サイトウキネンを振る小澤征爾さんを松本で観れた! [国内オペラ・レビュー]
長かった....苦節3年。小澤さんがサイトウキネンを振る姿を松本で観たい、と思い立ったのが3年前。ちょうど癌療養生活から復帰したところだった。
高齢の小澤さんが、あと、いつまでサイトウキネンを振れるか、などを考えると、いま観ておかなければ、という気持ちが湧いて、いてもたってもいられなかった。ところが度重なる体調不良での降板で振られ続けた。
小澤さんを強く意識したのは、ゴローさんの存在。ゴローさんと知り合うようになって、小澤さんの生き様をすべて撮りたいんだよね、と仰っていたのを聴いて、正直いままでそんなに熱心な聴き手でもなかった自分が小澤さんの存在を強く意識するようになった。
西欧文化のクラシックという世界の中で、日本人のパイオニアとして果敢にチャレンジして、おそらく西欧クラシック界で最も成功した日本人だと思う。そんな小澤さんの偉業を、改めて認識するようになって、その小澤さんが最も大切に思っているサイトウキネンを振る姿をここ松本で観ておかなきゃ、と思うようになったわけだ。
実際今日の公演の日を迎えるまで、やっぱり不安だった。また体調不良で降板ではないか、と。特に自分の公演は小澤さんの最終公演だからだ。小澤さんを観るなら、初日の元気な頃の日程というのが暗黙の了解がある。それを考えると、またドタキャンってなことにならないか、一抹の不安があった。でも大丈夫だった。
今日の小澤さんは、ピット越しに観ていると、ピットで隠れている、というメリットも生かしてか、椅子に座りながらの指揮が多かったが、大事なシーンとなるとスッと立って指揮する、そんな感じの繰り返しだった。
でも小澤さんが指揮するというだけで、サイトウキネンの音が違う、そんな想いがするほど、やはり何かが違う。場の空気感、緊張感など。
今年のサイトウキネンの演目は、グラインドボーン音楽祭との共同制作ということもあって、ラベルの「こどもと魔法」と「スペインの時」だった。幸運にも、大野和士が指揮した同音楽祭2012の同演目がNHKで放映されていたのを録画してあったので、またとない絶好の予習材料と思っていた。ヨーロッパに遠征して帰ってきて、その週の土曜日だったので、なんと前日の夜中0時を過ぎるまで、予習していない余裕ぶりだった。(笑)慌てて予習したら、非常にわかりやすいオペラで、しかもどちらも1幕1時間の短篇オペラ。すぐに虜になってサイトウキネンのモードに頭が切り替わったのです。
結局その興奮からか、夜寝れず、徹夜で臨んだのですが、これが正直キツかったですね。
そういうこともあって、いざ本番を観てみると、なんとこのグラインドボーン音楽祭2012のときの舞台装置、演出ともに全く同じのデッドコピーでした。私は唖然......。せっかくの小澤さんのサイトウキネンなのだから、共同制作ということは、新規に作り直すというように思っていたので、まさにびっくりと同時にちょっぴりがっかりです。さすがに役者は違うようでした
が(でもスペインの時は歌手もほとんど同じだったような??)ですから、前の晩でよく観ているので、本番を観てもそれほど感動しないというか,サイトウキネンに来ている、という有難味は感じなかった。
おまけに、前の晩の徹夜が効いているのか、ここにきて何回も途中落ちてしまいました。でもすぐに復帰。しっかりと眼に焼き付けたのでした。 自分がいま小澤さんが指揮をしているサイトウキネンの公演を生で観ているのだ、という感動を何度も味わって実感してみたかったのだ。
終わったときは、あっけない、というか、これが自分が求めていた小澤サイトウキネンの公演なのだなぁ、としみじみ。
カーテンコールを撮影しようと思った時、なにせ指揮者の小澤さんが列に入らないと意味がない。
そこまで待ちました。そうしたら普通のカーテンコールならすんなり2〜3回繰り返してくれたら満足できるショットが撮れるのだが、小澤さんのことだから、すぐに後ろの列の人と1人1人握手、みんなと握手、なにせ感謝の意を示して小澤さんらしい腰の低さ、だからきちんと手をつなぎながら挨拶というのをなかなかやらない。(笑)苦労しました。(笑)小澤さんらしい、と言えばそれまでですが、まぁ、そこが小澤さんの魅力ですね。小澤さんの最大の魅力は、これだけ偉業を成し遂げ
ている人なのに目線が常に我々と同じ高さにある、と感じるところなのです。そういった人間的な魅力がよく表れているエピソードだと思いました。
こうして苦節3年、ようやくサイトウキネンを振る小澤征爾さんの姿を松本で観る、という目標は達成されました。
これで来年からもう松本に来ないか、というとそうでもないんだなぁ。(笑) やっぱり夏のこの季節に、松本に来て、小澤さんに会って、そしてゴローさんとの想い出に浸るというこの行為はお墓詣りみたいなものでこれからもずっと続けていきたい、と思っているのです。
こどもと魔法(小澤征爾さん)
スペインの時(ステファヌ・ドゥネーヴ)
サイトウ・キネン・フェスティバル松本2013
「こどもと魔法」
出演 : こども : イザベル・レナード
肘掛椅子、木 : ポール・ガイ
母親、中国茶碗、とんぼ : イヴォンヌ・ネフ
火、お姫様、うぐいす : アナ・クリスティ
雌猫、りす : マリー・ルノルマン
大時計、雄猫 : エリオット・マドア
小さな老人、雨蛙、ティーポット: ジャン=ポール・フーシェクール
安楽椅子、こうもり : 藤谷佳奈枝
合唱 : SKF松本合唱団
SKF松本児童合唱団
「スペインの時」
出演 : コンセプシオン(時計屋の女房) : イザベル・レナード
ラミロ(ロバ引き) : エリオット・マドア
トルケマダ(時計屋) : ジャン=ポール・フーシェクール
ゴンサルヴ(詩人気取りの学生) : デイビット・ポーティロ
ドン・イニーゴ・ゴメス(銀行家) : ポール・ガイ
演奏 : サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮 : 小澤征爾「こどもと魔法」、ステファヌ・ドゥネーヴ「スペインの時」
演出 : ロラン・ペリー
高齢の小澤さんが、あと、いつまでサイトウキネンを振れるか、などを考えると、いま観ておかなければ、という気持ちが湧いて、いてもたってもいられなかった。ところが度重なる体調不良での降板で振られ続けた。
小澤さんを強く意識したのは、ゴローさんの存在。ゴローさんと知り合うようになって、小澤さんの生き様をすべて撮りたいんだよね、と仰っていたのを聴いて、正直いままでそんなに熱心な聴き手でもなかった自分が小澤さんの存在を強く意識するようになった。
西欧文化のクラシックという世界の中で、日本人のパイオニアとして果敢にチャレンジして、おそらく西欧クラシック界で最も成功した日本人だと思う。そんな小澤さんの偉業を、改めて認識するようになって、その小澤さんが最も大切に思っているサイトウキネンを振る姿をここ松本で観ておかなきゃ、と思うようになったわけだ。
実際今日の公演の日を迎えるまで、やっぱり不安だった。また体調不良で降板ではないか、と。特に自分の公演は小澤さんの最終公演だからだ。小澤さんを観るなら、初日の元気な頃の日程というのが暗黙の了解がある。それを考えると、またドタキャンってなことにならないか、一抹の不安があった。でも大丈夫だった。
今日の小澤さんは、ピット越しに観ていると、ピットで隠れている、というメリットも生かしてか、椅子に座りながらの指揮が多かったが、大事なシーンとなるとスッと立って指揮する、そんな感じの繰り返しだった。
でも小澤さんが指揮するというだけで、サイトウキネンの音が違う、そんな想いがするほど、やはり何かが違う。場の空気感、緊張感など。
今年のサイトウキネンの演目は、グラインドボーン音楽祭との共同制作ということもあって、ラベルの「こどもと魔法」と「スペインの時」だった。幸運にも、大野和士が指揮した同音楽祭2012の同演目がNHKで放映されていたのを録画してあったので、またとない絶好の予習材料と思っていた。ヨーロッパに遠征して帰ってきて、その週の土曜日だったので、なんと前日の夜中0時を過ぎるまで、予習していない余裕ぶりだった。(笑)慌てて予習したら、非常にわかりやすいオペラで、しかもどちらも1幕1時間の短篇オペラ。すぐに虜になってサイトウキネンのモードに頭が切り替わったのです。
結局その興奮からか、夜寝れず、徹夜で臨んだのですが、これが正直キツかったですね。
そういうこともあって、いざ本番を観てみると、なんとこのグラインドボーン音楽祭2012のときの舞台装置、演出ともに全く同じのデッドコピーでした。私は唖然......。せっかくの小澤さんのサイトウキネンなのだから、共同制作ということは、新規に作り直すというように思っていたので、まさにびっくりと同時にちょっぴりがっかりです。さすがに役者は違うようでした
が(でもスペインの時は歌手もほとんど同じだったような??)ですから、前の晩でよく観ているので、本番を観てもそれほど感動しないというか,サイトウキネンに来ている、という有難味は感じなかった。
おまけに、前の晩の徹夜が効いているのか、ここにきて何回も途中落ちてしまいました。でもすぐに復帰。しっかりと眼に焼き付けたのでした。 自分がいま小澤さんが指揮をしているサイトウキネンの公演を生で観ているのだ、という感動を何度も味わって実感してみたかったのだ。
終わったときは、あっけない、というか、これが自分が求めていた小澤サイトウキネンの公演なのだなぁ、としみじみ。
カーテンコールを撮影しようと思った時、なにせ指揮者の小澤さんが列に入らないと意味がない。
そこまで待ちました。そうしたら普通のカーテンコールならすんなり2〜3回繰り返してくれたら満足できるショットが撮れるのだが、小澤さんのことだから、すぐに後ろの列の人と1人1人握手、みんなと握手、なにせ感謝の意を示して小澤さんらしい腰の低さ、だからきちんと手をつなぎながら挨拶というのをなかなかやらない。(笑)苦労しました。(笑)小澤さんらしい、と言えばそれまでですが、まぁ、そこが小澤さんの魅力ですね。小澤さんの最大の魅力は、これだけ偉業を成し遂げ
ている人なのに目線が常に我々と同じ高さにある、と感じるところなのです。そういった人間的な魅力がよく表れているエピソードだと思いました。
こうして苦節3年、ようやくサイトウキネンを振る小澤征爾さんの姿を松本で観る、という目標は達成されました。
これで来年からもう松本に来ないか、というとそうでもないんだなぁ。(笑) やっぱり夏のこの季節に、松本に来て、小澤さんに会って、そしてゴローさんとの想い出に浸るというこの行為はお墓詣りみたいなものでこれからもずっと続けていきたい、と思っているのです。
こどもと魔法(小澤征爾さん)
スペインの時(ステファヌ・ドゥネーヴ)
サイトウ・キネン・フェスティバル松本2013
「こどもと魔法」
出演 : こども : イザベル・レナード
肘掛椅子、木 : ポール・ガイ
母親、中国茶碗、とんぼ : イヴォンヌ・ネフ
火、お姫様、うぐいす : アナ・クリスティ
雌猫、りす : マリー・ルノルマン
大時計、雄猫 : エリオット・マドア
小さな老人、雨蛙、ティーポット: ジャン=ポール・フーシェクール
安楽椅子、こうもり : 藤谷佳奈枝
合唱 : SKF松本合唱団
SKF松本児童合唱団
「スペインの時」
出演 : コンセプシオン(時計屋の女房) : イザベル・レナード
ラミロ(ロバ引き) : エリオット・マドア
トルケマダ(時計屋) : ジャン=ポール・フーシェクール
ゴンサルヴ(詩人気取りの学生) : デイビット・ポーティロ
ドン・イニーゴ・ゴメス(銀行家) : ポール・ガイ
演奏 : サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮 : 小澤征爾「こどもと魔法」、ステファヌ・ドゥネーヴ「スペインの時」
演出 : ロラン・ペリー
2013-09-02 00:22
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コメント(2)
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残念!
http://www.sfgate.com/news/article/Ozawa-citing-health-pulls-out-of-Tanglewood-7947158.php
"Ozawa, citing health, pulls out of Tanglewood appearances"
by サンフランシスコ人 (2016-05-27 02:42)
サンフランシスコ人さん
情報ありがとうございました!
残念ですけれど、仕方がないと思います。このところヨーロッパ、日本含め超多忙でしたので。
無理しないほうがいいと思います。ドクターの指示は的確ですね。
私としては、10月1日のサントリー30周年ガラコンサートのVPOを確実に振れるようにお願いしたいです。(笑)
by ノンノン (2016-05-27 09:36)