BISレーベル [オーディオ]
今月のPROSOUND 10月号に、スウェーデンのクラシック音楽レーベルのBISの特集があった。
名古屋芸術大学の長江和哉氏がスウェーデンのBISレーベル本社を訪問した、その訪問記が掲載されていたのだ。
大変興味深く拝読させていただいた。
PENTATONEのポリヒムニアや、DGのエミール・ベルリナー・スタジオは、よく素性を知っていたのだが、有力なSACDサプライヤーのひとつであるBISレーベルは、なかなか秘密のベールに包まれていて、スタジオやトーンマイスター含めて知る機会がなかった。
もちろんBISのSACDは、いままで数多にディスクを買ってきたので、家に大量のライブラリーがあって、彼らの録音のテイストはよく知っていた。
ワンポイント録音の先駆けのレーベルで、マイクから程よい距離感があるオフマイク録音で、聴いていて、ちょっと温度感低めのクールなサウンド。全般に録音レベルが低いのだけれど、その代償としてダイナミックレンジが広い録音、というのが彼らのサウンドの特徴だと思う。
記事の内容を詳しく書いてしまうと、営業妨害になってしまうので、詳しく知りたい人は、本を買ってください。(笑)
BISレーベルのヘッドクォーター。
BISは、1973年にロベルト・フォン・バール氏によって設立された。
ロベルト・フォン・バール氏。(調理中(笑))
中世の音楽から現代音楽までを範囲とし、いままで約2200タイトルを制作していて、いまも、1か月に5タイトル=1年間で60タイトルの新譜を制作している、というのだから、なかなか回転率が良くてビジネスも順調に回っているのだと思う。
北欧の音楽、指揮者、演奏家を中心に取り上げ、そのエリアを世界の様々な音楽の分野に広げている。
いまや数少ないSACDのステレオ&マルチチャンネルのハイブリッドで提供してくれるレーベルで、自分はとても重宝している。
これは自分は知らなかったのであるが、2006年にはBISが設立した音楽配信サイト eClassicalでは、2015年より96/24 FLACのステレオ/サラウンドで配信しているのだそうだ。
Channel ClassicsがやっているDSD配信サイトのNative DSD Musicには、BISは音源を供給するのを頑なに拒否しているので(笑)、配信ビジネスには、あまり興味がないのかと思っていた。
現在、BISレーベルは、7人の精鋭で運営されているそうだ。
とても興味深かったのは、いままでBISの録音制作を手掛けてきたトーンマイスター5人が独立して、「Take 5 Music Production」 という別会社を設立していること。
主なミッションは、BISの録音制作を担う、ということらしいので、フィリップス・クラシックスの録音チームが、ポリヒムニアになったことや、ドイツ・グラモフォンの録音チームが、エミール・ベルリナー・スタジオとなったことと同様のケースのように確かに思えるのだが、ただ唯一違う点は、現在もBISには、社内トーンマイスターが在籍して、音に関わる分野の責任を持っていることなのだという。
これまで通り、BIS作品の制作を担いながら、同時に他のレーベルの制作も担当できる、さらには、ダウンロードのプラットフォームも構築していくという視野もある。
BISには、3つのスタジオが整備されていて、ひとつは、DSDサラウンド環境で、スピーカーはB&W 802 Diamond 5本が配置され、DAW Magix Sequoia、YAMAHAのデジタルミキサー、EMMのDSD DACなどでSACDサラウンドをマスタリングしている。
収録は、PCM 96/24でおこない、マスタリングするときにDSD 2.8Mにアップサンプリングする。
自分がよくチェックしていたBISのSACDのクレジットには、Nautilus 802と書いてあったので、モニタースピーカーは、やっぱり音色に色のつかないNautilusなんだな、と勝手に思っていたのだが、これはちょっと予想外だった。
DSDサラウンドスタジオ
スタジオにしては、少し天井が低いかな、と思ってしまう。
もう2つのスタジオは、PCMステレオ環境で、スピーカーは、QUAD ESL-63とB&W 801 Matrix S3といったクラシック音楽録音のリファレンススピーカーが配置されている。やっぱりこのポイントは、どこのスタジオも同じですね。(笑)
彼らのスタジオは、サラウンドもステレオもクラシック録音の王道だと思う。
彼らは、ポリニムニアと同じで、編集、マスタリングするスタジオはあるけれども、ミュージシャンが演奏するスタジオは所有していないので、録音現場は北欧を中心に世界中のコンサートホールや教会になる。
そうすると基本は出張録音。そうするとその場で簡単にミキシング、チェックする出張モバイルキットが必要になるのだ。
でも、録音の際に毎回機材を運ばなくてもよいように、これらの機材は、本社のほか、アメリカ、オーストラリア、日本に保管しているのだそうだ。
収録機材は、DAW Magix Sequoia/SamplitudeとRMEのMADI機器のヘビーユーザー。
BISのSACDのクレジットで、他のレーベルにはないことで、よく感心していたのは、収録機材、マイクなどの情報を必ずクレジットしていることであった。彼らが技術集団であることの主張なのだろう、と思っていた。
その他、BISの音楽プロデューサーのロバート・サフ氏、Take 5のトーンマイスターへのメールインタビューと、とても興味深い。
Take 5のトーンマイスターであるHans Kipfer氏は、もう数えきれないくらいクレジットで、その名前を見かけたなぁ。まさに中心人物のトーンマイスターでしたね。こんな方だったとは!
日本の演奏家で、BISと契約してSACDを出しているのは、鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)と、ピアニストの小川典子さん。
特にBCJのバッハの教会カンタータ全集は、22年かけて、日本の神戸松陰女子学院大学チャペルでずっと録音してきたBISとの共同作業の賜物。
このカンタータ全集が完成した暁に、鈴木さんのインタビューを読んだとき、当時この何十年もかかるカンタータ全集の録音をしたいといろいろなレーベルに話を持ち掛けたときに、どこも相手にされなくて、BISだけが興味を持ってくれた、と語っていた。
近代のレーベルにある場当たり的なリリース計画、マーケット戦略ではなく、何十年という先を見据えた戦略、眼力を持っていた創立者ロベルト・フォン・バール氏ならではの成果なのだと思う。
レコード業界の中でも完遂の数少ないバッハのカンタータ全集。それをSACDという高音質フォーマットで世に出してくれた作品はこのBCJの作品しかなく、その功績は大きいと思う。
自分にとって、永らく秘密のベールに包まれていたBISレーベルの全貌が見えたような気がする。
PROSOUNDのほうには、さらに詳しく掲載されていますので、ぜひ買って読んでみてください。
名古屋芸術大学の長江和哉氏がスウェーデンのBISレーベル本社を訪問した、その訪問記が掲載されていたのだ。
大変興味深く拝読させていただいた。
PENTATONEのポリヒムニアや、DGのエミール・ベルリナー・スタジオは、よく素性を知っていたのだが、有力なSACDサプライヤーのひとつであるBISレーベルは、なかなか秘密のベールに包まれていて、スタジオやトーンマイスター含めて知る機会がなかった。
もちろんBISのSACDは、いままで数多にディスクを買ってきたので、家に大量のライブラリーがあって、彼らの録音のテイストはよく知っていた。
ワンポイント録音の先駆けのレーベルで、マイクから程よい距離感があるオフマイク録音で、聴いていて、ちょっと温度感低めのクールなサウンド。全般に録音レベルが低いのだけれど、その代償としてダイナミックレンジが広い録音、というのが彼らのサウンドの特徴だと思う。
記事の内容を詳しく書いてしまうと、営業妨害になってしまうので、詳しく知りたい人は、本を買ってください。(笑)
BISレーベルのヘッドクォーター。
BISは、1973年にロベルト・フォン・バール氏によって設立された。
ロベルト・フォン・バール氏。(調理中(笑))
中世の音楽から現代音楽までを範囲とし、いままで約2200タイトルを制作していて、いまも、1か月に5タイトル=1年間で60タイトルの新譜を制作している、というのだから、なかなか回転率が良くてビジネスも順調に回っているのだと思う。
北欧の音楽、指揮者、演奏家を中心に取り上げ、そのエリアを世界の様々な音楽の分野に広げている。
いまや数少ないSACDのステレオ&マルチチャンネルのハイブリッドで提供してくれるレーベルで、自分はとても重宝している。
これは自分は知らなかったのであるが、2006年にはBISが設立した音楽配信サイト eClassicalでは、2015年より96/24 FLACのステレオ/サラウンドで配信しているのだそうだ。
Channel ClassicsがやっているDSD配信サイトのNative DSD Musicには、BISは音源を供給するのを頑なに拒否しているので(笑)、配信ビジネスには、あまり興味がないのかと思っていた。
現在、BISレーベルは、7人の精鋭で運営されているそうだ。
とても興味深かったのは、いままでBISの録音制作を手掛けてきたトーンマイスター5人が独立して、「Take 5 Music Production」 という別会社を設立していること。
主なミッションは、BISの録音制作を担う、ということらしいので、フィリップス・クラシックスの録音チームが、ポリヒムニアになったことや、ドイツ・グラモフォンの録音チームが、エミール・ベルリナー・スタジオとなったことと同様のケースのように確かに思えるのだが、ただ唯一違う点は、現在もBISには、社内トーンマイスターが在籍して、音に関わる分野の責任を持っていることなのだという。
これまで通り、BIS作品の制作を担いながら、同時に他のレーベルの制作も担当できる、さらには、ダウンロードのプラットフォームも構築していくという視野もある。
BISには、3つのスタジオが整備されていて、ひとつは、DSDサラウンド環境で、スピーカーはB&W 802 Diamond 5本が配置され、DAW Magix Sequoia、YAMAHAのデジタルミキサー、EMMのDSD DACなどでSACDサラウンドをマスタリングしている。
収録は、PCM 96/24でおこない、マスタリングするときにDSD 2.8Mにアップサンプリングする。
自分がよくチェックしていたBISのSACDのクレジットには、Nautilus 802と書いてあったので、モニタースピーカーは、やっぱり音色に色のつかないNautilusなんだな、と勝手に思っていたのだが、これはちょっと予想外だった。
DSDサラウンドスタジオ
スタジオにしては、少し天井が低いかな、と思ってしまう。
もう2つのスタジオは、PCMステレオ環境で、スピーカーは、QUAD ESL-63とB&W 801 Matrix S3といったクラシック音楽録音のリファレンススピーカーが配置されている。やっぱりこのポイントは、どこのスタジオも同じですね。(笑)
彼らのスタジオは、サラウンドもステレオもクラシック録音の王道だと思う。
彼らは、ポリニムニアと同じで、編集、マスタリングするスタジオはあるけれども、ミュージシャンが演奏するスタジオは所有していないので、録音現場は北欧を中心に世界中のコンサートホールや教会になる。
そうすると基本は出張録音。そうするとその場で簡単にミキシング、チェックする出張モバイルキットが必要になるのだ。
でも、録音の際に毎回機材を運ばなくてもよいように、これらの機材は、本社のほか、アメリカ、オーストラリア、日本に保管しているのだそうだ。
収録機材は、DAW Magix Sequoia/SamplitudeとRMEのMADI機器のヘビーユーザー。
BISのSACDのクレジットで、他のレーベルにはないことで、よく感心していたのは、収録機材、マイクなどの情報を必ずクレジットしていることであった。彼らが技術集団であることの主張なのだろう、と思っていた。
その他、BISの音楽プロデューサーのロバート・サフ氏、Take 5のトーンマイスターへのメールインタビューと、とても興味深い。
Take 5のトーンマイスターであるHans Kipfer氏は、もう数えきれないくらいクレジットで、その名前を見かけたなぁ。まさに中心人物のトーンマイスターでしたね。こんな方だったとは!
日本の演奏家で、BISと契約してSACDを出しているのは、鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)と、ピアニストの小川典子さん。
特にBCJのバッハの教会カンタータ全集は、22年かけて、日本の神戸松陰女子学院大学チャペルでずっと録音してきたBISとの共同作業の賜物。
このカンタータ全集が完成した暁に、鈴木さんのインタビューを読んだとき、当時この何十年もかかるカンタータ全集の録音をしたいといろいろなレーベルに話を持ち掛けたときに、どこも相手にされなくて、BISだけが興味を持ってくれた、と語っていた。
近代のレーベルにある場当たり的なリリース計画、マーケット戦略ではなく、何十年という先を見据えた戦略、眼力を持っていた創立者ロベルト・フォン・バール氏ならではの成果なのだと思う。
レコード業界の中でも完遂の数少ないバッハのカンタータ全集。それをSACDという高音質フォーマットで世に出してくれた作品はこのBCJの作品しかなく、その功績は大きいと思う。
自分にとって、永らく秘密のベールに包まれていたBISレーベルの全貌が見えたような気がする。
PROSOUNDのほうには、さらに詳しく掲載されていますので、ぜひ買って読んでみてください。
2017-09-16 08:30
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