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ビートルズ音源のリミックス・リマスターは音がいいと言えるのか? [海外ロック]

ビートルズ・ビジネスのもっとも代表的なものは、ビートルズ音源のリミックス・リマスターであろう。


自分も記憶が曖昧なのだけれど、2005年あたりに、はじめてビートルズの全アルバムのCDが最新リマスター盤となってリイシューされ、ものすごい大変な話題になった記憶がある。


ラジオなんかを聴いていても、「ビートルズのCDがすごく音がよくなったんですよね~」なんてDJの方が言って、その音源をかける、ということに頻繁に遭遇したことがある。


それからはビートルズ音源の最新リマスターは、2010&2015&2019年とほぼ5年間隔でおこなわれ、その2005年のときほどショッキングなことではなく、現在ではなかば当たり前の行事になっていったような気がする。


自分は、今回、じつにひさしぶりに(おそらく十数年ぶり)ビートルズの全アルバムを聴き返している。Sgt.Papers、アビーロードがともに50周年記念盤ということで、スペシャル・デラックス仕様と呼ばれるものを販売しているのだ。


Sgt.Papers 50周年.jpg


ABBEY ROAD 50周年.jpg



共通しているのは、2019年に最新リミックスされた音源で、さらに諸元がハイレゾの96/24にオーサリングされたものだ。


音がよくなっているんだから、絶対こちらのほうがいいと思っていた。


でも聴いてみて、ちょっと「なにか違う」というか違和感があるのだ。


自分がよく知っている曲、子供の頃に脳裏に焼き付いている音楽と、なにか別物になったような感じがする。ノイズが除去されて、クリーンな感じになってS/Nがよくなっているのは一聴するとわかる。でもそれはまだ許されるにしても、もっとなにか曲の聴こえ方そのもの自体に、どうも違和感がある。


いろいろ自分が悩んで考えてみたところ、それはリミックスしたことに起因するのではないか、と思ったのだ。リミックス(Re-Mix)とリマスター、リマスタリング(Re-Mastering)とは全然違う工程のことである。


演奏家、ミュージシャンが演奏して、それをレコーディングしてCDになるまでの工程はこのようになっている。


CD音源.jpg


マルチマイクで録って、それをHDD(いまはメモリーカードなのかな?)などにマルチトラックで録音する。それを2chや5.1chに落とし込むことをミキシング(ミックスダウン、あるいは単にミックス)という。ステレオなら2ミックス。


そしてそれをCDの原盤に落とし込むことをマスタリングという。


リマスター、もしくはリマスタリングというのは、この2ミックスを原盤に落とし込むときに、デジタル処理でノイズを除去したり、歪みをとったり、楽音を鮮明化したりして、高音質化アーカイブしたりして、再度原盤に落とし込み直すことである。


だから昔作った2ミックス音源を加工するわけではない。


でもリミックスというのは、マルチトラックの音源をもう一回ミキシングし直すことをいう。これは、いわゆるやり直しに近い工程だから、昔の曲のイメージががら変になってしまうのは当然ではないか、と思うのだ。


それは当時と最新とでのエンジニアの技術力も違えば、使っている編集用のオーサリングツールの進歩も全然違う。エンジニアの技一つで、音場感を出したり、奥行き感を出したり、立体感を出したり、音の隈取りをしっかり出すようにするとか、全体の音のバランスなど自由自在に料理できる。


まさにこのミキシングの部分でエンジニアの力量が問われる部分なのだと思う。


この2ミックスのところをやり直したら、そりゃ出来上がったものは、1960年代にミックスしたものと全然違うものができるのは当たり前だと思う。


ここ2ミックスの部分、というのはある意味、「聖域」に相当するところなのではないだろうか。


ビートルズのファンは神聖なビートルズの音源を「いじってほしくない。発表当時にあったあるがままの音で聴きたい」


ロックとポップミュージックの新約聖書であるビートルズのアルバムと音源は、足したり引いたりしてはならない聖典である。


その聖域である2ミックスをいじってしまうのは、かなり度胸のいることなのではないのだろうか?(笑)


いくら音をよくしたいとは言え、そこをやり直したら、それはもうビートルズの作品とは言えないのではないだろうか?


だから、今回Sgt.Papersやアビーロードの50周年記念盤を聴いたとき、なんかやたらと音が良すぎて、音場感や特に奥行き感や遠近感がよく表現されているし、あと全体の音のバランスもかなりよくなっている。


それはリミックスしてやり直したからなのだと思う。


でも子供の頃からずっと脳裏に焼き付いている自分の中のビートルズの曲じゃないよな、なんか違和感あるという感じなのだ。確かにオーディオ的には、全然音がいいのだけれど、こういう「聖域」に関わる音源の場合、そういうことをすることがそのままいいことなのかは疑問だ。


ビートルズの曲はもっとラジオのように平面的なサウンドだ。(笑)
ビートルズファンにとって、どっちが幸せなのか、だ。


ビートルズの音源をリミックスするというのは相当勇気がいるというか、アップル本社や著作権者に何回も確認、承認を得たプロセスを通った上なのだろう。


だからもちろんそんなにメチャメチャではない。
でも自分には、ちょっと音がよすぎて、その聴こえ方に違和感がある。


いかにも近代の最新録音という感じで。。。
自分の子供の頃から知っているビートルズじゃない。


これはあの「Let It Be」についてもそうである。フィルスペクターがプロデュースしたのと比較して、ポールが2003年に作った「Let It Be...naked」も同じ。ポールの執念、気持ちはよくわかるけれど、nakedのほうは音が良すぎて気持ち悪い。Let It Beはライブ一発録りの外の暗騒音がある昔のほうがいい。やっぱり子供の頃に刻み込まれた印象は深いのだ。


どっちが幸せか、だ。


だからビートルズ音源でやっていいのは、2ミックスをいじらないリマスター、リマスタリングなのだと思う。これはノイズを除去するなり、音を鮮明にしたり、歪をなくしたりというくらいは許される。


いままでのビートルズ音源の高音質化の歴史も大半はリマスターのほうだ。
ビートルズ最新リマスター盤!という感じですね。


リミックスに挑戦したのは、今回の2019年度のSgt.Papers/アビーロードが初めてではないか?自分はPCオーディオでハイレゾ・ストリーミングで96/24でそのリミックスした音源を聴くというスタイルだが、この50周年記念盤のパッケージメディアBoxでは、さらにBlu-ray Audio 5.1サラウンド、Dolby Atmos 9.1サラウンドなんていうリミックスVersionもある。


ひぇ~!!!(笑)


もうそりゃビートルズ音源ではないだろう。
ビートルズ・ビジネスの商魂たくましいという感じである。


やっぱりビートルズの音源を聴くのは、当時発売されたメディアであるアナログレコードで聴くのが1番いいのかもしれない。




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