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パリ、サル・プレイエルの終焉 [コンサートホール&オペラハウス]

パリ管弦楽団のフランチャイズで、パリを代表するコンサートホールのサル・プレイエルが、クラシックの演奏会をおこなうホールとして終焉を迎えた。

2日前の巨匠ピアニスト、スティーブン・コバセビッチのリサイタルが、このホールでの最後のクラシックの演奏会となったようだ。(児玉麻里さんの妹で同じピアニストの児玉桃さんのFB投稿でその事実を知りました。)

来年1月からは、このホールはポップス系やシャンソンの音楽ホールになるらしく、クラシックの演奏会は、北のほうにできたパリの新しいコンサートホール、「フィルハーモニー・ドゥ・パリ」で行われることになるそうだ。

長らくパリのクラシックコンサートホールとして第1線を歩んできたサル・プレイエルだけに、なにか寂しいというか、一時代が終わったのだな、という感傷的な気持ちになる。

2年前の2012年に訪問できたのだが、できればあともう1回くらいここでクラシックコンサートを聴きたかった。

サル・プレイエルは、世界的ピアノメーカー「プレイエル社」の専門コンサートホールとして 世界的に広く知られ、またそのメイン・ショールームも併せ持つ、パリの歴史的な建物だった。ショパンをはじめとする歴史上名高い数々の大音楽家達が盛んにコンサートを開いた会場としても有名で、プレイエル・ピアノの歴史とともに歩んできたコンサートホールでもある。

そんなプレイエル・ピアノも倒産でこの世から姿を消していった。時代の流れとはいえ、一抹の寂しい気持ちを抱いていたら、さらに追い打ちをかけるようにこのニュース。

シャンゼリゼ通りの凱旋門から歩いたところの近くにある。

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2006年10月にリニューアルオープンを果たしていて、 その際にはホールの音響の改修や、エントランスやロビー等の内装を1927年の創建当時に復元し、 プレイエル・ピアノのメイン・ショールームも再び新設した、とのことだったので再出発したばかりでもあった。

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ホワイエ空間に入ると、”ベージュとレッド” にのツートンカラーによるモダンな色彩空間の表現で、この色の組み合わせは、いかにもパリならではのちょっと小洒落れた感じのイメージが素敵だった。いかにもパリの匂いがする空間。

同じパリを代表する大きなコンサートホールであるシャンゼリゼ劇場のほうが、内装や椅子などクラシックな雰囲気で、サル・プレイエルの方は、どちらかと言うとモダンなコンサートホールという印象だった。大改装をする以前と比べると、木目の色味など、全体的にすごい明るい雰囲気に変わっている。

改修前の音響は全体的にデッドな上に さらにクセのある音響だったらしいのだが、改装後に聴いた分には、中庸でクセもなく、アベレージレベルの音響空間という印象で、これくらいの歴史のあるホールでは分相応というか十分ではないか、と思う感じであった。

2年前は、ここでドゥダメル指揮のベルリンフィルの演奏会を聴いた。一生忘れれない公演だった。

私は、このパリの匂いがするこのホールがとても好きだった。なんか格別の建築美や造形美を誇るという感じではまるでないのだけれど、どことなく小洒落た佇まいが素敵で、中庸の美という感じでパリの街の景観に溶け込んでいてじつにいい。

そしてプレイエル・ピアノのショールーム。

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ポップス系やシャンソンでもいい。やはりもう1度は経験してみよう。

さて、新しくパリのクラシックのコンサートホール、パリ管弦楽団のフランチャイズになるのが「フィルハーモニー・ドゥ・パリ」。おそらく日本の和称だと「パリフィルハーモニー」になるのだろうか.....

結構サイトを探してもきちんとした情報が得られなくて、建物の外装や内装空間のリアルな写真を観たことがない。彼らのFBの公式ページにも登録しているのだが、完成予想図などのイメージ写真らしきものであれば見ることができる。

というより、まだ工事中ではないかとか、きちんと工事完成しているのか、とか疑問もわく。(笑)

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建物は最新の外観デザインで、内装空間は驚くべく流線型のデザイン。まぁ、ワインヤード型と言えば言えなくもないが、それにしても天井や壁の流線型のデザインはスゴイ。


ふつうコンサートホールというのは、ステージ上の発音体から360度無指向に発せられる音を、いかにいっせいに客席の方向に向けさせるかが設計のコツで、反響板、もしくはホールの形状そのものが、そのように反射構造になっているものなのだが、このフィルハーモニー・ドゥ・パリではそれが全く見当たらなく、音が反射するにしても、このような流線型のデザインでは、きちんと客席に音が向かうのだろうか、という感覚を抱く、この写真を見ると。

しかもアシンメトリー(非対称)だ!

こちらがアシンメトリーがはっきりと確認できる座席表。



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なにか自分が習ってきた古き音響学をまったく否定するような内装デザインで、この空間を見る限り、音響が良さそうに思えないのだが....(笑)ものごとを理詰めで考えるドイツ人などと違って、感性の生き物であるフランス人らしい設計といえば、まさにその通りという感じである。

昔ヨーロッパに赴任していたときに、技術系の会社がヨーロッパにR&Dのラボを置くなら、どこの国がいいのか、という話があって、やっぱりドイツかイギリスが1番ということになった。もちろん国としての技術力の問題が1番だが、それ以外にも国民性というのも大きな判断条件だ。

スペイン、ポルトガルだと国民性から仕事にならないだろう、昼間っからワイン、そしてたっぷりの昼休み(笑).....やはりヨーロッパの国々は各々国民性が豊かで、特色がある。日本人と合うのは、特にドイツだと自分は思う。

イギリスはやはり言葉の問題もあって、彼らネイティヴな人達は、我々ノン・ネイティヴな人の心の痛みというのがわからないではないか、と思うところがあり、コミュニケーションの問題でハンディキャップを感じる。その点、ドイツ人はお互いノン・ネイティヴ、お互いを分かり合おうという心の痛みが理解できてウマがとてもあう、と思うのだ。

その中で、フランスという国は、まさに唯我独尊で、自分のオリジナリティというのを主張する国なので、ヨーロッパで共通の規格作りなどの仕事に全く向かない。(笑)いわゆる芸術肌で、独自の路線を歩み続ける国民性なのだ。

この新しいパリのコンサートホールのデザインを観たとき、いやぁ、これぞフランスのホール、決して理詰めでは物事を決めない、彼ら独特のカラーというものを尊重する。古くからの音響理論、ホールの内装美など、まったく眼中にない、という感じだ。(笑)

2400席の大容積のホール。これはぜひ実際行ってみて、自分の耳でその音響を確認したい、その空間のありように接してみたいと思う次第。

パリ北部にあるようで、結構交通の便が難しいものがある。コンサートが終演の頃に、このパリ北部にあると都心に戻ってくる夜の交通の便があるのか、不安という情報もある。

情報によると、この新ホールはラヴィレット公園と隣接しているようだ。この公園はベルナルド・チュミが設計したもので、この近くにコンセルバトワールもあるらしい。

来年の海外音楽鑑賞旅行は、ウィーン&リンツともう行くところが決まっているのだが、その翌年は、スイス・ジュネーブのヴィクトリアホールでスイス・ロマンド管弦楽団を聴くという大きな目標があって、その足でそのままパリを訪問して、このフィルハーモニー・ドゥ・パリを訪問したいと考えている。(もう一都市寄ってくる予定だが、ナイショ♪)

あと2年先だと思うと、いてもたってもいられなく遠く感じてしまうのは、やはり自分は欲張りでせっかちな性分だからなのだろうか?(笑)


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