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ウイングス・オーヴァー・アメリカ [海外ロック]

ポール・マッカートニーが、自分の過去のライブアルバム4枚をリイシューするというニュースが飛び込んできた。


リリースされるのは1976年発表の「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」、1988年発表の「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」、1993年発表の「ポール・イズ・ライヴ~ニュー・ワールド・ツアー・ライヴ!!」、そして2007年にロサンゼルスのアメーバ・レコードでわずか900人の観客を前に行ったライヴを収録した「アメーバ・ギグ」。


この中で結構ショッキングなニュースだったのが、その最初のアルバムである「ウィングス・オーヴァー・アメリカ」について語っているインタビューだ。


ポール・マッカートニー、「ウィングス・オーヴァー・アメリカ」について語ったインタビュー

https://www.universal-music.co.jp/paul-mccartney/you-gave-me-the-answer/

(以下、抜粋)

ポール:あのツアーで、初めて再びビートルズ時代の曲を演奏するようになったんだ。だから、あのツアーの前のツアーはウイングスの曲ばかりで構成されていたということになる。ウイングスが本物のウイングスになって、あのツアーで全てが弾けた感じだね。それまではとにかく、ビートルズのトリビュート・バンドではなく、ウイングスをバンドとして確立させることに全力を注いでいた。でもウイングスとして何曲かヒット曲も出て、「バンド・オン・ザ・ラン」が大ヒットして、それらのヒット曲をレパートリーに入れて演奏していたら、“そろそろ、ビートルズの曲をやってもいいな!”という気持ちになったんだ。そしてそれが可能になってある意味、ホッとした。というのは、僕はいつもお客さんが何を聴きたいのかということを意識していたから。僕のお客さんは狭い範囲の人たちではなくて、幅広い年齢層の人たちから成っている。だから昔ヒットした曲を聴きたいと思っている人がいる可能性もある。だから「ヘイ・ジュード」をやらないとがっかりする人もいると思う。当時は、そういう曲をあの時点まで全然やらなかったから、少し気楽に構えて、お客さんが聴きに来たような曲をやるのもいいなと思ったんだ。


ポール:そう、そこから今やっているようなレパートリーになっていった。つまり、かなり多くのビートルズの曲を取り入れて、ウイングスとか、ソロの曲とかを取り入れたレパートリー。あの頃から、ビートルズの曲をやることを自分に許した。ウイングスとして確立させることは不可能だとすら思っていた時期もあったんだ。ビートルズに頼ってしまったら、ウイングスとしてのアイデンティティを確立することができないと信じていた。でも75~76年頃にはウイングスとして確立できたから、その二つを足せば成功への公式が出来上がると思ったわけ!

それと、あの時点でバンドがいい感じだったということもある。ウイングスとしても数年間は試練の日々だと思っていた。ビートルズもそうだったし。僕たちは、有名になる前にハンブルクで演奏したり、リヴァプール周辺のクラブで演奏するような下積みを経験してきたから。ビートルズがレコードを出す前、僕たちは地元でのみ知られている存在だった。たくさん演奏して技術を磨いて来たから、ウイングスに関してもそうしないといけないと思っていた。でも「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」の頃、ワールド・ツアーをやる頃には、そのような時代は終わりに近づいていて、僕たちもウイングスが何か、わかるようになっていた。



自分のロック人生を決めた1枚を選べ、と言われたら、間違いなくこの1枚を選ぶ。
だからこのリイシューはとてもうれしい。 


127[1].jpg
ウィングス・オーヴァー・アメリカ
(Wings Over America)

http://u0u0.net/XBuX



自分のロック人生を決定付けたのは間違いなくポール。それもウィングスだった。
それもこのアルバムが、ウィングスとのはじめての出会いだったのだ。

当時は、ウィングス USAライブと言っていた。
LPについている帯もこんな感じであった。 

ウィングスのLP.jpg


ウィングスを知ってファンになってから、ビートルズの存在を知って、ビートルズにも嵌るようになっていった。


20130694[1].jpg


そう!まさにこのシルエット。

ウィングス時代のポールと言ったら、このステージ衣装にこのリッケンバッカーのベース。
まさにUSAライブのときのショットだ。

ウィングス時代のポールはとても音楽のバリエーションが豊かなミュージシャンで、単なるロックだけではなく、アコースティックギターを抱えての演奏、ピアノの前での演奏などいまのポールのライブの原型となるスタイルがこのウィングス時代にその基礎ができあがったものと言える。

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自分が当時のポールに求めていたもの、そして当時の音楽雑誌などのメディアがウィングスに求めていたものは、あきらかにポスト・ビートルズ的なものだった。そのように書かれていたことをはっきり覚えている。

自分は、ウィングスからビートルズを知ったけれど、そうやってビートルズの偉業を知れば知るほど、尚更いまのポールに憧れる想いが強くなるというか、ポール・マッカートニー&ウィングスを聴くことで、その背後にビートルズの幻影を見ているような想いがあったように思う。

それは、まさにこのUSAライブでウィングスがビートルズの曲を演奏してくれるから、尚更そう感じたのだ。

ところがこのインタビューを読んで、じつはウィングスがビートルズの曲を演奏するようになったのは、このUSAライブからだったという事実。

そしてそれまで頑なにウィングスがビートルズの曲を演奏することを拒んでいたという事実。

そしてその背景にあるポールの想い。

1976年の中学生のときにこのアルバムでウィングスを知って、以来43年ぶりに知った真実ということになる。

そりゃショックというか衝撃だよ。(笑)

自分は当時からウィングスがビートルズの曲を演奏するのは、当たり前と当時からずっと思っていたからね。それが逆に他のロックバンドでは絶対成し得ないウィングスの背後にある特別のオーラでもあると確信していたから。

でもやっぱりポールは男だね。そういうビートルズ時代のオーラにおんぶに抱っこのビートルズ・トリビュート・バンドにはなりたくなかった、まずウィングスとして自立したかった、というコメントにポールのバンドマンとしての男の意地みたいなものを感じて、今更だけど惚れ直しました。

paul_wings_rockshow[1].jpg

このアルバムが、自分のロック人生において決定的な1枚になった大きな理由に、ロックアルバムのライブ録音に対する考え方があった。クラシックの場合、スタジオで録音する場合もあるが、いまでは、コンサートホールを貸しきって、観客を入れずにセッション録音でアルバムを作ることが大半だ。でも中には、お客を入れて演奏したものをそのまま録音するライブ録音もある。

でも大抵の場合はセッション録音ではないだろうか?

ロックの場合は、アルバムを作るときは、スタジオ録音が原則だ。
ロックは少人数だからね。ロックのアルバムは、それこそオーバーダビングなど、何重にもテイクをとって、それを重ねに重ね、サウンドクリエーションの加工操作をして完璧なサウンドを作り上げる。

だからロックのアルバムって完璧なサウンドなのだ。ある意味ライブ感よりも完成度重視のところがある。

そういう風潮をロック史上で作り始めたのがビートルズの中後期の作品なのだと思う。
彼らは初期にライブ活動をやめて以来、その活動をスタジオでの録音作業に全力を注いだ。
まさに当時の録音技術のすべてを注ぎ込んで実験的な作品を世に残していった。

コンセプトアルバムという発想も彼らが作り上げたものだ。

なぜ、ウィングスのUSAライブが、自分にとって画期的だったか、というとそれはロックのライブ録音の素晴らしさを認識させてくれたからだ。

それまでは自分はウィングスを知らなかったし、彼らの曲も聴いたことがなかった。
このUSAライブで初めて彼らの曲を聴いて、その曲に馴染んで大ファンになった。

当然、じゃあオリジナルのアルバムも揃えてみたい、聴いてみたいと思うのは、人間の性であろう。

もちろんウィングスのオリジナル・アルバムも揃えました。
ヴィーナス・アンド・マースやスピード・オヴ・サウンドとか、バンド・オン・ザ・ランとかね。ウィングスのアナログレコードのアルバムは全部買いましたよ。

子供時代の少ないお小遣いを貯めて。

でも聴いたら全然感動しないんだよね。なんか人工的なサウンドで、生気がない、ライブ感がない、自分に訴えてくるものが全然ない。

なんだよ!これじゃUSAライブのほうが全然いい!

と思ってしまいました。

ウィングスを聴くなら、もう断然USAライブがいい!

という結論に達してしまった。

USAライブは、それまでのウィングスの有名なヒット曲を全部集めているような選曲だったから、USAライブを聴いていれば、ウィングスを完璧に堪能できるという腹があった。

たぶん聴いた順番がライブ録音のほうを先に聴いて、あとでオリジナル・アルバムを聴いたからこういう感想になったのだと思う。

このときに自分はロックはライブ・アルバムがとても魅力的!という考え方を持つようになった。


【A写サフ゛】Paul-McCartney-Wings-Rockshow-3-705x1024[1].jpg



クラシックの場合、セッション録音のアルバムとコンサートホールでの実際の生演奏って、そんなにサウンド的に大きな違いを感じることはないだろう。その自宅でのオーディオでの鳴らし方にも大きく寄りますが。。。(笑)

でもロックの場合、オーバーダビングで作られているアルバムのサウンドを、そのまま実際の生演奏のライブで実現するということは確実に不可能なのだ。結論として、ロックの場合、演奏技術やサウンドパフォーマンスとしては、ライブのほうが確実に落ちる。

アルバムで聴いていたときはすごくいいのに、実際のライブを聴くと、ずいぶん下手くそだよなぁ、とか、なんかがっかりだよなぁ、というのはロックの世界では当たり前のことなのだ。

自分はロック少年の時代、ずっとそのことをライブはハンディキャップがある、このアルバムを聴くとすごいイイ演奏だけれど、はたしてこれを実際のライブで実現できるのかな?とかいつもそんなことを考えながら、アルバムとライブのギャップについて考える癖がついていた。

社会人になって、クラシック専門に聴くように軸足を移してからは、そういったギャップをほとんど意識しない、考えないようになった。

やっぱり根本的にクラシックとロックではその領域では造りが違うのだと思う。

でもロックではライブになると、その演奏パフォーマンスはガクンと落ちてしまうけれど、その生気のあるサウンド、臨場感、ライブ感はもう断然普通のスタジオ録音のアルバムよりライブアルバムのほうがいいのだ。

やっぱり大観衆の大歓声の中で歌っている、その盛り上がる瞬間、大歓声が上がる瞬間とか、もう断然ライブアルバムのほうがいい。

そのコンサート会場にいるような感覚を疑似体験できる。

ひと言で言えば聴いていて興奮するのだ。

以来、ロックはライブ・アルバム!という考え方を自分は持つようになった。

セッション録音でもライブ録音でも、つねに観客は静寂、たまに咳き込み、拍手があるくらいの違いしかないクラシックとは、そこに大きな違いが有るように思えた。

そういうきっかけを作ってくれたのが、このウィングスのUSAライブなのだ。
このアルバムが全てのきっかけだった。

ポリスがシンクロニシティーの後に、ライブ・アルバムを出すという噂があったとき、自分が心ときめいたのも、ライブはやっぱり聴いていて燃える!という発想があったから。またポリスほどのテクニシャンのバンドであれば、ライブでもそんなにがっかりすることはないだろう、という考えもあった。逆に演奏がうまいと言われているけれど、実際どれほどのライブパフォーマンスなのか、を知りたいという想いもあった。


ウィングスのUSAライブは、当時の映像素材が残っていて、「ロックショウ(Rock Show)」というタイトルで映画になっていて、そのパッケージソフトもBlu-rayとして販売されています。 


656[1].jpg

ロックショウ(Rock Show)

http://u0u0.net/0TUg


自分はその事実をずっと知らず、つい2~3年前に知ってもうびっくり!
慌ててBDを買って観ました。

もう涙なくしては観れなかったです。

自分の中学生時代。

当時動く動画コンテンツというものもなかった時代。

LPを聴きながら、音楽雑誌の写真を眺めながらそのライブパフォーマンスを頭の中で想像するしか方法がなかった時代。

そんな40年ぶりにその空想していたライブ映像をいま目の前で観れているわけです。

ライブの音は、まさにレコードそのもの。子供の頃に聴いた音は、何年たって大人になっても頭の中に刻み込まれているものだから、絶対忘れないし、一度耳にしたらピンときます。




ウィングスUSAライブのセットリスト。


CD1
1. ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショー~ジェット
2. レット・ミー・ロール・イット
3. 遥か昔のエジプト精神
4. メディシン・ジャー
5. メイビー・アイム・アメイズド
6. コール・ミー・バック・アゲイン
7. レディ・マドンナ
8. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
9. 007死ぬのは奴らだ
10. ピカソの遺言
11. リチャード・コーリー
12. ブルーバード
13. 夢の人
14. ブラックバード
15. イエスタデイ

CD2
1. 幸せのアンサー
2. 磁石屋とチタン男
3. ゴー・ナウ
4. マイ・ラヴ
5. あの娘におせっかい
6. 幸せのノック
7. やすらぎの時
8. 心のラヴ・ソング
9. 愛の証し
10. ワイン・カラーの少女
11. バンド・オン・ザ・ラン
12. ハイ・ハイ・ハイ
13. ソイリー



このセットリストを見た一瞬で、もうすべての曲のメロディーラインが自然と頭に浮かぶくらい完璧だ。

このUSAライブから、ビートルズの曲をやるようになったというけれど、こうやってみると、ザ・ロング・アンド・ワイディング・ロード、ブラックバード、イエスタディーの3曲しか入っていない。まだポールの心の中に抵抗感があったんだね。(笑)

でもこうやって眺めてみると、本当にウィングス時代の名曲のオンパレードという感じでじつに壮観です。ポール・マッカートニーのその類稀なメロディメーカーとしての才能に本当に驚愕、畏怖の念しかないです。これにさらにビートルズ時代の膨大な作品群が加わるんですから。

もうポールは、クラシック界のバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなどの作曲家たちと比較しても決して1歩も引けを取ることのない堂々と肩を並べるべき20世紀の大作曲家である、と言ってもいいのではないだろうか・・・。








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