バイロイト音楽祭2017 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の印象 [オペラ]
近年のバイロイトの演出というと、奇をてらったものが多く、保守的な演出が好みの自分からすると、奇怪な読み替え版に思えることが多い。そして大抵、メディアの評判も悪い。
そんな中で、今年のバイロイト音楽祭の新制作である「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。
今回のバイロイト独特の演出は、なんと!実在の人物との置き換え。ヘルマン・レヴィ=ベックメッサー、コジマ=エヴァ、リスト=ポーグナー、ワーグナー=ザックス、という感じで。実在の人物と劇中の人物をたくみに重ね合わせ、ドイツ史劇の中にワーグナーの人生と思想を織り込んだ演出なのである。
それこそ第1幕の舞台は、ヴァンフリート荘(ワーグナーの邸宅)なのだ。
去年が自分が訪れたヴァンフリートの居間空間が再現れていて、ひたすら感慨。
ポーグナーは本当にリストに似ていた。(笑)そして、若きワーグナー、年老いたワーグナーなどたくさんいる。
そして最後の歌合戦は、あの戦争史上抜きでは語れないニュルンベルク裁判(第二次世界大戦においてドイツの戦争犯罪を裁く国際軍事裁判)が舞台。
なぜ、この舞台を選んだのか、そして、その是非は、専門家の方に譲りたいが、その発想のユニークさには、度肝を抜かれたことは確かである。
最後の場面で、オケが出てきて演奏するのは、まぁ洒落ですね。(笑)
全幕観た印象は、自分の結論としてはとても素晴らしいと感じた。
その第1の理由は、演出が、聴衆がストーリーに没入するのを邪魔していないこと。
得てもすると演出が斬新で奇抜な読み替え版だとすると、その演出に神経が集中してしまい、そのオペラの本来のストーリー展開に、自分がすんなり入って行けないことが多いのだ。
一番いい経験だったのが、去年体験したバイロイト音楽祭の「神々の黄昏」。
悪評高き現代読み替え演出に、それを理解することで精一杯で、さっぱりオペラのストーリーを追えなくて、チンプンカンプンだった。
今回のマイスタージンガーの演出は、その発想こそ斬新だけれど、決して奇抜の類ではなくて、自分にはある意味保守的とさえ思えた。
舞台設定が奇抜なだけで、そこに展開されているストーリーそのものは、自分がいままで慣れ親しんだ保守的なもので、全く違和感なくすっ~と入り込んで、あっという間の5時間だったのだ。
その舞台設定は、ある意味付帯的なものにしか過ぎなくて、決してそのストーリーの本質のイメージを壊すものではなかった。
逆に現代の美的感覚に合せた舞台芸術の美しさがあって、全体の進め方はきちんと従来の保守的なものが守られている。
そんな印象だった。
演出が、聴衆のストーリー没入の邪魔をしないこと!
これってオペラではつくづく大事。
バイロイトの新制作として、そしていわゆるマイスタージンガー・フリークで、それなりに視聴経験もかなり多い自分にとって、決して期待を裏切るものではなく、返って”バイロイトらしい”というか、微笑ましい作品に映った。
そんな中で、今年のバイロイト音楽祭の新制作である「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。
今回のバイロイト独特の演出は、なんと!実在の人物との置き換え。ヘルマン・レヴィ=ベックメッサー、コジマ=エヴァ、リスト=ポーグナー、ワーグナー=ザックス、という感じで。実在の人物と劇中の人物をたくみに重ね合わせ、ドイツ史劇の中にワーグナーの人生と思想を織り込んだ演出なのである。
それこそ第1幕の舞台は、ヴァンフリート荘(ワーグナーの邸宅)なのだ。
去年が自分が訪れたヴァンフリートの居間空間が再現れていて、ひたすら感慨。
ポーグナーは本当にリストに似ていた。(笑)そして、若きワーグナー、年老いたワーグナーなどたくさんいる。
そして最後の歌合戦は、あの戦争史上抜きでは語れないニュルンベルク裁判(第二次世界大戦においてドイツの戦争犯罪を裁く国際軍事裁判)が舞台。
なぜ、この舞台を選んだのか、そして、その是非は、専門家の方に譲りたいが、その発想のユニークさには、度肝を抜かれたことは確かである。
最後の場面で、オケが出てきて演奏するのは、まぁ洒落ですね。(笑)
全幕観た印象は、自分の結論としてはとても素晴らしいと感じた。
その第1の理由は、演出が、聴衆がストーリーに没入するのを邪魔していないこと。
得てもすると演出が斬新で奇抜な読み替え版だとすると、その演出に神経が集中してしまい、そのオペラの本来のストーリー展開に、自分がすんなり入って行けないことが多いのだ。
一番いい経験だったのが、去年体験したバイロイト音楽祭の「神々の黄昏」。
悪評高き現代読み替え演出に、それを理解することで精一杯で、さっぱりオペラのストーリーを追えなくて、チンプンカンプンだった。
今回のマイスタージンガーの演出は、その発想こそ斬新だけれど、決して奇抜の類ではなくて、自分にはある意味保守的とさえ思えた。
舞台設定が奇抜なだけで、そこに展開されているストーリーそのものは、自分がいままで慣れ親しんだ保守的なもので、全く違和感なくすっ~と入り込んで、あっという間の5時間だったのだ。
その舞台設定は、ある意味付帯的なものにしか過ぎなくて、決してそのストーリーの本質のイメージを壊すものではなかった。
逆に現代の美的感覚に合せた舞台芸術の美しさがあって、全体の進め方はきちんと従来の保守的なものが守られている。
そんな印象だった。
演出が、聴衆のストーリー没入の邪魔をしないこと!
これってオペラではつくづく大事。
バイロイトの新制作として、そしていわゆるマイスタージンガー・フリークで、それなりに視聴経験もかなり多い自分にとって、決して期待を裏切るものではなく、返って”バイロイトらしい”というか、微笑ましい作品に映った。
久し振りにこの5時間の長大作を見て、本当にこの楽劇は、美しいメロディーがいっぱい散りばめられた旋律の宝箱のような作品なんだよなぁ、ということを、つくづく実感した次第である。ワーグナーがじつに優れたメロディーメーカーであったかということがわかる作品だと思う。
それでは、それぞれの歌手について、感想を一言づつ。
●ミヒャエル・フォレ(ハンス・ザックス)
男やもめの職人気質という雰囲気が出て、期待を裏切らなかった。このオペラでは、このザックスが自分が一番お気に入りなのだ。ワルターよりもザックス派。声の渋み(バス)と演技力が素晴らしく、自分の本懐を遂げられた感じで素晴らしかった。
●クラウス・フロリアン・フォークト(ワルター・フォン・シュトルチング)
この人についてはもう今さら言う必要もないでしょう!(笑)もう素晴らしすぎる!あの声は、まさに天からの授かりものですね。
これまでのワーグナー・テノールにはない明るく柔らかい声。ワーグナー歌い、しかもテノールとくれば強靭な声と巨大な音量といったイメージがあるが、フォークトはむしろ軽くて明るい声質。この人は従来のヘンデル・テノールのイメージを変えましたね。
この人に驚くのは、やはり発声に余裕があること。精いっぱい歌う歌手が多い中で、この人の歌い方は余裕があるのです!
●ギュンター・グロイスペック(ファイト・ポーグナー)
本当にリストに似ていた。(笑)このオペラでは、とても重要な役割どころだが、舞台上でもかなり存在感があって、素晴らしい。声質もバスとしてはいいと思うが、もう少し声量が欲しい感じがした。
●ヨハネス・マルティン・クレンツレ(ジクストゥス・ベックメッサー)
このオペラでは、とても大事な嫌われ役。しかしここまで徹底的に嫌われるのも可哀想すぎる、と思えるのだ、このオペラを観るたびに。(笑)そんな大事な独特なキャラクターを見事に演じていた。
●アンネ・シュヴァーネヴィルムス(エヴァ)
う~ん、唯一の残念賞かな? まず声量が圧倒的に足りなく、声の張り出す感じも不十分で、声がホール内に響き渡らない。歌手としての命である”声”が役者不足のように感じた。容姿はとても上品な感じでエヴァの資格十分だと思うのだが。
やはり現地の聴衆は残酷。カーテンコールでは唯一のブーイングも。(>_<)
録画・録音で聴くバイロイト祝祭劇場のサウンド。
あの独特のクローズドなピット形式であるが故の音がどこか遠い感じ、閉塞感がある感じがした。去年現地で体験した時、観客席で直接聴いている分には、まったくそんな違和感はなかったのだけれど、録音という形で聴くと、そこがやや気になる。
あの有名な第1幕の前奏曲のときにそう感じたのだが、でも見続けていくにつれて、まったく感じなくなった。
サウンド(5.1サラウンド)のクオリティは、かなり高い!
開幕前のあの生々しいホール内の暗騒音!これにはシビレました。
BF MEDIEN GmbHとNHKの共同制作です。
バイロイト音楽祭は国の助成を受けており(今年も約250万ユーロ拠出!)、ドイツ国内で行われる最も重要な文化イベントの1つなのです。初日はご覧のようにメルケル首相も駆けつけました。
それでは、それぞれの歌手について、感想を一言づつ。
●ミヒャエル・フォレ(ハンス・ザックス)
男やもめの職人気質という雰囲気が出て、期待を裏切らなかった。このオペラでは、このザックスが自分が一番お気に入りなのだ。ワルターよりもザックス派。声の渋み(バス)と演技力が素晴らしく、自分の本懐を遂げられた感じで素晴らしかった。
●クラウス・フロリアン・フォークト(ワルター・フォン・シュトルチング)
この人についてはもう今さら言う必要もないでしょう!(笑)もう素晴らしすぎる!あの声は、まさに天からの授かりものですね。
これまでのワーグナー・テノールにはない明るく柔らかい声。ワーグナー歌い、しかもテノールとくれば強靭な声と巨大な音量といったイメージがあるが、フォークトはむしろ軽くて明るい声質。この人は従来のヘンデル・テノールのイメージを変えましたね。
この人に驚くのは、やはり発声に余裕があること。精いっぱい歌う歌手が多い中で、この人の歌い方は余裕があるのです!
●ギュンター・グロイスペック(ファイト・ポーグナー)
本当にリストに似ていた。(笑)このオペラでは、とても重要な役割どころだが、舞台上でもかなり存在感があって、素晴らしい。声質もバスとしてはいいと思うが、もう少し声量が欲しい感じがした。
●ヨハネス・マルティン・クレンツレ(ジクストゥス・ベックメッサー)
このオペラでは、とても大事な嫌われ役。しかしここまで徹底的に嫌われるのも可哀想すぎる、と思えるのだ、このオペラを観るたびに。(笑)そんな大事な独特なキャラクターを見事に演じていた。
●アンネ・シュヴァーネヴィルムス(エヴァ)
う~ん、唯一の残念賞かな? まず声量が圧倒的に足りなく、声の張り出す感じも不十分で、声がホール内に響き渡らない。歌手としての命である”声”が役者不足のように感じた。容姿はとても上品な感じでエヴァの資格十分だと思うのだが。
やはり現地の聴衆は残酷。カーテンコールでは唯一のブーイングも。(>_<)
録画・録音で聴くバイロイト祝祭劇場のサウンド。
あの独特のクローズドなピット形式であるが故の音がどこか遠い感じ、閉塞感がある感じがした。去年現地で体験した時、観客席で直接聴いている分には、まったくそんな違和感はなかったのだけれど、録音という形で聴くと、そこがやや気になる。
あの有名な第1幕の前奏曲のときにそう感じたのだが、でも見続けていくにつれて、まったく感じなくなった。
サウンド(5.1サラウンド)のクオリティは、かなり高い!
開幕前のあの生々しいホール内の暗騒音!これにはシビレました。
BF MEDIEN GmbHとNHKの共同制作です。
バイロイト音楽祭は国の助成を受けており(今年も約250万ユーロ拠出!)、ドイツ国内で行われる最も重要な文化イベントの1つなのです。初日はご覧のようにメルケル首相も駆けつけました。
去年はこのバイロイト音楽祭を訪問出来て、夢のような出来事であったが、この世を去る前に、もう1回くらいは行ってみたい気持ちで一杯であります。
2017-08-22 18:31
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