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コンサートホールの音響のしくみと評価 その6 [コンサートホール&オペラハウス]

コンサートホールの音響に影響がある要素の中で、じつは一番影響あるのは座席だそうだ。ある意味、一番ホール内で占める面積が大きいし(総面積の30~40%らしい)、ここに座り心地を重要視してクッション性の生地をふんだんに使うと、もろに吸音効果の悪影響が出る。

なので、人が座ったところで人体に隠れるところに吸音のクッション性のものを使って、空席時と着席時で音響の差が出ないように工夫しているのだ。

また、そのため座席のクッションの総張替えなどの作業は、ホール全体の音響特性に大きく影響を与える可能性があり、頻繁にはおこなわず長く使うことが肝要。

バイロイトの椅子は、まさに修行僧のようなケツの痛い座席でした。(笑)

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最後にコンサートホールを語る上で、もうひとつ大切な要素を書いてみる。


それはサイトライン(Sight-Line)、つまり視覚線。

観客席からステージを観たときの眺め、その見え方である。

この要素ってホール設計者の立場からすると、とても、とても大切な要素なのではないか、と思う。我々聴衆の立場からすると、ホールのどこの席に座っても、ステージは全景できちんと見えることが、さもあたりまえのように思っているけれど、それを設計する立場になると、そのあたりまえのことを配慮、実現することって大変なことのように思える。

つい先ごろ、日本の地方のホールで、竣工オープンしたホールで、いきなり座席によって、ステージが1/3から半分くらい見えない「見切り席」が存在して問題になったことがあった。

これは日本じゃ大問題かもしれないのだが、じつはヨーロッパの古いホールでは、ごく日常茶飯事であったりすることなのだ。(笑)

ベルリンフィルハーモニーはステージを正面から見据えると、両端の出っ張ったウィングが妙に格好良かったりするのだが、このウィングのところに座ると、意外とステージが見えにくい。

下の写真はヤノフスキのワーグナー公演のときの自分の座席。左ウィングのところに座ったのだが、ステージの手前が全く見えなかった。そこに合唱団がいたりするので、声もよく聴こえなかった。(笑)


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大昔の人の感性がよくわからないのだけれど(笑)、座席の前に大きな柱が立っていて、全然ステージが見えない座席など、結構あるのだ。

この写真は、ザルツブルクのモーツァルテウムのある座席。(笑)

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そして去年体験したバイロイト音楽祭のバイロイト祝祭劇場の一番最上階の格安席。
なんと自分の座席だった。(笑)

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可哀想なのは、自分の左のご婦人。柱でまったくステージが見えない。結局みなさんの好意で、空いている席に移動できたのだが。。。


こういう座席って、いい座席ブロックでありながら、極端に値段が安かったりして、結構デッドエリアだったりする場合が多いのだ。ヨーロッパの古いホールでは、必ずこういう座席ってある。

スイス・ジュネーブのヴィクトリアホールも自分の座席は、ステージが手摺に隠れて全く見えないデッドエリアだったのだが、チケットを余分に2枚保持していたので、もう1枚のほうで事なきを得たのだ。

もうこういういわく付きの座席は、売らないようにしてほしい、そのようにホール側で販売禁止にする、という配慮があってもいいと思うのだが、どうだろうか。


この問題が厄介なのは、ホールの座席表を見ながらチケットを購入するとき、前に柱が立っているとか、いわゆるデッドエリアである、ということが、その座席表からだとわからないのだ。ホールに実際行ってみて、はじめてわかることなのだ。自分はそんな経験を2回もしてしまった。(笑)だから厄介ないのだ。ホールの座席表にそういうデッドエリアであることの記載が欲しいものだ。




ホワイエ空間のセンスも自分にとっては大切な要素。ホールの内装についで、とても重要視している。ここもセンスある空間にしてほしい。ホールとは必ずペアの存在なのだ。自分が体験したホール日記に必ずホワイエ空間の写真を入れるのもそんな理由から来ている。

このホールのことを全部知ってほしい、という想いがあって、そのときは単純にホールだけでなく、ホワイエも入れないと、と思うのである。日記を読んでいる読者が、自分もそのホールに行っている感覚になるには、ブレークの時のホワイエも必要と思うからである。

いかにお客さんに居心地のいい空間を提供できるか。このポイントは大きい。



あと設計者サイドからすると、女性トイレのあり方だろうか?(笑)いつもブレークのときの女性トイレの長蛇の列は、他人事ながら可哀想と思ってしまう。これを見事にクリアしているホールって、どこも見たことがないと思う。

素人考えでは、単純に女性トイレの数を大幅に増やすとか、考えられそうだけど、どのホールでも長蛇の列でない女性トイレは見たことがない。

せいぜいブルックナーとかの男性ファンの多い公演の時には女性トイレが空いている、というときくらいか。(笑)逆に、バレエの公演の時は、大変です。反対に女性ファンが圧倒的。やはり美男美女のスタイルのいいバレエダンサーや、バレエ演目自体視覚要素が大きいウエイトを占めるからだろう。

せいぜい20分位のブレークで、すべて片付くのか、いつも可哀想に思ってしまう。ひとつの問題提起ですね。




音楽のコンサートホールって、なにも音響だけがすべてじゃないことも勿論である。音楽を聴く場所なのであるから、音響が悪ければ、そのすべての前提条件が崩れてしまうけれど、それ以外にも内装空間の美しさ、居心地のよさ、などその空間デザイン、空間のありようもとても大切な要素だと思う。

いくら音響が素晴らしくても、内装デザインに品格がないと、萎えてしまうというか、コンサートホールとしてなにか一つ足りないような気がしてしまう。

コンサートホールにとって、音響と内装空間のデザインは、お互い欠かすことのできない必須のペアなものなのだと思う。


自分は、サントリーホールの内装空間が、非常に高級感があって、そのブランドイメージをうまく醸し出している、とても優秀な空間デザインだと思う。サントリーホールの内装空間の高級感やカラーリングのセンス(配色のセンス)は、自分の空間&色彩感覚にかなりビビッと来る感じで、これだけ高級感やブランド感を感じるホールは、国内のホール中では他に類をみないと思う。自分の美的感覚に合うというか、好みなのである。日本のホールでは最高だと思っている。

サントリーホール.jpg



以上をもって、コンサートホールの音響の仕組みを俯瞰してまとめてみた。

あくまで全体的に俯瞰する形でのまとめ方であったが、いかがであろうか?

みなさんのお役に立てれれば少しでも幸いである。

ここ数年経験してきたことを、まとめてみたかった。自分の経験で学んだことは自分の財産だと思い、連載という形で紹介したかった。まとめると自分の気持ちもすっきりする。

あと思っていたのは、音響学(建築音響学&室内音響学)の世界って、数式の世界で、コンサートホールのことを詳しく知りたいと思って本を買っても、その中は一面、数学&数式の世界でなかなか入っていけない世界でもある。

多くのファンの方が挫折するのは、そこなんだと思う。

なんか世の中に、数式をいっさい使わず、コンサートホールのことを語れれば、最高にいいな、自分の狙っている層ってそこなんだな、とか思っていたりしていたのだ。

それを、特に観客目線(耳線)で語っている文献は世の中には皆無に等しい。それを実現するには、やはり数の経験が必要。いろいろ山あり谷ありで経験してきて、ちょうどいまの時期が一番熟していて潮時かな、とも思った。


やっぱり神秘的、ミステリアスな部分が多く、建築好きの自分は、特にこのコンサートホール&オペラハウスには、底知れない魅力を感じる。

たとえば、人生初体験のホールを体験するとき、開場前のホワイエで待っているときのあのドキドキ感。そしていざ開場したときに、中に入った瞬間に目の前にそのホール空間が現れたときのあの興奮といったら、なににも変え難い興奮するときである。


新たな出会いを求めながら、これからも世界中のコンサートホールを探訪することだろうと思う。

おまけに、最後の締めの日記をもうひとつ投稿する予定である。ある意味、これが自分の1番言いたいこと!  





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