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再訪!パリ・オペラ座バスティーユ [海外音楽鑑賞旅行]

2012年のときの訪問以来、じつに3年振りの再訪。相変わらずオペラハウスというより科学技術館みたい。(笑)

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前回訪問した時に比べ、ゲートらしき黒枠のところが工事中になっていたのと、建物のガラスの壁面のところにヴェルディ、シューンベルクなどの文字が貼りつけられていたこと、(現在それ関連の公演開催中ということなのでしょうか。)が異なっていた。でもそれ以外は面影は基本的には変わっていないと思う。


目の前にはバスティーユ広場が広がる。
宿泊先のホテルは、ガルニエのそばであったので、メトロではM8で1本でバスティーユに到着する。

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いつも早く到着するので、このオペラ座バスティーユのとなりにあるカフェで休憩。

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そして並ぶわけだが、3年前も間違ったのだが、エントランスは、見かけ上は、黒枠のゲートの後ろのように思えるのだが、そうではないのだ。(笑)じつは1階にあるここだったりする。

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おそらく当日券を求める人、もしくは、チケットに換券する人が並んでいる。
開場とともに、この自動発券機でチケットを発券するのだ。

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今回の演目「蝶々夫人」のプログラム冊子を売っているところ。

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そこに貼られている蝶々夫人のポスターを拝見。このポスターのデザインフォトを見るといかにもフランスらしい演出というかお洒落感覚というか、とても期待できそうな気がする。こういうテイストのカラーが、パリ・オペラ座で演出されるオペラの素晴らしさ、というかパリ色の強い演出所以だと思う。

エントランスから入ったところのホワイエの空間。近代建築らしいお洒落な空間である。

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パリのコンサートホール、オペラハウスの座席割り当ての特徴は、左右で、偶数、奇数に座席が分かれているところが特徴だと思う。(左が奇数、右が偶数)

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エントランスから入って、ホワイエの空間が現れたら、そこから左右に、偶数、奇数に応じて分かれていくのである。私は偶数なので、この右側から中に入っていく。

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上がっていくと、そこにドリンクバーなどの空間が現れる。

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そしてホール内に潜入。


ピット

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ステージ

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客席

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ヨーロッパの伝統的な馬蹄型のオペラハウスとは違っていて、どちらかというとコンサートホールに近い形状だと思う。ステージは、高さがかなり高い。そして横幅もあって奥行きもかなりある。ザルツブルク祝祭大劇場ほど横幅が広くて、奥行きがあるわけではないが、でも雰囲気が似ているというか近い感覚はあると思う。字幕はステージ左右両側と上階向け用にステージ上方にある。

ちょっとホール空間の広さや形状を考えると、上階席のほうでは、うっすらPAをかけているのかな、という疑惑もある。この疑惑は、じつは昔からこのオペラハウスには存在していて、真意のほどは定かではない。

オペラハウスの座席は、どこが1番適切なのか?という問題は1番難しい問題。

オペラ歌手のような人間の声は、ピアノと同じで、スゴイ指向性がある。だから1階席平土間が1番聴こえがいいのかな?とずっと思っていた。かたや一方では、オケはピットという深く沈みこんだ場所で、しかも囲われている場所で演奏するので、オケのサウンドは、ホール全体に行き渡ることは不可能で一種独特の”こもり”というのを感じ、正直あまり期待できない。

囲いに囲まれているので、それが邪魔で、1階の平土間には、オケのサウンドは横方向にダイレクトに届かない。こもったように聴こえるはず。こういう形式だとピットのオケのサウンドは真上に上がるのである。そうすると上階席の席のほうが、オケのサウンドは綺麗に聴こえるはず。しかも上階席でもステージ真横のボックス席のほうが、ピットに近いので、その上に上がってくる音をダイレクトに綺麗に聴こえるのかな、とも思ったりするのだ。

しかも上階席のほうがステージ全体を上から俯瞰できるので、視認性も抜群だと思うのだ。
ステージは上から観たほうが、オペラやバレエは視認性がいいように思う。(たとえば平土間から観ると、最前列の歌手陣は見えるのかもしれないけれど、奥行き方向が見えない。上階から見下ろすようにステージを観たほうが、奥行き方向の動き含め、ステージ全体の動きが俯瞰できるからである。舞台演出サイドはじつは、前面から奥行きに至るまで、その全体の役者の動き、人模様の動きがじつは舞台演出のキーだったりすることも多いので、それを隈なく俯瞰するには、やはり上階から見下ろすようにステージ全体が見えたほうがいいと自分は思う。)

もちろんセンターの後方の上階席でもいい。ボックス席の真横よりもさらにステージの視認性もいい。オケの音は少し遠いので犠牲になるが、1階平土間より音はいいと思うし、なによりもステージの視認性が最高にいいと思う。問題はオペラ歌手の声の指向性ですね。これが上まで上がっていくかどうか?

ということで、オペラハウスの座席選びと言うのは、あくまで机上の空論ではあるけれど、

オペラ歌手の声の指向性~平土間
オケのサウンド~真横の上階席>センター後方の上階席
ステージの視認性~センター後方の上階席>真横の上階席

こんな感じでなにを重要視するのか、を考え、マトリックス的に選ぶのがいいのではないか、と考えるようになった。

でも自分の今回の座席は、ここ。

1階平土間の前方かぶりつきで、ピットのすぐそばであった。(自分の座席から観たステージ)

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正直オペラ歌手の声はまったく問題なし。そしてオケの音も真横ではあるもののピットのそば、ということもあり直接音ばっちりで、迫力のあるサウンドであった。まったく不満がなかった。

前回3年前に訪問した時は、1階席後方の座席で、オケの音がどうもドライ気味でデッドに聴こえたのでイマイチの印象であった。これで3年振りに、ものの見事にリベンジできたと思う。

コンサートホールでもそうだけど、1階席というのは、ステージの音は上に上がってしまい、真横にダイレクトにこないもの。(それが真横にもダイレクトに来る、あるいはそのように感じるように観客席に音が向かうようにホールの形状、反響板含め、設計されているホールは、じつに素晴らしいホールと言えると思う。)

そして間接音(反射音:響き)は天井、側方の壁、床で反射して聴こえるはずなので、それが1階席だと,その天井、側方の壁とあまりに距離が遠すぎていて、反射した音が1階席に戻ってくるときは、そのエネルギーが減衰してしまって、1階席ではそういう響きはあまり期待できないと思うのだ。(逆を言えば、天井に近い上階席や側方の壁に近い座席のほうが響きが豊かに聴こえるはずである。ここらへんにとって直接音が遠すぎるかどうかの問題のみ。)

要は1階席は、直接音が命!

1階席はサウンド的にはハンディがある、と思う。

でもオペラ歌手の顔や、声を聴くには最高の場所なのかも、と思うのだ。

自分はそういう観点を鑑み、オペラ歌手の顔、声(オペラはこれが1番大事なファクター)を堪能出来て、1階席でも満足できる場所、ということでピットのそばの前方かぶりつきを選んだのだ。

大正解であった。

演目は、プッチーニの「蝶々夫人」。

この演目が観たくてというより、バスティーユを経験するには、スケジュール的にここしか空いてなかったというのが真相だが、でも嫌いな演目ではない。いままで数えきれないほど何度も観てきている自分にとってお馴染みの演目である。パリに来てまで西洋人が和服を着るのを観てもなぁという想いもあったが、実際の演出は、すごく近代的であった。

すでに上にアップした自分の座席から観たステージの写真を観てもらいたいのだが、舞台装置、舞台美術など全くなくてステージの後方に大きなスクリーンがあるだけの簡素なもの。この背面のスクリーンで、照明を工夫して感情の表現をその色で表すというシンプルな舞台芸術の見せ方であった。衣装は現代考証。派手すぎでもないシンプルな現代衣装。

こういう演出のほうが、絶対パリで観る蝶々夫人のイメージにはぴったりだと思い、観ていて本当にうれしくなった。本当に背後のスクリーンの色で、そのシーン、悲しいシーン、ハッとときめくシーンなど、スクリーンの照明の光を切り替えていき、じつに巧妙に演出していくのだ。

舞台装置はまったく存在しないので、役者の演技と、その身に着けた衣装、踊りと所作、そしてこのスクリーンの照明だけで、見事に蝶々夫人を表現していく。見事としか言いようがなかった。


振り付けの演出も、極めてスタンダードな演出で、現代読み替え版でもなく、従来の解釈に忠実なものであった。自分は、こういう古典的解釈による演出が、オペラを観るなら好き。


主役の蝶々さん(エルモネラ・ヤホ)とピンカートン(ピエーロ・プレッティ)の声があまりに素晴らしいので驚きであった。特にテノールのピンカートンのプレッティの声はビロードのような甘い声質で豊かな声量、相当魅力的であった。この演目では、蝶々さんは、歌手にとってはまさに終始出ずっぱり・歌のパートも長く多いため、また若く愛らしい娘の役であるにも拘らず、中低音域に重点を置いた歌唱が求められるため「ソプラノ殺し」という異名をとられる難易度の高い作品なのである。第2幕の超有名アリア「ある晴れた日に」はもう、あまりに素晴らしかった。ヤホは、これをものの見事に歌い切っていた。

ヤホに関しては、FB,mixiともにコメントをいただき、2010年のROHの来日公演「椿姫」でゲオルギューの代役で歌ったのだが、第1幕から声が出なくなってしまって、第2幕から代役に代わったという、mixiの女性のオペラ友人にとって悪夢のような歌手だったそう。

パリではまだ活躍されていたとは!もうそうそう来日はできないでしょうから(高額チケットを買って悪夢を味わった観客が多いので(笑))、パリでご覧になられたのは貴重な体験かもしれません、とまで言われてしまいました。(笑)

確かに全体から受ける印象からすると、華がないかもしれないけれど、蝶々さんという役にはじつにフィットとしていて、素晴らしいと思った。歌手では、他には、シャープレス領事のバリトンの声もじつによかったなぁ。

蝶々夫人は、じつは結構自分でも過去に観てきているオペラの演目で、最近観た中で1番印象的だったのは、3年前の小澤征爾オペラ音楽塾の塾生による「蝶々夫人」。

神奈川県民ホールと東京文化会館の両方を観に行った。完全なオペラ形式ではなく、セミ演奏会形式ということだったのだが、オケの後方にきちんとステージを作って、オペラ歌手がそこで演技をしながら歌うという、オペラ形式と言っても恥ずかしくないほど完成度が高かった。

時代考証も和服など、原作に忠実な演出で、舞台装置も和室という原作そのもの。
近年観た蝶々夫人の中では1番素晴らしいと感じた。

蝶々夫人の演出に関しては、いろいろな試みがされていて、自分が観た演劇舞台では、浅利慶太さんが演出した蝶々夫人では、最後蝶々さんが自決するとき、飛び出る血を演出するのに、赤い布がラッパ状に飛び出す、という斬新な演出を観たことがいまでも鮮烈に印象に残っている。


この演目の過去のDVDなどの映像素材も結構観ているのだが、なんか日本を馬鹿にしたような演出も多くて、同じ日本人として”つっこみどころ満載”なのだが、満足なものに出会えたことがほとんどないと言っていいだけに、パリでこのように本格的な素敵な近代演出を観れて、本当に幸せだったと言える、と思う。

この日は超満員。パリの観客は服装がしっかりしていますね。男性はスーツ、ネクタイが多かったです。(プルミエなのでしょうか。)

パリの初日の鑑賞としては最高の出だしだった。

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2015/10/3  パリ・オペラ座バスティーユ プッチーニ「蝶々夫人」

演出・キャスト陣(パリ・オペラ座HPより)

https://www.operadeparis.fr/saison-15-16/opera/madama-butterfly


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