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ディエス・イレ [ディスク・レビュー]

今日はじつに久しぶりにラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を聴いた。ロシアの巨人ピアニスト、デニス・マツーエフの独奏で、ゲルギエフ&マリインスキーによるまさにロシア勢による録音。 

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ピアノ協奏曲第3番、パガニーニの主題による狂詩曲(ラフマニノフ) 
マツーエフ、ゲルギエフ&マリインスキー劇場管弦楽団

http://goo.gl/Okwb1W

2009年の録音で少し古いのだが、もともとこのディスクには、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番がカップリングされていて(というかこちらがメイン。)、最初それ目的で購入したのだが、実際聴いてみたらもうダメダメで、カップリングであったパガニーニ・ラプソディーのほうがすごく良かった、という印象のディスクであった。

以前にも日記にしたが、ラフマニノフの3番はどうも録音というスタイルを取ると、自分のイメージにピッタリ合ういい演奏に巡り会ったことがない。どちらかというと映像ソフトのほうがその感動、衝撃が伝わってくる。マツーエフという人は、乱暴な弾き方をする人で、まさにダイナミズムの塊のようなピアニストであるから、彼が弾く3番はさぞかしい感動するだろう、と思ったのだが、なぜか、この録音では全般的にスローテンポで、この曲の魅力である瞬時のアタック感みたいなものが感じられなくて、いわゆるヌルイ演奏、というか、凡演奏だなぁ、と思ったものである。(笑)

(でも同じマツーエフの独奏でも、ゲルギエフ&ベルリンフィルとの演奏で、DCH(デジタルコンサートホール)での演奏はまさに鳥肌が立つくらい素晴らしい演奏でした。まさにこの曲のイメージにぴったりの自分好みの演奏!やはり映像ソフト向きなんだなぁとつくづく。)

で、なぜかパガニーニのほうは、過去に数多の録音があるにもかかわらず、新しい録音として自分がよく聴くリファレンスのような存在になっていた。だから、このディスクを取り出すとき、3番は最初から飛ばして、パガニーニだけを聴いているみたいな感じなのである(笑)

パガニーニの主題による狂詩曲は、もうラフマニノフという作曲家を代表するような作品であることは誰も意義はないだろう。

ご存知パガニーニの主題を、味を変え、品を変え、24種類のいろいろなバリエーションで変奏していく変奏曲。

第18変奏があまりに有名だが、自分はこの部分だけでなく曲全体としてトータルな流れとしてこの第18変奏を捉えるのがこの曲を楽しむコツだと思っている。

大昔にこの曲を聴き始めたときに、夢中になって曲の構成について勉強した。

最初の序奏の後、分解された主題の”ラミ”が骨格で演奏され、その後に主題が変奏の後に登場するという今までの変奏曲にない画期的な手法。

前半の一番の頂点は、自分的には第4変奏で、もうひとつの分解された主題”ラドシラ”をいろんなバリエーションで演奏していくこの部分。ここが最初のところで自分が1番エクスタシーを感じる。

そして第7変奏。ここにはラフマニノフが生涯こだわったディエス・イレの旋律が隠されている。ディエス・イレはロシアの教会の聖歌の旋律のことでラフマニノフは自分のいろいろな曲にこの旋律を入れているのだ。ロシアを亡命するという悲劇の人生の根底に潜む旋律で、革命によって失われたロシアの教会の響きへのラフマニノフのこだわりの部分でもある。

この変奏曲の中で唯一パガニーニの主題とは雰囲気が違ってかけ離れている旋律、メロディで自分的に気になるというかすごい惹かれる旋律であった。

このラフマニノフが生涯にわたってこだわったディエス・イレについて、当時結構深く勉強した記憶があった。

「ディエス・イレ」は、カトリック教会において死者のためのミサ(レクイエム)で歌われてきた聖歌の1つ。語りだすとかなり深い内容なので、簡潔に言うと、古くはグレゴリオ聖歌の旋律で歌われることがほとんどで、後のロマン派の時代になると、、死を表すモチーフとして使われることが多くなって、有名なベルリオーズの「幻想交響曲」とか、リストの「死の舞踏」とか。ムソルグルキーやチャイコフスキーをはじめとするロシアの作曲家がこぞって影響を受けて自分の作品に取り入れている旋律なのだ。

ラフマニノフのディエス・イレへの深い傾倒もその流れの中にある。

ラフマニノフの作品だけに絞って調べてみると、

交響曲第1番
交響曲第2番
交響曲第3番
ピアノソナタ第1番
交響詩「死の島」
「鐘」
練習曲集「音の絵」
パガニーニの主題による狂詩曲
交響的舞曲

じつにこれだけの作品にディエス・イレの旋律が使われているのだ。

その当時調べて自分で書いた日記から抜粋しただけであるが、今読んでもかなり興奮する。

だから自分にとってパガニーニ・ラプソディーはじつに甘美な第18変奏だけのイメージの曲だけではなく、このディエス・イレという旋律の存在を教えてくれた、そしてその旋律の魅力を知ったきっかけとなった曲なのだ。

ついでにこの曲の映像ソフトも観た。

DSC03368.JPG



たぶん2010年ころのN響の定期公演で、ソリストはユジャ・ワン。いまでこそ、セクシーな衣装で物議をかもしたり、中国雑技団と呼ばれたり(笑)、いろいろ揶揄されることも多い人気者だが、この頃はまだメディアに出始めたころで、期待の新人として自分は好感をいだいていた。

この曲をものの見事に演奏していた。

今年の芸術の秋に、ヒメノ/RCO&ユジャ・ワンに行くことに決めた。
初&生ユジャ・ワンである。(笑)

はたして、巷で言うほどなのか、自分の目、耳で確かめてみたいと思っている。


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