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京都市交響楽団 定期演奏会 9/24 & 9/25 [国内音楽鑑賞旅行]

初日の公演を聴くときは、相当緊張したのだった。京都市交響楽団の生演奏を聴くのは、人生ではじめて。深くは言及しないが、自分の音楽人生で必ず通らないといけない公演で、素晴らしくあってほしい!もしそうでなかったらどうしよう?という邪気な考えもあり、かなり緊張していた。

この公演の独奏(ヴァイオリン)は、アラベラ・美歩・シュタインバッハー。

この公演のチケットは、座席指定ができず、カテゴリーだけの選択で、コンピューター側で自動計算されて選ばれるのだが、なんと2日とも前方超かぶりつき!


初日:最前列左側

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2日目:3列目中央

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やはり音楽の神様は、自分に救いの手を差し伸べてくれた。
アラベラさんを至近距離で見たいと思っていたところに、願ってもみなかった音響よりもヴィジュアル優先の座席。(笑)

まず驚いたのは、京響メンバーは女性団員が圧倒的に多いこと。
初日の自分の座席の目の前は、第1ヴァイオリンなのだが、ほとんどと言っていいほど女性団員だったような気がする。

1曲目は、ヴェルディの歌劇「ナブッコ」序曲。
最初の出音を聴いて、びっくり!

とにかく弦の音色が厚くて大音量。とても圧倒的な女性団員で占められている弦の音色とは思えず、男性並み、いやそれ以上のパワフルな音色なのだ。弦合奏の音色が、とても分厚くて、ハーモニーもじつに綺麗に揃っている。聴いていてバランスがいい。分厚く聴こえるということは、低弦などの低音がしっかり土台を築いていて、その上に中高音域がきちんと乗っているのだが、その豊かな低音に見合っただけの量の中高音域が出ていて、その全体のバランスがよいということ。

ヴァイオリン、ヴィオラからチェロ、コントラバスなどの低弦に至るまでフルに出し切っている、どれかひとつでも出し切っていないと、この全体のバランスが崩れて、聴いていて、すぐにわかってしまうものなのだ。

ホールの音響の良さも相まって、とにかく素晴らしいの一言に尽きるオーケストラ・サウンド。

自分は、この最初のつかみがよかったことに、どれだけ安堵したことか、おわかりになるだろうか。(笑)

ナブッコ序曲は、オケの合奏で聴くには、弦を中心にたくさんの楽器が参加する音数の多い曲。なによりも旋律が軽やかで聴いていて、とても気持ちがいい。あっという間の短い曲だけれど、このオケの実力の高さを感じ取るには十分であった。


そして2曲目。ベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」。
アラベラさん、いよいよ登場。

じつは2年前の2014年に、N響とアラベラさんがこの曲を演奏したのをNHKホールに聴きに行ったことがある。そのときと比べると、やはり女性演奏家って2年も経つとずいぶん変わるものだなぁと感じたことだった。

とにかくいまのほうが遥かに洗練されて垢抜けているし、妖艶さも加わって女性らしくなった。
雲泥の差である。去年に比べ、若干痩せているんじゃないか、とも感じた。

2年前も感じたことだが、やはりベルクの曲は難しい。新ウィーン楽派の礎の1人で、現代音楽の基礎になる無調音楽。普通のクラシック音楽ファンには理解し難い曲だろうな。

やっぱり調性のない曲を楽しむにはコツがいる。

この曲は、オケは伴奏に回って、ヴァイオリン独奏が前に出る曲。

隙間だらけの寒色系の音空間で、彼女の引き裂くような衝撃音というか弓と弦との摩擦音というか、そんな生々しい音がじかに聴こえてくるような感じでリアル感たっぷり。なにか尖った感覚というか、この恐怖の鋭利な世界といおうか。

彼女の演奏も2年前と比べると、随分、演奏の表現に余裕・幅が出てきて大人の装いがした。
いまのほうが断然いいし、やはり成長していると思う。

最後の音色は消え行くような感じで、弓の上げ下げで、息の長いフレーズが続く。そして音が消え去った後、アラベラさんはピクリともせず、沈黙が続く。その間、観客席は咳ひとつせず、息を呑んでその沈黙をずっと見守っている。

どれくらい時間が経ったであろうか。

かなり長く感じた。

フライングブラボーが問題視される昨今、この沈黙をずっと守り続けたこのホールの観客のマナーの良さには、ものすごく感動。なんと素晴らしいんだろう。このマナーは、彼女の演奏に華を添えたと思う。




そして後半。シューマンの交響曲第3番「ライン」。
ようやく京響の演奏に集中できる。(笑)

交響曲にしては、珍しい5楽章構成。
全体のイメージとしては、暖かい感じに聴こえるこの曲。楽章間で、緩急が結構あってドラマの筋書を見ているかのようなストーリー性も感じとれた。

この曲から耳を凝らして京響の演奏に集中してみる。

やはり弦の音色、演奏にとても秀逸なものを感じて、弦楽器間のバランス感覚もすごくいいし、揃っているし、いいオケだな、心底に思う。

ただ、自分的に思うところもないことはなかった。

それは、やや金管が弱いかな、と感じたこと。

たまたま、その曲のその部分的な演奏の出来の良し悪しではなく、2日間フルで聴いていて、やや思ったこと。音色に安定感がないかな、という思いはあった。

人によってオケの演奏を聴く基準が違うと思う。演奏のテンポ、抑揚などの演奏解釈にこだわる人、自分はオーディオマニアなので、バランスにこだわる。座席が悪いと、聴こえてくるバランスが崩れて楽しめない。バランスは、逆に言うと、演奏する側にも起因することで、どこかウィークポイントな楽器があると、全体のバランスを崩す。


でもそれ以外は、ほとんど不満なところはなく自分にとって肯定的な面が多く、素晴らしいと思うところばかりだった。

指揮者のガエタノ・デスピノーサは、若手の有望株で、N響をはじめ、日本でも活躍しているようだが、彼の指揮を見る限り、とてもメリハリの効いたはっきりとした指揮をする人で、とてもわかりやすい棒だと思う。指揮に躍動感があって、曲のリズム、抑揚に彼の動きがぴったり合っている感じで、見ていてとても小気味がいいし、気持ちがいい。オケ側も追従しやすい指揮者なのではないだろうか。



初日は相当緊張したが、想像以上に素晴らしく、2日目は本当にリラックスして聴けた。

「自分の音楽人生で必ず通らないといけない公演」、と大きな見栄を張ってまで宣言したが、でも偽りない気持ちだし、京都まで遠征してきた甲斐があった。

オケのみなさん、ソリスト&指揮者にご苦労様と言いたいし、なによりも自分にお疲れさまと言いたい。(笑)

紅葉真っ盛りの11月下旬に、このホール、このオケで再訪する予定。たぶん紅葉で観光もさらに盛り上がると同時に、公演の方も今年の集大成ということで、自分の今年の大きな事の仕切りごとになるのでは、と期待しているのだ。


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京都市交響楽団 第650回定期演奏会
2016/9/24,9/25 14:30~  京都コンサートホール

指揮:ガエタノ・デスピノーサ
独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン)
管弦楽:京都市交響楽団


前半

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」

~アンコール
J.S.バッハ無伴奏のヴァイオリンのためのソナタ 第2番からアンダンテ

後半

シューマン:交響曲第3番変ホ長調「ライン」op.97


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