聴けていなかった。本当に申し訳ない。でもところどころの記憶では、リサイタルのときのイメージと全く変わらない。素晴らしい演奏だったと思う。

ヨハネス・モーザーのFBページからお借りしました。
(ルーツは東響さんの投稿だと思います。失礼します。ゴメンナサイ)

この公演の時のリハーサルの様子。

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そして終演後、東響のチェロセクションと記念自撮りの撮影中(笑)

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とにかく若くて明るいイメージそのもののナイスガイで、スポーティーな超絶技巧のテクニシャン。

新しい録音、新しい演奏、といったこれからの世代を担う若い演奏家として、とても有望株で、自分が肩入れしても許せる”男性の(笑)”演奏家に出会えた、という印象だ。






ヨハネス・モーザー&高橋礼恵 チェロ・リサイタル
2016/11/29 19:00~ トッパンホール

前半

ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ Op.25-3
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010
デユティユー:ザッハーの名による3つのストロフ

後半

プロコフィエフ:バレエ音楽<<シンデレラ>> Op.87より<アダージョ>Op.97bis
ラフマニノフ:ヴォカリーズOp.34-14
プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 Op.119

~アンコール

スクリャービン ロマンス
サン=サーンス <<動物の謝肉祭>>より<白鳥>
チャイコフスキー ノクターン 嬰ハ短調Op. 19-4




東京交響楽団 川崎定期演奏会 第58回
2016/12/4 14:00~

指揮:ジョナサン・ノット
独奏:ヨハネス・モーザー(チェロ)

コンサートマスター:水谷晃

前半

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲
デュティーユ:チェロ協奏曲「遥かなる遠い国へ」

~アンコール
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第4番からサラバンド


後半

シューマン:交響曲第2番 ハ長調 作品61





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Haru maro goro

ノンノン様のブログに出会って、音楽の1つ楽しみが増えました。
演奏会に足を運ばなくなると、持ち寄りのCDで聴くばかりで他の(新しい)演奏者の開拓が薄くなります。幅広い音楽の話題をこちらで知ることができてとても嬉しいです。
臨場感あふれる演奏会の文章を拝読して、来年はぜひ生の音に触れようと決心しました。
今回のヨハネス・モーサーにとても興味を持ちました。CDの曲目も魅力的です。まずはCDで聴いてみたいと思います。

それから、以前、ノンノン様の書かれた児玉姉妹のチャイコフスキーのデュオをクリスマスに合わせて注文することにしました。

これからもノンノン様のブログを楽しく拝読したいと思います。

最後に私のブログのブックマークにノンノン様のブログをご紹介させていただいてよろしいでしょうか。


by Haru maro goro (2016-12-08 09:16) 

ノンノン

Haru mago goroさん

うれしいメッセージありがとうございました。
ぜひとも拙ブログを貴ブログのブックマークに加えていただけると光栄です。

このブログは、もともと海外音楽鑑賞旅行好きの私が、普段お世話になっている旅行会社スタッフにも、閲覧できるように、ということで、ブログというスタイルで開設して、その旅行日記をアップしたのが始まりでした。でも、そのうち、それだけでなく、自分の趣味であるコンサート鑑賞、ディスクレビュー、グルメ、雑感なども記載するようになったのです。オーディオという趣味もあるのですが、かなりマニアックなので、このブログの主旨とは合わないと思い、SNSだけにしています。

まぁ自分の趣味人生スタイル、自分の価値観が、すべて、このブログに掲載されている、という感じです。

この日記群を読んでいただき、それがHaru maro goroさんのタメになるのでしたら、この上にない光栄だと思います。

今後ともよろしくお願いします。
by ノンノン (2016-12-10 18:33) 

Haru maro goro

ノンノン様
こちらの申し出をご快諾いただきまして、感謝いたします。
私のブログは自分と音楽の身近な関わりを拙い文章にしているので、
これからは心して書いていこうと思っています。
ノンノン様のブログから音楽をはじめ様々なことを吸収し、楽しみたいと思います。
早速ブックマークに加えさせていただきました。

ノンノン様のブログの更新を楽しみにしております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
by Haru maro goro (2016-12-11 09:00) 

Haru maro goro

ノンノン様、先程コメントを書いて投稿したのですが、エラーになったのでそちらに届いているかわかりません。
届いてなければ、後程あらためてお送りいたします。

こちらの申し出にご快諾いただきまして、感謝いたします。早速ブックマークに登録させていただきました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
by Haru maro goro (2016-12-11 09:08) 

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