仙台フィルの第九 [国内音楽鑑賞旅行]
日本の年末行事、第九。まさか仙台で聴くことになるとは、予想もしなかったが、自分のクラシック鑑賞人生の中でも大きなメモリアルとなって一生記憶に残るだろう。
なぜ仙台フィルなのか?
それは前回の日記の時に深く述べたので、ここでは繰り返さない。
自分に関与すると思われる人が、いっせいにこの第九のコンサートに勢ぞろいすること、そしてクリスマスを仙台で過ごすことにとても魅力を感じたからである。
そして仙台フィルを地元で聴くことは、運命で避けられないことだと確信したこともある。
ホールは、仙台銀行ホール イズミシティ21。
全体をフレームに収めるのは難しいので、これが精いっぱい。
地下鉄の南北線で、一番最後の終着駅「泉中央」で下車して、すぐ。
最近は地下歩道が出来てたので、そのままその通路を歩いて行けば、地上に出て、すぐ目の前がホールだ。アクセスが抜群にいい。
ホールのジャンルとしては、多目的ホール。
コンサートやオペラ、バレエなど幅広いジャンルの大型の公演対応の大ホール、発表会やミニコンサートで密な空間を生み出す小ホール、展示会からダンスパーティ、会議まで使える展示室のほか、スタジオや練習室で構成される複合施設。
ホールを運営していくという点では、いろいろなジャンルで使える複合施設にしておくことは、スケジュールの空きを作らず、つねにコンテンツで満たされるようにビジネスをやっていくという点で必須ですね。
確かにクラシック音楽専用ホールは、究極の憧れかもしれないが、実際ホール運営を黒字で回すようにしていくには、クラシックのコンサートだけで、それだけで毎日、つねにホールを満杯にするのは、コンテンツ供給という点でやはり大変なこと。
「仙台に音楽ホールを!」という動きもあるようで、やはり音楽家の方にとっては、クラシック音楽専用ホールをフランチャイズにもつってすごく憧れることなんですよね。それも痛いほどよくわかる。
地方のホール運営は、そのコンテンツ供給問題ふくめ、運営していく上で、なかなか制約があって、難しいものがあるのだけれど、もし音楽ホール実現!となった暁には、ぜひ応援させてもらいますよ。
このホールは、市民の自主的な文化活動を促進し、もって市民の文化の振興を図ることを目的として設置されている。なので、まさに音楽専用というのではなく、広く市民の文化振興を目的としているところからも、このスタイルのホールは納得できる。
仙台市市民文化事業団・東北共立・石井ビル管理グループが管理運営を行っている。
仙台フィルは、いつもフランチャイズ・ホールとしては、日立システムズホール仙台を使うのだけれど、今回の第九でこのホールを選んだのは、大合唱団をステージに入れるには、ステージの奥行きがこちらのホールのほうがゆとりがあるように思えたからなのだが、どうだろうか?
真ん中にロビー空間があって、その両端に大ホール、小ホールがある。
なかなか新しく出来たばかりのようで、とても綺麗な施設だ。
ホワイエ
多目的ホールのスタンダードな形状のホール。
開口型のステージにやや扇形気味に見えるが、じっさいは平行壁関係のシューボックス。そしてホール視野のことを考えた傾斜のある客席。
自分の座席からみたステージ(ど真ん中、前方)
ホールの音響は、じぶんは中央ど真ん中の前方よりの座席だったので、そこでの印象なのだが、オーケストラのサウンドがとても明晰で濁りなどいっさいない、そして音伝播上の損失ロスがいっさいない、とてもクリアな音響のように感じました。
その反面、座席が前方ということで、ホール空間の音、響きが聴こえにくいこともあると思うが、オーケストラのサウンドに対して、それを取り巻くはずの反射音、響きがそんなに感じなかったような・・・
とにかくそのオケの大迫力のサウンドにびっくりした感じ。ふつう、オケのサウンド6(あるいは7)に対して、響きが4(あるいは3)ぐらいの割合で、全体のシルエットが聴こえてくる感じなのだけれど、かなり直接音主体でどちらかというとソリッドな音質で、自分に迫ってくるようなサウンドだった。
仙台ファイルのサウンドは、後述で詳しく。
仙台フィルの第九。
仙台フィルは、毎年年末になると恒例の年末行事である第九演奏会をおこなう。定期公演とは違う「特別演奏会」という位置づけである。自分は、この日の実演に接するまで、全然知らなかったのであるが、とにかくびっくりしたのは第九合唱団のその大編成な所帯。
えぇぇぇ~?そんなに乗せる?という感じで(笑)、ステージの横幅はそんなにないけど、奥行きがあるので、そこにどんどん合唱団が何列にも重なっていくのは圧巻なものがあった。
最近の第九の合唱構成という言い切り方はできないけれど、比較的少人数編成で、前後2列~3列位がスタンダードかな?とも思うのだが、ひさしぶりの大編成な第九な合唱団を見た。
その厚みのある人の声の合唱は、じつに迫力あって、美しい調べを奏でていた。
録音より生演奏がぜったいいいと思うのは、絶対この合唱ですね。
あの合唱のホール全体に行き渡るスケール感の大きさ、そしてそれぞれ声のキーの高さが違う方々による幾重にも重ねられた声のハーモニー、和声感の美しさ。これは絶対生には敵わない。
これも今回はじめて知ったのだが、この仙台フィルの第九の合唱団として、
仙台フィルと第九をうたう合唱団
常盤木学園高等学校音楽家1・2年生
宮城学院女子大学音楽家有志
などで構成された混声合唱団だったのだ。
「仙台フィルと第九をうたう合唱団」というのは、「第九」特別演奏会での仙台フィルとの共演を目的に、オーディションを経て結成された市民参加型の合唱団。20代~70代までの幅広い年齢層で構成されていて、仙台市民に限らず、多賀城市や岩沼市、など県外などから約120名が参加している、いわゆるこの演奏会のためのボランティアなのだ。
一般参加型としては今年で12回を迎え、オーケストラをより身近に感じていただく機会として、着実にその輪を広げてきた。震災を経験して歌う喜びを分かち合いたいという思いで参加された方も多く、初めての方や何十回も歌われてきた方などさまざま。
8月から週一回練習を重ねて、本日の演奏会を迎えたのだ。
小澤さんのサイトウキネンの合唱もそう、地元松本の合唱団有志で構成されている。
都会のようにプロで生活している合唱団がいるわけではない、地方独特の事情なのだが、それにしてもその合唱のレベルの高さ。
本当に驚くばかりである。
今回のことを知るまで、まったく先入観なしに聴いていたので、仙台でプロの合唱として生活している人たちなのかな?ぐらいにしか思っていなかった自分はその素晴らしく分厚く美しいハーモニーは、当然のことと思っていたのだが、こういう背景を知ったいま、あらためて驚くしかないのである。
今回の第九のコンサートである意味もっとも自分にとって衝撃的だったのは、この合唱のパフォーマンスだったもしれない。
ソリストの澤畑恵美さん(ソプラノ)、金子美香さん(メゾ・ソプラノ)、片寄純也さん(テノール)、大沼徹さん(バリトン)もじつに素晴らしかった。ここはみなさん、さすがに二期会のプロ。自分が思い描いていた通り、まさにこの曲に対するイメージ通りの見事な歌いっぷりだった。
特にメッゾの金子美香さんは、今回の自分の主役的存在でもあり、その美声、豊かな声量を十分に堪能させていただいた。今年夏のバイロイト音楽祭の「ワルキューレ」で日本人歌手としての出場に日本中が沸いた。
今回、実演に接するのは初めてだと思う。
自分の記憶にないのだ。とても満足。今回このために仙台まで足を延ばした甲斐があったというものだ。
澤畑恵美さんは、いままでかなりの回数、実演に接していると思う。
ミューザ川崎の東響の名曲全集での第九やマーラー2番「復活」で何回も聴いたような記憶があります。独唱するパートが多く、見せ場も多く、堪能させていただきました。素晴らしかったです。
仙台フィルは、自分が予想していた以上に素晴らしいオーケストラであった。
とにかくその発音能力の高さに驚いた。大音量なのである。(笑)オーケストラとして歌う能力があるというか、鳴らす能力が十分すぎるほどある。
特に弦の厚みと、ユニゾンの美しさは卓越したレベル。オーケストラの楽器は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど、その大半が弦楽器が占めている。ここにしっかりとした土台があると、オケ全体のサウンドも締まるし、オーケストラの個性の大半もそこで決まってしまうと言ってもいい。
自分の前方中央の座席で聴いていると、その弦の厚み、アンサンブルの精緻さ、アインザッツが一致している感覚とか、かなり秀逸で感心させられることが多かった。そしてとにかく大音量なのである。
木管などの管楽器の安定ぶりも素晴らしいものがあった。なによりもすべての楽器の調和から、オーケストラ全体として、とてもバランス感覚がとれているオケだと感じた。
その精緻な演奏能力と発音能力に長けていることから、第九という終盤に向けてどんどんとクレッシェンドしていく爆発力、盛り上がりは見事なまでに花開いた演出だったように思える。
敢えて及第点をつけるなら、ホールのせいなのか、座席のせいなのか、わからないが、響きがあまり感じられず、じかにシャワーのように硬質な弦のサウンドを浴びせられるものであるから、やや耳にキツく感じたことも確か。
単にアンサンブルの素晴らしさだけではない・・・なんというのかな、弦の音の解像度の高さ、まさに弦が擦れる音が聴こえてきそうなぐらいキレッキレのサウンドなのだ。ちょっと耳が痛くなる感じなくらい。(笑)
もっとシルキーで絹糸のような肌ざわりの音色の質感や強弱の緩急があると、もっと表情豊かな演奏になったかもしれない。要はちょっと潤いのサウンドが欲しかったというところです。
まっこれはハコのせいかもしれませんね。
飯守泰次郎さんは、もう大河のようにこの大きな流れにある曲をまとめきっていてさすがだと思いました。もう指揮者としても大御所。逐次細かなキューを出すわけでもなく、ある程度団員たちに任せきったような大らかで全体を俯瞰した大捌きな指揮はさすがだと思えた。
ほんの少し前まで体調を崩されていることがあって、出演をキャンセルすることがあったので、とても心配していたのであるが、この日見た限りでは、とても元気そうで安心しました。
仙台フィルを聴くなら、まず飯守さんの指揮で、というのが自分の心の中の大きな目標としてあったので、心願成就。言うことないです。
そして最後に 西沢 澄博さんの首席オーボエ奏者としての勇姿、しっかり拝見してまいりました。
調音のA(ラの音)から、すべてにおいて。真正面に座っていたので、飯守さんに重なって姿は見えなかったけれど(笑)、その嫋やかなオーボエの音はしっかり聴こえていました。
ある意味、西沢さんの勇姿を見ることが、地元仙台まで行こうと思ったキッカケなのですから、想いが遂げてよかったです。
今年の聴き納め。
そして年末の第九を仙台にて、仙台フィルで聴けたことは、今年2018年の自分のクラシック・シーズンを締めくくる上で、本当に最高の自分へのご褒美だったと言っていいと思う。
仙台フィル第九特別演奏会、二日間が終演。
合唱団は終演後解団式を行いました。常盤木学園高等学校音楽科、宮城学院女子大学、エキストラの方々、仙台フィルと第九をうたう合唱団、飯守マエストロとの記念写真です。
仙台フィルと第九をうたう合唱団は、また来年の第九を目指してオーディオションから始まるんですね。(笑)
(c)仙台フィルと第九をうたう合唱団twitter
(c)仙台フィル公式FB
仙台フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会「第九」
2018/12/22(土)15:00~ 仙台銀行ホール イズミシティ21
モーツァルト
歌劇「ドン・ジョバンニ」K.527 序曲
ベートーヴェン
交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱つき」
指揮:飯守泰次郎
ソプラノ:澤畑恵美
メゾソプラノ:金子美香
テノール:片寄純也
バリトン:大沼徹
合唱指揮:佐藤淳一
合唱:
仙台フィルと第九をうたう合唱団
常盤木学園高等学校音楽家1-2年生
宮城学院女子大学音楽家有志
コンサートマスター:西本幸弘
客席首席ヴィオラ:中村智香子
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
なぜ仙台フィルなのか?
それは前回の日記の時に深く述べたので、ここでは繰り返さない。
自分に関与すると思われる人が、いっせいにこの第九のコンサートに勢ぞろいすること、そしてクリスマスを仙台で過ごすことにとても魅力を感じたからである。
そして仙台フィルを地元で聴くことは、運命で避けられないことだと確信したこともある。
ホールは、仙台銀行ホール イズミシティ21。
全体をフレームに収めるのは難しいので、これが精いっぱい。
地下鉄の南北線で、一番最後の終着駅「泉中央」で下車して、すぐ。
最近は地下歩道が出来てたので、そのままその通路を歩いて行けば、地上に出て、すぐ目の前がホールだ。アクセスが抜群にいい。
ホールのジャンルとしては、多目的ホール。
コンサートやオペラ、バレエなど幅広いジャンルの大型の公演対応の大ホール、発表会やミニコンサートで密な空間を生み出す小ホール、展示会からダンスパーティ、会議まで使える展示室のほか、スタジオや練習室で構成される複合施設。
ホールを運営していくという点では、いろいろなジャンルで使える複合施設にしておくことは、スケジュールの空きを作らず、つねにコンテンツで満たされるようにビジネスをやっていくという点で必須ですね。
確かにクラシック音楽専用ホールは、究極の憧れかもしれないが、実際ホール運営を黒字で回すようにしていくには、クラシックのコンサートだけで、それだけで毎日、つねにホールを満杯にするのは、コンテンツ供給という点でやはり大変なこと。
「仙台に音楽ホールを!」という動きもあるようで、やはり音楽家の方にとっては、クラシック音楽専用ホールをフランチャイズにもつってすごく憧れることなんですよね。それも痛いほどよくわかる。
地方のホール運営は、そのコンテンツ供給問題ふくめ、運営していく上で、なかなか制約があって、難しいものがあるのだけれど、もし音楽ホール実現!となった暁には、ぜひ応援させてもらいますよ。
このホールは、市民の自主的な文化活動を促進し、もって市民の文化の振興を図ることを目的として設置されている。なので、まさに音楽専用というのではなく、広く市民の文化振興を目的としているところからも、このスタイルのホールは納得できる。
仙台市市民文化事業団・東北共立・石井ビル管理グループが管理運営を行っている。
仙台フィルは、いつもフランチャイズ・ホールとしては、日立システムズホール仙台を使うのだけれど、今回の第九でこのホールを選んだのは、大合唱団をステージに入れるには、ステージの奥行きがこちらのホールのほうがゆとりがあるように思えたからなのだが、どうだろうか?
真ん中にロビー空間があって、その両端に大ホール、小ホールがある。
なかなか新しく出来たばかりのようで、とても綺麗な施設だ。
多目的ホールのスタンダードな形状のホール。
開口型のステージにやや扇形気味に見えるが、じっさいは平行壁関係のシューボックス。そしてホール視野のことを考えた傾斜のある客席。
ホールの音響は、じぶんは中央ど真ん中の前方よりの座席だったので、そこでの印象なのだが、オーケストラのサウンドがとても明晰で濁りなどいっさいない、そして音伝播上の損失ロスがいっさいない、とてもクリアな音響のように感じました。
その反面、座席が前方ということで、ホール空間の音、響きが聴こえにくいこともあると思うが、オーケストラのサウンドに対して、それを取り巻くはずの反射音、響きがそんなに感じなかったような・・・
とにかくそのオケの大迫力のサウンドにびっくりした感じ。ふつう、オケのサウンド6(あるいは7)に対して、響きが4(あるいは3)ぐらいの割合で、全体のシルエットが聴こえてくる感じなのだけれど、かなり直接音主体でどちらかというとソリッドな音質で、自分に迫ってくるようなサウンドだった。
仙台ファイルのサウンドは、後述で詳しく。
仙台フィルの第九。
仙台フィルは、毎年年末になると恒例の年末行事である第九演奏会をおこなう。定期公演とは違う「特別演奏会」という位置づけである。自分は、この日の実演に接するまで、全然知らなかったのであるが、とにかくびっくりしたのは第九合唱団のその大編成な所帯。
えぇぇぇ~?そんなに乗せる?という感じで(笑)、ステージの横幅はそんなにないけど、奥行きがあるので、そこにどんどん合唱団が何列にも重なっていくのは圧巻なものがあった。
最近の第九の合唱構成という言い切り方はできないけれど、比較的少人数編成で、前後2列~3列位がスタンダードかな?とも思うのだが、ひさしぶりの大編成な第九な合唱団を見た。
その厚みのある人の声の合唱は、じつに迫力あって、美しい調べを奏でていた。
録音より生演奏がぜったいいいと思うのは、絶対この合唱ですね。
あの合唱のホール全体に行き渡るスケール感の大きさ、そしてそれぞれ声のキーの高さが違う方々による幾重にも重ねられた声のハーモニー、和声感の美しさ。これは絶対生には敵わない。
これも今回はじめて知ったのだが、この仙台フィルの第九の合唱団として、
仙台フィルと第九をうたう合唱団
常盤木学園高等学校音楽家1・2年生
宮城学院女子大学音楽家有志
などで構成された混声合唱団だったのだ。
「仙台フィルと第九をうたう合唱団」というのは、「第九」特別演奏会での仙台フィルとの共演を目的に、オーディションを経て結成された市民参加型の合唱団。20代~70代までの幅広い年齢層で構成されていて、仙台市民に限らず、多賀城市や岩沼市、など県外などから約120名が参加している、いわゆるこの演奏会のためのボランティアなのだ。
一般参加型としては今年で12回を迎え、オーケストラをより身近に感じていただく機会として、着実にその輪を広げてきた。震災を経験して歌う喜びを分かち合いたいという思いで参加された方も多く、初めての方や何十回も歌われてきた方などさまざま。
8月から週一回練習を重ねて、本日の演奏会を迎えたのだ。
小澤さんのサイトウキネンの合唱もそう、地元松本の合唱団有志で構成されている。
都会のようにプロで生活している合唱団がいるわけではない、地方独特の事情なのだが、それにしてもその合唱のレベルの高さ。
本当に驚くばかりである。
今回のことを知るまで、まったく先入観なしに聴いていたので、仙台でプロの合唱として生活している人たちなのかな?ぐらいにしか思っていなかった自分はその素晴らしく分厚く美しいハーモニーは、当然のことと思っていたのだが、こういう背景を知ったいま、あらためて驚くしかないのである。
今回の第九のコンサートである意味もっとも自分にとって衝撃的だったのは、この合唱のパフォーマンスだったもしれない。
ソリストの澤畑恵美さん(ソプラノ)、金子美香さん(メゾ・ソプラノ)、片寄純也さん(テノール)、大沼徹さん(バリトン)もじつに素晴らしかった。ここはみなさん、さすがに二期会のプロ。自分が思い描いていた通り、まさにこの曲に対するイメージ通りの見事な歌いっぷりだった。
特にメッゾの金子美香さんは、今回の自分の主役的存在でもあり、その美声、豊かな声量を十分に堪能させていただいた。今年夏のバイロイト音楽祭の「ワルキューレ」で日本人歌手としての出場に日本中が沸いた。
今回、実演に接するのは初めてだと思う。
自分の記憶にないのだ。とても満足。今回このために仙台まで足を延ばした甲斐があったというものだ。
澤畑恵美さんは、いままでかなりの回数、実演に接していると思う。
ミューザ川崎の東響の名曲全集での第九やマーラー2番「復活」で何回も聴いたような記憶があります。独唱するパートが多く、見せ場も多く、堪能させていただきました。素晴らしかったです。
仙台フィルは、自分が予想していた以上に素晴らしいオーケストラであった。
とにかくその発音能力の高さに驚いた。大音量なのである。(笑)オーケストラとして歌う能力があるというか、鳴らす能力が十分すぎるほどある。
特に弦の厚みと、ユニゾンの美しさは卓越したレベル。オーケストラの楽器は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど、その大半が弦楽器が占めている。ここにしっかりとした土台があると、オケ全体のサウンドも締まるし、オーケストラの個性の大半もそこで決まってしまうと言ってもいい。
自分の前方中央の座席で聴いていると、その弦の厚み、アンサンブルの精緻さ、アインザッツが一致している感覚とか、かなり秀逸で感心させられることが多かった。そしてとにかく大音量なのである。
木管などの管楽器の安定ぶりも素晴らしいものがあった。なによりもすべての楽器の調和から、オーケストラ全体として、とてもバランス感覚がとれているオケだと感じた。
その精緻な演奏能力と発音能力に長けていることから、第九という終盤に向けてどんどんとクレッシェンドしていく爆発力、盛り上がりは見事なまでに花開いた演出だったように思える。
敢えて及第点をつけるなら、ホールのせいなのか、座席のせいなのか、わからないが、響きがあまり感じられず、じかにシャワーのように硬質な弦のサウンドを浴びせられるものであるから、やや耳にキツく感じたことも確か。
単にアンサンブルの素晴らしさだけではない・・・なんというのかな、弦の音の解像度の高さ、まさに弦が擦れる音が聴こえてきそうなぐらいキレッキレのサウンドなのだ。ちょっと耳が痛くなる感じなくらい。(笑)
もっとシルキーで絹糸のような肌ざわりの音色の質感や強弱の緩急があると、もっと表情豊かな演奏になったかもしれない。要はちょっと潤いのサウンドが欲しかったというところです。
まっこれはハコのせいかもしれませんね。
飯守泰次郎さんは、もう大河のようにこの大きな流れにある曲をまとめきっていてさすがだと思いました。もう指揮者としても大御所。逐次細かなキューを出すわけでもなく、ある程度団員たちに任せきったような大らかで全体を俯瞰した大捌きな指揮はさすがだと思えた。
ほんの少し前まで体調を崩されていることがあって、出演をキャンセルすることがあったので、とても心配していたのであるが、この日見た限りでは、とても元気そうで安心しました。
仙台フィルを聴くなら、まず飯守さんの指揮で、というのが自分の心の中の大きな目標としてあったので、心願成就。言うことないです。
そして最後に 西沢 澄博さんの首席オーボエ奏者としての勇姿、しっかり拝見してまいりました。
調音のA(ラの音)から、すべてにおいて。真正面に座っていたので、飯守さんに重なって姿は見えなかったけれど(笑)、その嫋やかなオーボエの音はしっかり聴こえていました。
ある意味、西沢さんの勇姿を見ることが、地元仙台まで行こうと思ったキッカケなのですから、想いが遂げてよかったです。
今年の聴き納め。
そして年末の第九を仙台にて、仙台フィルで聴けたことは、今年2018年の自分のクラシック・シーズンを締めくくる上で、本当に最高の自分へのご褒美だったと言っていいと思う。
仙台フィル第九特別演奏会、二日間が終演。
合唱団は終演後解団式を行いました。常盤木学園高等学校音楽科、宮城学院女子大学、エキストラの方々、仙台フィルと第九をうたう合唱団、飯守マエストロとの記念写真です。
仙台フィルと第九をうたう合唱団は、また来年の第九を目指してオーディオションから始まるんですね。(笑)
(c)仙台フィルと第九をうたう合唱団twitter
仙台フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会「第九」
2018/12/22(土)15:00~ 仙台銀行ホール イズミシティ21
モーツァルト
歌劇「ドン・ジョバンニ」K.527 序曲
ベートーヴェン
交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱つき」
指揮:飯守泰次郎
ソプラノ:澤畑恵美
メゾソプラノ:金子美香
テノール:片寄純也
バリトン:大沼徹
合唱指揮:佐藤淳一
合唱:
仙台フィルと第九をうたう合唱団
常盤木学園高等学校音楽家1-2年生
宮城学院女子大学音楽家有志
コンサートマスター:西本幸弘
客席首席ヴィオラ:中村智香子
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
2018-12-24 11:39
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