ロンドンのコンサートホール事情。 [海外音楽鑑賞旅行]
もしレギュラー・シーズンであれば、せっかくロンドンに来たなら、いろいろなコンサートホールを訪問して、コンサートを聴いてみたいホールがいっぱいあった。
だったら、コンサートはないので、ホールの中には入れないけれど、せめて外観だけでも拝むのはどう?とある日、ふっと思いつき、それを実行に移すことにした。
BBC Promsのロイヤル・アルバート・ホールと、グラインドボーン歌劇場は、この日記では省略する。
こういうことを言うと、大変失礼になり、申し訳ないのだが、自分の浅い知識の中では、ロンドンでは魅力的なクラシック専用のコンサートホールというのが、あまり思い浮かばないのだ。
もし思い浮かぶなら、もうとっくに過去の音楽鑑賞旅行で行っているはずだし。
でもホールマニアで、世界のホールを制覇したいなら、このロンドンのホールもぜひ制覇しないといけない。
自分は一般社会人なので、要は先立つものが限られているし、年間の中で休みも簡単には取れなく、これも限られたタイミングで取るしかない。そうなるとどうしても先に行きたいホールの優先度って決まってしまう訳で、そこがロンドンのホールにとって悲しい運命でもある。
そんな想いもあり、せめて、ということで外観ツアーを敢行することになった。
ただし、日記では撮影してきた外観、もしくはホワイエの写真だけで、ホール内装の写真は掲載しません。やろうと思えば、ネットからの拾い絵で、できるかもしれませんが、それじゃきちんとしたケジメがつかないし、ホール内装の写真は、きちんと訪問した時に撮影する証だと思いますので。
●ロイヤル・フェスティバル・ホール
最寄りの地下鉄は、Waterloo。ロンドンのベスト・コンサート・ホールという位置づけで、毎日でもコンサートが開かれている。コンサート(というより音楽イベント)が開催されている数からすると、どのコンサートホールよりもその数が多い、という異名もとる。
キャパは、2900席なので、かなりの大容積。
以下、ホールの音響について書くが、これは自分が調べ上げた内容に過ぎず、自分の耳で聴いた感想ではない。これ以降の各ホールの音響コメントも全部そう思っていただきたい。(なにせホール内でじかに聴いていない訳ですから。)
このホールは、「響きが不足」しており、特に低音の残響感が十分でないこと、そして低音が弱いことが、ずっと聴衆に認識されていたことだったらしい。その主な原因は、ホール設計時に、観客席に着席した聴衆による「吸音」の効果のことを考えていなかったためと言われている。
音質については、明瞭性に優れていて、ピアノ、室内楽、現代音楽には非常に良好。でも後期古典派とロマン派の音楽には向いておらず、低音の不足が最大の問題である。
それ以前に、なんと言っても、ホールの外観が、なんか萌えないんだよねぇ。(笑)
裏側から見たホール外観。
手前にテラス席がある。
オフ・シーズンとはいえ、1Fのフロアには入れる。フロア面積はかなり広い。クラシック専門ホールという風情より、どちらかというと総合施設という趣なのだが。。。
チケット・オフィス
●クィーン・エリザベス・ホール
ロイヤル・フェスティバル・ホールのすぐ隣に立っているホール。こちらも毎日のようにコンサートが開かれているようなのだが、どちらかというと、ピアノやヴァイオリンといった小編成の室内楽中心のコンサートである。
さらにこのクィーン・エリザベス・ホールの建物内にあるのが、パーセル・ルーム。サウスバンクに集まっているホールの中では一番規模が小さいホール。
室内楽の演奏が中心で、また新人のリサイタルや音楽学校の生徒たちなど、アマチュアやセミプロの演奏も聴くことができる。
●バービカン・ホール
最寄り駅は、Barbikan。比較的、駅のすぐそばにあって徒歩5分くらい。目の前に現れた建物が上の写真。映画館、劇場などがある総合施設バービカン・センターで、コンサートホールは、この施設の中の一施設という位置づけで入っている。
バービカン・ホールは、そもそも会議場・コンファレンス会場として計画されたもので、音楽ホールとしてではないのだ。だから、できるだけステージの近くに聴衆を配置することに主眼が置かれ、その残響時間も1.4秒と短く設定された。
これがある意味、このホールの悲しい運命の始まりでもあった。
その後、コンサートホールとして使用することが決まったが、その時点で残響時間を増やすために天井を高くしたり、シューボックスに近づけるべく、横幅を狭くして奥行きを増やすという工程も無理だった。
さらに音響的な障害として、ホール天井の横方向全域に深さ3.7mの大梁が走っているのだ!
「梁」というのは建築用語で、たとえば床の下に、床の上からの重みに耐えられるように、補強する仕掛け部材のことで、その重みのエネルギーを逃がしてやるようなものでしょうか。
ふつうは床の下なのだけれど、もちろん屋根裏部屋のようなものもあって、その屋根の重さがある場合、その屋根の下(つまり下の部屋からすると天井)にこのような「梁」という仕組みを重み・振動逃しのために組み込むこともあるのだ。
今回のバービカン・ホールは、この屋根側に相当すると言っていい。バービカン・ホールの場合、屋根とその上部の屋外プラザの重みを支持するために、この「梁」という仕掛けが、ホールの天井を走っている。
だから、その内装写真を見るとあきらかなのだが、天井からの反射音を客席に返すなどというクラシックホールの基本構造は難しいのである。
これじゃあかん、ということで、1994年と2001年に大規模な改修工事があって、ステージ天井と客席上部に反射パネルが取り付けられた、ということで、かなりの改善はあったものの、残響時間1.4秒は変わらず。
なんか、ここまでくると、元々がクラシックコンサートホール専用設計ではないので、それをその用途に使うための弊害が、あっちこっちで出てきていて、無理があり、厳しいなぁという印象を感じる。
自分の周りの方やネットでの、このホールの印象も、このホールは、みんな音響がデッドだというので、上記のような過去の歴史事実を知ると、なまじっか納得のいくところでもある。
ロンドン交響楽団(LSO)とBBC交響楽団の本拠地である。
ベルリンフィルを2018年に退任予定のサー・サイモン・ラトル氏。次期職場として、LSOの首席指揮者に就任予定で、もう実際LSOのSACDを出すなど活動を始めている。
ラトルほどの輝かしい経歴を持った指揮者で、今後は、このホールをホームとして演奏と言うのも、なんか可哀想な気がする。もうちょっといいホールで活躍させてあげたいみたいな。。。
このホールが入っているバービカン・センターというのは、いわゆる総合施設そのもの。ヨーロッパ最大の文化施設だそうで、コンサートホール、劇場、映画館、アートギャラリーや、公共図書館、3つのレストランほか大学の音楽学部などが入居している。
女王エリザベス2世の名の下に「国民へのプレゼント」として建てられた。以来コーポレーション・オブ・ロンドンにより運営されているのだそうである。
もちろんフロアの中に入ることが出来て、1Fだけではあるけれど、写真に収めてきました。
フロアを歩いてみて、フロアの内装空間の印象は、とても綺麗でモダンな造りで、少し造形アートを感じるようなデザインになっている、ような気がした。
ホールへのゲート。あちらこちらにある。
バービカン・ショップ。
店内は、こんな感じ。
なんと! LSO Liveがぁぁぁあああ!
このバービカン・ショップのすぐ横にホールへのゲートがあったりする。
かなり近代的でモダンな施設だと思いました。
野外のテラス。
やっぱり、コンサートホールだけは、なんとかしてあげたいなぁ、という気持ち。(笑)
●ロイヤル・オペラ・ハウス (ROH)
最寄り駅は、Covent Garden。
この街はとても雰囲気があって、いい感じの街だなぁと思いながら歩いていた。
ちょっと自分の視覚にビビッと来るショットは、思わずパチリ。
なんでも、Covent Gardenは、ミュージカル、そして映画化もされた「マイ・フェア・レディ」の舞台となったところだそうで、その歴史事実が十分納得できるぐらい洗練された、素敵な街並みであった。このことをコメントで後で知らされたときは、それを知らずして、自分が最初にこの街に抱いた感覚が間違っていなかったことがうれしかった。
まさにイギリスを代表する、最も由緒あるオペラハウスでもある。
エントランスのところ。
伝統的な馬蹄型もしくは円形の劇場で、すべて原語上映(大半はイタリア語)で、ステージ上方の幕に英語の字幕が出る。
こんなに美しい神殿のような造りとは思いもよらず感激した。その場にいると、この神殿の造りのオブジェがど~んと目の前にそびえ立つ感じで圧倒される。
ROHのオペラやバレエは、結構いままで家でDVDで観てきているので、内装空間もわかるし、ぜひ近い将来、ここでじかにオペラ観劇してみたいものです。
ちなみに、イギリスでは、オペラといえば、上流階級の楽しみということで相場が決まっているそうだ。
●ウィグモア・ホール
今回宿泊したホテルの比較的近いロケーションにあった。
伝統的な室内楽ホールで、かなりフォーマルな雰囲気のホール。
自分がロンドンのホールでぜひ行ってみたいと思うのは、敢えて言えばこのウィグモア・ホール。
ホール内のアールヌーヴォー調のキューボラ(丸屋根)の天井画が超有名で、ぜひ直接観てみたい!
友人の投稿写真で、内装空間とか見たりしているが、なかなか雰囲気があって、自分好み。音響もよさそう。ただ、床には赤い絨毯が敷き詰められているそうで、音響的に気になることは確か。でもそんなマイナスファクターを取り除いても、素晴らしい音響なのは間違いない。
それは、このホール自体、自主制作レーベルを所有していて、ウィグモアホール自主制作ライブというCDを世に出してきている。そのCDを聴く限り、とてもいい響き、ホールトーンが、そのディスクの中に格納されていて、実際のその場の空間でもいい響きがするんだろうなぁ、ということが容易に想像できるからだ。
最近のアーティストでは、お気に入りのアリーナ・イブラギモヴァさんのCDが、ウィグモアホール自主制作ライブのCDですね。
以上、ロンドンのコンサートホール事情で、中に入れなかったホールを、実際目の前に行ってきて、特集してみました。
いつぞやか、ホールでコンサート&オペラを鑑賞したいけれど、やはりヨーロッパ&世界のホール事情の優先度からするとロンドンのホールは厳しいかなぁ。(笑)
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