ハクジュホール リクライニング コンサート [コンサートホール&オペラハウス]
ハクジュホールは首都圏の室内楽ホールの中でも屈指の音響を誇る素晴らしいホールであろう。数年前に行って、大感動した。300席という非常に慎ましやかな空間で、そのあまりに計算しつくされた近代的な内装空間、そしてステージの音が減衰することなく飛んでくるダイレクト感、自分的には衝撃なホールであった。
電位治療器などを手掛ける白寿生科学研究所本社ビルの7階にあり、同社が運営を行う。
ひさしぶりに、またこの芸術的に濃厚な空間に行ってみたいと思ったのは、このホールだけがおこなっているリクライニング コンサートに行ってみたいと思ったからだ。
コンサートホールとして世界初のリクライニングシートが採用されている。
電位治療器ヘルストロンで知られる白寿生科学研究所は「健康のトータル・プロデュースを提案」する企業。
このコンサートで使われるリクライニング・シートは、ヘッド・レスト付きで45度まで倒せるオリジナルなシートだ。まさに音楽を聴きながら寝ながらいい気持ちでお過ごしください、という狙い。
このリクライニング・コンサート、コンサート時間は60分。
チケット代金も2000円台と破格なサービスだ。
チケット代金も2000円台と破格なサービスだ。
ハクジュホールは2003年に開館して、それ以来ずっと、このホールだけが持つこのリクライニング・シートによるリクライニング・コンサートを開催してきた。2019年度で第143回というから、その歴史にも重みがある。
このリクライニングシートに思わず反応してしまったのは、じつは個人的な体験による。
オーディオの世界では、リスニングチェアはローバック(背もたれの高さが低いこと)が基本というルールがあるからだ。大昔、オーディオを試聴するときの椅子として、どのようなものがいいか、いろいろ物色していたところ、ヘッドレスト付きの聴きながらそのまま寝てしまいそうな、いかにも座り心地の良さそうなハイバック(背もたれの高さが高いこと)の高級椅子があり、これがいいと思った。
さっそく自宅に納品されてきた。
ウキウキしながらセッティングして音楽を聴いてみたところ、予想もしない弊害があることがわかった。
部屋の後ろから、横からの壁からの反射音がまったく聴こえないのだ。自分はサラウンド派だから、さらに厳密に言うと、リアチャンネルからの音がまったく聴こえなかった。
これは椅子のハイバックの高さに、みんな音が遮られているからだ。
その前の椅子はローバックな椅子だったので、サラウンドは囲まれ感があって気持ちよかったのだが、このハイバックな高級椅子に変えた途端、リアからの音が聴こえなくなり、フロントのサウンドステージだけしか聴こえない感じだった。
自分は青ざめた。
これはダメだと思った。
これはダメだと思った。
すぐに椅子のハイバックのせいだと判断した。
納品されたその日に、中古に売却をして廃棄処分にしてしまった。
たった1日の短命である。
そしてまたカタログを物色して、ローバックな椅子に変更した。背もたれが、腰の部分ぐらいの高さしかないので、本当に座り心地は最悪なのだけれど、サウンド的にはバッチリだった。自分の耳の高さの360度の空間に音を遮るものがなく、すべてが耳に入ってきた。
やっぱりこれだ!
それ以来、オーディオのリスニングチェアはローバックが基本!というのが自分の経験則なのだ。
だから最初ハクジュホールのリクライニング・コンサートの存在を知ったとき、それってありか~?と思わず疑ってしまったのだ。(笑)
健康によいリラックスしながら音楽を聴く、という健康プロデュースの側面からの発想アイデア。全然悪くないし、もちろんいい企画だと思うし、そういう発想が生まれるのも当然だと思っていたが、個人的に音楽鑑賞の椅子はローバックじゃないと。。。という考えがあった。
コンサートホールだってオーディオルームと同じだ。
ステージからの実音に対して、四方の壁、天井、床からの反射音を聴いて、そのミックス状態の音を聴いて気持ちいいと思うのだ。椅子がハイバックだと、その横、後方からの反射音が遮られて聴こえない状態になってしまい、自分はダメだと予想していた。
だから気持ちはよ~くわかるんだけれど、それはちょっとなー?というのが、このリクライニング コンサートへの予想だった。
だから見て見ないふりをしていたのだが、やはりどうしても気になってしまい、ちょっと体験してこようと思ったのだ。もしダメだったら、そのまま沈黙をしていればいいし、よかったら日記にすればいい。
そんな軽い気持ちで体験してみた。
ハクジュホールのリクライニング コンサートは、その日専用にホールの椅子を設定する。だからいつも体験できる訳ではなく、その特別に椅子がチューニング設定された日じゃないと体験できないのだ。
これが実際、そのリクライニング コンサートがある日に行ったときのハクジュホールの椅子の状態。
奇数列単位にヘッドレストをつけて45度で傾きをつけられるようにする。
偶数列にはお客さんを入れないのだ。
一列おきなのだ。
予想よりもハイバックでなく、そんなに影響もなさそうという第一予想。
さっそくこの状態でコンサートを体験。
結論から言うと、まったくそのような弊害はないと思われた。
聴いている途中、体を起こしたりして、その違いがあるかどうかも確認してみたが、あまり差異は感じなかった。自分が考えるには、オーディオルームの容積と違って、コンサートホールの容積はべらぼうに広い。だから1人の座席の占める容積に対して、ホールの容積があまりに大きいのでそういう弊害は感じないのだと思った。
オーディオルームの狭さだと反射音の遮りを感じてしまうのかもだが、1人の座席での聴感覚に対して、対ホール容積は全然大きいので、そのような弊害はあまり感じないほど無視できるものなのではないか、と自分なりに考えた。
よかった!
ハクジュホールの伝統的なリクライニング コンサートはなんの問題もなく素晴らしいアイデアだった。
ただ・・・45度に傾いて寝ながらコンサートを聴くという体験はいままでにないので、居心地が悪いというか、やっぱりどうしても体を起こして立って座って聴いていたほうが、体が楽。
寝ながら聴くというのは体勢的に結構疲れるのでは?(笑)
でも結構面白い体験でした。
伝統あるサービスにいちゃもんをつけるオヤジにならなくてよかった。(笑)
以上が本題。
この後は、その素晴らしい室内楽ホールであるハクジュホールのご紹介。
ハクジュホールは、東京都渋谷区富ヶ谷にあり、最寄り駅は代々木公園。
徒歩5分位かな。白寿生科学研究所本社ビルが見えてくる。
このビルの7階にある。
開場までの間は、この1階の待合スペースで待っている。
そして開場時間になったらエレベータで7Fまで上がる。
そうするとホールのホワイエ空間が現れる。
そうするとホールのホワイエ空間が現れる。
近代彫刻・美術にあしらわれた空間は芸術的で美しい空間だと感じました。
そしてハクジュホールへ。
なんと美しい空間なのだろう。モダンアートを感じさせる空間ですね。
自分のコンサートホールの内装空間の好みからすると、ヨーロッパ調の伝統ある装飾空間が好みで、あまり近代的な無機質な凹凸空間は好きではないのだけれど、このホールの内装空間はそういう古式な感じではなく、逆に近代的で造りこまれた感のある人工的、芸術的な美しさがありますね。
音の流れを計算しつくした美しさ、というか。
そしてホール内の内装の仕掛けがあまりにオーディオルームのルームチューニングを思い起こさせるような身近な感覚でオーディオファンにとってはかなり刺激的な空間内装です。(笑)
ホールをこの斜めから撮影するのが、自分のいつもの好みのアングルだったりします。
ステージから後方を眺める。
そしてかならず天井も撮影します。
この反響板の独特の意匠!
ハクジュホールの音響なのだが、自分が一番印象に残るのは、ステージの実音が減衰することなく観客席に飛んでくるダイレクト感が素晴らしいこと。300席という容積もあるが、非常に音が濃厚で、ステージと観客席の距離感が近いと感じることが一番なのではないだろうか?響きもとても豊かだ。間違いなく首都圏の室内楽ホールではトップクラスの音響だと思う。
自分は初めて体験したときから、このホールがとても大好きだ。
そしてなんと!ホワイエにこんなものがぁあああ!(笑)
開場時間になってホール内へどんどんと人が入場していくのをよそ目に傍らに、ポツンと佇むN801くん。
接写!やはり美しいフォルム!
なんでこんなところに、N801があるのかレセプショニストの方に聞いてみたら、ホール内の音、音楽をホワイエ空間に流すためだという。時間内にホールに入れなかった観客はホワイエで待たされる。その間にホール内の音楽を!という意味合いなのでしょう。
そしてこの日のコンサートは、上野由恵さん&曽根麻矢子さんのデュオ・リサイタル。
上野由恵さんはいま注目の若手期待のホープ。東京六人組などで有名で、ぜひ実演に接してみたいなぁと切に思っていたのでした。とても深窓のお嬢様のような感じで育ちが良さそうなのがとてもいい印象です。
リクライニング コンサートを体験してみたいと思っていたところにジャストタイミングでした。
東京六人組はSNSのクラシックコミュでもみんなでプッシュして応援していこう、若手の音楽家を応援していこう、という大きな応援の流れがあって、自分はとても微笑ましく思っていました。
予算不足の情けない体力のおかげで、なかなか若手音楽家の公演に足を運べませんが、これを機会に・・・という意味合いもありました。この日をきっけかに、3月の横浜みなとみらいでおこなわれる東京六人組のコンサートにも足を運んでみようと思っています。
上野さんは東京藝術大学をアカンサス音楽賞を得て首席卒業。同大学大学院修士課程修了。いままで数多の音楽賞を受賞して、世界中のオーケストラとも共演して着実にキャリアを重ねてきている。
2016年はアメリカを拠点として、ワシントンでのソロリサイタルやカーネギーホールでのソロ演奏など、各都市で公演を重ねる。2017年秋よりパリに拠点を移し、フランス及びヨーロッパ各国で活動。2018年夏に完全帰国。
曽根麻矢子さんは、先日のサラマンカホール開館30周年記念ガラコンサートで実演に接したばかり。
フランスの名門レーベルERATOの名プロデューサー、ミシェル・ガルサンにスコット・ロスの遺志を継ぐ奏者として認められ世界デビューを果たした名アルバム「バッハ:イギリス組曲集」(1991)から約30年。
今やチェンバロ奏者の世界的第一人者として活躍する。
まさに日本を代表するチェンバロ奏者といっても過言ではないのではないでしょうか?
こういう実演に接してみてそのプロフィールを再確認するたびに、自分もチェンバロは普段なかなか経験することができなくて、普段からもっと古楽を聴かないとだめだなぁと思うことしきりです。
自分にとって古楽の世界ってそんな距離感かも。
チェンバロの音色はとても魅惑的でこの音色を聴くと、自分はどうしてもなぜかバッハを思い出してしまいます。2014年にライプツィヒ&ドレスデンに行くために、バッハを思いっきり勉強していた時が走馬灯のように頭に流れます。またコンサートの演目の中にもありますが、自分にとってチェンバロといえばクープランのクラウザン曲集が定番で、アルファレーベルのクープランのクラウザン曲集のCDが自分にとっては、オーディオオフ会の定番ソフトでした。
これがぶったまげるぐらい超優秀録音で、オフ会の一発目にかけると度肝を抜かされるという有難いソフトでした。自分にとってチェンバロと言えばこの曲、このソフトの影響イメージが大きいです。
チェンバロの音色はとても倍音が豊かに出るそうで、ピアノよりもはるかに倍音成分がでる楽器なのだそうです。一度、曽根さんのソロコンサートに趣き、チェンバロだけの世界に浸ってみたいです。
2020年秋より、ハクジュホールにて、J.S.バッハの主要作品を数年間に渡って演奏するコンサートシリーズをスタートさせるそう。
スイス在住のチェンバロ制作者デヴィッド・レイが曽根麻矢子のために長い時間をかけて制作した18世紀フレンチモデルの楽器を使用し、バッハのチェンバロ主要作品を5年をかけて演奏する話題のコンサート・シリーズ。
古楽の世界ってクラシックピアノもそうですが、こういう楽器そのものにも価値観がありますね。
これはぜひ行ってみたいコンサートです。
第152回 リクライニング・コンサート
上野由恵&曽根麻矢子 デュオ・リサイタル
2020年1月15日(水)15:00/19:30
主催:Hakuju Hall/株式会社 白寿生科学研究所
主催:Hakuju Hall/株式会社 白寿生科学研究所
C.P.E.バッハ:ハンブルガー・ソナタ ト長調Wq.133/H564
クープラン:クラウザン曲集 第3巻 第15組曲より <チェンバロ・ソロ>
作曲家不詳:「グラウンドによるグリーンスリーブス」による変奏曲
細川俊夫:バスフルートのための<<息の歌>>
J.S.バッハ:フルートソナタ ホ短調 BWV 1034
アンコール~
クープラン作曲
「恋のうぐいす」
「恋のうぐいす」
バッハ作曲、グノー編曲
「アヴェ・マリア」
「アヴェ・マリア」
2020-01-19 10:46
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コメント(2)
はじめまして。
今度ハクジュホールに行くのですが楽屋待することは可能なところですか?
by もも (2020-02-08 19:22)
ももさん、コメントありがとうございます。
楽屋待ちですか?どうでしょうか?ホールはこの白寿ビルの7Fにあるんですよね。しかもすごい小スペースです。楽屋口というのが別途あるようには思えなかったです。あくまで自分の感触ですが。到着されたら、係の女性の方に聞かれるのが1番確実だと思います。
by ノンノン (2020-02-08 21:55)