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DG祝120周年 カラヤンボックス [オーディオ]

カラヤンは、DGに生涯330枚のLPの録音を残した。


カラヤンが残した1番の功績と言ったら、アナログレコードで一般大衆にクラシックを啓蒙したこと。まさにクラシックを大衆文化にした人だった。それまで、クラシックって一般大衆にとって敷居が高かったし、ごく限られた階層の人々の娯楽で、また楽しめる音源も少なかった。


DGビジネスを支えてきたのも、このカラヤンの膨大な録音であったことは言うまでもない。


自分はそれまで単盤でカラヤンの録音をずっと集めてきたのだが、2008年にカラヤン生誕100周年という一大イヴェントがあって、ボックスものが一斉に発売された。そのときダブりは覚悟の上、このボックスものを片っ端から買いあさって、コレクターした。大変な出費だった。たぶんかけた費用総額50万は軽く超えていたと思う。あれから10年経って、今年2018年にカラヤンの生誕110周年記念。例によって、またカラヤン・ボックスが発売された。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン DG、DECCA録音全集
(330CD+24DVD+2ブルーレイ・オーディオ)




値段が10万円ってずいぶん安くなったもの。びっくり。10年前は、DG全集だけで、30万はした。今回のボックスは、DG全集だけでなく、DECCA録音も網羅されていて、さらに映像ソフト全集も網羅されている。これで10万で売るというのは、やっぱり10年前に比べて、すごい進歩があると思う。


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自分が感心したのは、CDを収める紙ジャケが全部、1枚1枚、当時のLP時代のオリジナルジャケットをちゃんと踏襲していること。これは嬉しい心配り。自分が買ったDG全集300枚セットは、全部同じ絵柄だった。さらに10年前にもついていた木製のラックも、今回も常設されている。


こういうカラヤンボックスは、もう区切りのいい年度に渡って、毎回発売されるいわゆる定番ビジネス。これからも120,130,140・・・ってな感じで、10年サイクルくらい(あるいは5年サイクルでもやるかな?)で繰り返されるキラービジネスなんだと思う。


ボックスの魅力とは何なのか?


それはやはりその演奏家、音楽家の全ての作品が網羅されている、それを購入することで、達成感を得る一種の音楽ソフトマニアのコレクター癖をくすぐるような感覚なのかな?と思う。


はっきり言って、こういうボックスもんを買っておくと安心しますよね。
その指揮者、演奏家に対する征服感というか・・・。


逆に演奏家側や製作者側からしても、たとえばベートーヴェンの交響曲全集など、全集を録音して発売することは、ひとつの大きなイベントで、その作曲家に対する克服感、達成感などがあるんだと思うのです。コンサートならいわゆるチクルス(全曲演奏会)。


ところが最近思うのは、こういうボックスもんを買っても普段聴かないのだ。
ボックスを取り出して聴く、というのはなぜか気が重い。


やっぱり普段聴きやすいのは単盤のもの。単盤のほうが、その盤に対する印象度や思い入れが深く印象に残りやすい。だから棚の膨大なソフトからアクセスする頻度が多いのは、やはり単盤のものが圧倒的に多い。ボックスはいわゆる百科事典的な使い方で、この演奏家のこの年代の録音が聴きたいなどのときにとても重宝するのではないか、と思うのです。


でも全集やBOX-CDの場合、その目的の盤を探し出すのが大変。

必ず冊子として入っている目次を見ないとどのCDなのかアクセスできない。 
今回発売されたカラヤンボックスは、ここら辺のアクセスの問題は、どこまで改善されているのだろうか?結局普段気軽に聴くというのではなく、百科事典的な役割になってしまうのは、まさにここがネックですね。




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この写真は、10年前の2008年に購入した一連のカラヤンボックス。

一番下の木製ラックに入っているのがDG全集ボックス。300枚は超える大全集で、当時30万はした。当時カラヤンは単盤でも結構持っていたので、ダブりになるし、買うかどうか、相当悩んだのだけれど、やっぱり全部揃えるというコレクター魂に負けてしまった。


その上が、カラヤンの映像ボックス。ソニーのカラヤンの遺産シリーズですね。カラヤン&ベルリンフィルの映像素材が全部コレクターされている。


その上が、EMI全集。これもEMIでの録音音源を集めたボックス。
あと写真に写っていないけれど、DECCA録音集ボックスもある。


カラヤンの映像ボックスは、「カラヤンの遺産」シリーズを収めたもの。
こんなお洒落なボックス仕様だった。(なんと指揮棒もついている!)


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これも一通り観たが、やっぱり思うのは、カラヤンって映像ソフトのセンスはまったくないな、ということ。(笑)


これは業界一般に言われている定説なのだが、カラヤンの造った映像ソフトは、かなりつまらないのだ。見ていて、まったく面白くない。カラヤンは、指揮者&音楽家にとっては珍しいくらいの技術マニアで、自分の映像素材を後世に残すべく、その記録媒体の技術動向には相当関心を持っていた。当時のビデオディスク(後のレーザーディスク)の行く末に深い関心を寄せていた。


もちろん他人に任せっきりにする人ではないので、自分が、その撮影時点からその映像作りに口を挟むどころか自分が主導でやっていく。ザルツブルクの自宅の地下室に編集室があって、そこでカラヤンは自分の映像素材の編集作業をしていたのだ。なんでもソニーの機材でびっしり固められていて、それを大賀典雄さんに見せて自慢したとかの逸話も残っている。


ずばりカラヤンの創るオーケストラ映像というのは、作られた映像なのだ。
プロモビデオみたいな感じで、かなり人工的で意識的に作られた演奏画像。
スタジオを借り切って、もしくはコンサートホールで観客を入れず、一糸の乱れも許さないような画一的なプロモビデオ。


これは観ている立場からすると、一回観たら飽きてしまう、というか、かなりつまらない。


オーケストラ映像というのは、いわゆるライブ収録、録音が、臨場感、いわゆるライブ感があって面白い訳であって、現在昨今のオーケストラ映像は、100%こちらだ。


でもカラヤンは、このライブ映像が大嫌いだった。
「あんな雑な映像のどこがいいんだ?」
というのが、彼の常日頃の発言で、彼のオーケストラ映像に対する考え方。


上のカラヤンの「カラヤンの遺産」ボックスに納められている膨大な映像素材は、ほとんどこのプロモビデオ的な撮影手法によるもので、正直つまんない&飽きてしまう映像そのものの集まりだった。


唯一数点の映像素材のみがライブ収録されているものがあって、特にベルリンフィル創立100周年記念コンサートということで、ベルリンフィルハーモニーで開催された「ベートーヴェン交響曲第3番(英雄)」の演奏、これは最高の出来だった。


自分が観てきた英雄のライブ演奏の中でも3本の指に入る屈指の作品で、まさにこれぞカラヤン&ベルリンフィルといった演奏。シュバルベ&ブランディス&シュピラーといったカラヤン黄金時代を支えてきたコンマス3人体制に、まさに女人禁制だった時代のオーケストラの独特の世界を描き出していた。


このカラヤンの遺産の映像素材は、カラヤン×大賀さんの商談により、ソニーが版権を取って、ソニーから出された。でも商品化されるまで時間が結構かかって、いつまでも商品化されないので、業を煮やしたエリエッテ夫人から、いつになったら商品化されるのだ?というお手紙をソニーにいただいた、という話を友人から聞いたことがある。


大賀さんが後世に、ザルツブルクにあるカラヤンのお墓詣りをしたときに語っていたことで印象深かったのは、「残念なのは、カラヤン先生は、ハイビジョンという存在を知らずして亡くなられた。もしそれまでにご存命であったならば、ハイビジョンでもう一回ベートーヴェンの交響曲全集を撮ろうと仰ったに違いない。」と述べられたことだった。


ということで、このカラヤンの遺産ボックスは、1回見たらあとは、お蔵入りという感じなのだが、たとえば、カラヤン体制を大いに揺るがせたザビーネ・マイヤー事件で、試用期間中のマイヤーが、クラリネットを当時のベルリンフィルで吹いている姿なんかが写っていたりして(アルプス交響曲)、そんなときに、どれどれ、という感じで引っ張り出してきて見ている、という感じだろうか。


いまじゃオーケストラに女性団員は不可欠で、ビジュアル的にも華があるのだが、当時は閉鎖的な男性社会のオーケストラに一風を吹き込んだ事件だった。ザビーネ・マイヤーはご存知美人だし、マントみたいなものを着ていて、それを払う姿がすごい格好いいという当時の話だった。


カラヤンの映像では、こんな素材も当時の2008年に発売された。

カラヤン&ベルリンフィルの初の映像素材で、クルーゾーによって撮られた映像。


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「カラヤン/クルーゾー指揮の芸術」というタイトルで発売されたDVDだが、モノクロだが、とても貴重な素材だと思う。確かに当時のオーケストラ撮影は、プロモビデオ的な撮り方なのだけれど、これはカラヤン初の映像作品ということで、とても存在価値があった。


これも2008年のアニバーサリー・イヤーに発売されたレアなボックスで、NHKアーカイブスの中に残っていたNHKが撮ったカラヤン&ベルリンフィルの当時の映像素材をパッケージ化したDVD。これはとてもレアで貴重な作品だ。


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カラヤンが、1950年代にベルリンフィルやウィーンフィルと初来日した模様とか、ドレスリハーサルの模様とか。ちょっと普通の作品ではありえないような貴重な映像が残されている。それこそ当時のオーケストラコンサートホールだった日比谷公会堂や普門館での公演。また大学のオケへの指導も実現して、その映像とか、これは本当にレアで貴重な映像素材だと思う。


このようにカラヤンっていう人は、まさに音源、映像素材の宝庫のような人なので、何年かおきに、こうやってボックスビジネスが循環して起こるのは当然のことだし、それはそれでいいのではないか、と思う。


ストリーミングやダウンロードの台頭で、劣勢に追いやられている物理メディアだけれども、こういうボックスビジネスは、まだまだ彼らの有利なビジネス・エリアだと思うし。


カラヤンは、まさにベルリンフィルのシェフとして35年も在籍していた訳であって、大きく60年代、70年代、80年代と3つの時期に分けることが出来ると思う。自分は、その中で、やはり70年代が最強で絶頂期の時期だと思う。60年代はやや青臭さが残るし、80年代は、もう体も動かなくなってきて、枯れてきた時代。やはり70年代の彼らが、演奏、サウンド、そしてヴィジュアル的にも最高の時期だったのではと思っています。


そんな音源の宝庫のDGだが、自分はカラヤンだけでなく、アバドやポリーニとかたくさん保有しています。まさにDGならではのビジネスですね。


今年はバーンスタインの生誕100周年でもあるので、バーンスタインのが出たら買うかもしれない。


と言っていたら、出てしまった。バーンスタインのボックス。(笑)


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レナード・バーンスタイン/DG&DECCA録音全集
(121CD+36DVD+1ブルーレイ・オーディオ)

https://goo.gl/vctaEF


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ベートーヴェンの交響曲全集はもちろんのこと、マーラーの交響曲全集も網羅されている。
自分は、マーラーはバーンスタイン音源、映像で勉強したと言ってもいい。
クラシック界で、マーラーを1番最初に、商業的に成功に導いたのはバーンスタインなのだ。

DVD36枚組はバーンスタインがユニテルに行ったライヴ収録。

まさに盛沢山。

カラヤン、バーンスタインは、まさにDGに莫大的な売り上げセールスを呼び込んだ二代横綱であることは間違いない。そんな彼らが、今年生誕110周年、100周年というのだから、本当に奇遇な1年だと思う。

まさに今年は、DGにアニバーサリーイヤーにふさわしいお祭りイヤーになりそうな予感ですね。



じつは自分が持っているコレクション中には、さらにアバドのDGボックスもあったりするのだ。(笑)




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