早稲田大学 1ビット研究会 [オーディオ]
早稲田大学で、年2回開催される「1ビット研究会」。
今回で16回目ということなので、8年目ということだと、スタートは2009年ということになる。意外と新しい歴史なんですね。
今は教授の職を定年退官されたのだが、早稲田大学でデルタシグマ(ΔΣ)を含むさまざまな研究をしている山崎芳男先生という方がいらっしゃる。その山崎先生が早稲田大学を中心として、「1ビットオーディオ研究会」という組織を作った。
この「1ビットオーディオ研究会」は、年に2回「1ビット研究会」という研究発表会を開いていて、一般の人も聴講できる。
発表会に「オーディオ」の文字が入らないのは、現在の1bit(ΔΣとその他の1bit技術を含む)技術はオーディオに限らず、組み込みマイコンのA-Dコンバータや、電波の変調など様々な分野に応用されているからだ。
この日も、山崎先生はパネラーとして登場された。
どのパネラーの方も、必ず山崎先生のことに言及して、敬意を表する感じなので、最初、山崎先生って何者?(笑)という感じで、後で帰ったらネットで調べてみようと思い、そういうことだ、ということを認識できた。
この世界、いかに自分が狭い世界、見識なんだろう、ということだ。(笑)
今日開かれたのは、早稲田大学 理工学部の西早稲田キャンパス 55館。
ちょっと話しかけてみたが、大学生って、本当に初々しいし、世間の荒波を生きてきた自分にとっては、なんと純粋な生き物なんだろう?と思った。話したら、わかるのだ。社会に出て30年生きてきたのは伊達ではないと思ったよ。(笑)
会場は、第1会議室。
きちんとデモの準備もされていて、否が応でも期待が高まる。
プリもパワーもアキュフェーズだ。プリの上に、USB-DACがちょこんと乗っている。1bit再生で使うDAC。DSD11.2MHzまで対応できるRMEのADI-2 ProというDAC。いま個人的に、もうひとつ欲しいDACなのだ。
1ビットオーディオに関しては、自分の頭は前職時代に接していた1992~1999年あたりの技術でまったく止まっているので(笑)、その後世の中どのように変わっているのだろう?ということで興味津々だった。
正直、1ビット信号処理そのものの進歩というよりは、その世界はあくまで変わっていなくて、その1ビットを応用利用した研究、製品紹介など、どちらかというと応用分野が盛んなのかな、という印象を抱いた。
13:00~18:00という長丁場であったが、受けてみた印象は、全然ハードでなく、かなり面白かった。時間が経つのがあっという間だった。
これなら年2回なら定期的に受講してもいいな、という印象だった。
今日の発表テーマは、下記の通り。
(1) 国内オーディオ市場の現状とハイレゾを含むオーディオ協会の考え方
校條亮治 (一般社団法人 日本オーディオ協会 会長)
(2) 高速1ビット伝送技術の応用 ~リアルタイム伝送と J アラート~
山﨑芳男 (早稲田大学名誉教授 / 東京都市大学教授)
(3)「PrimeSeat」における世界初 11.2MHz / 1bit ライブストリーミング配信
大石耕史 (株式会社コルグ 執行役員 / 技術開発部 部長)
冨米野孝徳 (株式会社インターネットイニシアティブ 経営企画本部 配信事業推進部 担当部長)
西尾文孝 (同社 経営企画本部 配信事業推進部)
(4) 高速 1bit 信号を用いた大規模三次元音場再現システムと身体的音空間知覚研究
池田雄介 (東京電機大学)、山中悠勢・久世大 (元早稲田大学)、竹内大起・及川靖広
(5) 津田塾大学&早稲田大学で教えている音楽理論の面白さと、新レーベル設立について
麻倉怜士 (オーディオビジュアル評論家、津田塾大学 / 早稲田大学講師)
自分は、(3),(5)狙いだった。(4)が学術的に基礎研究分野という感じでためになるかな、という期待だった。しかし予想を超えて全部面白かった。
では、(3),(5)を中心に各テーマについて、簡単に印象も踏まえて述べてみようと思う。
(1) 国内オーディオ市場の現状とハイレゾを含むオーディオ協会の考え方
マーケティングの話ですね。こういう話に接する機会もあまりないので、いま世の中がどのようなマーケット市場になっているのか、ハイレゾという切り口で説明するのは面白かった。
自分は正直オーディオ協会というところは、お役所的な感じで、あまりいい感じを持っていないのであるが(やっぱりこの世界は、現場が重要。)、こういうまとめ的見解では、彼らの存在意義、長所が際立つと思いました。
校條会長自ら登壇された。
いまのオーディオマーケット。
* ヘッドフォン、イヤフォンのインナーカテゴリーは成長したが、正直頭打ち状態。
* 据え置き型カテゴリーは、一定化しているが、CDプレーヤーは終息方向。
* アナログプレーヤーは急激に伸びていて、マスコミによるアナログブームという報道もあるが、
正直コンテンツ不足の感否めない。意外に伸び悩み。
新譜が少ないし、まっ国内でもプレス工場も少ないしね。(ソニーがアナログプレスを開始した
ニュースがありました。)
* カーオーディオのマーケットはデカい。5411億。車の中って意外とオーディオマニアの視聴室に
なっている。
* ライブ(演奏会)は、この10年間全く落ちていない。ライブは絶好調。
* ハイレゾの定義について。
オーディオ協会として、2014年6月にハイレゾ世界発信をした。
最初、CDより上のスペックはみんなハイレゾで、なんじゃそれ?(笑)という感じだったが、いまは大分その行先が固まりつつある。
次世代デジタルオーディオのスペックとして、192/24でやれ!でも96/24でも可とする、だそうだ。ダイナミックレンジを決める値である量子化ビット数は、もう16bitはあり得なくて、24bitは必須条件。
でもプロユースの世界では、もう32bitの時代が着々と来ているんですけどね。
ハイレゾで良い音を求めるには、録音(マイクの性能含め。)から見直さないといけない。→当然です!
自分はオーディオマニアの端くれだが、昔から、Hi-Fiという言葉は、かなり違和感、抵抗感があった。古臭い言葉という感覚がして、時代遅れのような感じがするのだ。オールドファンの方は、いまだにHi-Fiという言葉をよく使われる。(ゴローさんも使っていた。(笑))
その「Hi-Fiの定義」というのは、オルソン博士によって作られたものなんですね。初めて知りました。
予想以上に面白かったです。こういうオーディオのマーケティング情報は定期的に聴きたいですね。でも車載機器メーカーに勤めている者からすると、カーオーディオのマスがデカいというのは意外。ウチの社内の常識では、ナビは、まだ余地はあるが、カーオーディオは安定期でもうやることがなくて、成長が見込めない分野という認識なんですけどね???
(2) 高速1ビット伝送技術の応用 ~リアルタイム伝送と J アラート~
山崎先生登壇。(笑)
昨今の北朝鮮問題で、現実味を帯びてきた弾道ミサイル問題。Jアラートの存在は、ニュースで知っていたが、実際どんな音なのか?は聴いたことがなかった。(ニュースではやっていたみたい。)
まずその音を聴かせてもらった。
なんとも不気味で、不快で異様な音。
この告知音、警告音であるJアラートに1bitを導入したのだそうだ。
KDDIのサーバーを介したリアルタイム伝送実験に成功したそうだ。(東京~ハワイ)
このJアラートの音って、じつは様々な周波数の音の複合音(いわゆる和音)で成り立っているんですね。
要は、一般市民の聴覚能力って、年齢によって、様々な周波数帯域を持つので、その全員に音が行き渡るように、いろんな周波数の音を混ぜている。
基本波形は、のこぎり波、三角波、そして矩形波、これらを1bitにして、様々な周波数の音を加算して作る。
1bitの波形は、まったく驚かないのだが、それをいままで静止画で見ていた訳で、実際PCの画面上で、横方向にそのパルス幅がリアルタイムで変わっていく瞬間、つまり動いている1bitの波形を観たときは、ちょっと感動しました。(笑)
(3)「PrimeSeat」における世界初 11.2MHz / 1bit ライブストリーミング配信
自分にとっての今日のメインテーマ。もうメディアを通じて内容は、よく知っていたので、特に新しいニュースはなし。まっ1ビット研究会の場での確認会の意味もありましたね。
奥のほうから西尾さん、大石さん
今回で16回目ということなので、8年目ということだと、スタートは2009年ということになる。意外と新しい歴史なんですね。
今は教授の職を定年退官されたのだが、早稲田大学でデルタシグマ(ΔΣ)を含むさまざまな研究をしている山崎芳男先生という方がいらっしゃる。その山崎先生が早稲田大学を中心として、「1ビットオーディオ研究会」という組織を作った。
この「1ビットオーディオ研究会」は、年に2回「1ビット研究会」という研究発表会を開いていて、一般の人も聴講できる。
発表会に「オーディオ」の文字が入らないのは、現在の1bit(ΔΣとその他の1bit技術を含む)技術はオーディオに限らず、組み込みマイコンのA-Dコンバータや、電波の変調など様々な分野に応用されているからだ。
この日も、山崎先生はパネラーとして登場された。
どのパネラーの方も、必ず山崎先生のことに言及して、敬意を表する感じなので、最初、山崎先生って何者?(笑)という感じで、後で帰ったらネットで調べてみようと思い、そういうことだ、ということを認識できた。
この世界、いかに自分が狭い世界、見識なんだろう、ということだ。(笑)
今日開かれたのは、早稲田大学 理工学部の西早稲田キャンパス 55館。
ちょっと話しかけてみたが、大学生って、本当に初々しいし、世間の荒波を生きてきた自分にとっては、なんと純粋な生き物なんだろう?と思った。話したら、わかるのだ。社会に出て30年生きてきたのは伊達ではないと思ったよ。(笑)
会場は、第1会議室。
きちんとデモの準備もされていて、否が応でも期待が高まる。
プリもパワーもアキュフェーズだ。プリの上に、USB-DACがちょこんと乗っている。1bit再生で使うDAC。DSD11.2MHzまで対応できるRMEのADI-2 ProというDAC。いま個人的に、もうひとつ欲しいDACなのだ。
1ビットオーディオに関しては、自分の頭は前職時代に接していた1992~1999年あたりの技術でまったく止まっているので(笑)、その後世の中どのように変わっているのだろう?ということで興味津々だった。
正直、1ビット信号処理そのものの進歩というよりは、その世界はあくまで変わっていなくて、その1ビットを応用利用した研究、製品紹介など、どちらかというと応用分野が盛んなのかな、という印象を抱いた。
13:00~18:00という長丁場であったが、受けてみた印象は、全然ハードでなく、かなり面白かった。時間が経つのがあっという間だった。
これなら年2回なら定期的に受講してもいいな、という印象だった。
今日の発表テーマは、下記の通り。
(1) 国内オーディオ市場の現状とハイレゾを含むオーディオ協会の考え方
校條亮治 (一般社団法人 日本オーディオ協会 会長)
(2) 高速1ビット伝送技術の応用 ~リアルタイム伝送と J アラート~
山﨑芳男 (早稲田大学名誉教授 / 東京都市大学教授)
(3)「PrimeSeat」における世界初 11.2MHz / 1bit ライブストリーミング配信
大石耕史 (株式会社コルグ 執行役員 / 技術開発部 部長)
冨米野孝徳 (株式会社インターネットイニシアティブ 経営企画本部 配信事業推進部 担当部長)
西尾文孝 (同社 経営企画本部 配信事業推進部)
(4) 高速 1bit 信号を用いた大規模三次元音場再現システムと身体的音空間知覚研究
池田雄介 (東京電機大学)、山中悠勢・久世大 (元早稲田大学)、竹内大起・及川靖広
(5) 津田塾大学&早稲田大学で教えている音楽理論の面白さと、新レーベル設立について
麻倉怜士 (オーディオビジュアル評論家、津田塾大学 / 早稲田大学講師)
自分は、(3),(5)狙いだった。(4)が学術的に基礎研究分野という感じでためになるかな、という期待だった。しかし予想を超えて全部面白かった。
では、(3),(5)を中心に各テーマについて、簡単に印象も踏まえて述べてみようと思う。
(1) 国内オーディオ市場の現状とハイレゾを含むオーディオ協会の考え方
マーケティングの話ですね。こういう話に接する機会もあまりないので、いま世の中がどのようなマーケット市場になっているのか、ハイレゾという切り口で説明するのは面白かった。
自分は正直オーディオ協会というところは、お役所的な感じで、あまりいい感じを持っていないのであるが(やっぱりこの世界は、現場が重要。)、こういうまとめ的見解では、彼らの存在意義、長所が際立つと思いました。
校條会長自ら登壇された。
いまのオーディオマーケット。
* ヘッドフォン、イヤフォンのインナーカテゴリーは成長したが、正直頭打ち状態。
* 据え置き型カテゴリーは、一定化しているが、CDプレーヤーは終息方向。
* アナログプレーヤーは急激に伸びていて、マスコミによるアナログブームという報道もあるが、
正直コンテンツ不足の感否めない。意外に伸び悩み。
新譜が少ないし、まっ国内でもプレス工場も少ないしね。(ソニーがアナログプレスを開始した
ニュースがありました。)
* カーオーディオのマーケットはデカい。5411億。車の中って意外とオーディオマニアの視聴室に
なっている。
* ライブ(演奏会)は、この10年間全く落ちていない。ライブは絶好調。
* ハイレゾの定義について。
オーディオ協会として、2014年6月にハイレゾ世界発信をした。
最初、CDより上のスペックはみんなハイレゾで、なんじゃそれ?(笑)という感じだったが、いまは大分その行先が固まりつつある。
次世代デジタルオーディオのスペックとして、192/24でやれ!でも96/24でも可とする、だそうだ。ダイナミックレンジを決める値である量子化ビット数は、もう16bitはあり得なくて、24bitは必須条件。
でもプロユースの世界では、もう32bitの時代が着々と来ているんですけどね。
ハイレゾで良い音を求めるには、録音(マイクの性能含め。)から見直さないといけない。→当然です!
自分はオーディオマニアの端くれだが、昔から、Hi-Fiという言葉は、かなり違和感、抵抗感があった。古臭い言葉という感覚がして、時代遅れのような感じがするのだ。オールドファンの方は、いまだにHi-Fiという言葉をよく使われる。(ゴローさんも使っていた。(笑))
その「Hi-Fiの定義」というのは、オルソン博士によって作られたものなんですね。初めて知りました。
予想以上に面白かったです。こういうオーディオのマーケティング情報は定期的に聴きたいですね。でも車載機器メーカーに勤めている者からすると、カーオーディオのマスがデカいというのは意外。ウチの社内の常識では、ナビは、まだ余地はあるが、カーオーディオは安定期でもうやることがなくて、成長が見込めない分野という認識なんですけどね???
(2) 高速1ビット伝送技術の応用 ~リアルタイム伝送と J アラート~
山崎先生登壇。(笑)
昨今の北朝鮮問題で、現実味を帯びてきた弾道ミサイル問題。Jアラートの存在は、ニュースで知っていたが、実際どんな音なのか?は聴いたことがなかった。(ニュースではやっていたみたい。)
まずその音を聴かせてもらった。
なんとも不気味で、不快で異様な音。
この告知音、警告音であるJアラートに1bitを導入したのだそうだ。
KDDIのサーバーを介したリアルタイム伝送実験に成功したそうだ。(東京~ハワイ)
このJアラートの音って、じつは様々な周波数の音の複合音(いわゆる和音)で成り立っているんですね。
要は、一般市民の聴覚能力って、年齢によって、様々な周波数帯域を持つので、その全員に音が行き渡るように、いろんな周波数の音を混ぜている。
基本波形は、のこぎり波、三角波、そして矩形波、これらを1bitにして、様々な周波数の音を加算して作る。
1bitの波形は、まったく驚かないのだが、それをいままで静止画で見ていた訳で、実際PCの画面上で、横方向にそのパルス幅がリアルタイムで変わっていく瞬間、つまり動いている1bitの波形を観たときは、ちょっと感動しました。(笑)
(3)「PrimeSeat」における世界初 11.2MHz / 1bit ライブストリーミング配信
自分にとっての今日のメインテーマ。もうメディアを通じて内容は、よく知っていたので、特に新しいニュースはなし。まっ1ビット研究会の場での確認会の意味もありましたね。
奥のほうから西尾さん、大石さん
右から冨米野さん、大石さん
この方々は、まさにこのプロジェクトのキーパーソンなのだ!
ベルリンフィルハーモニーで開かれるベルリンフィルの演奏会を、DSD 1bitで配信しようというプロジェクト。IIJの配信ネットワークを使う。
IIJは、日本の総合的なネットワークソリューション提供会社の先駆者だが、現IIJ会長の鈴木幸一さんは、いまやすっかり上野の春の風物詩となっている東京・春・音楽祭を自分のポケットマネーで開いたこの音楽祭の創始者でもあるのだ。
クラシック音楽への造形も深く、毎年の東京春祭の企画にも参画している。
いままでは、DSD5.6Mで配信していたが、今回のセールスポイントは、世界初のDSD11.2Mでのライブストリーミング配信。最低限でも25Mbps、安定再生で、50Mbpsのビットレートが必要なブロードバンド・サービスで、IIJのネットワークをふんだんに使う。
これが、そのシステム図。
ベルリンフィルハーモニーでの演奏データを、いったんロンドンにあるIIJの支社に送る。ロンドン~日本の間には、IIJのぶ太っといバックボーンネットワークがあって、この部分は、IIJとしては、いろいろ細工をし易いということもあって、ここを使う。
だからベルリンからいったんロンドンに送って、そこから日本に送るというネットワーク。
このベルリンからの演奏データをインターネット形式に変換するエンコーダ(PrimeSeat Broadcaster)を今回新規開発した(KORG開発)。
このDSD11.2M配信の技術のポイントは、次の3つにある。
1.エンコーダ(PrimeSeat Broadcaster)
2.プレーヤ(PrimeSeat)
3.IIJ配信ネットワーク
工夫したポイントとしては、11.2Mのストリームだけではなく、5.6MやPCM 96/24のストリームも作って、その3本の複合ストリームを提供できるようにしたこと。
さっそく、DSD11.2Mのライブストリーミング配信の音を聴かせてもらう。
ハイティンク指揮ベルリンフィルで、ブルックナー9番。
う~ん、確かにワンポイントで録った典型的な音の聴こえ方がする。
指揮者のちょうどすぐ後方にワンポイント・ステレオマイクを配置して、そこから全体を俯瞰したような聴こえ方。
だから木管以降の金管や打楽器は音が遠い。
いやその部分だけではなく、全体的に、やはり音が遠い感じがする。
定位感が乏しいというか、フラフラしている感じで重厚感・安定感がない。
これは普段、自分の聴くオーディオのクラシックの音が、典型的なマルチマイクのセッション録音でエンジニアが十分に調理をし尽した録音が多いからなのだと思う。
その差がはっきり分かる。
DSDライブストリーミングは、
ワンポイント録音。
ミキシングなどの調理はいっさいなし。
を基本としている文字通りリアルなライブストリーミングなのだ。
だから聴いていると、とても薄化粧のサウンドのように聴こえる。普段自分が聴いている音がいかにきっちり空間バランスがとれた厚化粧のサウンドであるか!
DSD11.2Mであるが故の鮮度感やリアルな気配感の向上は確かに感じられる。
大きな躍進ですね。
自分は、かねてよりじつはこのライブストリーミングで大きな疑問点があった。
ふだん自宅で、このPrimeSeatを聴いているときに、それは感じることであった。
それはPrimeSeatのハイレゾストリーミング音源には、ベルリンフィルアワーと言って、ベルリンフィルから提供されている定期公演の音源と、アムステルダム・コンセルトヘボウで演奏されているRCO(ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団)の定期演奏会の音源がある。
ベルリンフィルのほうは、彼らの自主組織であるベルリンフィル・メディアがやっていて、RCOのほうはポリヒムニアがやっている。
ベルリンフィルの音源のほうは、PCM 48/24、RCOのほうは、DSD5.6M で聴いている。
どうもベルリンフィルの音源のほうが、鮮度感も高く、音がすごい良く感じるのだ。やたらと音がいい、という感じ。PCM 48/24なのに、ここまでよく聴こえるとは!という感じだった。特にホール内の暗騒音の聴こえ方が全然違った。定位感もこちらのほうが抜群にある。
これは日記でも公開せず、自分の中で永らく伏せていた事実だった。その理由は、自分でその違いを理論づけることができなかったから。
でもこの日、彼らのプレゼンを聴いて、その原因が理解できたのだ。
それは、この部分だった。
Digital Concert Hall用音声(デジタルコンサートホール用音声)
ステージ上に配置された約60本のマイク(具体的には天井から60本を吊るしている)の位置を調整して、デジタルコンソールでミックスして制作。 ~HD映像とのマッチングを意識したクリアな音像と定位
PrimeSeat用音声
1F客席最前列上方に設置した1対の無指向性マイク(ゼンハイザーMKH8020)のみを用い、マイクの位置、間隔、角度を調整しダイレクト収録。 ~コンサート会場の空気感と音場の再現。
これですべてがわかったような気がした。
DCHの音は、マルチマイクでエンジニアによる調理の音なのだ。PrimeSeatは純粋なワンポイントで、調理いっさいなしの音。
PrimeSeatのベルリンフィルアワーの音源は、元々はDCHの音源を、PirmeSeat用のPCM 48/24のストリームとして音源を作り直しているのだ。
だからベルリンフィルの音源を聴くと、やたらと音がよく感じるのは、マルチマイクで調理された音を聴いているからなのだと思った。RCOの音源のほうは、純粋なPrimeSeat用に造ったワンポイント録音、調理なしの音なのだ。
そこに差があった。ようやく自分が永らく伏せていた事実を理由づけることが出来た。納得いった!
これは別にマルチマイク・調理あり、がいい、ワンポイント・調理なし、がいい、という優越論の話をしているのではない。もうこれらの手法がそれぞれで、異なった価値観を持っているということ。優劣の次元の話ではないのだ。(好き嫌いはあるかもしれない。)
だから、ふだん自分が聴いているのは、マルチマイク・調理あり、の音が圧倒的なので、そこに親近感がわいただけに過ぎない、ということだけだと思った。
PrimeSeatのDSDライブストリーミングは、やはりコンサート会場の雰囲気、ライブ感を感じてもらおう、というところに主眼があるので、そこに彼らの目的があって、それが十二分に達成されているレベルだと感じることしきりなのだ。
こちらが、今回のIIJ配信システム、エンコーダ(PrimeSeat Broadcaster)、プレーヤ(PrimeSeat)のデモ機の展示。
あくまで、これは勝手な自分の妄想に過ぎないけれど、彼らは近い将来、スゴイことをやってのけて、公表をすると確信しています。
お楽しみに!(笑)
(4) 高速 1bit 信号を用いた大規模三次元音場再現システムと身体的音空間知覚研究
この分野は、1番学会らしいアカデミックな内容だということで、期待していた。
ただ、どうなのかなぁ?プレゼンターが、ちょっと不慣れな感じ。プレゼン資料の作り方がイマイチ洗練されていない。やたらと文字が多いし。
絵や図を多く使って、なるべく文字を使わない。一見みただけでわかりやすく!というプレゼンの基本が成り立っていないような気がした。
自分のような社会人生活30年もやっている社会人からすると、こういうプレゼン資料は、完璧NG!という感じだった。
内容は、SPを高速1bit信号で、直接駆動すること。それをかなり膨大なマルチチャンネル数のSPを配置して、3次元の音場を作ろうという内容だと理解した。
まだ、お金がかかり過ぎて、商品化レベルまで落とし込めていない現実的でない基礎開発レベルのテーマだと感じた。
(5) 津田塾大学&早稲田大学で教えている音楽理論の面白さと、新レーベル設立について
AV評論家 麻倉怜士さんの講義。
まさに引く手あまたの超人気者で、毎日世界中を飛び回っている麻倉さんだが、いままでの技術論的なテーマではなく、ちょっと変わった毛色の内容を披露してくれた。
それは、「音階、調、コード進行」についての音楽理論についての紹介。
これは普段、麻倉さんが勤めている津田塾大学や早稲田大学で教えている内容でもある。
特に今年に入ってから、1月から6月に渡って、「ビートルズのコード進行」について研究をなされていて、それも紹介してくれたのだが、その見識の深さには舌を巻いた。
いろんな音階、調性、転調、そしてコード進行の話をしてくれるのだが、その説明には、電子オルガンを実際自分で弾いてみて、説明する、という手法。
心底、驚いたのは、麻倉さんのピアノのレベルがかなり高いということ!
かなりの腕前!うまいなぁー、やるなーという感じで、驚いてしまった。
これだけうまいと、このテーマの説明にも説得力が出ますよね。
そうして、もうひとつのニュースとして、ついに自分のレーベルである「UAレコード」を設立する、ということ。
目的は、「厳選した演奏家のパフォーマンスを、最上段のクオリティにて音楽制作すること」なのだが、それは表向きの建前。
ぶっちゃけ本音トークは、オーディオ評論家をやるからには、結局自分の音源を持たないとダメということ。このSPは低域が足りないと言ったら、そのリファレンスの音源を自分が持っていないといけない。
どうも本音はそこにあるようだ。
コンプレッサーやりません。
イコライザーかけません。
継ぎ接ぎしません。
一発録り。
これがモットーだそうです。(笑)
さっそく近日中に発売される第1段のデモディスクを聴かせてもらったが、なかなかのレベルであった。高域を強調したヴァージョン、低域を強調したヴァージョン、そしてこれに落ち着きました、ってな感じでデモしていました。
でも、偉いと思います。普段毎日、超多忙な身でありながら、自分のリファレンスの音源を持つべく、自分の新設のレーベルまで作っっちゃうというのは、行動力抜群だと思います。
頑張ってください!
以上が、1ビット研究会初体験の内容。なかなか内容も充実して、面白かった。
あっという間の5時間だった。
まっこれに味をしめて、次回も楽しそうであったら、参加してみたいですね。
2017-12-09 15:03
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