アラベラ・美歩・シュタインバッハー& N響とのコンチェルト [国内クラシックコンサート・レビュー]
美女のヴァイオリン奏者を迎えて、N響定期をNHKホールで聴くのは、じつに2年ぶり。あのときはリサ・バティアシュヴェリを迎えてのブラームスのコンチェルト、そして後半は、青ひげ公の城の演奏会形式だった。
ともに、アナ・チュマチェンコに師事をしていて、両人ともフォトジニックなイメージだけでなく、実力も兼ね備えたヴァイオリニスト。
それを考えると、チュマチェンコ氏というのは、じつにいい仕事をしているのだなぁ、と思うとともに、それをN響定期で聴く、自分に縁があるその偶然性に驚くばかり。
この日は、なんと皇太子さまがお見えになっていた。じつは私はこういう天覧コンサートに遭遇する機会が非常に多い。
いままで片手では収まらないほど。大半がサントリーか新国立劇場なのであるが.....この公演を選んだということは、皇太子さまもアラベラ嬢が気になる存在なのだろうか?(笑)
前回のリサイタルの日記の時に、ヴァイオリニストを鑑賞するなら、左側の座席がいい、ということを書いたと思うが訂正する。(笑)
やっぱり断然に右側の座席がいいと思う。要は、顔の向いている方向が、右側で、体全体もどちらかというと右側を向いているので、右側の座席の方がヴァイオリニストと対峙して鑑賞することができる。
またヴァイオリンの発音の方向も、右側にウェートがあるようにも思える。
今回のチケットは結構争奪戦で、ステージの間近で彼女を見たかったので、左側ということで、ここしか空いていなかった。でもここからずっと観ていた印象は、後頭部と背面の姿を観ている感じで、つくづく失敗したなぁと思ったことだ。
さて、今回彼女とシェフのデュトワが選んだ選曲は、ベルクのヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出のために)。
最初のこの選曲の印象は、うわぁ~渋いなぁ~、という感じだった。(笑)
ベルクは、ご存じ現代音楽の素を開拓した人で、その基本が無調音楽。
この調がない、無調という類の音楽を理解することの難しさ。4年前のベルリン旅行の時に、ベルクを徹底的に勉強する機会があって、彼の世界を垣間見たのだが、なんか鳥肌が立つような寒さというか、鋭利な感覚が凄くて、一種独特の尖った世界観というのがあるように思えた。
アラベラ嬢は、ORFEOレーベル所属時代に、このベルクのコンチェルトを録音している。そんな彼女がこの尖った鋭利な感覚の曲をガリガリ弾く姿も存分にカッコいいのだろうな、と想像していた。
この日は青い素敵なドレス。先日のリサイタルのときに思ったことであるが、やはり所作が非常に優雅で、流れるようだ。
歩く姿も女性らしい闊歩という感じで、貫録がある。そしてお辞儀などの諸々の動きが、じつに優雅で、美しく流れるよう。
想像だが、たぶん彼女自身が、人前で意識してそうしているように思う。いくら女性とはいえ、あそこまで線の細い優雅な動きって意識しないとできないと思う。
そしてベルクのコンチェルト。
予想通り、隙間だらけの寒色系の音空間で、彼女の引き裂くような衝撃音というか弓と弦との摩擦音というか、そんな生々しい音がじかに聴こえてくるような感じでリアル感たっぷり。
彼女の弾き方も、アタック感というか瞬時に音の波がどっと押し寄せるような感じの異常に音の立ち上がりの早い感じで、こちらには迫って聴こえてくる。
オケとの掛け合いも緊張感あふれるやりとりで、全体のシルエットとして、なにかこう尖った感覚というか、武満徹さんの曲の中によくある尺八などの和楽器に聴けるようなバキバキ感がキモで、ある意味恐怖を感じるようなそんなスゴサがある。
例のよって彼女の立居姿、演奏姿は背筋がピンとしていて、非常に美しく、この恐怖の鋭利な世界にマッチしていて、これまたカッコいい。
こういう世界も彼女にはよく似合うな、と思った次第である。
敢えて不満を言えば、やはりホールの音響だろうか.....トッパンホールで聴いた彼女の音色は、ほんのりとした響きが重畳されていて、非常に瑞々しいというか潤いのある音色であった。発音するときにふっと空間が浮かび上がるように聴こえる。
でもここNHKホールでの彼女の音色は、そこまで繊細な音色には聴こえなくて、オーディオで聴く幾分ドライ気味の音に聴こえた。
室内楽ホールで聴くから、そういう至近距離だから、そういう細やかなニュアンスやフレージングのディテールがわかるのであって、大空間のホールで聴くヴァイオリンの音色なんて、まぁこんなものかなぁ、とも思える。
今年の芸術の秋を彼女1本に絞ったのも間違いではなかった、と思える素晴らしい公演だった。
久しぶりに聴いたN響。後半のドヴォルザークの「新世界から」がじつに素晴らしかった。N響の日本一の歴史と実力は認めるところはあっても、他の民営の在京楽団と比較しても、その運営に危機感がない安定したもので、そういった意味でハングリー精神がないとも感じるところがあってなかなか率先して聴きに行こうとはしなかったのだが、でもこの日の演奏を聴いて、さすがN響!と再評価する次第。
今後もソリストに照準を合わせて聴きに行きたいと思う。
アラベラ嬢は、来年も北ドイツ響のソリストとして、そして再度N響とも再共演で再来日してくれるそうです。楽しみ!
この日の公演はN響定期ですので、TV収録しているので、近くTVで放映されます。
そのときはお知らせしますので、彼女の優雅な演奏姿を堪能してください!
第1797回NHK定期演奏会:プログラムC
指揮:シャルル・デュトワ
ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
コンサートマスター:堀正文
武満徹
弦楽のためのレクイエム(1957)
ベルク ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
ドボォルザーク 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
ともに、アナ・チュマチェンコに師事をしていて、両人ともフォトジニックなイメージだけでなく、実力も兼ね備えたヴァイオリニスト。
それを考えると、チュマチェンコ氏というのは、じつにいい仕事をしているのだなぁ、と思うとともに、それをN響定期で聴く、自分に縁があるその偶然性に驚くばかり。
この日は、なんと皇太子さまがお見えになっていた。じつは私はこういう天覧コンサートに遭遇する機会が非常に多い。
いままで片手では収まらないほど。大半がサントリーか新国立劇場なのであるが.....この公演を選んだということは、皇太子さまもアラベラ嬢が気になる存在なのだろうか?(笑)
前回のリサイタルの日記の時に、ヴァイオリニストを鑑賞するなら、左側の座席がいい、ということを書いたと思うが訂正する。(笑)
やっぱり断然に右側の座席がいいと思う。要は、顔の向いている方向が、右側で、体全体もどちらかというと右側を向いているので、右側の座席の方がヴァイオリニストと対峙して鑑賞することができる。
またヴァイオリンの発音の方向も、右側にウェートがあるようにも思える。
今回のチケットは結構争奪戦で、ステージの間近で彼女を見たかったので、左側ということで、ここしか空いていなかった。でもここからずっと観ていた印象は、後頭部と背面の姿を観ている感じで、つくづく失敗したなぁと思ったことだ。
さて、今回彼女とシェフのデュトワが選んだ選曲は、ベルクのヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出のために)。
最初のこの選曲の印象は、うわぁ~渋いなぁ~、という感じだった。(笑)
ベルクは、ご存じ現代音楽の素を開拓した人で、その基本が無調音楽。
この調がない、無調という類の音楽を理解することの難しさ。4年前のベルリン旅行の時に、ベルクを徹底的に勉強する機会があって、彼の世界を垣間見たのだが、なんか鳥肌が立つような寒さというか、鋭利な感覚が凄くて、一種独特の尖った世界観というのがあるように思えた。
アラベラ嬢は、ORFEOレーベル所属時代に、このベルクのコンチェルトを録音している。そんな彼女がこの尖った鋭利な感覚の曲をガリガリ弾く姿も存分にカッコいいのだろうな、と想像していた。
この日は青い素敵なドレス。先日のリサイタルのときに思ったことであるが、やはり所作が非常に優雅で、流れるようだ。
歩く姿も女性らしい闊歩という感じで、貫録がある。そしてお辞儀などの諸々の動きが、じつに優雅で、美しく流れるよう。
想像だが、たぶん彼女自身が、人前で意識してそうしているように思う。いくら女性とはいえ、あそこまで線の細い優雅な動きって意識しないとできないと思う。
そしてベルクのコンチェルト。
予想通り、隙間だらけの寒色系の音空間で、彼女の引き裂くような衝撃音というか弓と弦との摩擦音というか、そんな生々しい音がじかに聴こえてくるような感じでリアル感たっぷり。
彼女の弾き方も、アタック感というか瞬時に音の波がどっと押し寄せるような感じの異常に音の立ち上がりの早い感じで、こちらには迫って聴こえてくる。
オケとの掛け合いも緊張感あふれるやりとりで、全体のシルエットとして、なにかこう尖った感覚というか、武満徹さんの曲の中によくある尺八などの和楽器に聴けるようなバキバキ感がキモで、ある意味恐怖を感じるようなそんなスゴサがある。
例のよって彼女の立居姿、演奏姿は背筋がピンとしていて、非常に美しく、この恐怖の鋭利な世界にマッチしていて、これまたカッコいい。
こういう世界も彼女にはよく似合うな、と思った次第である。
敢えて不満を言えば、やはりホールの音響だろうか.....トッパンホールで聴いた彼女の音色は、ほんのりとした響きが重畳されていて、非常に瑞々しいというか潤いのある音色であった。発音するときにふっと空間が浮かび上がるように聴こえる。
でもここNHKホールでの彼女の音色は、そこまで繊細な音色には聴こえなくて、オーディオで聴く幾分ドライ気味の音に聴こえた。
室内楽ホールで聴くから、そういう至近距離だから、そういう細やかなニュアンスやフレージングのディテールがわかるのであって、大空間のホールで聴くヴァイオリンの音色なんて、まぁこんなものかなぁ、とも思える。
今年の芸術の秋を彼女1本に絞ったのも間違いではなかった、と思える素晴らしい公演だった。
久しぶりに聴いたN響。後半のドヴォルザークの「新世界から」がじつに素晴らしかった。N響の日本一の歴史と実力は認めるところはあっても、他の民営の在京楽団と比較しても、その運営に危機感がない安定したもので、そういった意味でハングリー精神がないとも感じるところがあってなかなか率先して聴きに行こうとはしなかったのだが、でもこの日の演奏を聴いて、さすがN響!と再評価する次第。
今後もソリストに照準を合わせて聴きに行きたいと思う。
アラベラ嬢は、来年も北ドイツ響のソリストとして、そして再度N響とも再共演で再来日してくれるそうです。楽しみ!
この日の公演はN響定期ですので、TV収録しているので、近くTVで放映されます。
そのときはお知らせしますので、彼女の優雅な演奏姿を堪能してください!
第1797回NHK定期演奏会:プログラムC
指揮:シャルル・デュトワ
ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
コンサートマスター:堀正文
武満徹
弦楽のためのレクイエム(1957)
ベルク ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
ドボォルザーク 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
2014-12-13 18:00
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