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コンサートホールの音響のしくみと評価 その1 [コンサートホール&オペラハウス]

ここ数年の経験をまとめてみようと思った。そのときそのときの経験は、日記に書いてあるのだが、それをひとつにまとめて俯瞰してみるのも大切なことではないか、と。自分なりの総決算!

もちろん独学、我流で、自分のいままでの経験値にもとづいて考えた内容で、それに専門書で学んだ知識を少し補足して形式を整えたものである。

専門家の方からすると、これが正しいかどうか不明だし、間違い、思い込みも多々あることをご容赦願いたい。

一般市民には敷居の高い建築音響の世界を、数式をいっさい使わずして、わかりやすくイメージを伝えることが自分の狙っているところでもある。

自己満足の世界かもしれないが、いままとめておきたかった!
今日から7日かけて連載する。
                                                         
                                                       
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ホールの音響のしくみは、要は、ステージ上での発音体が発する音が360度無指向に広がっていく音を、ホールの形状、容積、壁の材質、反射板などの仕掛けなどによって、いかに客席にその音の流れを持っていくか、ということころに、設計のポイントがあるのではないか、と思う。

ホールの音響のしくみについては、詳しくは、後日の日記にて。



なにをもって、ここのホールの音響がいいのか、を判断する基準。

①ステージ上の発音のエネルギー感が、しっかりと客席に届くこと。
②ホール内の暗騒音 (S/N比)
③ライブ(響き多め)またはデッド(ドライ)(響き少なめ)。
④直接音と響き(間接音)の対バランス比(量と時間遅れ)
⑤音色と響きの質感(硬質&軟質)
⑥帯域バランス
⑦再生空間のダイナミックレンジ、スケール感


まず思いつくのは、これらの項目だ。


①ステージ上の発音のエネルギー感が、しっかりと客席に届くこと。


一聴衆の立場からするともっとも大事なのは、このポイントだと思う。音響がよくないホールは、大体がステージ周辺で音がこじんまりと鳴っている感じで、それが客席まで飛んでこない。そんな印象を受けるときがこれは最悪だな、と感じるときだ。

最近の最新鋭のホールは、ステージ上の音を客席全体に回す仕組みができているので、このような症状はあまりないのだが、古い時代の設計のホールは、よくこういう症状に遭遇する。

この項目は、まず基本中の基本なので、これが成り立たないとホールの音響理論は語れない。

コンサートホールは、ホール設計者の立場からすると、もちろんホール内を均一の音響で、どこに座っても同じ音響になるように設計することは最初の志でもある。

建築の前段階である模型を作って、音響シュミレーションを何回も繰り返して慎重に慎重を重ねる。

でも出来てから、実際はどうしても、実体験を重ねると、座席によって、スィートスポット&デッドスポットなどの音響のムラというのができてしまうのは仕方ないのかもしれない。

自分が難しいと感じるのは、1階席の平土間の中段から後方にかけての座席。
古いホールだと、大体ステージ上の音が飛んでこない、という経験をすることが多い。

音は空気の疎密波なので音の空気中での伝わり方はすべての波の伝わりと同じ性質のものと考える。発音体から出た音は、一様な空気中であれば、発音体を中心として球面となって広がっていくのが基本。この球面に垂直な方向が、音の伝わる方向とよばれるもの。

そういう意味で、球面上に垂直な方向が音の進行方向なのだから、ステージから上はもちろん横にも伝わるはずなのだが、ホールって大抵ステージを端において縦長だ。


そうするとどうしても音のエネルギーの減衰で、平土間縦方向の後方は苦しいものがあるのだ。

それを補うのが間接音(反射音)であるのだが、シューボックスならまだしも、ワインヤード(今の時代ではヴィンヤードという呼称が正しいようだが、自分はワインヤードという呼び方がシックリきていい。)だと、古いホールだと反射板などの仕組みはステージ上方にはあるけれど、ホール全体に音を同一密度分布で拡散させる仕組みにはなっていないので、厳しいのだと推測する。

よく巷で言われている平土間だとステージ上の音が、頭の上を飛び越えていってしまう感覚とか。。。


自分は、このホールの音響がいいかどうか、のファースト・プライオリティは、この項目を第1優先にあげている。

これが成り立たないと、全く楽しめないし、この後の理論に進めないからである。



②ホール内の暗騒音(S/N比)

これはホール外からの遮音性能にもよるが、古いホールだと外部の騒音がそのまま内部に聴こえたりすることもある。

米カーネギーホールは、外のすぐ近くに地下鉄が数本張り巡らされていて、その電車の走る音が中まで聴こえてくるとか。

最近のホールでは、この遮音性能も重要な建築設計条件なので、ひどいことは滅多にないが、自分がホールに入ったときにまず気にするのは、このポイントでもある。


ホール内に入ったときの暗騒音をまず聴いてみる。

いいホールだと、入った瞬間、S/Nがいいというか、空気が澄んでいる感じがするのだ。デッドである無音とはまた違う意味で、ほどよいクリーンな暗騒音を感じ取れる。

古いホールだと、外部の騒音が内部に聴こえてきたり、空気が淀んでいる感じがする。

あと観客の話し声などや、開演前のステージ上での調音などの音でも、大体ライブなのかデッドなのか、そのホールの素性が、この暗騒音を聴いている時点でわかってしまう。だからこの瞬間のプロセスは、自分にとってはとても大切な本番前の儀式でもある。

あと、このホール内の空気が淀んでいなく、澄んでいるS/Nがいいというファクターは、演奏時の楽器の音が鳴りきったときに、ホール内の空気にすぅ~と消え去っていく余韻の美しさにも影響してくる。

音響のいいホールというのは、この消え去っていく余韻の美しさがじつに素晴らしいのだ。

この項目を書いていると思い出すのが、コンサートホールの響きのパラメータである残響時間。この残響時間が長いと響きが豊富でライブということになる。響きの豊富な音響のいいホールは、大体目安で、2.0秒あたりの残響時間が相場のようである。


残響時間の測定は、ホールの外部からの遮音も考慮されて深夜の真夜中に行われるのだそうだ。

基本は、ホワイトノイズのような試験シグナルをホール内にザーッと一斉に流して、それを切った時に消音するまでの時間を測定するのである。それをホールのいろいろな場所で行うのだ。

残響時間というホールの音響空間の評価方法は、音響空間における短い時間発射された音波が時間経過の中でどのように室内に伝わり、絶息していくかをテーマにしたものなのだが、自分的には、単に持続する時間の長さだけではなく、その消えゆくさま、余韻の美しさもいいホールの基準としたいのだ。

自分の音楽鑑賞において、ここはかなり大切な要素でもある。



③ライブ(響き多め)またはデッド(ドライ)(響き少なめ)。


これはホールの音響の印象では誰もが最初に思いつく項目なのではないか、と思う。
もちろんデッドよりライブなほうが、音響がいい、というイメージはやはりある。
自分ももちろんライブな音響のほうが好きである。

でもデッドであることが必須の場合もあるのだ。
それは演奏家が使うスタジオなど。

これは演奏家が、自分の奏でる音色を正確にモニターすることが1番の目的でもあるので、余計な響きで邪魔されることがご法度だからでもある。だから大抵スタジオはデッドである。

自分の奏でる音色の正確なモニターという目的から、響きのあるホールでの演奏のシチュエーションに移れば、演奏家は、自分の奏でる音の他に、どのようにその響きと付き合うか、というもうひとつの課題に向き合うことになる。

あるホールをホームグランドにしているオケはどのように演奏すれば、そのホールの響きと上手につきあえるか、よく熟知しているが、これがアウエイのホールに遠征になると短いリハーサルの中で、その響きとの上手な付き合い方をマスターしないといけない。

コンサートホールって、そのホール自体で、独特の固有のホールトーン(ホールの音&響き)を持っているからである。




 


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