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PENTATONEの新譜:ユリア・フィッシャーの復活! [ディスク・レビュー]

ここまで来るとPENTATONEの回し者というか、PENTATONEの私設応援団長(笑)という趣だが、これからも遠慮なくいかせてもらう。

最近、このレーベルのニュー看板娘のアラベラ・美歩・シュタインバッハーばかり取り上げてプッシュしているが、元祖・看板娘は間違いなくこのユリア・フィッシャー。

2008年にDECCAに移籍していて、でもPENTATONEからもアルバムを出すという二束のわらじ。

以前日記にも取り上げたが、DECCAの録音スタッフは、ユリアの魅力、音色をうまくプロデュースできていないように感じる。DECCAでの彼女の録音は、どうも地味系に感じて、なんとなく弛緩的、セールス的基盤が安定しているメジャーレーベルの大きな器の中に埋もれているような感覚があって、PENTATONE時代の張りつめたエネルギー感溢れる尖った感覚というのが影を潜めているような感じを受ける。

レーベルが変わるだけで、つまり彼女のプロデュース次第でこんなにイメージが変わってしまうのは恐ろしい。PENTATONE時代の彼女のイメージでDECCAの録音を聴くと、かなりがっかりするのではないだろうか?

DECCAでの彼女のセールスは素晴らしいものがあるみたいだが、録音を聴く限り、あくまで自分的には張りつめた緊張感というのをあまり感じなくて自分の好みではない。

そんな彼女の久しぶりのPENTATONEでの復活! 
219[1].jpg
 
ヴァイオリンとピアノのための作品全集 ユリア・フィッシャー、ヘルムヘン(2SACD) 


正直うれしい。

シューベルトの作品。2枚組のSACD。
録音は2009年というから、要は最近彼女が録ったものというよりは、過去に録ってあったものを、録音編集スタッフによって蘇らせて世に送った作品というのが正しいのかもしれない。

そういう意味では真の復活ではないのかもしれない。

録音場所は、定番のオランダ、ファルテルモント。

シューベルトのヴァイオリンとピアノの作品なのだが、改めて聴くとなんと素敵な旋律の散りばめられた作品集なのだろう、と思う。中にはよく聴いたことのある有名な曲もあって作品の完成度としては非常に高いと思う。とても癒される。

室内楽ならではの彼女のきめ細やかなフレージングのニュアンスなどそのテクニックも相変わらず秀逸だ。

プロデューサーにジョブ・マールセ、バランス・エンジニアにジャン・マリー・ゲーセンとあるから、アラベラのアルバムと全く同じ。編集がセバスチャン・ステインという人で、アラベラのときはエルド・グロードなので、ここが違うぐらい。

やっぱり不思議で、音空間の佇まい、音色など、似ている。ユリアの録音と言えば、あのモーツァルトのVn協奏曲集のように、超ド派手で部屋中に音が回るようなスゴイ音空間のイメージが強いので、それと比べると、今回の作品はヴァイオリンとピアノだけの作品ということもあり、静寂の中の美しい調べの数々という風情で、彼女のこういう世界観もいいな、と感じる。

ピアノのパートナーは、このレーベルで長きに渡り共演しているマーティン・ヘルムヘン。抜群のコンビネーション・掛け合いで素晴らしい。じつはこのディスクを聴いて思うのは、ピアノの音色が綺麗だな、と思うこと。

ユリアのVnの音色は、過去の作品に比べると、ずいぶんと落ち着いた、乾燥質に聴こえるけれど(たぶん編集・味付けの違いだろうか。)、でも音色の潤い感というか響きの豊潤さ、そしてその色艶感は、やはりアラベラの音色より、ライブな響きに聴こえる。

ユリアもアラベラも録音編集スタッフがほぼ変わらないので、ヴァイオリンの楽器の違いかもしれない。クレジットはないのだが、彼女の楽器は、いまの現代ヴァイオリン製作者フィリップ・アウグスティンの2011製と思われる。

ユリアと言えば、ご存じのようにヴァイオリンだけでなく、ピアノも万能の才女。じつはこのアルバムで、最後の作品でピアノの披露している。じつに秀逸な録音で、ユリアの久しぶりの新譜を聴けてうれしかった。

今度は、真の意味で新しく録音にチャレンジした作品を期待したい。

PENTATONEレーベルは、その名前の通り ペンタ→5 トーン→音ということで5chサラウンド録音をレーベルのアイデンティティとしている。(自分はここにこだわりがある。)

また小さい会社ながら ちゃんと独立のレーベルとして世界的にみとめられ着実にレパートリーを拡充していることは、じつに素晴らしいこと。聴いたところによると、この13年にリリースしたディスクを彼らは一つたりとも廃盤にしていない。

彼らの毎年の年間リリース計画を見ると、アーティストの特性や営業めども考えながら、実に巧みにこれまでリリースした楽曲とだぶらないように構成されていて舌をまく。そして常に新鮮な新しい若い演奏家をどんどん起用していきレーベルの看板に添えていくその姿勢。

これからも自分は、このレーベルにはこだわっていきたい、と思う。


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コメント 2

いんこ

メジャーと言えどもデッカもDGも台所事情は決して楽じゃないでしょうからね。所詮小さなクラシックのマーケットですし。
クラシックは小さなところががんばったほうがいい時代かもしれません。
by いんこ (2014-11-08 10:41) 

ノンノン

いんこさん、このご時世、どこもレーベル事情は厳しいですね。特に最近はネットワークダウンロードが幅を聴かせているご時世ですし、パッケージメディアはますます厳しいかもしれません。でもパッケージがなくなることはないと思っています。
by ノンノン (2014-11-09 00:39) 

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