PENTATONEの新譜:グスターボ・ヒメノ&ルクセンブルク・フィルの「ダフニスとクロエ」 [ディスク・レビュー]
ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は、「ボレロ」「スペイン狂詩曲」と並んでラヴェルの管弦楽曲の主要なレパートリーとされ、演奏機会も多い。
自分は、この曲がことのほか大好きで、ラヴェル独特の浮遊感や色彩感がもっとも顕著に堪能できる、じつに美しい秀逸な作品だと思っている。
曲の構造的にも、ライトモティーフ(主題)からなる交響曲のような構成を持っていて、それらの主題の展開(5つの主題とその動機の展開)が全曲を通して、全体の統一性を整えている、そんな感じの構成の曲なのだ。
もともとはロンゴスの「ダフニスとクロエ」というバレエ作品(1912年パリ・シャトレ座初演)に対して、ラヴェルに作曲を依頼された作品。
この演目は、実演にも何回も接していて、そして何枚かのディスク音源も保有しているのだが、特に音源のほうは、なかなか自分がこれ!といった感じで、満足させてくれる録音に出会えていなかった。特に、この「ダフニスとクロエ」で”5.0サラウンド”の音源は持っていなくて、ぜひ欲しい、とずっと恋焦がれていた。
そう思っていたところに、PENTATONEからの新譜で、まさにこれ!という録音がでた。
「ダフニスとクロエ」全曲、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌ
グスターボ・ヒメノ&ルクセンブルク・フィル
https:/ /goo.gl /S3vqFi
今世界が最も注目する若手指揮者の一人、スペイン、バレンシア生まれのグスターボ・ヒメノ率いるルクセンブルク・フィルによる演奏。
グスターボ・ヒメノは、もともとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席打楽器奏者だったのだが、音楽家として指揮を学び、マリス・ヤンソンスの副指揮者を務め、2014年1月にヤンソンスの代役としてコンセルトヘボウにデビュー。
2015年に、そのRCOを率いて日本にもやってきた。サントリーホールでの公演だったと思うが、自分はその公演に行っていてヒメノの指揮を拝見させてもらっている。
なかなか指揮振りのスタイルも美しく、見事に統率していた印象が強く、キャリアが浅いとはとても思えない流暢な指揮だったように思う。舞台袖に下がるときに、なぜか小走りで急ぐのが、ご愛敬だったのだが。(笑)
最初のじつに聴こえるか、聴こえないかわからないくらいの微小な音、まさにオーディオ装置のS/Nの良さ、この微小音をどこまできちんと再生できるか、という再生能力を試されているような出だしから始まる。
やや録音レベルが小さめなのだが、その分ダイナミックレンジが広くて、なかなかの優秀録音。録音レベルが小さいので、平日の夜分に聴くと、どうもピンと来なかったのだが、きちんと大音量で聴くと、ダイナミックレンジが広いことがわかり、じつに素晴らしい録音だということがわかってきた。
ppのピアニッシモの音までじつにクリアに捉えられていて、ラヴェルらしい色彩感あふれる和声感あるハーモニーなど、部屋中に広がるグラデーション豊かな空間表現はなかなかだと思う。音質の傾向としては、PENTATONEらしい全体的に柔らかい質感は踏襲されている。
空間表現が秀逸=色彩感豊か、そして柔らかい質感、という方程式が成り立つ感じなので、ラヴェルのような浮遊感のあるフランス音楽を表現するには適切な調理の仕方なのだと思える。
サラウンドの効果もまずは水平方向にステージ感がうっすらと広がる感じで、ステレオ2chで聴くよりも定位感がぐっと増す感じでレンジ感も広い。
Auro-3Dなどの高さ方向もあるだろうか。空間感もしっかり感じる。
聴いた瞬間、誰でもわかる超絶にびっくりした録音ではなかった。現に最初はピンとこなかった。
でも聴き込めば聴き込むほど、じつに奥深くよくできた録音だと思えるようになった。
クレジットを見ると、いつものメンバーではなかった。
プロデューサー、エンジニア、編集は、カール・ブルッグッマン。やはり若手エンジニアの育成という面もあるのだろう。
これを見た瞬間、最初聴いたときに、PENTATONEサウンドを聴きなれている耳からすると、ちょっとテイストが違う感じにも感じないこともなかったが、それはあきらかに、クレジットを見た後だから。(笑)
そのトーンポリシーは、着実に若手に引き継がれている、と確信した。
ルクセンブルク・フィルハーモニーでのセッション録音。
ルクセンブルグ・フィルの演奏は、安定して厚みのある弦のハーモニーの美しさ、ビロードのように甘い嫋やかな木管の音色、そして全体のアンサンブルの完成度、と一流のオーケストラ・サウンドの基準を十分満たしている見事な演奏力だと思った。
なによりも、自分が心を寄せる「ダフニスとクロエ」を理想に近い形で表現してくれている。
その他に、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌなどの名曲も納められている。
長らくずっと欲しいと思っていたラヴェル「ダフニスとクロエ」の5.0サラウンド音源。心願成就。
自分は、この曲がことのほか大好きで、ラヴェル独特の浮遊感や色彩感がもっとも顕著に堪能できる、じつに美しい秀逸な作品だと思っている。
曲の構造的にも、ライトモティーフ(主題)からなる交響曲のような構成を持っていて、それらの主題の展開(5つの主題とその動機の展開)が全曲を通して、全体の統一性を整えている、そんな感じの構成の曲なのだ。
もともとはロンゴスの「ダフニスとクロエ」というバレエ作品(1912年パリ・シャトレ座初演)に対して、ラヴェルに作曲を依頼された作品。
この演目は、実演にも何回も接していて、そして何枚かのディスク音源も保有しているのだが、特に音源のほうは、なかなか自分がこれ!といった感じで、満足させてくれる録音に出会えていなかった。特に、この「ダフニスとクロエ」で”5.0サラウンド”の音源は持っていなくて、ぜひ欲しい、とずっと恋焦がれていた。
そう思っていたところに、PENTATONEからの新譜で、まさにこれ!という録音がでた。
「ダフニスとクロエ」全曲、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌ
グスターボ・ヒメノ&ルクセンブルク・フィル
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今世界が最も注目する若手指揮者の一人、スペイン、バレンシア生まれのグスターボ・ヒメノ率いるルクセンブルク・フィルによる演奏。
グスターボ・ヒメノは、もともとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席打楽器奏者だったのだが、音楽家として指揮を学び、マリス・ヤンソンスの副指揮者を務め、2014年1月にヤンソンスの代役としてコンセルトヘボウにデビュー。
2015年に、そのRCOを率いて日本にもやってきた。サントリーホールでの公演だったと思うが、自分はその公演に行っていてヒメノの指揮を拝見させてもらっている。
なかなか指揮振りのスタイルも美しく、見事に統率していた印象が強く、キャリアが浅いとはとても思えない流暢な指揮だったように思う。舞台袖に下がるときに、なぜか小走りで急ぐのが、ご愛敬だったのだが。(笑)
最初のじつに聴こえるか、聴こえないかわからないくらいの微小な音、まさにオーディオ装置のS/Nの良さ、この微小音をどこまできちんと再生できるか、という再生能力を試されているような出だしから始まる。
やや録音レベルが小さめなのだが、その分ダイナミックレンジが広くて、なかなかの優秀録音。録音レベルが小さいので、平日の夜分に聴くと、どうもピンと来なかったのだが、きちんと大音量で聴くと、ダイナミックレンジが広いことがわかり、じつに素晴らしい録音だということがわかってきた。
ppのピアニッシモの音までじつにクリアに捉えられていて、ラヴェルらしい色彩感あふれる和声感あるハーモニーなど、部屋中に広がるグラデーション豊かな空間表現はなかなかだと思う。音質の傾向としては、PENTATONEらしい全体的に柔らかい質感は踏襲されている。
空間表現が秀逸=色彩感豊か、そして柔らかい質感、という方程式が成り立つ感じなので、ラヴェルのような浮遊感のあるフランス音楽を表現するには適切な調理の仕方なのだと思える。
サラウンドの効果もまずは水平方向にステージ感がうっすらと広がる感じで、ステレオ2chで聴くよりも定位感がぐっと増す感じでレンジ感も広い。
Auro-3Dなどの高さ方向もあるだろうか。空間感もしっかり感じる。
聴いた瞬間、誰でもわかる超絶にびっくりした録音ではなかった。現に最初はピンとこなかった。
でも聴き込めば聴き込むほど、じつに奥深くよくできた録音だと思えるようになった。
クレジットを見ると、いつものメンバーではなかった。
プロデューサー、エンジニア、編集は、カール・ブルッグッマン。やはり若手エンジニアの育成という面もあるのだろう。
これを見た瞬間、最初聴いたときに、PENTATONEサウンドを聴きなれている耳からすると、ちょっとテイストが違う感じにも感じないこともなかったが、それはあきらかに、クレジットを見た後だから。(笑)
そのトーンポリシーは、着実に若手に引き継がれている、と確信した。
ルクセンブルク・フィルハーモニーでのセッション録音。
ルクセンブルグ・フィルの演奏は、安定して厚みのある弦のハーモニーの美しさ、ビロードのように甘い嫋やかな木管の音色、そして全体のアンサンブルの完成度、と一流のオーケストラ・サウンドの基準を十分満たしている見事な演奏力だと思った。
なによりも、自分が心を寄せる「ダフニスとクロエ」を理想に近い形で表現してくれている。
その他に、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌなどの名曲も納められている。
長らくずっと欲しいと思っていたラヴェル「ダフニスとクロエ」の5.0サラウンド音源。心願成就。
じつは、ここ1か月間、ほとんど毎日このディスクばかり、ずっとヘビーローテーションで聴いているお気に入りなのだ。
2017-08-12 13:57
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