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2Lのマルチフォーマット音源 [オーディオ]

高音質指向型のマイナーレーベルと言えばPENTATONE,BIS,Channel Classics, CHANDOS,RCO Live,SIMAX,そしてmyrios classicsというところが、自分の愛聴している定番のレーベルであった。

北欧のレーベル 2Lの存在は、もちろんよく知っていたが、不思議と所有しているディスクは少なく縁がなかった。

今回、3Dサラウンド、イマーシブオーディオとか立体サラウンドと呼ばれるDolby Atmos/Auro-3Dなどのデモソフトとして急に脚光を浴びた感じだった。

デモソフトとして重宝がられる理由は、同一音源を、SACD,LPCM 2.0,DTS HD Master 5.0,Dolby Atmos 9.0,Auro-3D 9.0 とマルチなフォーマットでエンコードしていて、会場でフォーマットの違いによる聴き比べができるからだ。

SACDと、後半の4フォーマットは、Blu-ray Audioに格納しての2枚組としてパッケージされている。BD Audioのほうは、静止画のメニュー画面のオーディオ設定のところで、フォーマットを切り替える。

こういうマルチなフォーマットを全部対応してくるというのは、かなり音質に拘る高音質指向型のレーベルだといえる。

2Lは業界初で、BD-Audioを導入したレーベルだそうで、そういった大容量の物理媒体を手に入れたからこそ、こういう芸当が実現できたのだと思う。

自分が聴いてみて、驚いたのは、録音が素晴らしいのだ。

かなりいい。

後述するが、録音場所に拘りを持っていて、その空間の捉え方が絶妙で、なんか独自のカラーというか、トーンポリシーを持っている感じがする。

かなり強烈で独特なサウンド。

2Lについては、AV雑誌のAV REVIEW Vol.264に詳しく特集が組まれている。大変参考になった。

ぜひご覧になってみてください。

ここでもちょっと紹介してみる。

2Lはノルウエーのオスロで2001年に誕生したレーベル。北欧ならではの音楽を制作したいというモーテン・リンドベルグ氏によって設立された。

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モーテン・リンドベルグ氏



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2016年11月にドイツ・ケルンメッセで開催されたトーンマイスターグング2016での公開ディカッションにも参加した。(1番右)




2Lの録音の特徴は、3次元の2L-Cubeと呼ばれる独自のメインマイクアレイを使用していること。

2L-Cube

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写真を見ていただければ分かるように、上下の2段構成になっていて、下段のほうが、L,C,R,SL,SRの5本の水平サラウンドの配列になっている。

そして上段のほうが、その真上に存在するハイト・チャンネルの4本のマイク。

補助のピックアップはほとんど使わないそうだ。

編集のときも、イコライザーやダイナミックレンジの処理をほとんどおこなわないことをモットーにしている。これはあくまで自分の推測だが、そういう処理が必要ないのは、その録音をおこなっている場所、ロケーションによるところが大きいのだと思う。

彼らが録音をおこなう場所は、大抵が北欧の天井の高い教会や大聖堂の大空間。だから天然エコーなのだ。もうその時点で、そういう空間&アンビエンスを,十分なレンジを確保さえして収録すれば、余計な人工的なイコライザー、ダイナミックレンジの処理はやらないのだと想像する。

2Lのサウンドは、いかにもそういった大空間の感覚が味わえ、残響感たっぷりの天然エコーにまみれたサウンドという感じなのだ。

特に高さ方向の空間をかなり強烈に感じる。上の方向に突き抜ける感覚というか。

聴いていると、まさにその教会、大聖堂の空間に自分がワープした感覚に陥る。

昔、長岡鉄男先生の長岡ソフトと呼ばれたオーディオファイルなら誰でも知っている「カンター・デ・ドミノ」。あれのサラウンド・ヴァージョンだと思ってくれればいい。(笑)

それプラス透明感が増した感じ。

2Lのサウンドの特徴を一言で言えば、そんな感じなのだ。

そして、もうひとつの2Lの収録の特徴と言えば、収録現場の空間の残響成分をリアに振り分けるという一般的なサラウンドの手法というよりは、マイクを中心に置いて、演奏者&楽器をぐるりと円形に配置すること。

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こうすることで、すべてのチャンネルを同等に利用したサラウンド手法が彼らのやり方。確かに彼らの録音を聴いてみると、フロントL,C,RとリアのSL,SRの成分が、直接音、残響音の関係というより、5本から同等に直接音が出て合成されているサラウンドなのだ。リアから確かにダイレクトの音が聴こえる。

もちろんハイトチャンネルに関しては、高さ方向のアンビエンス、残響音専門となる。


こうすることで、演奏家自身が体験する響きに近づき、聴いている側が、演奏家同士のやり取りなどが体感できるなどの効果があるのだそうだ。

先述のトーンマイスターグング2016での公開ディカッションでも創立者モーテン・リンドベルグ氏は、この演奏者&楽器とマイクの配置関係について自分たちの独特のカラーを打ち出す特徴だと述べていた。


ただいつもこういった配置関係で録音しているか、というとそうでもなくて、マイクに対して普通の位置関係での場合もある。ケースバイケースなのだろう。

下の写真は、いたって普通。昔は普通配置だったのかな?

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そんな独特の2Lサウンド。

2枚ほど、購入してみて聴いてみた。2枚とも、バランスエンジニアは、創立者のモーテン・リンドベルグ氏が直々にやっている。 


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「マニフィカト~アルネセン、カーニス、ヤイロ」
トロンハイム・ソロイスツ、ニーダロス大聖堂少女合唱団、他
(SACD+ブルーレイ・オーディオ)


https://goo.gl/kT8Zpj


ニーダロス大聖堂少女合唱団と、1992年の創設から合唱団を指揮する芸術監督アニタ・ブレーヴィクの委嘱による作品。合唱、オルガンと弦楽オーケストラに、曲によってソプラノとピアノが加わる。

ノルウェー、トロンハイム、ニーダロス大聖堂で収録された。
まさにこんな大空間!


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2Lサウンドで3Dサラウンドの代表作とも言える作品。
透き通った合唱の声やソプラノが、天井方向に突き抜けるように抜けていく感覚は圧巻。
恍惚に浸れる。そしてなによりも音楽が美しいウットリするような調べなのだ。

透明感があるサウンド。天使の音楽、そんな感じですね。
じつに秀逸な作品だと思う。ぜひお薦めの1枚です。 


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「わたしの愛も~現代合唱作品集」 
ニーナ・T・カールセン&アンサンブル96
(SACD+ブルーレイ音声ディスク)

https://goo.gl/5Brxiv


オスロの室内合唱団「アンサンブル 96」のアルバム。
オスロのウラニエンボルグ教会で収録された。

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これは、じつはまだ届いていない。(笑)
でも先日のシアターAVショップでのAuro-3Dデモのときに先行で聴かせてもらった。
合唱が全体を成すアルバム。これもじつに美しい声のハーモニーが織りなす音のさまに圧倒される。やはり同じ2Lサウンドのカラーで、天然エコーで突き抜ける高さを感じる秀逸なサウンド。
早くじっくり聴いてみたい。


2Lサウンドに接してみた印象は、じつに録音がよくて、透明感のあるサウンドで驚いた。高音質指向型で拘りのあるオーディオファイル向けのレーベルだという印象を抱いた。


逆に考えてみると、いち早く3Dサラウンドの導入を決めたのも、単に新技術に敏感に反応するという先進的な立ち位置もさることながら、彼らの環境が、教会、大聖堂が豊富に存在して、そこを録音の本拠地にしているというところが、”高さ”を必須条件としている立体サラウンドにも合致したのだと確信してきた。

誉めてばかりもなんなので、敢えて辛口のコメントを一言、言わせてもらうと、ある意味ワンパターンかな、という感じもしない訳でもない。いわゆるどのアルバムを買って聴いても全部同じに聴こえるという・・・。

北欧の教会、大聖堂の大空間の天然エコー、突き抜ける高さ、透明感のあるサウンド、合唱、女声ソプラノ。。。


これが2Lサウンドのキーワード。

自分は、普通にコンサートホールでオーケストラを聴きたい、室内楽を聴きたい、というアベレージな欲望もあるので、そういった意味で、2Lはたまに聴くなら最高。録音もいいし、という感じの位置づけかな。


でも、それがトーンポリシーなんだからいいのだ、と思う。自分のレーベルのサウンドのカラー。どのレーベルでもその録音の特徴が各々違っていて独自の特徴、独特のカラーがある。

だから、これが2Lのトーンポリシーと堂々としたこれだけのカラーを打ち出せているのだから、立派なものだと思えるのだ。






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